ハリーポッター マホウトコロの陰陽師   作:猫舌猫目

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2年の終わり

 古来、日本は、人の名前には通り名と忌み名の二通りがある。通り名は公に明かし、自分の名前としている。それに対し、忌み名は公には明かさず、誰にも知られないように隠している。

 

 なぜなら、名前はその人物の魂であり、名前を知るということは魂を知る事になる。

 忌み名を隠すというのは魂を隠すと言う意味であり、忌み名から遠ざかるにつれ、自分の魂を認識出来なくなる。

 

 認識出来なくなるにつれて、自分が持っている本来の能力が出せなくなる。

 つまり、忌み名を晒す事は自分を晒し、本来の能力が出す事が出来る。

 時にその能力は多大なる影響を与える事がある。 

 

 

 秘密の部屋の入り口から出た黒髪の少女、安倍灯葉。目の前にいる瓜二つの少女に話しかける。

 

「ご苦労様です。太陰神」

「まったくだわ。主様」

 

 灯葉にそっくりな少女は姿を変え、20代の女性の姿に代わる。

 その姿は茶色の髪。主様に呼んだ灯葉に向かって、薄い笑顔を向けている。

 

「石にされた気分はどうです?」

「最悪だわ。で、結果はどうなの?」

「秘密の部屋は知れて、あちらの方も無事に手に入れました」

「ならいいわ。じゃあね」

 

 そう言うと、女性は紙へと姿を変える。灯葉は紙を拾い、大広間へと向かう。

 向かう途中にルシウスとハリーが対面していた。また、ルシウスの後ろには屋敷妖精ドビーがいた。灯葉は3人に気づかれないように隠れる。様子を伺う。

 

 ハリーが持っている古い本。それはルシウスが本屋でジニーの懐に入れた物だ。

 そして、ルシウスの後ろにいる化生の者はなんだ?

 

 灯葉の興味は尽きない。灯葉の視線はその2つに注がれる。

 

 本はルシウスに渡される。

 灯葉はハリーの意図に気づき、思わず笑う。ハリーもまた気づいていたんですね。

 

「覚えとけ。ポッター。行くぞ。ドビー」

 

 ルシウスは苦々しく、言葉を残し、帰ろうとする。ドビーはその後を追いかけない。

 ドビーは本を開けて、本を凝視していた。本に挟まれていたのは靴下。ドビーは靴下を手に取り、自由だと高らかに叫ぶ。

 ルシウスは呆然とするが、ハリーの方を見て、一瞬で理解する。

 

「貴様!よくも私の召使を!!」

 

 ルシウスは怒りのままに杖をハリーに向け、呪文を唱える。

 

 

―アバダ・ケダ「そこまでです。ルシウス」― 

 

 

 

 

 

 

 ルシウスは心の中で目の前の少女に感謝する。

 たかが東洋の魔女。しかし、純血である事を聞いて、価値はあると踏んでいたが、こんな所で役に立つとは。

 

「・・・・何か用かな。トウハ」

 

 冷静に装うが、心の内では冷静ではない。

 もし、呪文が間に合っていたら。呪文がポッターに当たっていたら。この少女が止めてくれなかったら。

 私が築き上げた物全てが崩壊してしまうのだから。

 

「ただならぬ状況でしたので。お邪魔でしたか?続けても構いませんよ」

「いや。私は忙しいのでな。また今度にしよう。ポッター。ドビー。今度こそな」

 

 ルシウスはポッターに言葉を残して、去っていく。

 ドビーは今までの鬱憤が溜まっていたのか、ルシウスに向かって、下まぶたを引き下げ、舌を出していた。そんなドビーを灯葉はずっと見ていた。

 

「貴方は何者です?」

「私は屋敷妖精のドビーでございます。2人共。助けてくれてありがとうございます。」

「妖精ですか。なるほど」

 

 灯葉はじっとドビーを毛一本見逃せないといった感じで見ている。

 ドビーはじっと見られた事がないらしく、ハリーの後ろへと隠れていく。ハリーはそんなドビーに構う暇がないのか灯葉は話しかける。

 

「トウハ。治ったんだ」

「治りました。ハリー。貴方は一年前と大違いですね。自分で選択し、動いた。そして、私を助けた。ありがとう」

 

 ハリーは灯葉に認められた。そう感じられた。ハリーはそれだけで満足だ。

 

「さて、ハリー。行きましょうか。皆が待っています」

「いこう!」

 

 ハリーと灯葉は手をつなぎ、皆が待っている大広間へと向かった。

 灯葉の片方の手にはいつの間にか、トム・リドルの日記を持っていた。

 

 ヴォルデモートの日記。またこれで、更に知識が増える。

 

 灯葉の頭はそれだけで一杯だった。

 その事にハリーもドビーも気づいていなかった。


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