ソードアート・オンライン 白い罪人   作:かえー

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ついにアインクラッド最終回!最後に待ち受けるものとは…!?


終焉の正義

アインクラッド第13層、ここにミラが所属しアモネがとらわれている『ヴァイスヴァールハイト』のアジトがある。そうとは言えこの街の中にどっしりと建てているところ、かなり目を引く白く独特な形、本当にアジトか疑うところも少しある。今は俺一人。収容所のメンバーで突撃してもよかったが、アモネの危険も考え俺単独の侵入となった。普通の家にありそうな門を叩き、自分の名を名乗る。

 

「無所属のリンネだ。アモネを迎えに来た。」

「…入れ。」

 

どこかから門番だろうか、ミラではない声が俺に反応しそれに合わせ門が開く。門は日悪的軽い様子で開いており襲撃に対してガバガバと思える。門をくぐり周りを確認する。少し先にステージがあり、その上には玉座に座るミラ。その横にはおびえながら座るアモネの姿があった。ミラとアモネの位置を確認すると俺は走り出した。すぐに兵士が俺を取り押さえようとするが追いつかず、50mほどあった距離はすぐに縮み手を伸ばせばアモネに届く距離となっていた。が、後ろから何者かの気配を感じ俺は横っ飛びをし、間一髪で避けることができた。地面に倒れこみ起き上がると、先ほど俺がいた場所にはゴルドレムがハンマーを振り降ろした状態でこちらを見ていた。今回の彼の装備は鉄製の仮面を被り全身も鉄に覆われまるで装甲車でも連想させるような格好だ。他の連中の服は皆綺麗な白で染められており少々気持ち悪い。純白すぎて気持ち悪くなってくる。さほどダメージを食らわなかった俺は砂ぼこりを落としながら立ちあがり二人を見る。が、相変わらずミラは余裕そうな態度だ。

 

「ふ、ふふ…さっきの攻撃はよく避けたね。君の伝言は彼女から聞き動きは完全にわかっていたのにな…新しいスキルを?」

「そんなわけないじゃん、アモネを見ていればわかったんだよ。」

「そんな戯言を…」

「アモネは潜伏スキルと索敵スキルを極めててな、彼女から少し情報をもらえば体術スキルと生存本能を持っている俺が避けることなんて簡単だ。それに、昨日送ったメッセージは嘘だからな。」

「なんだと…!?」

 

ミラの反応が思った以上に面白く、思わず笑いが込み上げる。確かに俺は彼女と連絡を取っていたが、それをあいつが見ないわけがない。俺はアモネを信じてこんなメッセージを送ったのだ。

 

『dear amone 

 もし周りに人がいなければ読んで欲しい。指定した日にお前を助けに行く。今収容所のメンバーで計画中だ。ミラのアジトに皆で突撃してもみくちゃの中お前を助ける。ゴルドレムの動きは大体わかった。俺は皆を信じることにした。ダメ元でお前を助けに行く。お前も信じていたはずだ…なのにごめんな。こんな俺を赦して欲しい。二度と許されないかもしれない。嘘になるかもしれないけれど俺はお前たちのためなら命を捧げれる。続きは助けた後に話して欲しい。

11月7日最初の一ゲキでタオす。文がヘンですまない。字もヘンカンできていないかもしれない。また。rinne』

 

「正直あのメッセージはばれると思ってかなり冷や冷やしたよ。11と7の一文字目を合わせてみな。」

「嘘…ダ……?リンネェェェェェェェェェェェェェェ!クソが!!」

「お前のことだから見ないわけないだろうと思ってな。まぁ見られてもプランはいっぱいあるし…そもそもそもそも今回アモネをさらったのは俺をここに招待してくれるためだろう?」

「あぁ、我らが神聖の地でお前をお前を倒すためにな。死神の殺害、それがこの世界の平和にどれほど近づけるか…この範囲が決められた場所でお前は死ぬんだ…!」

 

何が神聖だ。こいつの中の神聖とは何かを知りたい。本当に人を殺しているのはどっちなんだろうか。俺はあの夜言った、『武器を下して俺の前から退け。残った者は俺が抹殺する。それぐらいの覚悟があるなら残れ。』と宣言したのにそれでも俺に襲い掛かってくるプレイヤー。俺を殺すように仕向けたのは大体ミラだ…多くのプレイヤーに俺の殺害を指示して結局誰一人俺を殺せず立ち向かったプレイヤーは死んでいる。が、ミラが襲ってきたことはない。自分は指示するだけ指示し、他人にすべて押し付ける。直接的に罪はないが、この世界のこの一件は俺だけでなく彼にも罪がある。そんな気がした。

 

「神聖の地で神を殺すのは少し疑問だが、アモネは助けさせてもらうからな。」

「おっとお前がこいつに近けば…おい、出番だ!」

 

ミラが玉座に踏ん反りがえりながら叫ぶと、見たことある二人が戦闘態勢で立ちはだかる。そう、人狼ゲームでお世話になった二人、シューイとキンノだった。シューイはともかく、キンノはアインクラッドから飛び降りて生きていたのかとただ絶句するのだがさらに絶句したのは、その二人を待機していたゴルドレムがハンマーでぶっ飛ばし一気にHPをゼロにし殺したのである。いくらなんでもこれは最低だと思う。見世物にするために彼らは生き残ったのか。あまりにも酷すぎて敵ながら彼らに味方したくなってきた。

 

ミラを殺す

 

初めて俺が殺意を直接向けた瞬間だった。

 

「謝ってもお前は許さない…!」

「まだそんなことを言うには早いんじゃないか?こいつらを倒してから言うんだな!やってしまえ!!」

「…プランBだな」

 

周りにいたプレイヤー達が一斉に走り出し俺の方へ向かってくる。ゴルドレムは全く動く様子がないし、俺も動く必要はなかった。まわりのプレイヤー達は雄たけびを上げながら走っていたが、それを超える叫び声のようなものを出しながら門から多数のプレイヤーが立ち向かってきた。それは…収容所のオレンジプレイヤー百人と、その管理人バラだった。確かにミラのギルドのプレイヤー達の団結力は高く、束にしたらめんどくさい。が、俺たちオレンジプレイヤーは個々に戦える能力がある。数には数、がっちりはまった作戦だった。

俺はまっすぐ歩み寄り一つのコマンドを相手に申請する。そう、ゴルドレムに対しての決闘申請である。

 

「ゴルドレム、俺は逃げも隠れもしない。真正面からお前に立ち向かってお前から勝利を手に入れる。お前がモードを選択するといいよ。」

「……」

 

一言もしゃべらないまま彼(?)は完全決着モードを選択した。相手も俺を殺す気なのだろうか…ミラへの殺意は後回しにしゴルドレムとの戦いにハラハラ、久しぶりに正面から一対一で対決することにドキドキしていた。

しばらくし、カウントダウンが始まる。が、先ほども言った通りゴルドレムの弱点は見抜いている。後は相手の新しい能力がなければなお良いのだが…

 

3…2…1…

『DUEL Start!』

 

ブザーとともにお互い相手に向かって走りだす。俺は鎌を、ゴルドレムはハンマーを手に渾身の力をぶつけた。凄まじい衝撃が、俺の両腕に襲い掛かり鎌の刃でハンマーを滑らせ攻撃を回避し距離をとる。やはり思い通りに行かない。弾いてソードスキルをぶつけてやろうとしたが、レベルの差かパワー負けしてしまう。

 

「一筋縄ではいかないな…痛ぇ」

 

俺の小さな呟きも届かず、ゴルドレムはハンマーを叩きつけ、距離を縮めてくる。あれに一度でも当たれば即死クラスのダメージを食らう無理ゲーに近いことだろう。だけれど、策はまだある。俺は相手の攻撃を避け続けた。避けれればベストだが、攻撃を受け止めることが多く地道にダメージが蓄積され、HPバーが緑から黄色に変わる。が、だんだん相手の動きを読むことができ徐々にダメージを与える。そう、ゴルドレムは先日や今日、俺を襲った時みたいに気づかれずに相手を襲う暗殺者的な動きをしてくる。俺はスキルを3~4個しか覚えていないが恐らく彼のステータスを見る限りレベルは87、10個以上のスキルを身に着けているのだろう。今俺が把握しているスキルは5個程度、だからこそ何が来るか怖いのだ。

ゴルドレムの体力が黄色になったところで勝負を決めに行く。ソードスキル、『ダイナミック・バイオレンス』を発動。斬りかかるが、相手も同じソードスキルを発動してきた。ソードスキルはキャンセルできず、お互いのソードスキルが衝突しぶっ飛ばされる。何とか耐えきり、体力ゲージはまた赤くなっていた。決闘中は回復ができず俺の命は風前の灯火となっていた。再び距離を取り何とか立ちあがる。ゴルドレムも様子ではわからないが、ダメージが入っているのかふらついている。そして、仮面が真っ二つに割れ強面が再び出てくるが変な違和感がした。俺はこの顔を見たことがある。似た顔ではなく全く同じ顔を見たことがある。そんな気がしたのだ。改めてプレイヤー名を見てみる。

彼のプレイヤー名はゴルドレムなんかじゃない。彼の名前は、

 

「メ、メイカー…!?死んだはずじゃ…!?」

「そうだ、今までお前が戦っていたのは紛れもないメイカーさ。どうだ、以前のギルドマスターと闘う気分は?」

「なんで…どうなっているんだ!!」

「ギルマスはな、飽きたんだってよ。初心者のいるあのギルドが。そりゃあお前みたいなのがいたら誰だって手放したくなる。だからメイカーはお前にギルドのすべてを投げてより強いギルドにしようとしたんだ。だが、お前が生き残って全て計画が崩れてしまった。」

 

そんなことを考えていたなんて、俺があの時聞いた話とは全然違う。ならあの裏切ったプレイヤー達もメイカーの刺客だったのか。そう考えるとズキズキと胸が痛い。

 

「やがて…死ななかったお前を憎み、俺と組んで連合軍に入ったんだ。そしてそこで死神を倒す仲間を募った。リンネはギルド一つを裏切り俺たちを殺そうとした卑劣なプレイヤーだと。殺すことを楽しんでいるとな。お前が死ねばここまで事が大きくならず、犠牲者も出なかったのになぁ…連合軍でも仲間を募って中ギルドに匹敵するほどの人員を得た。メイカーはお前と闘うために俺が改造したんだ。毎日お前の卑劣な行動を流し込んでやった。そうしたらこれだ…死神に匹敵する魔人と化した…!」

「……つまんねぇなお前。本当につまらない…人の力を使ってクリアするゲームは楽しいか?」

 

話を聞いていく度にメイカーのショックは薄れていき、ミラへの怒りが倍増していく。自分の力で俺を殺すならまだしも自分の力すら上げず、表面だけの名声なんて何の価値もなく、むしろ副団長していたときのほうが輝いていた気がする。

 

「俺も…ここ最近までは人に頼ることが出来なかった。なんでも俺だけが何かすれば俺のせいになって全て何とかなると考えていた。だけど違った。一人で背負ったところで周りに迷惑がかかることだってある。ならお互い協力し合ってやってけばいいだろってこいつら(オレンジプレイヤー)が教えてくれた。お前と俺、足して二で割ったら丁度良かったかもしれないな。」

「俺は俺の力で…!!」

「さて、ゴルドレム…違うな、メイカーさん。俺との勝負、最後まで付き合ってくれ。」

 

相手もハンマーを構え直す。一言も話していないが、恐らく承諾してくれたのだろう。ミラなんてどうでもいい、相手が元ギルマスだろうがもうどうでもよくなってきた。俺は今目の前の敵と戦っている、なら最期まで…最後まで全力でぶつかろう、命が尽きてもそれならいい。そんな薄い覚悟を胸に鎌を構え直す。メイカーの武器もきっと自分で作った特注品なのだろう。俺の鎌の耐久値をはるかに上回っている。持てる力を両腕に込め前進する。

待ち構えるメイカーは棍のソードスキル、『ヴァリアブル・ブロウ』の挙動に入る。ここしかない!俺は突進し、初期のスキル『ワール・ウィンド』をハンマーの持ち手めがけて繰り出した。すると、お互いの武器は拉げるような悲鳴を上げ、やがてメイカーのハンマーを破壊した。そしてすぐ、『スマッシュ』の挙動に入るがハンマーが折れてもメイカーは諦めず俺のスマッシュを受け止める。が、さらに俺はどのソードスキルにもない動きでメイカーを四回斬りつけ、最後は鎌の先端で突き、メイカーの横を勢いよく通り過ぎた。

 

「ドゥームズ……デイ」

 

静かに俺は呟いた。しばらくしブザーが鳴り響く。前を見ると『winner!』の表示がありこの表示と、バトラーたちの歓声がすべての戦いをここで終えたことを物語っていた。

勝敗を確認し、すぐにメイカーの元へ向かう。メイカーはあの時と同じように体が少しずつ蒼白くなっていた。

 

「…メイカーさん…俺…」

「泣くなリンネ。お前は仲間の死を気にしないんじゃなかったのか?」

「だけど…俺はギルマスを…!俺の命の恩人を……この手で殺した…!!」

「お前は強くなった…こんなに積極的に攻撃もしなかったし、俺に話しかけてもくれなかった。お前は変わったよ。お前らしくなったさ…」

 

と、弱弱しく撫でてくるメイカー。自然と俺の目には涙が浮かびメイカーの表情が全く見えない。久しぶりにあった命の恩人を殺す…この人は何をしたんだ…俺には全く分からない。泣きながら首を振る俺にメイカーは話す。

 

「俺は…決闘が大好きなんだ。力試しが好きだった…お互いの全力を出し合い勝敗を決める…今回はお互い死ぬ気でやって最大限戦った。俺の最期に相応しい…いい決闘だった…」

「カッコつけないでください…!メイカーさん!!」

「お前は俺と闘って…俺に勝った。こんな当たり前なことに罪はない。」

 

やめてほしかった、信じたくなかった。死にゆく相手を思い切り抱きしめた。こうして生命が戻ることもないが…最後まで俺を信じてくれた最初の人に、ただ一緒にいてもらいたかった。やがて、数分がたちメイカーの体は粒子となり体の感覚は全くなくなった。同時に役目を終えたかのように『ギルティサクリファイス』がぽきりと折れ消滅した。メイカーへの悲しみを処理すると同時に最高を超えた怒りが込み上げてくる。

 

「ミラ…!!次はお前の番だ…降りてこい!!」

「い、いや、待てよ…俺にはこいつがいるんd…」

 

ミラがずっと座っているアモネを指さし何か言う途中に横にいた兵士が倒され、謎の二人によってアモネは救出された。その二人は…あの時世話になったシャルとサラがいたのである。

 

「シャル…サラも…どうして?」

「あの時、あなたがいなければ俺たちは死んでいたからな。少ないが、借りを返しにな。」

「アモネちゃんに連絡送っても返事がないし、不安になってサーチしたら変なところにいたから来てみたらこうなってて…」

「すごく感謝しているよ…ありがとうな」

「しかし、そいつは俺がしっかり洗脳してな……!!」

「ごめんなさい、全く洗脳されていなんだよね。体もピンピンだし毎日何話しているか意味わからなかったよー。気味悪かったから殺そうにも殺せなかっただけであって…あ、メイカーさんもそうだと思うよ」

 

アモネの発言の後、皆笑った。可笑しすぎたのだ、今まで自分の思い通り進んでいたと思っていた計画は進んですらいなかったことが滑稽すぎる。俺もばかばかしくなり大声で笑ってしまった。囚人たちも笑い、バトラーはよく分からないが勢いよく仲間を投げ飛ばし、バラに関しては腹を抱えて過呼吸にならんばかりに大笑い。後から来た二人も笑い、アモネもクスクス笑う。さっきまでの空気はどこに行ったのだろうか。そんなこと誰も考えてすらなかった。

 

「さて…忘れてたけどもう一つ。お前のその価値観に黒色を塗り付けてやる…そのために俺はここに来た。覚悟しろ…!」

 

確かにミラは社会的に半殺しになった。が、それだけでは済まないのが今回の案件だ。今までの怒りをあいつにすべてぶつけることですべて終わる。俺はポーションを飲みほし自らが着ている白いコートを脱ぎ捨てると久しぶりに持つ曲刀『ファルシオン』を右手に全力でミラに近づく。表情を見るが俺が近づく度恐怖に染まっていく顔色…最高だった。が、そこに最後のイベントが待ち受ける。

 

『11月7日14時55分 ゲームはクリアされました-ゲームはクリアされました-ゲームは…』

 

最悪だ。このタイミングでゲームクリアなんて誰が考えた。俺は急いでミラの元へ向かうがもうミラは動かない。ミラは高笑いを上げながら俺を見下してくる。そして後ろを向くと、俺に手を伸ばすアモネがいたのである。他のみんなも何か言っているが、俺には全く聞こえない。心の迷いか、俺の足は停止してしまい動けなくなってしまう。やがて、足から転移と同じように消えていく、そしてミラとの距離は後数m、が運命はそれを許さずミラをログアウトさせてしまった。

 

「くそっ!くそっ!!クソォォォォォォォォォォォォ!おい!俺と、俺と闘えよ!ミラァァァァァァァァァァァ!」

 

無慈悲なことにその声は届かず、ひとりだけのこの建物に響き渡り、俺は意識を放棄した。




さて、ここまで読んでくださってありがとうございます!
全く話していませんでしたが、この話を書くまでの経緯…はここじゃなくてもいいですね…(汗)
半年前から書いていたというと長かったなと…時間を感じます。とりあえず一つ終わって私も嬉しいです!
実は…まだ続きます。と、なれば次はもちろん…そう、ALO編です!いったいどんな話が生まれるのか…私も楽しみです!!では次はALO編でお会いしましょう!ごきげんよう!!

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