アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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第51話 カワイイボクと文明の利器

第51話

カワイイボクと文明の利器

 

 

 あれから部屋に帰ってきて弁当等を食べ終え、ひと段落ついた俺と幸子は部屋でテレビ番組を見ていた。

 あれ? 部屋にテレビなんてあったっけ? そうなんです、テレビは無いんですが代わりになるものがあったんです。

 という訳で暇になると思われていた食後の空き時間だったが、俺と幸子はパソコンのワンセグ機能を使い、適当にテレビを見ていた。

 

「凄いですよねぇ……今はパソコンでテレビが見れる時代なんですから」

 

「こりゃあN〇Kも集金必死になるわな」

 

 今かけているチャンネルでは、とあるバラエティ番組がやっている。内容はアマゾン川に住む巨大魚を追え、的なよくある内容で、食事を食べた後の思考停止した頭には丁度良い感じだった。

 因みに画面には船に乗った日本の芸人と、現地のガイドが映っている。

 

「それにしてもテレビも飽きませんよねえ、似たような内容の物ばかりやって」

 

「飽きるも何も、そんなもんだろうテレビなんて。まあだから、最近はテレビを買わないでパソコンだけ買う人が増えてんだろうけどな」

 

「え、増えてるんですか?」

 

「ああ。最近はテレビよりネットの方が面白い話やネタも腐る程あるし、それに見ようと思えばこうやってパソコンがテレビ代わりになるパターンもあるから。だから、必然的にテレビの需要は年々減ってきているらしいな」

 

 実際の所、俺もそうである。最近は家に居ても朝のニュース位しかテレビを見ないし、そんなテレビでみるニュースですら今の時代はスマートフォンで見れると聞く。

 ある意味テレビ業界が番組編成とかを変えたりして、必死に視聴者を引き留めようとする気持ちもわからなくもない。

 

「あっ、CM……」

 

 と、テレビは肝心な場面でCMに入ってしまった。部屋では俺と幸子のため息が漏れる。

 

「あるある、こういう良いところでのCMカット」

 

「こういうのってなんだか、どんなに面白い番組でも冷めてしまいますよねぇ」

 

 丁度番組では巨大魚を見つけた様なカットだったのだが、果たしてその正体は、とまでやってCMに入ってしまったのだ。なんだか色々とモヤモヤする。

 

「よし、それならこんな時こそパソコンの真価を発揮する時だ」

 

 俺はワンセグ機能を閉じ、パソコンの検索機能を開く。

 

「Go〇gle先生に アマゾン川 巨大生物 で調べてもらおう」

 

「そうでした! これはテレビじゃなくて、そもそもパソコンなんですから調べ物も出来るんですね! すごい便利です!」

 

 俺は画面に『アマゾン川 巨大魚』と自慢のタイピングで打ち込む。すると画面には丁度テレビでやっていたその巨大魚と思われる物の詳細が出てきた。

 

「なになに、名前をピラルク、大きさは……3m弱!?」

 

「それもう、川に住む魚のサイズじゃないですよね……」

 

 3mといったら俺と幸子の身長を足したのより少し小さいくらいだ。そんなでかい魚が日本の川にうようよ居たら、簡単に川の流れが塞き止められるぞ本当に。流石は南米大陸、陸もでかけりゃ川もでかい、そして魚もな。

 因みに体当たりで小船を転覆させたり、最悪人を殺せるとも書いてある。いや、確かに3mもあればバイクに追突されるのと対して変わらないし、人がぶつかったら死ぬのもある意味納得か。

 

「もはや暴走車か何かかよ……」

 

「プロデューサーさんにも、これ位の勢いで仕事をしてもらいたいものですね」

 

「うるさい体当たりするぞ」

 

「中学生相手に体当たりとか事案ですよそれ……」

 

 さて、調べたいことも調べられたので俺は検索をやめ、再び番組を見る為にワンセグを開こうとする。しかしそこで俺は何故か幸子に止められた。

 

「待ってくださいプロデューサーさん。これって単語を打ち込めば、なんでも出てくるんですか?」

 

「まあ……存在する物ならある程度、常識の範囲内でな」

 

「ということはもしかして、ここにボクの名前を打ち込んだらボクが出てくるってことですか?」

 

「うーむ……流石に今は出てこないと思うぞ。それこそ売れてくればウィ〇ペディアとかに詳細が書かれたりするんだろうが、仮に今は多分346プロのホームページにある、所属アイドル一覧のお前が出てくるだけだろうな」

 

「ま、まあ細かいことは良いんです! とりあえず打ち込んでみましょう! ものは試しです!」

 

 そう言い幸子が一向に引く気配が無いので、仕方なく俺は再びGo〇gle先生に頼むことにした。

 俺は検索画面に輿水幸子と打ち込む。

 

「輿水……幸子……っと!」

 

 ッターンと軽快なエンターキーの音が部屋に鳴り響く。幸子はその様子を興味津々の小学生の様な純粋な瞳で眺めていた。

 

「なんだ、パソコンとかはあまりいじらないのか?」

 

「ボクはあまり使いませんねえ。最近は世間的にも、スマートフォンの方が主流ですから」

 

 そうか、最近の子達は全てスマートフォンで解決だもんな。俺からするとあのフリック入力とかいう奴が全く分からないが、幸子達若い世代は逆にキーボード入力の方が珍しいのか。

 しかし、これがジェネレーションギャップというものか……体感すると中々に来るものがあるな。

 

「さあ、そんなことよりボクは出ましたか? ちゃんとカワイく写ってます?」

 

「まあまあ焦るな幸子、今確認……」

 

 検索結果を見ると、そこには恐らく幸子とは無関係な人についての説明と思われる記事が沢山あった。そして、よく見ると上の方に小さくこうあった。

 

『もしかして? 小〇幸子』

 

 はい完全に某大物演歌歌手です本当に、本当にありがとうございました。まあそうか。同じ幸子だし、認知度的に検索結果がこうなるのは明らかだったな。

 

「どうです……どうです?」

 

 幸子は結果を早く見たいがためにいても立ってもいられなくなり、パソコンを操作する俺の手を掻い潜って画面と俺の間に割り込んできた。顔も近いし、なんだか色々密着してるし、幸子の髪からは華やかな良い香りがしてくるし……なんだか色々おかしな気分になりそうだ。

 と、いかんいかん、中学生相手に何を考えているんだ俺は。

 

「あー幸子、そこに来られると俺が画面、見えないんだが……」

 

「えー……なになに、もしかして? 小〇幸子……って何ですかこれ!! 確かに幸子ですけど!!」

 

「……仕方ないだろ、これが世間一般の認知度の差だ」

 

 考えてみれば認知度も何も、そもそも輿水幸子というアイドルの存在を今知っているのは、俺みたいなごく限られた一部の人間だけだろうな。活動すらろくにしていないのに出てきたら、それはそれで驚きだ。

 

「なんかもっとカワイイボクについて調べられる方法とかは無いんですか? プロデューサーさん!」

 

「そうだな、そんなに言うならじゃあ、あんまり意味は無いと思うが色々試してみるか……」

 

 という訳で俺は幸子の依頼で、幸子についての記事を検索結果に出すべく色々やってみた。検索日時の絞込み、輿水と幸子の間のスペースの削除、他346プロ等のワードを入れてみる等様々なことを試す。

 

 さて、それから数分。そうして色々奮闘した結果が以下である。

 

 

 

 

『検索結果 2』

 

 

 

 

 なんとびっくり仰天、出てきたのである。

 まあそのうちの一件は俺の予想通り、346プロのアイドル紹介記事だったが、ということは残りの一つは何なのだろうか。

 

「プロデューサーさん流石です!」

 

「なんだ、意外とあるもんなんだな」

 

 とりあえず俺は最初に出てきた346プロのホームページの奴を開く。そこには様々な登録されているアイドルの写真と共に、プロフィールと活動報告の様な欄があった。

 

「へぇ、ボク達はこうやって紹介されているんですか……」

 

 一応まだ幸子の活動報告の所には活動無しとなっているが、様々なアイドル達の中に幸子が居る、という事実だけでも俺は我が子のことのように嬉しかった。ただ、やっぱり写真がドヤ顔気味なのはいつも通りか。

 

「あ! 見てくださいプロデューサーさん、美嘉さんや飛鳥さん、乃々さんもちゃんと居ます!」

 

「おお、本当だな」

 

 しかし、それにしてもみんな相変わらずだな。

 美嘉は流石元読者モデル、手馴れた感じで写っていて良い感じに写真映えしている。そして同じく飛鳥も、自分を表現するのに自信があるのか、相変わらずクールにカッコよくキメている。乃々は……何だか画像なのに、今にも画像の外にフェードアウトして行きそうな感じだ。頑張れ。

 

「なんだか不思議な感覚ですよねぇ……自分達をこうしてネットで見るっていうのは」

 

「確かにな。写真に写っている人達はどこか遠くの人な感じがするが、今まさにそこに居るんだから」

 

「フフーン! サインなら書いてあげないこともないですよ?」

 

「遠慮しておきます」

 

「ふーんです! ボクがこれから有名になったとしても、もうプロデューサーさんにはあげませんからねーだ!」

 

 そんなこんなで特に見る内容も無くなったので、俺は346プロの公式サイトを閉じ、再び検索結果のページに戻った。そして俺は、気になっていた残りのもう一つの方を見てみることにする。

 

「これは……誰かのブログみたいですねぇ」

 

「確かに、だが幸子とは一見関係なさそうだが」

 

 どうやらブログを少し見てみた感じだと、このブログの主はアイドル好きの様で様々なアイドルのライブに行っているようだ。そしてそのライブに行った時の感想等が沢山書かれている。

 と、俺は何の気なしに見ていたらその中に一つ気になる見出しの記事があった。

 

 

 

 

『カリスマJKアイドル』

 

 

 

 

「これはもしかして……美嘉さんについての記事でしょうか?」

 

「それっぽいな。折角だし、ちょっと見てみるか」

 

 俺はタイトルをクリックしてその記事を開く。そうして出てきたその記事の内容はこうだ。

 

『先日、私はカリスマJKアイドル城ヶ崎美嘉の野外ライブに行ってきました。ライブの内容自体はいつもの美嘉ちゃんのライブと同じで、最後まで観客を飽きさせないパワフルでキュートな最高のパフォーマンスでしたね』

 

「ああ、やっぱり美嘉さんについての記事みたいですね」

 

「すごいな、これが世間的認知度のあるアイドルってもんなのか」

 

 インターネットのブログ等でこうやって話題に取り扱われる、というのは小さいことに見えて実はかなり大きいことである。それもブログなどに書かれるとなれば、仮にうちらみたいにこのブログに来た人には大きな宣伝となる。それに、普通に嬉しいよな。

 

『さて、そんな美嘉ちゃんのライブですが、今回はちょっとした出来事がありました。どうやら彼女のライブを手伝いに後輩のアイドルが来ていたらしいのですが、その後輩アイドルの子を美嘉ちゃんはサプライズで呼んであげたのです』

 

「これってもしかして、ライブはライブでもこの前ボク達が手伝いに行った『あの』ライブについての話じゃないですか?」

 

「確かに……後輩アイドルのサプライズ、とか書いてある辺りそれっぽい様な気がするな」

 

 あのライブ、つまりは俺と幸子が初めて美嘉と出会った一昨日のライブのことだ。つまりこの人はあの場所に居たということだろうか。

 

『その後輩アイドルの子、確か幸子って名前の子だったんですが、その初々しさが実に可愛かったと言うか、その……なんだか分からないんですけどとにかくすごく可愛かったんですよ』

 

 なるほど、これでどうやら一昨日のライブで確定したな。あと幸子について検索してこのブログが出てきた理由は、つまりこういう事だったのか。

 まさかそのライブのメインじゃない、ただの後輩アイドルにすぎなかった幸子にまで目を向けて記事を書いてくれるとは、この人には頭が上がらない。

 

『それでその後インターネットで調べてみたんですが、どうやら美嘉ちゃんと同じ事務所の輿水幸子って子らしいです。まだデビューして二週間ほどとのことで本当に新人さんなんだなと』

 

「凄いな、この人はそこまでちゃんと調べてくれているのか」

 

「可愛い……ボクが……?」

 

「ん? どうした幸子?」

 

 幸子にしては珍しく、自分が可愛いと言われることに対して疑問を抱いているようだった。

 普通ならやっぱりボク、歌わなくても少し喋るだけで誰かを惚れさせるくらいカワイイんですね! とか言い出しそうなものなのだが……まさか、熱でもあるのだろうか?

 

『まあ、そんな訳で勝手ながら私、その子のちょっとしたファンになってしまいました。まだまだこれから先も長い子だと思うので、この記事を見ている人が居ましたら是非、彼女のことを応援してあげてください。とりあえず初出演のライブとかがいつになるのかはまだ分かりませんが、今度は彼女自身の歌声を聞いてみたいですね』

 

 気が付くと幸子はいつにも増して真剣にその文を読んでいた。何か心に響くことでもあったのだろうか、やはりノーリアクションでまじまじとその記事を見ている。

 

「どうした、幸子。なんか気になることでも書いてあったのか?」

 

「プロデューサーさん。ボク、今アイドルをしているんですね……」

 

 幸子は突然真面目に話し始める。そのいつもなら有り得ない様子に俺は本当にただ事じゃないと思い、幸子の額に手を当てた。しかし熱は無く、普通に人肌の温もりだった。

 

「ちょっ、いきなり何するんですかプロデューサーさん! 女の子の額にいきなり手を当てるなんて!」

 

「わりいわりい、いきなり幸子が真面目な雰囲気を醸し出したから、熱でもあるのかと思って」

 

「それってどういうことですか!! ボクはいつもいつでも、至って真面目です!!」

 

 はい幸子のだだっ子パンチ定期。これってもしかして、脳がキャパシティオーバーした時の彼女なりの冷却手段か何かなのだろうか。だとしたら実に可愛いな。

 と、幸子は突然手を止める。頭の冷却が治まったのだろうか、俺は再び幸子に聞き直す。

 

「で、どうしたんだ?」

 

「べ、別にどうしたもこうしたもありませんよ。ボクは正常です!」

 

 しかし幸子は正常と言いつつ言葉を続ける。

 

「まあ、そのー……ただ……」

 

「ただ……?」

 

「や、やっぱり見ず知らずの誰かに可愛と褒められるのは、普通なことの様で、結構意外と嬉しいことですねぇ……」

 

 何故幸子がここまで考え込んでいるのか、と思ったがそれもそうか。そもそも彼女が『面と向かって会ったことの無い第三者』から可愛い、と褒められたのはこれが初めてか。

 気がつくと幸子は一瞬だけだが笑顔を浮かべていた。だが良く見ると自分の手を握りしめている。

 恐らく幸子はこの一瞬で、その誰かに可愛いと言われる、という事に対して嬉しさやプレッシャー等、様々な感情を抱いているのかもしれない。そう俺は思った。

 

「……まあ幸子、色々後々のこととか思うこともあるだろうが、今は素直に喜んどけ。初めてのファン、おめでとう」

 

「……そうですね、分かりました!」

 

 俺が一言声をかけると、幸子はいつもの調子を取り戻した。こうやって気分の変わりが早いのも、こういう場面では意外と悪いことでも無いのかもな。

 

「でもプロデューサーさん、今の発言はちょっと違うと思います」

 

「ん? どこがだ」

 

「前にも言いましたが、カワイイボクのファン一号はプロデューサーさんです。だから今回は、第三者としてのファン一号ですから!」

 

「……はいはい、そうだったな。撤回しますすいません」

 

「フフーン! よろしいです!」

 

「まったく、一々注文や指示が多いアイドルだこと……」

 

 というわけで、俺達はインターネットの検索を終えると、再びパソコンのワンセグをつけた。そして先程のチャンネルをかけると番組は終わってしまっていて、結構時間が経っていたということを確認した。やっぱりネットサーフィンをすると、時間が経つのが早いな。

 とりあえず、幸子もパソコンの検索機能や、その検索結果に満足してくれた様なので良かった。俺もなんだか担当アイドルが可愛いと言われて、少し上機嫌である。

 世界よ、どうだうちの幸子は。いずれ日本のアイドル業界のトップに立つ、最高にカワイイトップアイドルは。

 

 いやもっとも、俺からすれば幸子は可愛いくて当たり前なものなんだがな。




因みにGoogle先生に幸子と打ち込むと一番最初に輿水幸子のpixiv百科が出てきます。やったね!

あと主はまだデレマスのライブを生で見たことはありません。
小規模でもいいからいつか見てみたいなぁ……


次回、幸子とプロデューサーがイチャイチャします(作者も幸子とイチャイチャしたい)
なおデレステのポジパイベ優先するため遅れるの承知されたし(ランキング報酬ポイントで貰えるようになっていたなんて知らなかった……)

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