ハリーポッター マホウトコロの陰陽師   作:猫舌猫目

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ハロウィーン

 草木も眠る丑三つ時、グリフィンドールの女子寮のベランダの手すりに座っている人物がいる。

 その人物の腕にはフクロウが止まっている。フクロウは金色の目をしており、じっと見ていると月を彷彿させるような色をしている。

 フクロウはじっとその人物を見ている。

 

「そうですか。目撃情報もなしですか。ただ錯覚呪文使われた事は分かってるんですね」

 

―そうね。今度は何を探るの?―

 

「次はその日、ホグワーツの先生がダイアゴン横丁にいたかどうか調べてください。期限は次の夕食までです」

 

―分かったわ。我が主―

 

 そして、フクロウはホグワーツから飛び立っていく。その人物はフクロウが飛び立つのを確認した後、静かに自分の寝床へと戻っていった。

 

 

 

 

 夜が更けていき、本日はハロウィーン。

 夕食時の大広間は派手に飾り付けられている。広間を照らしている蝋燭の代わりにジャック・オー・ランタンが広間を照らす。

 テーブルの上にはカボチャを贅沢に使った料理がズラリと並んでいる。いつもよりも豪華な食事になっているおかげか、生徒達は料理に舌鼓みし、盛り上がっていた。

 

 ハリー・ポッターも盛り上がっているかと思えば、少し沈んでいる。

 なぜなら、いつも周りにいる安倍灯葉、ハーマイオニー・グレンジャーがいないからだ。ロン・ウィズリーはハリーの隣にいるが、自分の気持ちを誤魔化すかのように次から次へと口に料理を運んでいる。

 

「いいよ。もうあいつの事なんか。トウハもハーマイオニーを置いてさっさとどこかへ行ってしまったし」

「けど、ハリー、ロン。僕は2人が心配だよ。食事だけでも取っておこうよ」

 

 ロンは気分を切り替えるかのようにかぼちゃパイを豪快に口で嚙み千切る。

 ネビルは2人が心配なのか、ハリー達の会話に入り、かぼちゃパイなどの料理を別皿に分けていく。ロンはそんなネビルを見て、迷った顔をして手伝う。

 ネビルに対してはトウハの為だからなと言っているが、時折、ロンは大広間の扉を見ていた事はハリーとネビルは知っていた。

 

 ハーマイオニーは夕食前の授業中、ロンと呪文の唱え方で口論となる。ハーマイオニーは『ロンへのお手本』として呪文を成功させてしまった。さらに先生に褒められたものだから、授業が終わってからロンの機嫌は最悪になっていた。そのせいか、食堂へと行く途中、言葉を吐き捨てて言ってしまった。

 ハーマイオニーはそれを聞いてしまったらしい。聞いている事を知らせるかのようにハーマイオニーはわざとロンの肩にぶつかり、どこかへと行ってしまった。

 ロンはその時のハーマイオニーの横顔を見たのか、後ろめたい顔をしていたが、プライドが邪魔をしたのか、ハーマイオニーを追いかけずに食堂へと来てしまった。

 

 それに対し、灯葉は授業が終わると誰よりも一足早く、教室から出てしまった。ハリーが灯葉に呼びかけると用事があるという返事を残し、どこかへと行ってしまった。

 ハリーは横の空白となっている席を見る。そこにはいつも灯葉がいた。しかし、今日はいない。今日のハロウィーンはダドリー家がいない初めての日。いつも盛り上がっているダドリー家の横でぽつんとしていた。しかし、今回のハロウィーンはダドリー家から離れている。きっと楽しめるはずだと思っていた。しかし、何とも味気ないハロウィーンとなってしまったと。

 ハリーは溜息をつく。

 

 

 その頃、灯葉はどこかのベランダにいる。

 灯葉は月の色をした目のフクロウを腕に止めている。腕に止めたフクロウは灯葉を見つめ、灯葉に話しかける。

 

―ええ。そうよ。ノクターン横丁にくさい臭いを纏ったフードの男がいたらしいよ―

 

「なるほど。どうもありがとう。月神」

 

 フクロウは煙に包まれていなくなる。煙からヒラヒラと一枚の紙が舞い落ちる。

 灯葉はそれをしまう。

 

「さて、大体検討はついたし、夕食の前にトイレへ行きましょう」

 

 灯葉はベランダから出て、近くの女子トイレに向かう。

 曲がり角を曲がると、廊下の途中で立ち止まっているハリーとロンがいる。ハリーとロンは廊下の先の影を見ている。その影は人のような形になっている。

 灯葉はハリー達に声をかける。

 

「あの影がどうかしましたか?」

「!あ、トウハか。無事か。よかった」

 

 ハリーとロンは灯葉は無事と知り、安堵する。しかし、その瞬間、廊下の先に絹を引き裂くかのような女性の叫び声が聞こえる。ハリーとロンは急いで、女性の叫び声の元へと向かう。灯葉もハリー達に付いていく。

 女性の声が聞こえた場所は女子トイレだ。

 

 ハリー達は女子トイレに入る。

 女子トイレはハーマイオニーとトロールがいる。ハーマイオニーは逃げ回っていたのか、トイレの小部屋は全て壊されて、水管が壊されたのか、水が降り注いでいる。

 

 トロールはハリー達が来たことに気づいていないのか、ハーマイオニーに夢中だ。

 トロールは持っているこん棒を洗面台の下に隠れているハーマイオニーに振り下ろす。

 振り下ろす瞬間、ハーマイオニーは這いずって隣の洗面台の下に移動する。移動した瞬間、ハーマイオニーがいた洗面台はスクラップとなってしまった。

 ハリーとロンはハーマイオニーに声をかける。

 

「「ハーマイオニー!」」

「ハリー。ロン。トウハ!」

 

 ハーマイオニーはハリー達が来てくれた事に対し、嬉しそうに呼ぶ。しかし、ハーマイオニーはトロールから目を離してしまった。

 その間にトロールはこん棒をスクラップとなっている洗面台から引き抜いて、ハーマイオニーにこん棒を振り下ろす。ハーマイオニーは目の前にある死の恐怖で移動出来ずに身を縮める。

 ハリーとロンは叫ぶ。

 

 「「ハーマイオニー!」」

 

 

 

 

 

 

 しかし、こん棒はハーマイオニーを潰さなかった。ハーマイオニーの上、洗面台の上には亀の甲羅のような物があり、こん棒からハーマイオニーを守っている。

 亀の甲羅はこん棒くらいの大きさで、亀の甲羅からは足が出ており、洗面台を潰さないように前足は壁につけて、後ろ脚で立っている。トロールは亀の甲羅を壊そうとこん棒を振り下ろし、壊そうとするが、あまりの固さにこん棒ははじき返されて、トロールはよろめいて、壊された小部屋の方に倒れていく。

 亀の甲羅は壁から足を離して、床に足をつける。亀の甲羅から、亀の首、さらに後ろ足側の甲羅から蛇が出てくる。亀と蛇は倒れているトロールをじっと見つめている。

 

 ハーマイオニーは自分は死んだと思っていたのか、目を瞑っていた。しかし、衝撃が来ない事に不思議に思ったのか、恐る恐る目を開けて、亀と蛇を見る。

 

 ハリーとロンは後ろにいる灯葉を見る。

 灯葉は人指し指と中指をくっ付けて、目を瞑っている顔に近づけて、呪文のような言葉を唱えている。

 

―安倍清明の子孫の名の下、掛けまくも畏き。玄天上帝。姿を現し給うと恐み恐みも白す。― 

 

 ハリーとロンには灯葉が何を言っているのか分からなかった。

 灯葉は目を開けて、亀の甲羅を見る。

 

「水玄。トロールを倒してください」

 

 亀の甲羅は灯葉に応えるかのように動く。蛇が鞭のようにしなりながら、トロールの首元に向かっていき、噛みつく。

 トロールはうめき声をあげて、蛇を握ろうとするが、腕に力が入らないのか、ゆっくりとしか動かない。蛇を掴もうとする瞬間に腕は重力に負けて落ちていき、トロールは段々と目を閉じていった。亀はトロールが動かなくなったのを確認した後、煙に包まれていなくなった。

 ハーマイオニーは洗面台の下から出ていき、ハリー達に近づいて、抱き着く。

 

「ハリー!ロン!それにトウハ!ありがとう。助かったわ!」

「無事でよかった」

「無事でなによりです」

 

 その時、廊下から数人の足音が聞こえ、トイレの中に入ってくる。

 マクゴナガル先生、クィレル先生、スネイプ先生だ。

 マクゴナガル先生はハリー達を見て、怒気を含めて話し始める。

 

「あなた方はどういうつもりなのですか⁉︎

殺されなかっただけ運がよかった…

どうして寮に戻らずにこんな所にいるのです?」

 

 ハリーとロンは怒っているマクゴナガル先生を見て何も言えない様子だ。それを見たハーマイオニーはハリー達の代わりに弁明する。

 

「マクゴナガル先生、3人とも私を探しに来たんです!私、トロールを1人でなんとかできると思って。本で読んで知ってたから…でも、ダメでした。もしみんなが私を見つけてくれなかったら、私今頃死んでました。3人とも人を呼びに行く時間がなくて、見つけてくれた時には殺される寸前でした」

 

 ハリーとロンはハーマイオニーが言ってくれたことに、その通りだという体を装った。

 

「ミス・グレンジャー、たった1人でトロールを捕まえようなんてどうして考えたのですか。グリフィンドールは5点減点です。あなたには失望しました」

「あなたたちも、時間が無かったのはわかりましたが、監督生や先生に伝えてから行動に移しなさい。しかし、大人のトロールに対抗できる1年生はそうざらにはいません。1人5点ずつあげましょう。その幸運に対してです。」

 

 マクゴナガル先生は最後の方を強めに言う。

 

「さて、あなた達は寮に戻りなさい。アベ。貴方もトロールから離れて寮へ戻りなさい」

 

 安倍灯葉はハリー達が会話してる合間に倒れているトロールの体を触り、観察していた。

 

 

 ハリー達は小さく返事をして、トイレから出ていく。誰も喋ることならず、また。ロンとハーマイオニーは距離を離して、寮へと戻っていく。

 寮へと戻るとロンは申し訳ないような顔をして、ハーマイオニーに話す。

 

「ええっと、ハーマイオニー。ごめん。あんな事言って」

「ううん。こちらこそ。今日は助けてくれてありがとう」

 

 ロンはハーマイオニーに謝罪を伝え、ハーマイオニーはハリー達に助けてくれた事に感謝する。

 そうしてハリー達はネビルがちゃっかりと大広間から2人の為に取っておいた料理を寮に運んでいた。

その料理でハリー達はパーティーを再開していた。

 

 ハリーは料理が少ないながらも安倍、ロン、ハーマイオニーが仲良く食事をしている風景を見て、トラブルもあったが、こんなハロウィーンも悪くないと思っていた。

 

 

 

 

 

 

  

 


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