ハリーポッター マホウトコロの陰陽師   作:猫舌猫目

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2年生の準備

 

 湖にある小島に建っている小屋の扉が開く。小屋の中からホグワーツの制服を着た安倍灯葉が出てくる。その後ろから老人が出てくる。老人は灯葉に本を差し出す。本の内容は錬金術に関する物だ。

 

「ホグワーツ出発までまだ日があるだろう。それでも読んでおけ」

 

 老人は灯葉に本を渡し、灯葉の手を握る。

 すると、老人と灯葉の周りの景色が一瞬にして変わる。水に囲まれた景色から薄暗く、ホコリが舞い、ネズミや虫が徘徊する裏道に変わる。鼠や虫は二人の登場に現れたのか、一斉に下水に潜り込む。または暗闇に溶け込む。

 

「ノクターン横丁だ。ここを右に曲がって真っ直ぐいけばダイアゴン横丁だ。ダンブルドアによろしくな」

「ええ。ではまた来年。ミスター ニコラス」

 

 ニコラスと呼ばれた老人は灯葉の手を放し壁に向かって歩いていく。歩いていく先にネズミが消えた暗闇と同じくらい黒い色の靄が一瞬にして現れ、老人の姿を包んで消えていく。灯葉はその様子を見守る。

 

「後は頼みましたよ 水玄」

 

 

 

 灯葉はニコラスの言う通りに裏道から右に曲がろうとする。

 しかし、右に曲がる瞬間、プラチナブロンドの髪、青白い顔に尖った顎の中年の男にぶつかりそうになる。中年の男性はいきなり出てきた灯葉を睨みつけるが、その中年の男の背中から、ドラコ・マルフォイが驚いた声を出す。

 

「なぜ!アベがここに!?」

「知り合いに会ってました」

「ドラコ。知り合いか?」

「ええ。父上。東洋の学校からの留学生です」

「ほー。君が東洋の留学生か・・・・グリフィンドールか」

 

 中年の男は灯葉を値踏みするような目で見る。しかし、制服の勲章を見て、嘲笑うかのように言葉を放つ。

 灯葉は中年の男にお辞儀しながら、自己紹介する。

 

「初めまして。トウハ・アベです」

「ルシウス・マルフォイだ。噂はかねがね聞いているよ。なんでも優秀な魔女だとか」

「ありがとうございます」

「息子と仲良くしてやってくれ。マグル、グリフィンドールの生徒よりもな」

 

 そう言い残し、ルシウスは息子と共にノクターン横丁から出ていく。

 灯葉はその場から去るルシウスを見ていた。特にルシウスの手に持っている本を見ていた。

 

 

 そして、灯葉もマルフォイ親子と同様にノクターン横丁を出て、ダイアゴン横丁に行く。2年生に必要な物を買う為に。数日前にダンブルドア校長から届いた必要な物リストを見る。

 リストを見た灯葉は眉をしかめる。

 

「本当に必要なんですか?」

 

 そこに書かれているのは今学期に必要とされる教科書の一覧が載っていたのだが、その大半が今学期から闇の魔術の防衛術の先生になるギルデロイ・ロックハートが書いた本で埋められている。

 名前を見るからにそれは教科書ではなく、小説だ。

 

 灯葉は本屋でリストを載っている本を買う。買うのも一苦労だった。

 本屋にロックハート本人がいて、握手会を開いている。そのおかげか、多くの魔女がいて、混雑している。

 混雑の原因であるロックハートは魔女に笑顔で握手している。握手された魔女は満点の笑顔と興奮が収まらない様子だ。

 灯葉はロックハートを一瞥したが興味がないのか、さっさと本屋から去ろうとするが、何かを見つけたのか、握手待ちをしている大勢の魔女の壁に隠れて様子を見ている。

 

 灯葉の見つめる先には先ほど会っていたマルフォイの親子と、赤毛の中年の男がいる。赤毛の中年の男周りにはハリー、ハーマイオニー、そして、ウィーズリー兄弟達がいる。そして、その兄弟達の後ろに妹らしき女性がいる。安倍灯葉はその集団に加わる事をしようとはせずに傍観に徹している。

 ルシウスと赤毛の中年の男は今にも殴り合いになろうかというくらいな雰囲気で睨みあっている。

 

「役所も大変忙しいだろう。留学生だったり、抜き打ち検査だったり、魔法使いの面汚しと言われてもねぇ」

「何が面汚しかはお互い意見が違うようだ」

 

 ルシウスは赤毛の中年の男からハーマイオニーを見る。

 

「マグルと付き合うとは。まだ落ちぶれ足りないそうだな。付き合うならまだ東洋の魔女の方が良いだろうに」

 

 ルシウスは本をウィーズリー家の妹らしき女性が持っていた鍋に入れる。

 灯葉はその瞬間を見逃してはいなかった。ハリーもまた鍋を見て、何か気づいている様子だ。

 ルシウスは本屋から去る。ウィーズリー家とハリー達は去っていくルシウスをただ睨んでいた。

 灯葉はその様子を見て、笑う。

 

「これがイギリスの純血思想ですか。これも中々面白そうですね」

 

 本屋から出るウィズリー家の妹らしき女性の鍋の本、またスマイルを浮かべて握手しているロックハートを見つめる。

 

「あんな魔法使いでは今年は期待出来ないと思っていましたが、あの本には期待できる」

「さぁあの本の秘密を暴こう」

 

 そして、灯葉は出発の日するまで、漏れ鍋の部屋で本を読んでいた。ロックハートの本ではなく、ニコラスに渡された錬金術の本を。

 

 

 

 


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