では本編どうぞ!!
ユグドラシルシティは相変わらず広い…改めてそう思う。ここでは一つではなく多種族のプレイヤーが集まりそれぞれが街を作っている。ここに来れば種族同士の戦争なんてないように思われるが現実はそう甘くない。下を見れば、赤と緑の光がぶつかる様子が見られる。シリカに連れられ街に入り、ある部屋の一室にお邪魔する。そこには今まで見たことのないプレイヤーが集まっていた。
「あらシリカちゃん、こんにちは」
「こんにちはアスナさん!リズさん、エギルさんも!」
「お、そいつらは…お前は、リンネじゃないか?」
「エギルさん!あっちの世界ではお世話になりました!」
久しぶりの再会に喜ぶ俺とエギル。実はSAO時代、武器や防具の相談を身の上を打ち明けた上で受けてもらっていた。俺は彼の存在なしでこの世界を生きることはできなかったであろう。俺が周りを見ると、シリカとエギル以外全く見たことのないプレイヤーがたくさんいた。その光景にはアモネも少したじろいでしまう。ローベの姿を確認しようとすると彼は驚愕の表情で部屋の人物を見る。そして確信が持てたのか、俺を外に連れだした。
「ちょっ…いきなり何すんだよ…」「リンネ…あの世界にいて、あの人たちが分からないのか!?」
「ま、まぁ…人なんて覚える余裕なかったからな…」
「まずはな…」「あ、あのローベさん…人前にして失礼なので一度部屋に戻りましょう…?」
ローベは興奮のあまり、そんなことも忘れてしまっていたようだ。すまない、と軽い謝罪をした後再び部屋に入る。シリカは苦笑を浮かべていたが、ピンクの髪のラプラコーンはものすごく怪しく俺たちを凝視していた。とりあえず失礼なことをしたので、俺たちから自己紹介を始めることにした。
「先ほどはすみません。インプのリンネです」
「私はケットシーのアモネです」
「俺はサラマンダーのローベです!」「おら、頭下げろ…」
頭を押さえ、ローベの頭を無理やり下げさせる。この男には礼儀というものがないのだろうか。将来が軽く心配になる。すると、シリカは水色の女性に何か補足をしているそうでその話を聞いた後、なるほどと頷き俺たちに体を向ける。
「改めて、この方はリンネさんです。今日私のクエストを手伝ってくれて…少し知りたいことがあると言ったので来てもらいました。」
「こんにちは、アスナです。よろしくお願いします」
「い、いえ、こちらこそよろしくお願いします!いきなりすみませんが…黒の剣士、キリトを知りませんか!?」
「えっ!?」
急な事だったのか、驚いて顔を赤くするアスナ。まずいことを聞いてしまったかと思うが、すぐピンク髪の女性が訂正してくれる。
「あー、ごめんね。アスナはキリトと結婚しているのよ…」
「えっ!?それはすみません!」
「ちょっリズ!誤解されることを言わないの!」
「あははー、でも同じようなものじゃないのー?私はリズペットよ。よろしくね」
「よろしくお願いします!でも…今日はキリトは来てないんですか……」
「うん…キリトくんは今少しね…」
心配そうにモニターを見つめるアスナ。何があったか知りたいが、非常に聞きにくい。モニターを見ると別のゲームだろうか、銃で戦闘が行われている様子が表示される。どれも迫力と緊迫感が伝わり、ここの世界とはまた違う面白さが伝わる。が、一人異様なプレイヤーが地面を駆けていた。銃弾を光剣で斬り前進していく女性プレイヤー。先ほどから見るに、モニターの世界では女性プレイヤーがあまり見られず、華奢な体ながら男性に引けを取らない動きがまた美しく見える。
「しっかし、キリトは銃の世界でも剣しか握れないのかねぇ…」
「あはは…まぁ…」「キリトさんですから……」
「…この女性が、キリト……?」
「そうです、この剣を使っているプレイヤーがキリトさんです!」
信じられなかった。このプレイヤーは、デスゲームで生活を続け女性特有のセクハラにも負けずどの世界でも剣を振り抜き走り続けてきた。その意志に改めて尊敬する俺。思わず惚れてしまう…まてよ、さっきリズはアスナとキリトは結婚していると言った……すごく不穏になった為に考えるのはやめた。
「そういえばエギルさんはまたお店やっているんですか?」
「いや、本業が忙しくてな…あまりこちらには顔を出せていないんだ。」
「カフェですか…また、ぜひ行ってみたいです!」「私も!!」
「わかった。住所はメールで送っておくからいつでも来てくれ。」「はーい」
キリトへのショックを無理やり押しのけ、いつかカフェに行きたいと思いつつこの場を後にすることにした。正直なところローベが空気同然になっていたがあまり気にしないでほしい。
ふと気づけば、俺は森の中に墜落していた。目を覚ますとローベとアモネが心配そうに俺を見ている。何があったのか全く覚えていないのだ。ユグドラシルシティ飛んだあたりから記憶が薄れていき何をしてここまで来たのか覚えていなかったのだ。
「リンネさん…急に受け身も取らずに空中から地面に垂直落下したんですよ?」
「うむ…もしかしたらお前、最近いろんなことがあって休みがとれていないだろう!今日は解散して、皆ゆっくり休もうじゃないか!!」
「ローベ…わかった。ログアウトするよ。おやすみなさい。」
俺は立ち上がり、森の中を歩いてルグルー回廊へ足を進めようとした…その時気づいたのだ。ここが森ということは…シルフ領。ということは…俺は森林地帯とスイルペーンの境界線上で待機することにした。すると、俺の思惑通り一人の女性がシルフ領から出てきた。彼女は俺に気づくと槍を構えこちらに近づく。着地した後、5mほど距離を取り俺を睨む。
「あんた…どうせキル目的でしょ?知ってる、私が無理やり追い出したからよね。殺せばいいじゃない。」
「だから殺す気なんてないって…」
「そうやって焦らされるのが嫌なの。ここは何度だって生き返れるし、別にやられる時は逃げたりしないわ。それでおあいこ……」
「なぁ…決闘しよう。勝った方の言うことを一つだけ聞く。どうだ?」
「わ、私傷つけ合うのは嫌いだし…人間同士……」
「お前の予想通り、俺はPKをする。そんな奴人間じゃない、ただのモンスター同然さ。」
手をひらひらさせ言い放つと、カザネは目の色を変え槍をもう一度構え直す。送信されたメッセージは受理され、カウントダウンが始まる。
『3…2…1…』『DUELSTART‼︎』
スタートと同時に槍でついてくる彼女。凄まじい連撃に身がたじろぎ後退ばかり繰り返す俺。が、彼女の攻撃は当たりそうで当たらない。なので俺は槍を弾き彼女の体に二撃切り込みを入れた。すると、彼女はスペルを唱え始めたが俺にはわかってしまう。あれは闇魔法で、俺ごと巻き込んでしまう呪文…決闘だろうが体力がゼロになればお陀仏、俺どころか彼女もペナルティーを受けてしまう。さらに闇魔法でのペナルティーは二倍になるため相当の覚悟が必要。が、彼女にはそんなものは見えない。俺を葬る?自分が逃げる?そんなものしか見えなかった。俺はとっさに彼女に近づき…闇魔法で自らの身を削りながら、魔法をキャンセルした。
そして、彼女を抱きしめた。
「あんた…私になんてことするの…!?慈悲のつもりだろうけどそういうの……」
「簡単に死のうとするんじゃないな…俺だって救えなかった命がある。大切な人が消えてしまったことがある…そんな人がいるのに…簡単に命を捨てようと……!」
「うるさいわよ!あんたに私の何が…」
「わかるわけがない!!」
思ったことをはっきり言うと、彼女はきょとんとこちらを見て呆然としている。そりゃそうだ、読心なんて出来るわけがないだけど、彼女に伝えたかった。
「お前が俺を殺しても…俺はお前を恨まない。あの時何も言わずに俺を助けてくれたこと、とても感謝している。その見返りとは言えないと思うけど俺は…もうお前を死なせはしないよ。俺が守る」
「…バカ!バカバカバカ!!このバカ!」
拘束が解かれ、彼女は俺の腹を槍で突き刺し俺のHPを一気に赤に減らす。腹が疼く感覚に見舞われるが俺はそれでも逃げない。彼女の思いを今ここで全て受け止めるからだ。
「大嫌い!最初に会った時から変だと思ったわ!!かっこいいとかでも見せようとしたのか知らないけれど、かっこ悪いところかダサすぎるわよ!!もう二度と…!二度と……!」
「二度と……?」
「…死なないで……私の前からいなくならないで…!このバカ…」
俺のHPが底をつき、決闘は終了。俺は炎になる予定だったが、カザネの回復魔法で何とか生き残ることができた。
決闘終了後、カザネとフレンド交換を行いカザネはシルフ領、スイルペーンへと帰っていった。俺は謎の達成感に満たされもう何もしなくていーやとシルフ領の森林のその場で大の字になって寝てみた。星空は綺麗に光り、そこに時々妖精が通過していく。いつか…彼女も加えていっしょに飛んでみたいとふと思った。
「現実では…どうなんだろう……」
大空に手を伸ばしたが何も取れず、ため息を吐いてしまう。世界が広がったらいいな。そんなことを思いながら、今日はログアウトすることにした。
外の世界への興味が湧くリンネ。が、閉じ込められまだ外に出ることは難しそう。そんなリンネのフレンドは復帰祝いとしてリンネにプレゼントを贈る。だが、新しいクエストにてアモネたちに危機が迫る。果たして…リンネは無事に守りきれるのか?
「ウォォォォォォォ!!」
「あいつは…もう……」
次回:『○○○○○○○○』
白い死神に明日はあるか。