第1話:再会
西暦2138年。12年続いたオンラインゲーム「ユグドラシル」が、その長きにわたるサービスを終えようとしていた。感覚の一部を投影する「疑似体感型大規模多人数同時参加型オンラインゲーム」として一世を風靡したこの人気タイトルも、流行り廃りの荒波には抗えなかったのだ。
今日はサービス最終日。全盛期を知るものが見れば憐れむほどの閑散たる接続人数である。
社会人ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」。
アバターが異形種のみで構成され、“悪のロールプレイ”で賑わった彼らのギルド拠点「ナザリック地下大墳墓」には、サービス最終日を憂うギルドメンバーの姿があった。
拠点深部に設けられた円卓には異形の姿をした2人のギルドメンバーが座している。豪華な黒いローブを纏った骸骨姿の
彼らはその恐ろしい姿とは裏腹に、妙に人間臭い仕草で最後の挨拶を交わす。
黒い粘体がフラフラと頭を下げる。
「では、モモンガさん。最後までご一緒したかったのですが、限界のようです」
「いえいえ。明日も早いんですから、ゆっくり休んで下さい。今日は来てくれて本当にありがとうございました」
「――モモンガさんがギルドマスターで本当に良かったです。思い出深いナザリックを最後に見れて、嬉しかったですよ。では、名残惜しいですが落ちます。お疲れさまです」
「またどこかでお会いましょう」
エモーションを浮かべた黒い
ログアウト、リアルに帰ったのだ。
モモンガと呼ばれた
だが、来てくれたのはたったの3人だ。
寂しく思うが、納得はしている。12年経ったのだ。
元よりメンバーたちは社会人で、あれから成功した人も何人もいる。各々の生活があるのだ。
現実と仮想、その優先順位を間違ってはいけない。
感傷に浸っていると、ログイン通知を見逃したのか唐突に懐かしい声が響く。
「っ! 間に合ったっー!!」
「ぅおっほぅ!?」
「モモンガさん、おひさー」
そこには円卓に突っ伏しつつも手を振る
彼女は巨人故の大柄な身体をむくりと起こすと円卓を見渡す。種族特性で醜悪な外見だが、“中の人”が女性だと知っていると何気ない仕草の中にも女らしさを感じるから不思議だ。
「もしかしてボクが最後かな?」
「お久しぶりです、やまいこさん。さっきまでヘロヘロさんがいらしてたんですけど、明日早いので休まれました」
「くー、ニアミスかー。リアルじゃなかなか会えないから挨拶だけでもって思ったのに。あの事情聴取さえ無ければなぁー」
残念!と悔しがるやまいこに苦笑しつつもモモンガは「教師である彼女が事情聴取?」と疑問に思う。
「何かあったんですか? たっちさんにでも捕まりました?」
「それならまだ笑い話にもなるんだけどねー」
ゲームのアバターでは表情こそ分からないものの、声から察するとずいぶんとお疲れのご様子だ。
視界の端に映る時計を確認すると間もなくサービス終了の時間。モモンガはもっと世間話をしたい気持ちを堪え、やまいこにユグドラシル最後の予定を伝える。
「やまいこさん、話の腰を折って申し訳ないんですけど、“玉座の間”に移動しませんか? 最後は悪役らしく玉座で迎えようと思っているんですが、どうでしょう」
「おっけー♪ じゃあ最後だし、モモンガさんはギルド武器持って完全武装!」
やまいこはそう宣言すると、円卓の間に安置されていたギルド武器〈スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン〉をモモンガに持たせる。
やまいこはスタッフから立ち昇る赤黒いオーラに「こんなエフェクトだったっけ?」と感想を漏らしつつ、モモンガと、ついでに廊下に待機していたNPC、執事のセバスと
最後だからなのだろうか。やまいこはいつも以上に明るく、元気に振る舞っているようだった。
玉座の間。
まさに豪華絢爛。どこまでも高い天井と優しい光を灯す美しいシャンデリア。大理石の床は光を淡く反射し、空間に深みを与えている。広間の中央には赤い絨毯が玉座へと伸び、両側にそびえ立つ技巧の凝った柱にはギルドメンバー41人の旗が掲げられている。
モモンガが玉座に座ると、主人を迎えるべく1人の美しい女性NPCが、設定されたAIに基づき静かに近づき跪く。黒く長い髪を湛えた白いドレスの淑女で、蜘蛛の巣を思わせる金細工で飾った胸元が扇情的だ。そして捻じれた角と腰から生える翼が、彼女が人外であることを示している。
「お、この子、アルベドだっけ?」
「はい。たしか階層守護者統括という設定だったかなと。タブラさん作ですね」
アルベドを眺める2人の視線がその手元に移ると、同時に叫ぶ。
『
あろうことか、アルベドはその手に
ユグドラシル内で頂点に位置する至高のアイテム。オリジナルのアイテムを無限に作り出せるユグドラシルにおいて僅か200種類しか存在しない、それぞれが一点物のレア中のレア。
故に、
それは対物理攻撃に特化した
「マジかー、タブラさんいつの間に!?」
モモンガはコンソールを開き、アルベドの装備を確認する。サービス終了間際でとんだサプライズである。
「ま、まぁまぁ、モモンガさん。最後なんだし、大目に、ね?」
くー、とまだ納得のいかないモモンガを横目に、やまいこはふと思い出す。
「そういえば、第五階層のあの子もタブラさんが作ったんだよね? ……この子の設定ってどんな?」
やまいこの言う“あの子”とは、ギルドメンバーを恐怖に陥れたいわく付きのNPCのことだ。コンソールで装備欄を覗いていたモモンガはそういえばと設定欄を開き、やまいこにも見えるようにウィンドウを向けて読み始める。
『――なっが』
それは“設定魔”と知られるタブラによる、事細かなアルベドのキャラクター設定だった。早々に全文を読むのは諦め、軽く読み飛ばしながら画面をスクロールさせると、ふたりは最後の一文に目が留まる。
「ちなみにビッチである」
『……え?』
まさかの罵倒の言葉に2人して目を疑う。
モモンガは冷や汗を浮かべながら「あー。タブラさんってギャップ萌えだったっけ?」とフォローを入れ、
そして2人は目を合わす。
暫し悩んだモモンガは御免なさいと呟くと、ギルド長権限でその一文を消す。ギルドメンバーがこだわって作ったNPCの設定を断りなく変更する事に抵抗はあったが――。
「許してくれますかね」
「きっと大丈夫。ボクも一緒に謝るから。それにアルベドって種族にサキュバスが入ってるよね? 削っても変わらないような気がするんだけど」
「そう言われると、そうなのか? 代わりに何か入れます? 改めてギャップ萌えっぽいの」
「んー」
モモンガとやまいこは思案する。やはりここはタブラさんのギャップ萌えに準じた方がよいのだろうか、と。
「じゃぁこうしようよ、モモンガさん。アルベドの設定をざっと見るに、階層守護者統括・智謀の持ち主で良妻賢母・冷酷で残忍で狡猾で非道。つまり、高い社会的地位とそれに見合う高い知性、女性然とした趣味嗜好に恐ろしい性格を持つ。こ・こ・に――」
そう言ってやまいこはモモンガの手を取りコンソールを操作する。
『ちなみに甘えん坊である』
「可愛さを追加ってギャップにならないかな?」
「ふ、いいんじゃないですかね。ではこれで決定、と」
モモンガは変更内容を保存し、コンソールを閉じる。
気付くとサービス終了まで3分を切っている。
「わわ! もうこんな時間! ほらモモンガさん、動かないで!」
「な!? ちょちょっ! や、やまいこさん!?」
やまいこは玉座に座るモモンガの膝の上にピョンと飛び乗ると、
空中で制止したカメラのレンズが二人を捉えると流石のモモンガにも察しがつく。
「こ、これは、流石に」
「最後なんだから気にしない気にしない。ほらほら、カメラ見てー」
「良し。皆に送ろう」
「え、皆に!? 待っ――」
「送信完了っと♪ 今度オフ会開いて感想を聞こう」
グシャリ、と骸骨が崩れる。
「さ、最後の最後でこんな羞恥プレイを受けるとは……」
ごめんねーと悪びれた様子の無いやまいこの声に、しかしモモンガは感謝していた。
最後の最後で楽しい時間を過ごせたと。
サーバー停止まで、残り30秒。
「ありがとうございます。やまいこさん」
「こちらこそ」
静かに時間が流れる。残り20秒。
「楽しい思い出をありがとう。ギルドマスター」
「……はい」
やまいこはモモンガの様子を窺う。
(この様子なら大丈夫かな)
静かに時間が流れる。
残り10秒。
「では、最後はいつものでしめましょう。せーの!」
『アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!』
残り0秒。サーバー停止による強制ログアウト。
「……ん?」
「あれ? って!? 痛たたたっ!?」
予定の時刻が過ぎてもログアウトされない事に困惑したのも束の間、やまいこが何やら痛がるようにモモンガの膝から飛び降りる。
「え、なに? なんかピリピリしたんだけど」
「なんだろう。
ユグドラシルの幕引きに水を差され、モモンガは若干苛立ちながらコンソールを開こうとするが、開かない。その様子を察したやまいこも試すが、同じく開かない。
「マスターソースは開くようだけど、GMコールが利かない。やまいこさんも試してもらえますか」
「……駄目だね」
事態が飲み込めない中、聞きなれない女性の声が響く。
「どうかなさいましたか? モモンガ様。やまいこ様」
初めて聞く声にドキリとした2人が、側に控えるアルベドを見る。
「何か問題がございましたか? モモンガ様? やまいこ様?」
返事を返さぬモモンガたちを前に、NPCであるはずのアルベドが
「失礼いたします」
アルベドは固まったまま動かぬモモンガとやまいこに近づき、心配そうな眼差しを向ける。
綺麗な黒髪が流れ、目は潤み、喋る度に口が動く。
そして、鼻腔くすぐる微かな甘い香り――。
「っ! GMコールが利かないようだ」
モモンガはなんとか言葉を紡ぐ。
「お許しを。無知な私ではGMコールというものに関してお答えできません。この失態を払拭する機会を頂けるのであれば、これに勝る喜びはありません。何とぞ、なんなりとご命令を」
「そうか。ひとまず下がれ」
「はい」
所定の位置に下がったアルベドを見ながらモモンガはやまいこに囁く。
「気付きましたか。やまいこさん」
「うん。表情がある。会話が成立している。そして、匂いがある」
「ユグドラシル、いや、仮想現実内で嗅覚の再現は法で禁じられている。匂いは決して感じてはいけないものだ」
体感型オンラインゲームにおいて、重度の依存を避けるために嗅覚と味覚の再現は法で禁止されている。そのひとつである嗅覚が再現されている事に、モモンガとやまいこは戦慄する。何らかの犯罪に巻き込まれた可能性を思ってか、互いに不安を紛らわせようと無意識に肩を寄せ合う。
そこへ、アルベドから控え目に声をかけられる。
「あの……」
「何だ? アルベド」
2人は内心ビクリとしつつも顔を向けると、セバスとプレアデスたちが見守る中、アルベドが恐る恐るといった感じで尋ねる。
「はい。お二方は、
『…………』
『はぁ!?』
その質問の意図に気付き2人はさっと離れる。
すっかり失念していたが、サービス終了間際、自分たちがどのような格好をしていたのか思い出し、赤面する。
傍から見たらそれはもう仲睦まじく、そして今も寄り添うように佇んでいた。
「あーいや、これはちょっと……。なぁ?」
「そ、そうだね! ちょっとね」
なんとも歯切れの悪い返事である。
異常事態だったとはいえ第三者に指摘されると妙に気恥ずかしい。
「と、それどころでは無い!」
動揺していたモモンガだが急激に冷静さを取り戻す。
「やまいこさん。急な仕様変更にしては悪質過ぎる。なにかに巻き込まれた可能性があります。どう思いますか」
「仕様変更っていっても、今見て感じた事はゲームでは再現が難しいと思うな」
2人はふとアルベドのもつ
《モモンガさん。聞こえますか》
《お? やまいこさん。聞こえます》
《良かった。
ユグドラシルの
「情報が足りないか」
暫し考えモモンガは決断する。
控えている執事のセバスと
「セバス、ソリュシャン、玉座の前へ」
『はっ!』
セバスたちは玉座の下まで歩み寄ると再び跪き頭を下げる。
「お前たちはナザリック周辺を確認せよ。プレイヤーを見かけた場合は友好的に接し、交渉して連れてこい。行動範囲は周辺5キロに限定。戦闘は極力避けろ。万が一にも戦闘になった場合は、セバスが時間を稼ぎ、ソリュシャンは即撤退。情報を持ち帰れ。重要なのは情報だ。分かったか?」
「了解致しました」
「では2人には
「畏まりました、モモンガ様。では直ちに行動を開始いたします」
迷わず出発する2人にモモンガは確信する。傭兵NPCだけではなく“ギルドNPC”も外に出られるようになっている。
「ルプスレギナとシズは墳墓入口で待機。先の2人が負傷して戻ってくるような事があれば回復と援護をしろ」
『畏まりました、モモンガ様』
ルプスレギナとシズへの指示を終え、ふとGMコールのやりとり以降大人しく控えているアルベドを見る。アルベドの眼差しは真剣で、先ほどの失態を払拭する機会をと強く訴えていた。
「――アルベド。前へ」
「っ! はい! モモンガ様。何なりとご命令を」
喜々として跪くアルベドへ指示をだす。
「第五階層へ赴き、氷結牢獄の主、お前の姉に協力を仰げ。探知魔法でセバスたちの動向を監視しつつ、彼らの目が及ばない部分を補うよう伝えろ。次に、念のため第四階層のガルガンチュアを起動できるか確認しておいてくれ」
「畏まりました、モモンガ様。復唱いたします。第五階層の姉にセバスたちの監視とナザリック周辺の調査を命じ、私はガルガンチュアを起動できるか確認いたします」
アルベドは任務を復唱し一礼すると、階層守護者統括に相応しい優雅な姿で玉座の間を後にする。
これで外の情報は何とかなるだろう。
この混乱した状況下で敵対的なプレイヤーとの戦闘は極力避けたい。今の戦力では昔のような攻勢に対してとてもではないが対抗できない。
さて、これからどうしようと思案するモモンガは、自分をじっと見つめるやまいこの視線に気付く。
「どうしました? 他に何か気付いた事とかありました?」
「あー、いや。咄嗟に魔王ロールが出来るモモンガさんに感心していただけ。それと、試しに
ボクたちだけなのかなー、と彼女は不安そうに、どこか遠い目をする。
サービス終了間際の、あの僅かな時間では望みは薄い。いや、ログイン通知が無かった以上、少なくともギルドメンバーは居ないだろう。だが、確かめない訳にはいかない。
「ユリ、ナーベラル、エントマ、玉座の前へ」
『はっ! モモンガ様。何なりとご命令を』
ここにきて残っている
「ナーベラル、第九階層へ行き、メイド長のペストーニャと共に全ての部屋を調べろ。他のギルドメンバーが居ないか確認するのだ。彼らの私室も含め隅々まで、徹底的に。調査が終わったら
「はっ。直ちに行動を開始致します」
「エントマは第四、第八階層を除く各階層守護者へ伝達。『非常事態につき担当階層に異常が無いか調査せよ。その後、警備レベルを引き上げ待機』。お前自身は第一から第三階層を担当するシャルティアを手伝え。調査後は墳墓入口へ行きルプスレギナたちと合流し待機せよ」
「畏まりましたぁ、ももんが様ぁ」
トテトテと玉座の間を後にするエントマを見送り、最後に残されたユリを見る。
ユリは自らの“創造主”であるやまいこを前に、心中落ち着かないようだ。
《やまいこさん。思い付く限りの指示は出しましたが、何かユリに命じますか?》
《うん。ちょっと試したい事がある》
最後にユリを残してくれたのはモモンガさんなりに気を使ってくれたのかな、と思いながら、やまいこはユリに声を掛ける。
「ユリ。私の近くへ」
「恐れながら、メイドの身でこれ以上玉座に近づくのは……」
「緊急事態なんだからいいの。早くなさい」
教師然とした態度で命ずる。
普段は落ち着いた感じの声なので、プライベートしか知らない相手には新鮮に聞こえるかもしれない。
促されるまま近づき、再び跪こうとするユリを止める。
「そのままでいいわ。貴方の顔を見せて」
そう優しく声を掛け、そっと左手をユリの頬に添える。
「本当、久しぶりね、ユリ」
「っ! はい。やまいこ様。ずっと、お待ちしておりました」
ユリの目にうっすらと涙が滲む。
その涙に心がチクリと痛む。
思えば徐々にログイン頻度が減り、ログインしたとしても狩りばかりに興じてしまっていた。
もっと着せ替えとかしてあげれば良かったかな、と。
そんな2人を傍らで眺めるモモンガは、事態が落ち着いたら自分も自らが生み出した
右手の指でそっとユリの涙を拭うやまいこを暖かい気持ちで見守っていた。
新たに芽生えた命、感情を持ったユリと、生みの親であるやまいこの姿が眩しく思えたのだ。ナザリックを守ってきて良かった――と、思ったのも束の間、やまいこがポンッとユリの首を外し、モモンガへ投げて寄こす。
「モモンガさん。パス!」
「な、なにぃいいい!?」
「や、やまいこ様ぁあああ!!?」
そういえばこの子、デュラハンでしたね!と思いつつ、落としてはいけないと慌ててユリの頭を優しくキャッチする。
モモンガの手に収まったユリを見ると、造物主に投げられたショックと、ギルド長のモモンガにキャッチされた畏れ多さから、気の毒なほど動転していてあわあわと目を回していた。
いくら己が生み出したNPCとはいえ、女の子の頭を投げるのは如何なものかと苦言を呈そうとやまいこに目を向けると、
しまいにはスカートを捲りフムフムと観察しだす始末。まさに変態の所業である。
それを目の当たりにしたユリは、何とも形容しがたい百面相を演じている。
やれやれとやまいこにチョップをお見舞いしようと近寄ったところで当の本人から鋭い声がかかり、モモンガは思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「モモンガさんっ!!」
「わはぁいっ!?」
「――BANされません」
「え? あ、はい」
「何? まさか、ボクがペロロンさんみたいに変態じみた事をしているとでも思った?」
かつての親友が酷い言われようである。
「ま、まさかまさか! そんな事はないですよ? そんな事はないですよぉ?」
ハハハと誤魔化すように笑い、やまいこの言うBANについて考える。
健全を謳い18禁行為などに対して厳しい姿勢で挑んできたユグドラシルの運営がいまの痴態を見逃すとは思えない。
(運営の手から離れている?)
やまいこと目が合うと彼女も同じ結論に達したのか頷く。
「モモンガさん。この状況、運営と隔絶されているのは確かみたいだね」
「はい。となると次は、自分たちに出来る事と出来ない事をもっと調べる必要があると思います。アイテムが使えるのかとか、特にスキルや魔法の仕様がどうなっているのかとか。最悪まったく別のゲームになっている可能性がありますよ」
「
モモンガからユリの頭を受け取ったやまいこは、ユリの頭を再セットしながら指示をする。
「ユリ、ボクたちはこれから第六階層の
「畏まりました。やまいこ様」
ユリを見送るとモモンガはやまいこに指輪を差し出す。
リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。このナザリック内で転移するのに欠かせないアイテムだ。
「やまいこさん。今までのNPCたちの反応を見る限りすぐに謀反を起こして襲ってくるような事は無いと思うのですが、好感度がどう変動するのか分からないので一応彼らの上位者として振る舞うって事でいいですかね」
「それが無難かな。ま、モモンガさんの魔王ロールがあれば大丈夫でしょ♪」
「いやいや、フォローしてくださいよ? 結構一杯一杯なんですから」
「分かってる分かってる。ささ、第六階層に行きましょう」
本当にわかってます?と不安の声を上げるモモンガの肩を軽く叩きながらやまいこは笑うのであった。
左手は添えるだけ。
独自設定
・作者の理解不足のため、言葉を発しなければ通じないはずの