ハリーポッター マホウトコロの陰陽師   作:猫舌猫目

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みぞの鏡

 スネイプ、安倍灯葉が暗闇に消えた後、ハリー・ポッターは透明マントを脱いだ。

姿を現したハリーは冷たい風に当たりながら、先ほどの灯葉の言葉を考えていた。

 

「トウハは何を知っているのだろうか」

 

 ハリーは考える。

 スネイプはトロールの時、3頭犬に近づき、怪我をした。対抗戦の時、スネイプは呪文を唱えて、僕を落とそうとした。

 クィレルはどうだ……トロールの襲撃知らせて、気絶した。対抗戦の時、何やら、大騒ぎをしていたらしい。

 クィレル、スネイプの間に何あったのだろうか………

 

「いいや、トウハに聞けばいいだけの話じゃないか」

 

 ハリーは考えを振り払うように頭を振るう。

 振るう時、何かに気づいたのか、振るう頭を止めて、廊下を歩いていく。

 ハリーの歩く先には鏡があった。その鏡は誰もが見ても古臭く、ホコリの臭いを感じられる。

 

「なんでこんな所に鏡が?」

 

 鏡の枠には彫刻が彫られており、そこには『erised of mirror』と彫られていた。

 

「何だろう?」

 

 鏡のホコリを拭う。なんともない普通の鏡だ。僕が映ってるだけだ……

いや、鏡の中、映ってる自分の両方隣に誰かが映っている。

 隣には女性が映っている。女性は僕に向かって微笑んでいる。もう一方の隣には自分とよく似た男性が映っている。男性は女性と僕に向かって、見守るような目をしている。

 

「もしかして、母さん?父さん?」

 

 鏡に映る二人はハリーの返事に答えるかのように頷き、ハリーの肩に手を置く。ハリーは自分の肩を触る。しかし、肩には置いている手はなく、さらには自分の隣には誰もいない。

 しかし、鏡を見ると確かに映っている。

 

 初めて見る親だ。この姿を誰かに見せたい。そうだ…ロンに見せよう。

 

 ハリーはロンの所に急いで向かう。今自分がみた両親を見せる為に。

 

 しかし、ロンに見せたが、ロンにはハリーが見た両親の姿は見えていなかった。ロンには寮対抗戦の優勝姿しか見えていない様子だった。ロンは鏡に映った自分の姿に喜び、寮へと帰っていった。ハリーはその帰り姿をただ見送るだけだった。

 

 ロンを見送ったハリーは鏡の前に座り、鏡をずっと見ている。時折、鏡に映る両親に手を伸ばしたり、両親に話しかける。

 その時、ハリーの後ろから声がする。

 

「ハリー」

 

 後ろから声をかけたのはダンブルドアだ。ダンブルドアに話しかけらたハリーはダンブルドアを見るが、鏡から目を離したくないのか、すぐ様に鏡を見る。

 そんなハリーに対し、ダンブルドアは優しく説く。

 

「それがみぞの鏡じゃ。映る人物の欲望、望みを鏡が映してくれる。もし、世界一の幸せ者がこの鏡の前に立ったなら、そこには今、あるがままの自分が映し出されるじゃろう」

「この鏡に魅せられて、自分を見失ったり半狂乱になった人間が沢山いたのじゃ」

「ハリー。この鏡はもう他の場所に移すとしよう。夢にふけって生きることを忘れてはならない」

 

 ダンブルドアの説く言葉にハリーは俯き、何も言えずにいた。鏡からやっと目を離して、ダンブルドアを見る。ダンブルドアは優しく温かい目でハリーを見ていた。鏡に映る両親の温かい目とは違う本物の目だ。その目を見たハリーは自分の寮へと帰っていく。しかし、夢から覚めたくないのか、1歩1歩進んでいった。ダンブルドアはその姿にただ見守るだけだった。

 見送ったダンブルドアは鏡を触れ、目を瞑りながら、呪文を唱える。

 

―ディミヌエンド 縮め―

 

 鏡は縮み、手のひらサイズとなる。ダンブルドアは小さくなった鏡を拾い、校長室へと向かう。

 校長室で待っている人物の元に。

 

 

 

 場所は変わり、校長室。

 

 校長室では灯葉が待っていた。灯葉は椅子に座り、優雅にティーカップでお茶を飲んでいた。ダンブルドアが来ると、ティーカップを机で置く。

 ダンブルドアは小さくなったみぞの鏡を元のサイズに戻して、灯葉の前に置く。

 灯葉はみぞの鏡を好奇心の目で見る。鏡に映っている自分を確認しようはせずに。鏡を見ながら、ダンブルドアに尋ねる。

 

「これがみぞの鏡ですか?」

「そうじゃ」

「望み、欲望が映る鏡、だからみぞの鏡」

 

 灯葉はようやく鏡に映る自分を確認する。鏡に映った自分に灯葉はただ見つめる。

 

「へぇ興味深い鏡ですね」

「どうじゃ?その映った自分の姿は?後悔?それとも罪深い欲望が映っておるかのう」

 

 灯葉はダンブルドアに向けて唇の上に人指し指をくっつけ、言う。

 

「女の秘密です」

「そうか。残念じゃ」

「さて、確認ですが、みぞの鏡に賢者の石を封印する。その封印方法は望む者に対し、絶対に手に入らないという方法でいいんですね」

「そうじゃ。封印してくれるかのぅ」

「了解です。その代わりにニコラス・フラメルに私を紹介する事を忘れないでくださいね」

「もちろんじゃ」

 

 灯葉はダンブルドアの了承の返事をもらった後、錫杖を取り出す。錫杖で床を叩き、鳴らす。

 

石鋳型(いしいがた) 鏡作部(かがみつくりべ) 石凝姥命(イシコリドメ)   ―

 

 灯葉が唱えると灯葉の前に立方体の石が現れる。その石は徐々に罅が走る。石は罅に耐え切れずに石は砕ける。石の中からは鏡が現れる。鏡は円の形をしており、灯葉が持てるくらいの大きさだった。

 灯葉はみぞの鏡の前に鏡を浮かせて、みぞの鏡に作った鏡が映るように置く。

 

「合わせ鏡。鏡には別世界が映ると言われています。もしくは別世界の入り口とも言われています。こうする事で鏡の中、別世界に封印します。鏡の間に賢者の石を入れてください」

 

 ダンブルドアは賢者の石を鏡の間に入れる。 

 灯葉は賢者の石を入れたのを確認し、呪文を唱えようとするが、何か思いついたのかに灯葉はダンブルドアに話しかける

 

「ダンブルドア校長。言葉ってどう思いますか?」

「それはどういう意味じゃ?」

 

 灯葉はその質問を待っていたかのように口角を上げて、話す。

 

「望み鏡の『望み』を反対にすると、何の意味を表さない」

「みぞの鏡。聞いた時は私は溝の鏡だと思いました。心の溝を埋める鏡。だから、みぞの鏡。」

「それがどうかしたのか?」

「反対から読んでも、ただ読んだだけでも意味は通じる。これは偶然か必然どちらなんでしょうね?溝があるから望むのか、望むから溝があるのか」

「偶然だろうじゃろうな」

「そうですね。しかし、必然だったら、これほど面白い物はないでしょうね。さて始めます」

 

 灯葉は錫杖を持って、呪文を唱える。

 

―石求む されど入らず 魚網鴻離(ぎょもうこうり)

 

 呪文が唱え終わると、先ほど作られた鏡が光りだす。光に誘惑されるかのように賢者の石は作られた鏡の方に吸い込まれていく。

 鏡は賢者の石を吸い込んだら光は徐々に消えていく。鏡には賢者の石が映っている。しかし、みぞの鏡に映っている鏡、また鏡の間には石はない。

 

 ダンブルドアはただ静かに見守っている。灯葉は成功したと確信しているのかティーカップに残っていたお茶を飲んでいる。

 灯葉がティーカップに口に近づけた瞬間、今度は溝の鏡が光りだす。光はつららを作るかのように鏡の方にに伸びていく。光のつららが作られた鏡に触れて、鏡に光の道が出来る。光の道に賢者の石が移動していく。移動先はみぞの鏡だ。

 賢者の石はみぞの鏡に入っていく。入る瞬間、鏡は水面のように波立ちながら入る。入ると同時に光は消えていき、作られた鏡は徐々に崩壊していく。

 完全にみぞの鏡に入った瞬間、鏡の光は完全になくなる。鏡は完全に崩壊し、砂のような粒になり、夜風に消えていく。

 灯葉はダンブルドアに向けて、話す。

 

「封印は終わりました」

 




蛇足:間違っていたらすみません

石凝姥命:八咫鏡を作った神様
魚網鴻離:求めるものが得られず、求めていないものが得られるたとえ。

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