ソードアート・オンライン 白い罪人   作:かえー

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久しぶりの投稿です…!!こっからは投稿頻度を上げていきたいです!!


一時の休息

レベルがようやく20を超えフィールドも上階層になるにつれて春になっていくこの頃、今までとは違い俺とアモネはPKではなく陽気な天候の中旅をしていた。プレイヤーが誰も襲ってこない、アイテムも十分、これならこれだけそろっていたらもう困ることはなかった。これだけなら。だが季節は春…今まで冬の世界にいた時とは違くて…

 

「あ、アモネ!いい加減こいつ何とかしてくれよ!!気持ち悪ぃ!!」

 

「まずは私を一人にした罰ゲームです♪一匹だけでいいんですよー♪」

 

虫に追いかけられる以外は最高なのだがな。一種のクエストとは言えいくらクエスト難易度が低かったとしても、虫が足されるだけで命の危機に死活問題と化するのだ。クエスト開始と同時に俺はこの草原に放り込まれ、それと同時に目覚めたカマキリのモンスターに追いかけまわされているのだ。マージンはあるのだが、振り向いたら最期だろう、捕食される。

恐らく五分くらい走っているのだろう、息が切れ捕食へのカウントダウンは一刻と迫る。俺は一つの可能性に欠けて実行した。走る向きを変え、アモネの方へ駆け込む。するとカマキリも方向尾を変え再びこちらに走りこんできた。アモネは俺よりレベルが高いからカマキリを倒してくれるだろう。そう思った。

しかし彼女は、先ほどまで笑っていたアモネも血の気が引き、真っ白の顔で絶叫しながら全力で駆けだした。

 

「ちょ、アモネまで逃げてどうするんだよ!あいつどうするんだよ!!」

「虫だけは無理なんです!!虫だけは絶対に無理です!!」

「お前のレベルだと攻撃当てるだけでこのクエスト終わるだろ!一回でいいから頼む!!」

「これはリンネさんのクエストなんですよ!お金は全部あげますからクリアしてください!!」

「俺は死神だ…俺の専門はプレイヤーだァーーーーーーーーー!!」

 

この悲痛な叫びにより他のプレイヤーに助けてもらったもののすぐに『解放軍』に報告され、俺たちの休日は一日で潰れた。

 

「どうするんですか、あんなこと言うから寝床まで失ったじゃないですか。」

「知るか!自分もできないクエストを受理すんな!!」

 

他のプレイヤーが第50層が突破したことで始まりの街や25層の上をいくサービスを受けられることとなった。50層の料理は他の料理と比べ物にならないほど美味く、街並みも綺麗。商品も安くより強いものが買え生活が楽になった…気がする。まぁ、自分たちがやったわけではないがこの層をじっくりと愛した。

目の前のハンバーグを頬張るだけで先ほどの怒りが一瞬にして消え去り和やかな気持ちになる。彼女も同じようでパフェを食べるその顔に恨みの感情は一つも残っていなかった。結局このお題は俺が支払うことになり俺は不機嫌になってしまうのだが。

 

改めて、50層は広い。宿の数も格段と違う。ということでめげずに宿を探し続けた。が、体は正直で走った筋肉痛が出始めていた。そんなものはステータスに全く影響を与えないが、恐らく気の問題だ。宿がないのと虫に追いかけられたショックがダブルで俺の体にボディーブローをかます。前を見たら幻影か、虫と宿が俺を指さしてくすくす笑う…限界だった。

と、気づけばアモネがいなくなっている。フレンドを確認したが町の中にいることが分かる、だが現在地を見るまで俺の気力は残っておらず目の前の柱に頭を直撃させてしまう。もう、このどうしようもない気持ちをどうにかしたい…と思うと俺は泣いていた。泣きたいと思っていないのに泣いた。すすり泣き、感情高ぶり、わめき泣く。周りの目などどうでもよかった、ただこの気持ちを消化したかった。

と、その時聞き覚えのある声が近づくことに気づく、幼げのある高い声、その方向を見るとポンチョを見に纏うアモネが駆けてきた。続いて俺をおんぶして再び走り出した。

 

「見つかりましたよ!私たちを泊めてくれる宿!」

「どうせ…キャンプとかいうんだろ…今日は…諦めて収容所行こう……」

「違うんです!安くてベッドもあって食事もついてきて尚且つ朝はお姉さんが起こしてくれるそうですよ!!」

「何!?それは…」

 

アモネの目の色がすぐに変わった。これは…俺を殺そうとしてきた時の目、要するに怒っている…今俺はアモネの背中の上。ダメージが入らないものの彼女の背負い投げは確実に俺のステータス外に影響を及ぼすだろう。

 

「…はー…要らないな。ベッドに寝れるなら早くい…」

「ただし…少々訳ありで…」

 

というわけで層をいくつか飛び第55層、その宿に来てみたが…噂とは違い現実でのホテルと同じような構造になっていてや住み心地はありそうだと確信した。フロントはNPCがしており、掲示板にはいろんなプレイヤーのコメントや依頼が載っていた。

食事の時間となり昼に食べたものよりかは量は減ったものの、しっかりと食事をとることができ、満足して俺は部屋に戻り風呂の順番を待った。部屋は机とトイレ、ベッドだけという簡素なものだったがこれが安さの秘訣なのだろう。ログには感謝の言葉がたくさん記載されている。噂なんて忘れてベッドに横たわったのとアモネの悲鳴が聞こえたのは同時だった。

悲鳴が聞こえた方向へ向かうとそこは…風呂。アモネは入浴中だったのだ。風呂は四部屋で共有なので誰が入っているかわからなかったが…鍵でも閉め忘れて裸を見られたのか、真相を確認に許可をもらおうとしたがアモネの索敵能力は俺をあっさりととらえる。

 

「り、リンネさん、ついに人を殺すだけでなく…他の罪でも犯しに来たのですか……!?」

「ち、違う!とりあえず今の悲鳴の理由を服着替えて風呂上がって説明してくれ!!」

「は、裸を見るつもりですね!見たらこんどこそ貴方の命はないですよ!!生きても貴方は社会的に死にます!っ絶対に死にます!!というかもう今日の虫に食われて死んでしまえばよかったんですあーなんで生き延びたのでしょうこのような犯罪者を何故助けたのでしょうこのようなやつはアリとかムカデなんかに捕食されて死んでしまえこの」

「風呂の中で服装備したら問題なくないか?」

 

急にアモネの罵倒は泊まり風呂場の中が光ったと思うと、脱衣所を遮るドアから顔を赤らめたアモネがうつむきながら歩んできた。普通に見ていると恥ずかしがっている御年頃の少女に見えるのだが、それに加え体の周りには湯気とともに殺意を纏い、水の滴る髪の隙間から俺を一睨みしている。とっても怖い。

が、アモネは何かに気付いたように俺を風呂の中に押し込む。抵抗もできず俺は風呂に入ってしまうが驚きの光景に俺は足を止めてしまう。シャワーとソファーほどの大きさがある湯船があり風呂も狭くなく広すぎないどこにでもありそうな浴室だ。が、一つだけ見たことのないものがあった。その部屋にある鏡にはステータスメッセージ…ではなくただのメッセージ。だが、それは赤く血のようなもので書かれていたためにダイニングメッセージにも見える。その内容は

 

「『今宵、貴方たち一人を殺ス。どのようなことがあっても一人だけ殺ス。捜索は無意味。命を神にささげよ』…こんなのに驚いたのか?まだまだ子供だな…」

「な、急にこんなことがあったら誰だって驚きますよ!しかもお風呂ですよ!!誰だって体を守ろうとしたりしますよ!!」

「またまた…子供だな…」

「自分だって同じことがあったら絶対同じように驚きますから…賭けてもいいですよ。」

 

くすくす笑いアモネを馬鹿にして部屋に戻る。フラグでなければいいのだが…と思い机に座った…瞬間目に赤い何かが飛び込んでくる。その勢いにただ叫び声しか出なかった。その悲鳴を聞き、アモネが武装を終わらせ部屋に飛び込んできた。俺も叫び終わった後、深呼吸をし部屋を確認したところ誰もいない。そこには先ほどと同じように赤い字で同じことが書いてあった。その様子を見たアモネは俺を笑うことなく呆然としていた。そう、この宿の噂とは…

 

『毎日プレイヤーが謎の不審死を遂げる呪われた宿』

 

宿の主はNPC、何物にも弄られた形跡もなく最初から宿屋として営業していて、他のプレイヤーの話によると宿全体が広くさらに安いためにギルドで使うことが多かった。が、毎日の晩にあるメッセージが届く。それは誰が送り主か分からないメッセージ。止まっているプレイヤー全員に届いた後夜が明け朝になる。次の朝、プレイヤーが一人いなくなっていたという。生命の礎を確認するとそのプレイヤーは死んでいたという…が手口は分からず運営にも連絡するももちろん返答はない。そしてその謎を求めてオカルトマニアや熟練のプレイヤーが泊まりに来るらしい。

そこに俺たちは泊まっている。今日の宿泊人数は8人。この八人のうち一人は死ぬ…吐きそうな気持の中…眠った。

 

次の日、何とかこの世界で目覚めることができ、フロントへ向かったところ昨日宿泊していたプレイヤー達だろうか、丸い机を囲んで何やら話し合いをしている。後ろを見ると寝起きのアモネがアイマスクをしたまま寝ぼけて歩いてきた。そんなアイテムがあるのかと突っ込みたいが、今はそんなことはどうでもいい。

机に座っている一人に目で呼ばれ急ぎ足でその会議に参加する。が、そこには赤い禍々しい字で見たことあるようなことが書いてあった。

 

『この中にお前タチを狩ルプレイヤーがいる。もし命が欲しければ追い出セ。』

 

何か身に覚えがある出来事だが思い出せない。この話し合いでまた一人仲間が消える。要するにこの中にプレイヤーの皮を被ったモンスターがいる…生き残りたければ自分の身の潔白を証明しモンスターを見破る。全員が敵、これじゃせっかく休みに来たのに心理的にまた闘わなくてはならない…あんまりのことにため息が出てしまった。

 

「リンネさん…これ私やったことあります!」

「バカ!お前が犯人でもここで言うな!!」

「違います!!これは…ゲームなんです!!現実でも遊びとしてやったことがあるんです!!」

 

小声ながらすごいことを言おうとしている。俺もあと一歩のところまで出ているのだが…と、そんなことを話していたら机の連合軍たちに睨まれてしまう。

 

「おい、お前がやったんだろう。元犯罪者(オレンジプレイヤー)。どんな奴でも殺すことは知られている…」

「いや待ってくれよ!元々俺は自発的にキルはしてないし、最近は平穏に過ごしているし、もう一匹狼じゃない!!」

「狼…私わかりました!!」「俺も分かった…」

「「人狼ゲーム」」

 

ただの戦略ゲームが…現実での平和な娯楽が、この世界で開催されること…平和な『遊び』は一瞬にして『殺人者』の遊びになってしまい…俺らは命をかけた遊びに挑む、自分たちの命を守るために。


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