ソードアート・オンライン 白い罪人   作:かえー

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ALO編です!


復帰

目を覚ます。目の前は少し黒く歪んだ空間が広がり、体には全く力が入らない。何とか力を入れ頭に装着する何かを取り外す。少し頭がくらっとするが何とか腕に力を入れ体を起き上がらせる。そこは以前いた木の小屋でもなく、自分が住んでいた家の部屋でもなかった。一見ビジネスホテルにありそうな一部屋だがそこには点滴や心拍数を測る医療器具など病院の一部屋に見えた。が、出口だろうドア付近にある大きな窓から覗く光景が病院だということを否定する。窓の向こうには学校の教室のようなものが見え、その直後授業のチャイムが鳴ったのだ。もしここが病院なら患者たちが黙っていないだろう。肩で息をしながら姿勢を保つが、突如部屋のブザーが鳴りまたベッドに倒れてしまう。窓の外を見ると二人の男性がこちらを見て何かを言っている。二人の男がジェスチャーを送ってくるので、それ通りに近くの黒いボタンを押す。そうすると自分の声がエコーになり外に聞こえるようになった。

 

「ここは…どこ…で…す…か?」

「ここは学校だ。君たちが通うことになった学校だ。」

「でも…ここは…教室でも……保健室…でもないですが……」

「そうだ、君がいるのは君のために特別に改装されたvipルームだ。」

 

何故俺がvip扱いされているのか全く分からないが、不気味に思いふらふらと立ちあがり部屋のドアを開けようとした。が、ドアは鍵がかかっており開かない。押しても引いても開かないのだ。

 

「君は、SAOの世界にて大量殺人を行い現実での猟奇的な殺人に通じるものとし保護観察でここに拘束することとなった。仮想空間で人を殺しているプレイヤーを世間に出したら問題を起こしかねないという理由でな。知っておいてくれ。」

「待ってくれ…他の、プレイヤーは…」

「とっくに目覚めて学生のものはここに通い、社会人たちは普通に生活をしている。ほとんどの人間がカウンセリングやリハビリを行い普通に暮らしている。」

 

なるほど、つまり自分は被告人としてここに捕縛されている。罪が晴れるまで俺はここで牢獄ライフを送るのか。いくらオレンジプレイヤーだからといえ、待遇が悪すぎやしないか。不公平を訴えたかったがそもそもキルを行ったのは事実であり、実際にログが残っているかは定かではない。いまのところ俺の勝利はほぼ皆無に等しいというわけだ。だが、ここに閉じ込められるとはいえ何も食べたり飲んだりしなければ人間せいぜい一週間で死んでしまう。特に俺は仮想空間から帰ってきたばかりでただですら弱っているのに。どうにもならない事実にため息をつくしかなかった。

 

「食べ物や飲み物、風呂や服は全てそこに用意してある。また、監視員に要件を言ってもらえれば脱獄以外のことならほとんどしてくれる。おそらくこまることはないだろう。紹介が遅れた、総務省通信ネットワーク内仮想空間管理課職員の菊岡誠二郎だ。隣にいるのは君の監視人となる人物、吹田新警備員だ。」

「よろしくお願いする。何でも言ってくれ。」

 

警官のような制服を着た男性が敬礼をする。どうやら俺は猟奇的な頭がものすごくイカれてしまった犯罪者として見られてしまっている。もはやただの容疑者や被告人とは違う。部屋を見渡せば監視カメラが隅に一つずつ、さらに変なアンテナもある。俺は監視されている、なんだが言葉で表せないが最悪の状況だった。

菊岡がどこかに行った後も吹田はずっと扉の前で座っている。そして暇そうに雑誌を読みたまにこちらを覗いてくる。正直俺は今までスポーツ等があまりできなく、勉強も微妙で唯一できることとすればおじいちゃんが教えてくれた居合切りくらいしか出来ない。まぁ、それが今回のデスゲームでも役に立ったのだが。俺はとりあえず立ちあがる練習からしてみたが、案の定倒れてしまう。その音を聞きつけてか吹田は窓から俺を覗くが、無論助けてくれるはずもなくにやにやしながら俺を見てくる。

 

「笑ってたら助けてほしいんですが」

「誰がお前なんか助けるか。伝説の犯罪者なら自分で立てるだろ。こんな任務についたのが不幸だったぜ」

 

このやろう…俺は何か込上がる感情で何とか立ちあがることができた。久しぶりに感じる感情、怒りである。最後の戦いの時が最高期だったが、今はそれに匹敵するぐらい怒っている。何も知らないのに俺のことを馬鹿にしたことがどうしても許せないが今の自分には全く対抗できる力がない。腹いせに窓を殴ってやった。すると突然思い出す。

 

「吹田さん、今って何年何月何日?」

「そんなことも分からないとは…仕方ないな、2025年7月20日だ」

「…2025年…七月…!?」

 

ゲームがクリアされたのは2024年11月7日だったはず。そうなると俺はこの半年間眠りについていたということになる。いやゲームを始めたころから数えると3年近く寝たきりの状態となる。衝撃だった。まずはなんとかして生活を取り戻していかないといけないが、何かをしようとするとミラの顔が浮かんでどうにも動けない。吹っ切るため、ナーヴギアを取り外しベッドの下に隠した。

 

そこから二か月が経ち、夏休みが終わり生徒たちが登校するようになった。いろんな生徒が俺の部屋の前を通り過ぎるが、誰も反応を返してくれる人はいなかった。もしかしたら外からは俺の姿は見えていないのかもしれない。俺はなんとかリハビリをすることで歩けるまで回復し、ほとんどの生活は何とかなるようになった。が、俺は何か足りないものを感じるようになった、いや感じていた。やはり、ミラと決着を付けていないこと、黒の剣士に会えていないこと。この二つが脳内から消えてくれないのだ。が、SAOはもうサービスを終了してしまい俺が彼らにあうことはほぼ不可能だと考えていた。

そんな思いにとらわれてポストに学校からの手紙を確認しに行くと、いつもはない黒い四角い箱が手紙と一緒に置いてあった。とても怪しいが、箱の側面には本人の手書きで菊岡と名前が書いてあることに安心し。中身を開けてみる。中には見覚えのあるものが入っていた。SAOと同じソフトの形をしたもの…名前を見るとALOと書いてある。同封してあった手紙を読みながら中を開けていく。

 

『これは総務省からのプレゼントだ。ナーヴギアで起動できSAOと同じ仮想空間で行動できるソフト、ただ、SAOと違う点がある。ログアウトが任意ででき、プレイヤーをキルしても現実世界では死なない。安心してプレイするといい。ただし、学校中のプレイなどが確認された場合没収する。健闘を祈る。』

 

あの人は親か。ここまで来ると…彼にはお母さん気質があるのかもしれない。今日のリハビリも終えたころなのでさっそくALOをプレイしてみることにした。ベッドの下のナーヴギアにソフトをセットして、三年前と同じように頭に装着する。そして、ベッドに横たわりこう叫んだ。

 

「リンク・スタート!!」

 

俺の意識は電脳世界に飛ばされていった。

 

SAOの時と同じように設定から始まるが、以前と同じような状態がいいのでそれっぽいものを選択してゲームをスタートする。結局自分の容姿なんて見ていないけれどどうにかなるだろう。そう思っていた。目の前が真っ暗になったと思うと、洞窟のような場所に転移させられた。俺が一歩踏み出すと、その空間は張り裂け俺は落下していった。いきなりなんなのかと思えば遺跡のようなものは俺の前から消え、現れたのは草しかない平原。俺は何をすればいいのかわからず何か方法を模索したが、メニューを開いてもオプションボタンを押すことが出来ない。そして気づけば地面と思い切り衝突していた。そしまわりがぼやけ始め俺の目の前には死を意味する(youaredead)の文字が。俺のALOデビューは早速落下して死んでしまうことから始まってしまった。


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