原作キャラクターは入れないんですか?→キリト君は確定ですが、他のキャラクターも考えています!お待たせして申し訳ありません!!
「……僕には…力なんて……なかったんだ」
僕?なぜ自分がこんな口調を使っているのだろうか。元々俺は何なのか。先ほどのショックから気づけば白い空間に来ていた。周りを見ると先ほどまでの破壊された物々がなくただ、何もない白い空間だった。そこには私服を着た自分自身が存在し、下を見ると白い服とスラックスを履いている姿が写っている。
「ここは…俺はどうなっている…?」
「君は僕であり…僕でない。今体のコントロールは返してもらったよ」
急に現れたのはALOの姿をした俺自身だ。彼は俺を見てくすくすと笑い、俺の武器だった鎌『ギルティ・サクリファイス』を手に持っている。
「お前は…俺に何の目的だ!」
「ここは僕の心の中だ。今までの君はSAOで作られた偽りの僕だった…だから消えてもらうことにしたんだ」
俺が偽りの自分…?そんなことはあり得ない。今まで俺は俺らしく生活してきたし、あの世界でできた人格ではないはずだ。俺がSAOに行く前の記憶を引き出そうとするが、全く思い出せない。
「お前…俺の記憶に…!」
「何を言っているんだ…だから、僕が本当の隣音弥(となりおとや)の人格で、君は
そうだ、俺の名前は音弥…昔からそう呼ばれていたはずなのに…何故俺はここまでの記憶が抜けている?考えていると突然頭痛が襲い掛かる。音弥と呼ぶ声が頭に響き、ガンガンと頭を刺激するように俺を襲う。あまりの痛さに頭を抱え唸り声を上げてしまう。そこに何かの気配を感じ俺は素早く回避した。さっきまで俺がいた場所には音弥が持っていた鎌が振り降ろされていた。舌打ちをしながら俺を見てニヤリと笑う音弥。俺は一人しかいないはずなのに昔にあんな顔を見たことあるような気がする。
「この声は…誰なん…だッ…!頭が…!!」
「じっとしていなよ…僕が楽に終わらせてあげる。あの世界のようにね。」
「何を…!!」
「君は僕の母の邪魔になるんだ。」
鎌を振り回す音弥。俺も身構えると私服からSAOの姿に変わり、彼と同じ鎌で俺も応戦するが、時折頭痛が俺の邪魔をしてまともに攻撃できない。この痛みは何だろう…俺の名前を呼ばれるたび頭に響き、俺を行動不能に陥れる。その間にも彼は攻撃をやめずその一撃は俺の右腕を刈り取ることに成功した。SAOと同じように血は流れずポリゴンとなって消えるが、死神の時と同じ痛みが全身に伝わり、足の力がなくなってしまう。ポケットにはピックが入っており、投げると音弥は後退し距離をとる。その時、外から声が聞こえた。
『おい死神、そこに朝食が置いてある。早く食って授業に参加しろ』
「吹田…!俺はここだ!助けてくれ!!」
「無駄だよ。」
一度動きを止め、音弥はケラケラ笑いながら俺に言う。
「さっきも言った通り、この体は今は僕の支配下だよ。だからそんな声は聞こえず…今頃の僕は話も聞こえていない、廃人の状態だね。」
「お前…!!」
「でも、もう時間の問題かな。自分の体を見てごらんよ?」
言われて自分の体を見るが、俺の手が薄くなっており指の上からでも持っている鎌が確認できる。これも俺の存在が消えている証拠だろうか。薄くなった左腕を振るい音弥の攻撃を防ぐ。俺は一つの可能性に賭けてみた。
「俺の母って…どんな奴なんだ…!」
「僕の母だ!僕の母は全て真実を教えてくれる。この世に必要なものを身を持って教えてくれる…僕のために僕の神であってくれるんだ…!」
「俺の…神……ッ!!」
再び頭が痛くなる。もしかしたら俺の体も彼に操られているのかもしれない…が、せめて意思だけでも。残す、俺は思い切り雄たけびを上げるがどうも手ごたえがない。俺は鎌を捨て音弥に突進して首をつかむ。それと同時にどこからか誰かの声が聞こえる。
『…僕には…力がない……』「…僕には…力がない…」
「ッ…!誰…まさかお前の!」
『僕には力がない…力が欲しい……』「僕には力がない…力が欲しい……」
そう、彼が言う言葉を現実の俺は繰り返していたのである。俺は音弥を突き飛ばし、右腕が再生したところで体制を整える。受け身を取り50m飛んだ音弥はゆっくりと起き上がり不気味に笑う。そして鎌を拾い上げ構え直す。
「そうだよ…今のは僕の本心…現実では何もできない僕の本心さ。君はSAOで強さを手に入れた気になっているつもりだろうけど、そんなものSAOの世界での力で現実で役に立つ力でも何でもない。君も力なんて持ってない…」
「現実で役に立つ力か…確かにSAOの世界で手に入れた力に意味はないな」
「君はその力を悪用して…多くの人間を殺したこの力は無駄なんだ。ということで何も君は力を持っていない。」
力…か。確かに俺には力がないのかもしれないし、全くないのかもしれない。だが考えてみると、そもそも力は必要なのか。確かに認められるためには力が必要なのかもしれないがそれだけではない気がするのだ。権力を持っていても嫌われる人間だっているし、何か特化した力がなく普通に生活する人が好かれることだってある。なら…力を持ってなくてもいいんじゃないか。
「そんなに力に拘らなくても、いいんじゃないか?」
「ダメなんだ…!力がなければ勝てない!勝ちが全てなんだ…『何をしてでも勝つことが全てなんだ!』」
勝ちが全て…そう言いはる彼は鎌を振り回し俺に襲い掛かるが、その攻撃は俺に全く当たる気配がなく、相当心が落ち着かなくなっているのだろう。だって、俺だってそうなのだから。しかも彼の言ったフレーズ…聞き覚えがある…勝つことが全て…勝つことが……母…
「『負けるとお前の持つものが失われる』…僕の母が教えてくれた……だから僕は力を手にいれて…!」
「…原因は大体分かった。お前のおかげで思い出せて…俺が…いや、お前が生まれてしまったことが大体分かったよ。」
「僕は…僕だ…!最初から…」
「まず一つ、ここにいる俺たちはどちらも音弥の人格だ。そう、俺は二重人格だったんだ。生憎俺の母親の最後の記憶が勝ちの話なんだ。そこで二つ、俺はいつしか無意識に怒られない、母親に対して『母親にとっての理想の隣音弥』を作り上げてしまい、常に隣にいる母親が怖くいつしか俺はお前に人格を奪われてしまっていた。お前はそれを分かって俺が作られた人格だと言った。そうだろう?」
そう、彼の言った言葉は俺が死神のダンジョンにいる時に見た夢と全く同じ夢だった。あの時…俺はお母さんの言うことが違うと否定し、「勝ちからも学ぶことがある…」なんて変なことを言ったんだっけ。その後の記憶が曖昧過ぎて仮説に近いことになってしまうのだが。音弥にはがっつりダメージが入っているようで、この様子なら体のコントロールを奪うことができるかもしれない。外界の声に耳を傾けるとまた吹田の声が聞こえた。
『おい死神!いい加減飯食えや…気味が悪いんだよ!ずっと見ねえといけないこっちの気持ちにもなれや…』
『…ぁ…ぅ…』「悪いな!もうすぐそっちに戻る!!少し待っていろ!!」
『いい加減目を覚ませよ…!』
さて…伝えることは伝えたし…偽りの俺に裁きを下すときが来た。なんだろう、俺の体に再び力があふれあの世界の感覚が戻ってくる。あの死神は自分で自分を殺すと言った、このことなんだろうか。クスっと笑いながら鎌を持ち、『スマッシュ』を繰り出した。音弥は動きが遅くなっており、先ほどまで避けられた攻撃が当たるようになってきた。
「その力は…人をまた傷つける……無意味な力…」
「この力のおかげでいろんなことを学んだから、俺は無意味ではないと思うな。これがなきゃアモネとも出会えなかったし、罪も知れた。俺が知らなかった世界を教えてくれたんだ。」
「やめろ…僕が……!僕が消えてしまう……!!」
俺の鎌が彼を斬りつけると、彼の体はヴェールのように色が薄くなっていき、その度音弥は叫び体をねじ曲げる。が、そこを黒い物が埋めていき先程より音弥は雰囲気からしてヤバそうな状態に変貌、埋められた部分からは黒いトゲのような物が飛び出ている。
「僕に…力を……!」
「一つ言うとすれば、俺には信じる心なら負けないと思っているな。俺の後ろには仲間がいると考えると…安心していろんなことができる。後、その気持ちは時に人を動かせる時があるんだぜ?」
「そんな形でもない力…他の人に勝てない!」
「まぁ…お前はそう言ってそのままなんだな……勿体無いな。俺より長く生きているのに。」
「そんな戯言を…ほざくなァ!!」
「すまない、俺今も合わせて四年しか生きてないからな。子供なところは許してくれよっ…!」
大きく振りかぶり、釜を振り落とす。俺の鎌は音弥の持つ鎌を真っ二つに砕き、大きく相手にダメージを与える。武器を失った彼は爪を出して飛びかかって来た。その時だった。
『リンネさん!リンネさんですよね!!私です!アモネです!!』
『ア……モネ……』「アモネ!やっぱり来てくれた!」
『リンネさん…私は貴方が見逃してくれた日を覚えています。私のわがままを聞いてくれた日も…私を受け入れてくれた日も。その時から私は決めていました、貴方を守るって決めてたんです…!』
『あの日…俺と…アモネが…繋がったあの日……』「そうだ…俺も覚えている。あの出会った日のこと…!」
『貴方はあのギルドに負けても諦めなかった。私を助けに来てくれた。だから…私も諦めたくないんです!手を差し出してください!!絶対離しません!』
最後の力を使い、手を伸ばす。が、後ろからは俺の肩を掴み消えかかっている音弥が鬼のような形相で睨んでいる。が、そんなこと関係なく、俺が信じて差し出した手をアモネは…握ってくれた。
「リンネさん…いや、音弥さん!手を…伸ばしてください!!」
俺を音弥として認めてくれた彼女に引っ張られ、俺はリンネという人格から隣音弥になったのだった。
「ただいま…アモネ。」
その後何があったのかは記憶になく、気づけばベッドの上で朝を迎えていた。部屋は昨日のような色んなものの破片が飛び散った空き巣後の状態でなく、ガラスやモニターは新調され破片も一つ残らず落ちていなかった。窓の外を見ると珍しく吹田がいびきをたてて寝ていた。俺も学校に登校する時間だったので用意された卵焼きとおにぎりを食べた後窓を叩いて起こしてやる。すると、機嫌悪そうに起きて俺を向いて何か言っている。
「お前…!部屋の掃除が以上に面倒だったし、どれだけ菊岡さんに怒られたと思ってんだ!しかも修繕費はお前の後払いで俺の財布から払われたんだぞ!」
「そ、それは…ごめん」
「部屋から出たら絶対払ってもらうからな!後…つまらない話を聞かせたら今度は知らないからな。」
部屋の隅をよく見ると、辞表がビリビリに破られていた。こんなことを言っている…心配をかけたなら恩返しをしないといけないな。
「少し刺激が強いかもしれないが、我慢しろよ?」
笑いが込み上げながら俺は机に向かい、俺は学校の授業に臨んだ。
やがて放課後になり、ALOに久しぶりにログインする。俺は確か死神のダンジョンでログアウトしているはず…と思ったら、そこはどこか見覚えのあるホテルの一室みたいな部屋。しかも俺は机の上に寝ており気づいた途端腰に鈍痛が走る。慌てて立ちあがり辺りを見るとベッドの上には…緑と黄緑色の炎が燃え上がっていた。まずいと思い、部屋から出ようとするも鍵が開かない。すると緑の炎が突然光りだし…ベッドの上にはパジャマ姿のカザネが出現したのであった。
久しく復帰する死神ことリンネ。黒の剣士を追ってケットシー領での情報収集中、ケットシーの少女と出会う。少女はクエストを手伝ってほしいらしいが…
次回、『竜使いの少女』
白い死神に…明日はあるか。