ソードアート・オンライン 白い罪人   作:かえー

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無事に帰ってきたえさかです!今生きていることがとても嬉しく思い、今回の旅は今後の活動にもとても影響を与える気がします…
実を言うと今回は前回の次回予告と全く違うものとなってしまい次回、第27話で公開しようと思います。すみませんでした!!


生けとし謎の原石

どうも、友達が増えました隣音弥です。今俺は隔離部屋越しに心理カウンセラーの先生と対面して心理ケアを行っています。これは俺がここに来てから一週間ごとにある恒例行事であり狂気的な性格の俺を何とかケアして、社会生活に復帰させるそうだ。それが真意かは全く分からないが。が、正直疲れる。先生が可愛いから目の保養を…とはならずいつもカウンセリング終了後は床にひれ伏している。

 

今日もベッドまでたどり着くことなく残り1mほど届かず眠ってしまった。起きると時計は午後7時を指しており、冷めないうちに食事を食べる。珍しく今日の食事はオムレツだった。

 

「どーかね、いつもの俺の手作りの食事は?」

「お前起用なんだな…というか、いつも作ってくれていたのか!!どこで!?」

「学校の家庭科室を使って料理しているんだ。最近は根下さんも手伝ってくれててな。」

 

根下さんというのはアモネの名字で、『根下愛花(ねもとあいか)』という。あの日以来俺と面会してくれる時がありリアルであったことを話してくれ、今では俺の癒しの一時の一部になった。現実でも彼女は相変わらずショートヘアで背が低く、気持ち小学六年生に見える。そんな彼女のおすそ分けは毎回おいしく特にお菓子屋デザートの味は一度だけ食べたことのある高級レストランのデザートの味に似てとてもおいしい。食事の時間も面会の時間と同じくらい待ち遠しかった。

 

「今日はアモネは来なかったんだな…?」

「今日は忙しいらしく、料理だけ作ってあとはよろしくって言われてな…」

「なるほど。なら俺も今日はALOは休みかな。ゆっくり寝ると…」

「音弥!音弥!!会いに来たわよ!!ここからでましょう!!」

 

突然の訪問、俺は含んでいたお茶を窓ガラスにぶちまけてしまい、その勢いで窓ガラスの外を見る。訪問者は、顔に少ししわがあり茶色の髪にも白髪が混じっている。SAOの中でも見かけなかった人物だが…なぜ俺の名前を知っているのだろう。そのおばさんは俺が隔離されているドアを何度も開こうとするがドアは一向に開く様子がなく頑丈なロックによって閉じられている。おばさんは顔を真っ赤にして斧でドアを殴るが結局開かず、吹田が止めようにも斧を持つために止められない。

 

「あの…俺に何の用事が」

「あなたを!あなたを迎えに来たのよ!!この狭い世界から救いに来たの!!私がたくさん愛してあげる!!」

「…!!」

 

思い出してしまった。この声この姿…この愛。この前聞いた声と瓜二つだった。フラッシュバックされる記憶はすべて鬼の形相で俺に手を挙げる女性の姿。俺を見るたびイライラするといい殴り蹴り、時に斬られ時に焼かれた。それが俺は嫌でその女性にとって理想の僕を…俺は作り出した。その元凶の母親、『粟島照美(あわしまてるみ)』が目の前にいたのだ。

 

「あんたからもここを出るって言いなさいよ!ほら早く!!いつもお母さんのいうことを聞いてたでしょう!!」

「嫌なこった!俺はもうあんたの言いなりになんて…」

「音弥、あんた少し黙ってなさい。ちょっと警備員さんここに入れて。鍵持っているんでしょう?ほら早く」

 

吹田が首を絞められ悶絶する。母の手は筋肉が張っておりものすごい力がかかっていることがわかる。が、吹田も簡単に離しそうになく母はあきらめて吹田をごみのように投げ捨てた。そして置いていた斧で窓ガラスを破壊する。その顔は狂気染みており、まるであの世界にいたミラと同じ顔のようにも見える。また俺は負けるのか…残りの窓ガラスを割りきり、ゆっくりと部屋に侵入する母。ブザーが鳴るもののこんな数秒じゃ警備員なんて来ないし、たとえ外で待ち伏せしていても母なら抜けてしまうのだろう。絶望に落ち切ろうとしている俺を母は抱えて窓から脱走した。吹田は倒れながらどこかに電話しているが…その助けはたぶん受けずに終わるのだろう。さらに俺は絶望した。

 

「もうすぐ家に帰れるからね。もうあのゲーム囚われることなんてないわ。お母さんがきちんと育ててあげる。貴方が生きている間ずっと、死んでもね」

「…」

 

案の定学校の外に特殊部隊らしき鎧をまとった人が並んで俺たちを待ち受けるが、母は難なく潜り抜け校門外に連れ出す。学校を超えて街っぽい場所にも特殊部隊のような人たちが立ちはだかるが、俺を持っているからか母親に銃弾を放てず受け止める特殊部隊を母親は足だけで突き飛ばし突破する。そして残った左手で銃を拾い上げ弾丸を周辺に散らす。悲鳴を上げて倒れていく人たち。あの時の思い出がフラッシュバックし、俺の精神を蝕んでくる。今ぶら下がっている俺ができることは母を蹴ることだが、怖くて蹴られない。突如、母親から俺の体が離れ逆方向へ進んでいくものすごい力が腹に伝わり腹を抱えて悶絶する俺。母親は俺を追いかけて追ってくるが母が手を伸ばしたところで俺は意識を放棄してしまった。

 

気づけば部屋の中、目を覚ますと畳に寝ころんでいた。母の別荘だろうか、と思った時奥から緑色迷彩の戦闘服らしき服を着た人がこちらに近づき俺のバイタルをチェックする。指先や腕に機械が取りつけられその検査が終わったと思ったらおかゆを持ってきてくれた。

 

「あ、あの…ありがとうございます。貴方は誰ですか?」

「私には名前はありません。菊岡さんから命を受けALOの監視をしている者…〈仮想課〉監視兼潜入担当。VR-047KRS、コードネーム『クリス』」

「く、クリスさん…ですか。外国とかに??」

「日本には住んでいませんでしたね。元々は紛争の地域に住んでいた者です。」

 

勧められたおかゆを息をかけながら食べる。味は少し塩味が強めで適度にご飯も柔らかく今まで食べたおかゆでは一番おいしい。以前はところどころ焦げており、挙句の果てには適当に味付けされた真っ黒なおかゆを食べていたのでこれを食べている俺の口とお腹は幸せに包まれ目からは涙が流れる。

しかしこのクリスという人、男か女かわからないのだ。顔は見る限り女性に見える。刈上げにされた髪の上から髪が垂れており、声も女性にしては少しハスキー…というか低めであり筋肉質な体がまたどちらかわからなく、この状況を無駄に混乱させる。するとクリスは一緒におかゆを食べ縁側に座り口を開く。

 

「私に性別などありません。任務中(ここ)では性別なんて関係ありませんから。ですが私自身もどちらが本当の性別なのかわからず…任務外では少し困るときもあります。興味があるのですか?」

「い、いや…知らない人だからちょっと気になって…」

「私は生まれた時から『男』『女』らしく育ててもらわず、『軍人』として育てられ子供の時から銃を持ち大人と一緒に戦っていました。ある日私たちは負け、その国から追放されてしまいました。その時、誰か忘れましたが『その力を人を殺すことではなく人を守ることに使ってくれ』と言われて子の国で学校に行き学んで…今に至ります。その時に人を守るために、お前はこれから美しい石となる…という意味からクリスと名前を付けてもらいました。今はALOで監視官として働いています」

 

国の状況など子供の俺には全く分からないが、またクリスも俺と同じように閉鎖された育てられ方をしたのかもしれない。似た境遇を持つクリスに対し俺はすんなりと納得してしまう。と、今更ながら俺は何故どうやってここまで来て、しかも今はどういう状況でここはどこなのか…聞こうとすると全て見透かしたかのようにクリスは淡々と話す。

 

「先ほどか仮想課から観察対象の貴方が盗まれたと連絡を受け、粟島照美に盗まれた貴方を通りすがりに取り返しました。その後、私が住んでいた某住所の一戸建ての家で貴方を保護しています。粟島照美はもちろん取り返しに来ようとしましたがそれを利用して罠にはめました。今頃拘束され、特殊な牢屋に投獄されていると思います。なお、明日には貴方の身柄を学校に返そうと思います。」

「なぜ俺をそこまでして閉じ込める…これじゃ昔と変わらない生活じゃないか…!さっきから俺が盗まれたとか取り返すとか…一体俺のことなんだと思っているんだよ!」

「それは…貴方がSAO(あの世界)にて大量殺人を行った結果であり、貴方を保護している状態で…」

「俺にそんなことできるわけないだろ!現実で凶器なんて振れるわけがないよ…どうせ信じてくれないと思うけどさ、俺だって外で暮らしてみたいよ。皆この部屋の外では何しているんだろうって考えたりするし、俺の前を通り過ぎる生徒は皆二人以上で集まって笑って何か話している…そんなことを仮想空間だけじゃなくて現実でもしてみたいんだよ!なんでみんな俺の言うことを信じてくれないんだよ!どうせあんたも俺のことを殺人鬼としてしか見ていなんだろ!だから…だから……!」

 

感情が抑えられなくなった俺は泣きながらクリスの腹を何度も殴った。クリスの腹筋は硬く、俺の弱い拳は簡単に弾き返されてしまう。何もわからない俺はこうすることしか考えることが出来なかった。すると、いつの間にかクリスの両手は俺を包みこみ背中をさすってくれていた。

 

「盗まれたと言ったことは訂正します。ですが…貴方はもうじき自由の身となります。」

「えっ…どういうこと……?」

「もうじきSAO事件に関連し貴方に乗っている殺人容疑についての裁判が行われます。弁護人もSAOの世界に行ったことのある人物で、私たちは勝訴することがほぼ確定です。心理状態も良好で暴れる様子もないのですでに出所条件は満たしています。」

「本当に…?」

「はい。どの道貴方に公表しないといけない情報でしたので先行して報告します。」

 

嬉しかったが心から叫ぼうにも元気がない。そんな俺の顔の頬をクリスは指でつまんで伸ばしてくる。うへっと変な声が出てしまったがその顔を見てクリスは少し口角を上げて笑った。始めてみる顔に少し驚きつつも、俺の表情は自然と笑顔になっていた。

 

「これが…守るべき者…なのでしょうか…ね?」

「クリスさん何か言いました?」

「いえ…もしALOで会った時はよろしくお願いします。後、ALO中に寝ぼけることは現実世界とのバランスが崩れている兆しらしいです。貴方に最近そのような様子が見られるので考えすぎず休むことをお勧めします。」

 

正座のままで礼をして立ちあがり部屋の奥へと行ってしまった。彼女の本心が見えず終始恐怖にしか思えなかった。とりあえず俺の安全は確保されたらしいので裁判の日まで安心して過ごせるらしい。この日はこの家で普通のような生活をし、翌日ふと気づけばまたあの部屋のベッドで寝ていた。昨日のように窓ガラスは散っておらず吹田もいつもと変らず俺をジト目で観察していた。少し違うといえば…吹田の首にコルセットが付いていることくらいか。

 

「昨日は…その…」

「あぁ喋んな。首が痛いんだよ。寝ぼけるのは大概にしておけよ…」

 

首を押さえながら席に戻る吹田。少し異常な光景だが何故かそんな空間を俺は受け入れているのかもしれない、彼のせいで。そんなことを思い普段の生活に戻っていった。

その日の放課後、いつも通りALOにログインした俺。この後、あんなことになろうとは誰も思っていなかった。




「なぁアモネ。『四重奏』って書いて『カルテット』て読むように、漢字を英語読みするのってかっこいいと思わない?」
「確かにまぁ…記憶には残りますよね…どうかしたんですか?」
「今OSSの名前考えて練習しているんだけど…『ドゥームズ・デイ』よくありげな名前だからな…」
「なら…『死の宣告』と当て字で名乗るのはどうでしょうか?」
「それだと物騒だからな…『最強の一撃』とか!」
「それだと子供過ぎますよ…他だったら……」

・・・

次回:『○○○○○○○○』

白い死神に明日はあるか。


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