安倍灯葉は目の前の組分け帽子を被る。
組分け帽子は所々傷ついており、ボロボロだ。
灯葉が被ると組分け帽子は年季の入ったらしき皺を口のように動かして、喋りだつ。
「ん~これは難しい。純血。知への探求心。そして、知へと学ぶ為の信念は誰よりも高い。其ゆえに手段は問わない。どうしたものか……」
どの寮の人達も安倍灯葉がどこに入るのかが気になるいるのか、さっきの騒ぎが静まっていた。その場にいる全員が組分け帽子の言葉を聞いている。
組分け帽子はその静まりに呼応するように潜考する。安倍灯葉も同調するように目を瞑る。
「さて、どうしたものか」
組分け帽子は考えをまとめるかのようのに呟く。
そんな中、安倍灯葉は目を瞑り、組分け帽子にだけ聞こえるように言う。
「見つけた」
組分け帽子はその言葉に反応してか、帽子には目が無いのだが、目を開いたかのように驚く。組分け帽子は帽子に戻ったかのように黙る。
(まさか、この少女が帽子の意識に入るとは…………)
組分け帽子は安倍灯葉を追いかけるように自分の意識へと入り込んだ。
安倍灯葉は白い部屋にいる。
目の前には長いテーブル、テーブル中央には花瓶がある。今いる空間を見渡し、足元、テーブルを触る。
(成る程、帽子に意識があるのはこういう事ですか)
安倍灯葉は微笑む。目の前にいる4人に。
その4人は押し黙り、安倍灯葉を見る。4人は灯葉に対し、テーブルを挟んで座っている。
一人は蛇を想像させる眼光の男性で安倍灯葉を見ている。後ろには蛇が書かれた絵が書かれている。
もう一人は王の風格を体現したかのような男性で、手を組み、手の上に顎を乗せている。後ろには獅子の絵が書かれている。
もう一人は興味津々な目で見ている女性。その後ろには鷲の絵が描かれている。
最後の一人は温厚そうな笑み浮かべている女性がいる。その後ろにはアナグマの絵が描かれている。
始めに口を開いたのは温厚そうな笑みを浮かべている女性。
(わざわざ、こんな所に来て何のご用でしょうか?)
(知りたかっただけ。意識を持った帽子の事を)
鋭い眼光をした男性は威圧をかけるように言葉を発する。
しかし、安倍灯葉は威圧を気にしないかのように言う。
(それだけか?東洋の魔女?いや、陰陽師)
(ええ、陰陽師をご存知なら、知っているでしょう。陰陽師はどのような魔法使いか)
安倍灯葉の返答に興味津々な目の女性は答える。
(ええ、勿論。陰陽師は私と同じく知を探求する者。あらゆる事を知りたいと欲する者)
(そうです。だから、私は帽子、貴方達を知りたい。それにこの空間もまた知りたい。あらゆる事を知りたい)
それを聞いた鋭い眼光をした男性は椅子から立ち上がる。立ち上がった衝撃で椅子は倒れこんだ。倒れた椅子は空間に鈍い音を発する。
(ふん、ここにいる吾が輩達は誰よりも知っている。しかしな、4人の知識を合わせてもあらゆる事に全ては説明出来ない。ここに入ったからって調子に乗るなよ。小娘が)
(まぁまぁ、スリザリン。落ち着きましょう。私は彼女の知識への探求心は称賛しますわ)
興味津々な目をしている女性は鋭い眼光の男性をスリザリンと呼び、落ち着かせるように言う。
スリザリンと呼ばれた男性は安倍を一瞥し、椅子を元に戻し、椅子に座る。
王の風格を体現したかのような男性は他の3人を見渡し、安倍に言う事は無いだろうと判断したのか、安倍に言う。
(本題に戻そう。貴方をどの寮にするかだが…………)
(それなら!!やっぱり、私の寮でしょう。彼女の知識の探求心。最も相応しいでしょう)
(ふん、それはない。ここに入る遠慮の無さ、知りたいと故に欲の深さ。吾輩には知る為には手段を選ばないと見た。彼女にはスリザリンが相応しいだろう)
(グリフィンドールだな。彼女には信念がある。あらゆる事を知るという信念がな)
(どれも当てはまるね。いっその事、ハッフルパフへ)
((((・・・・・))))
4人はにらみ合っている。目の前にいる安倍を無視して。雰囲気は今にも喧嘩をしそうな雰囲気に包まれる。誰もが如何にも自分の寮へと入れたがっている。安倍はそんな人達に向かって言う。
(帽子の中でこんな事をしていたんですね)
(そうだ。帽子には4人の知識と人格を複製した。4人の意識が交わる事がないのはこの部屋があるからこそだ。帽子の発言は4人の話し合いで決まっている。もしくは4人の誰かが喋っている)
(なるほど。封印術ではなく、呪術でしたか。そうなると、あの魔法が近いか。けど、この部屋は一体・・・・?)
安倍の発言に対し、王の風格を体現したかのような男性は答える。
その答えで安倍は考えるかのように下を向いて、4人を無視するかのように喋る。
それを見た4人の一人、温厚そうな笑み浮かべている女性は咳払いして、安倍の意識をこちらに向ける。
(そろそろ、決めなくては。貴方はどの寮に入りたい?)
(そうですね。私は)
安倍灯葉の言葉に4人全員はテーブルに身を乗り出し、答えを聞く。
安倍灯葉の答えに王の風格を体現したかのような男性は喜ぶ。スリザリンと呼ばれた男性はそっぽを向き、舌打ちをする。他の2人の女性はしょうがないと言った表情をする。
(そろそろ、現実に戻ろうか。ようこそ。グリフィンドールへ)
安倍灯葉の意識は大広間へと戻った。
安倍灯葉は組み分け帽子だけに聞こえるように喋る。組み分け帽子はスリザリンと呼ばれた男性の口調で安倍にだけ聞こえる声で言う。
「貴重な体験、有難うございます」
「ふん。もう二度くるな。小娘が」
組み分け帽子は高々と宣言する。
「グリフィンドール!!」
グリフィンドールからはハリーポッターがグリフィンドールに選ばれたくらいの同じくらいの歓声を上げた。