鉄の鳥が集う巣。
その巣の中は大勢の人に溢れている。スーツ姿の人は掲示板を見て、走っていく。ラフな姿は一緒に行くであろう人と楽しそうに話している。その中、異彩を放っている人物がずっと誰かを待っているかのように立っている。
その人物は高齢の女性。女性は後ろで束ねたひっつめ髪、四角い眼鏡をかけている。女性の見た目は生真面目、先生のようなイメージを感じさせるが、女性が着ている服のおかげですれ違う人、回りの人々はつい2度見をしてしまう。
服は高齢の女性が着てもおかしくはない服だったが、女性がその服の上に首元で止める形の足元まで伸びているコートを着ており、服とコートはお世辞にも似合うとは言いがたい。
女性はコートから写真を取り出す。写真には1人の女の子が写っている。
写真の女の子は黒曜石に等しいほど黒く輝き、背中まで伸びている髪。茶色の切れ長の目。顔はまだ11歳のせいなのか幼く見えて可愛らしい印象を与えてくれる。
女性は写真とゲートから出てくる人と交互に見ながらその写真に写っている女の子を探していた。
暫くして、ゲートから出ていくる人の中に写真に写っている女の子が現れる。女の子は歩きながら、視線を手紙を見ている。そのおかげで高齢の女性には気づいていない。高齢の女性は女の子に気づかせる為に言葉を放つ。
「トウハ・アベ こちらです」
女の子は高齢の女性が放った言葉に気づき、女の子は高齢の女性に向かって歩いていく。
女の子は写真よりも可愛らしい微笑みを顔に浮かべている。恰好は白いブラウスに黒い長いスカートを着ていて、上品なイメージを与えてくれる姿。
高齢の女性と女の子が並ぶとさらに高齢の女性の姿が目立つ。女の子はお辞儀をして、高齢の女性に向かって挨拶する。
「ミネルバ・マクゴナガル。初めまして、灯葉・安倍です。これからよろしくお願いします」
お辞儀を見たことがないマクゴナガルは女の子が何をしているのかわからなかったのか、すぐ声をかける。
「顔をお上げなさい。トウハ・アベ。さぁ手をとりなさい」
安倍はミネルバの手を取る。取った瞬間、ミネルバと安倍の回りの風景は安倍とミネルバを中心にして回転する。安倍はその光景に驚いたのか、呟く。
「これがイギリスの魔法…………」
西洋の魔法が見れたのが嬉しいのか、灯葉の顔は喜びの表情で一杯だ。マクゴナガルはその様子をまるで孫を見ているかのような目をしていた。
回転が止むと、灯葉とマクゴナガルの前には漏れ鍋という名前の店がある。漏れ鍋は外見はボロい印象を与える。ボロいせいなのか灯葉の耳に客の声が聞こえる。
マクゴナガルは常連なのか騒がしい雰囲気に臆することなく、店の扉を開ける。マクゴナガルが入ってくるのを気づいたのか客一人が声をかける。
「ミセス・ミネルバ 久し振りです。聞きましたか?」
「何がですか?」
「ハリーポッターが漏れ鍋へと来たんですよ。サインをもらいたかったんですが、ホグワーツの準備があるらしくさっさと行きましたけど」
「ハリー・ポッターですか?」
安倍灯葉はハリー・ポッターの単語を聞いたらしく、会話に割り込むようにマクゴナガルに声をかけた客に話しかける。
「ええ。そうですよ。あのハリー・ポッターですよ」
「何処へと行ったんですか?」
「ダイアゴン横丁に決まってるじゃないですか」
客は心底驚いた顔で安倍の質問に答える。
「ミネルバ・マクゴナガル。さぁダイアゴン横丁へ行きましょう」
安倍はマクゴナガルの手を掴み、ダイアゴン横丁へと行こうとする。マクゴナガルは咳払いをし、興奮している灯葉を落ち着かせようとする。
「トウハ・アベ。落ち着きなさい。私達もダイアゴン横丁へいきます。ホグワーツの制服等を揃える為に」
灯葉達はダイアゴン横丁へと入っていったが、新入生らしき人やその家族らが大勢いたので、安倍灯葉は自分の荷物を揃えるだけになってしまった。