ソードアート・オンライン 白い罪人   作:かえー

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見放されたもの

その送り主は…かつて共に戦っていた仲間のミラだった…フレンドリストを確認すると、一人だけプレイヤーの名前が。メッセージはフレンドでないと送れないはずなのだ。まだ、つながりを得ていなかったことに軽い恐怖を感じる。メールの内容を確認してみた。

 

『お前と話がしたい。指名した場所に来い。』

 

メールには添付画像が書いてあり、そこには何もしかけもないフィールドが描かれていた。俺はいつでもオレンジプレイヤーなので一応配慮はしてくれたのか、俺は怪しみながらそこに向かうことにした。が、前回も言った通り回路結晶が尽きたために歩いて向かうしかなく、ゆっくりと向かうことにした。

はじまりの街から歩いて第十層の途中、第五層を歩いているとき、またモンスターに出会った。今は何とかスライムかリザードマンなら倒せるようになったが、目の前にいるのはその類ではなかった。目の前にポップされていたモンスターは…ビッグスパイダーとペネントだった。うねる触手と飛びつく糸、恐怖に俺は絶叫し、疲れたことを忘れ、フィールド内を全力で駆けまわった。朝早い出来事なので、運よくほかのプレイヤーに見られることがなく事を収めれると思う。モンスターのレベルを確認したら、多分俺より低いはずだが次奴らの姿を見れば、俺の体がマヒして暫く立ち上がれなくなるだろうモンスターが諦めるまで俺は全力で駆けた。

すると、後ろで何かはじけ飛ぶ音がした。プレイヤーも巻き込んだのだろうか…それならすまなかった。だが、これだけは俺の犯行じゃない。モンスターのせいなのだ。恐る恐る後ろを確認してみた。直後、俺は絶句する。俺の目に映ったのは俺の予想をはるかに超えていた。昨夜、俺をキルしようとした少女だったのである。

その少女は昨日と同じ目つきで立っていた。が、何故か殺意は全く感じられない。モンスターが消えたことに安心し、とりあえず呼吸を整え彼女を見た。暗くて見えなかったベージュのポンチョにショートパンツの装備、やっぱり低い身長、彼女は確実に大人ではない気がする。彼女は俺に近づいてきた。殺すつもりならまた対応して逃がすつもりだが…彼女はそんなつもりはなさそうだった。

 

「き、昨日は…これ、ありがとうございました。その…」

 

「気にすんなって、俺はこんな事してんだから殺されそうになるのは当たり前だろ?」

 

「その…私仲間がいないんです…」

 

…ん?なんだって?急いで彼女のステータスを見てみるが、ギルドに所属していない。なんてこったい、こいつは昨日あの集団ギルドのメンツではなく、はぐれで俺を殺しに来たのか…度胸はあるな。

 

「もしもの時に使えよ…これは俺からの和睦品だ。」

 

「ち、違います…その……私と一緒にパーティ組んでくれませんか?」

 

「い、いや…俺はオレンジプレイヤーだから、お前も狙われる…やめとけ。しかも俺には行く場所があるからな。」

 

「そんな…どこに行くんですか…?」

 

「ちょっと知り合いに呼び出されてな。第十層に。」

 

「だめです!!」

 

急に手を引っ張られ、俺はバランスを崩してしまう。何すんだと怒鳴りたかったが、相手は子供だ。一息飲んで我慢した。何故と聞き返すと。神妙な顔つきで俺に話してくる。

 

「この一週間のいづれかの日に第十層にレッドプレイヤーリンネを引きずりだす。ここで討伐に成功したら手配金を倍額払う!!っていうことがギルド解放軍から通知されているんです…送り主は?」

 

「ミラっていう普通のプレイヤーだけど…」

 

「その人…解放軍のサブリーダーなんです…!キバオウって人と二人で何かしている人なんです!!」

 

聞いたことがある…キバオウは確かビーターという単語を初めて発し、その後解放軍の前身、ギルド開放隊を設立した男…そこにミラは所属している…約束なんてはなっから守るつもりねぇじゃねぇか…が、彼女も怪しい。これがデマだったら俺はミラの怒りを買い、敵を増やしてしまうきっかけになってしまう。悩む。

 

「まだ、ミラさんにはリンネさんのメッセを受け取らない限り場所を特定できていないと思います。返信せずにフレンドを解除した方がいいと思います。」

 

「本当か?腹いせで俺殺そうとしているんじゃないのか?」

 

二人だけのこのフィールド、お互い譲らず相手をじーっと見つめる。打開策はないものか…まともに休めていないためにため息がつい漏れてしまった。

 

「あら…リンネじゃないか。平和にしているねぇ…そこの子は」

 

「「バラ!」」「さん!」

 

そこに立っていたのはバラだった。不思議そうに俺らの顔を見てくすくす笑う。そんなに不思議なのだろうか…そんなことより俺は一つ気になり、第十層のことについて質問した。囚人達をまとめ上げているからもしかしたらと思い賭けてみた。

 

「第十層…あぁ、解放軍だろう?リンネ、この少女が言っていることは本当だ。十層には様々なプレイヤーが配置していて、まるで何か狙うような目つきだったよ。」

 

「なら、こいつは信用していいんだな?」

 

「私が言うんだ、いままでお前に嘘をついたことがあるか?」

 

それが嘘なんだけどな。とりあえずバラと彼女を信じ、ミラとのかかわりを完全に切った。もちろん返事など返ってくることはないが、また俺から何かが消えていった気がした。

俺たちはバラと別れた後、歩いて第四層まで戻った。歩く途中に自己紹介をし、彼女の名前はアモネということが分かった。彼女が俺のカルマクエストを手伝ってくれたおかげで久しぶりにグリーンに戻ることができた。が、町の観衆の目にはオレンジプレイヤーに映ったらしく誰も俺に返事してくれない。古びたカフェに入り、俺はコーヒー、彼女はココアを注文した。時刻は現実の休憩時間12時を指していた。

 

「ところでバラと知り合いなのか?」

 

「はい、あの人はだい20層で宿屋をやっているんです。ちょっと高いですけどたくさんの人が休めてとってもいいですよ?」

 

「へえ…意外だな。後、何故俺を殺そうとした?」

 

「え、えっと…」

 

アモネは周りをきょろきょろと見て、何か確信が持てたのか、俺に向き直った。

 

「元々、私は友達と一緒にこのゲームしていたんですよ。けどある日…白装束ギルドに殺されたんです。目障りだからと言われて…」

 

「白装束…だから俺を?」

 

「いや、白装束ギルドは私の仲間を殺して…街で合う度私を脅してくるんです。だから、やめてほしいって言ったら、100万コルで見逃してやるって言われて…そんな大金もっているはずないからクエストを探していたらリンネさんが指名手配されていたから…」

 

「だから俺を殺りにね…なるほど。」

 

かなり困った要件である。彼女は白装束のギルドに狙われている。一応彼女のレベルは50だが、考えるに体格やレベルでアモネを上回っているのだろう。が、俺がこの件に関与すると彼女の今後を狂わせてしまう。死神ととも行動した死女神とか言われたらどうしよう。考えただけで頭が痛くなりそうだ。無駄な殺生を放っておけないが、放らないといけない事態に苦しんでいた。アモネはココアを飲みながら外を眺めた。その顔には先ほどまでなかった寂しさが浮き出ていた。

 

このまま一日を過ごし、第四層で宿を取った。ここはなぜかベッドではなく布団だったのは不満があるが、スープやパンなど、久しぶりに生肉以外の食事をとることができ、非常に満足だ。

そしてその深夜アモネが寝たことを確認し、俺は宿を後にした。彼女の名誉を選択した。俺にはやっぱりだめだ…俺は仲間を失い、人望を失い、命を奪っているんだ。彼女を救うなんて、彼女を助けたら彼女に傷がついてしまう。死神なのに、心を傷つけることが出来ず胸につっかえる何かを持ちながら第四層を後にした。


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