ハリーポッター マホウトコロの陰陽師   作:猫舌猫目

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禁じられた森

 みぞの鏡に封印された日以降、特に事件らしいことは起こらずにいた。

 ところが、ハグリットがドラゴンを孵した所をドラコに見られてしまった。しかも、その場にはハリー、ハーマイオニーとロンがいた。そのせいで、ハリー達3人は捕まってしまう。一人50点で、150点も寮の点を失い、さらに罰を受ける羽目になってしまった。

 しかし、マルフォイの思い通りとはいかず、マルフォイもマクゴナガルに捕まり、同じ罰を受ける事になるのだが、ハリー達にとってはそれはどうでも良かった。

 何故なら、今のハリー達の状況はグリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフの生徒達から後ろ指を刺されてしまっているからだ。

 

 ハリー達とマルフォイの罰は真夜中に受ける事になる。

 ハリー達は真夜中の寒さに震えながら、罰を受ける場所、ハグリットの家に向かう。

 その途中、ロンは愚痴をこぼす。

 

「はぁ。真夜中に処罰とか何をされるんだ?」

 

 ハリー達はロンの愚痴を聞きながら、ハグリットの家に行く。そこにはフィルチ、ハグリットがいる。先に来ていたのかマルフォイもいる。また、ドラゴンが孵化した場面に出会わなかった安倍灯葉もいる。

 灯葉がいる事に気づいたロンは驚いた表情で言う。

 

「トウハ。なぜ君がいるんだ?」

「私がいるのはスネイプ先生も同行する予定だったんですが、行けなくなったという事なので、代わりに来ました」

 

 灯葉は訳を話した後、ハリー達に言う。

 

「それより、ドラゴンが生まれる瞬間を見たかったのですが、なんで呼んでくれなかったんですか?」

「その時、トウハはいなかったから、しょうがないじゃない」

「・・・ごめん」

 

 ハーマイオニーは訳を話したが、ハリーは謝る。

 フィルチは3人が会話が終わったと感じたのか、ハリー達とフィルチの反応を楽しむかのように笑いながら、話す。その笑いはランプに照らされて、不気味に感じられる。

 

「今から森へ入る」

 

 フィルチの言葉に、マルフォイは人一倍怖い反応を見せる。対照的に灯葉は森へ入る事が楽しみでしょうがないのか、じっと興味津々な目で森を見ている。

 そんな中、ハグリットは灯葉も含めて、5人に促す。

 

「そんな気持ちじゃ、あ、っという間に死ぬぞ。傷ついたユニコーンを探せないぞ」

 

 傷ついたユニコーンを探す為、ハーマイオニーとハグリット。ロンとフィルチ。灯葉とマルフォイ、ハリーの3手で別れる事にする。

 

 

 

 

 「あーあー。なんで、この僕がこんな事にしなければならないんだ?きっとこの事を知れば、父上はなんて言うか」

 

 灯葉達のグループは3人は違った足取りで歩いている。

 マルフォイは愚痴をこぼしながら、乱暴な足取りで歩いていく。時折、根っこを蹴って、うっ憤を晴らしているようだ。

 灯葉は珍しいのか、周りを見渡しながら歩いている。時々、木や地面を触り、採取している。

 一方、ハリーはマルフォイと灯葉の様子を見ながら、歩いている。特に灯葉の様子を見ていた。なぜなら、透明マントでスネイプと灯葉の会話の事を聞いて、その理由を聞けずにいたからだ。

 灯葉は何を知っているのか気になってしょうがない。しかし、偶然といえ、盗聴してしまった後ろめたさで聞けなかった。

 どうやって、聞けばいいのか、ハリーには全然分からなかった。

 

 その時、マルフォイの足が止まった。それに釣られて、ハリー、灯葉は止まる。

 マルフォイの見ていた先に地面に横たわるユニコーンの傍に人の形をした者がいた。その者は黒いフードがあるコートを着て、ユニコーンの傍で何かをしていた。

 その光景にマルフォイは叫びながら、逃げていく。

 

 その叫び声に反応したコートの者は振り返り、灯葉とハリーを見る。フードを深くかぶっており、顔は見えない。

 ハリーはその者を見た瞬間、額を抑えて、苦しむかのように息を荒くして、膝を地面につける。フードの者はそれを見た瞬間、好機かというかのように人間とは思えない程の跳躍でハリーにとびかかる。

 

―傷開き 生き血を吸わせ 鎌鼬―

 

 灯葉はいつの間にか手に錫杖を持ち、呪文を唱える。呪文は真空の刃となり、フードの者に襲い掛かる。その時、フードの者は跳躍しており、避けれないだろう。ハリーと灯葉はそう思っていた。

 しかし、フードの者は空中で止まり、真空の刃を避ける為、空中を地面のように蹴り、後ろに下がり、先ほどいたユニコーンの傍に降りる。

 フードの者はその場を動かない。じっとフードの奥から、灯葉と蹲っているハリーを見ている。それに対し、灯葉はしてやったりという表情をして、錫杖で自分の腕を指す。 

 フードの者はそれを見て、自分の腕を見る。そこにはローブが手首から腕から肘まで切れていて、フードの者は腕を触り、自分の手を見る。

 

「血が出ていない事が不思議ですか?」

 

 灯葉は錫杖を振るう。錫杖から真空の刃が出る。フードの者は横にズレて、真空の刃を避ける。しかし、反応に遅れたのか、今度は腹に真空の刃が切り裂いていく。しかし、今度もまたローブと体を切るだけで血は出ない。

 

「鎌鼬は血が大好物なんですよね。吸われたユニコーンの痛みを知りなさい。陰の者よ」

 

 フードの者は切られた腹を手で抑えて、灯葉を見る。フードから真っ黒な闇しか見えないが、闇の先から鋭い眼光を感じられる。灯葉は錫杖をフードの者に向けて、臨戦態勢を取る。

 その姿を見てか、フードの者は跳躍し、木から木へと移動して、森の奥へと消えていく。

 

 灯葉は消えていく方向を見て、いない事を確認したら、まだ蹲っているハリーポッターの方へと向かう。

 

「ハリー、大丈夫ですか?」 

 

 ハリーはまだ額の痛みとずっと戦っていた。その戦いの中、ずっと考えていた。灯葉は臆する事なく、フードの者と戦っている。それに対し、僕は何だっていうんだ。ただ蹲っているだけだ。それにずっと、トウハに聞けずにいるあの夜の出来事も。

 

 

・・・・なんて、情けない。

 

 ハリーの頭は痛みと共に自分の情けなさが支配していた。それにずっと、トウハに聞けずにいる。あの夜の出来事も。

 

「ハリー、まだ痛みますか?」

 

 ハリーは決心する。額の痛みは段々と引いていくが、今自分の中にある情けなさは消えないままだ。むしろ増していくだけだ。

 

「トウハ。君に聞きたいことがある」

「何でしょうか?」

「聞いてしまったんだ。クリスマスの晩。スネイプとトウハの言い争いを。君は何を知っているんだ?」

 

 ハリーは安倍灯葉から目を離さない。灯葉は静かに口を開く。

 

「私が言える事はただ一つ。敵は味方です。後は自分で動いて、未知を知りましょう」

 

 

 

 

 




補足

鎌鼬
何もない場所で皮膚を切り裂かれるという事象を起こす妖怪。
切り裂かれた皮膚からは血は一切出ない。
ある一説では血を吸っていると言われている。

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