魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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年内には終わらせたい


第三十八訓 絶望&希望

長谷川泰三VS四葉真夜

 

誰もが予想できなかったであろう異色のカードがぶつかり合う。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

同時に床を蹴り上げ互いに真正面から突っ込むや否や、己が持つ魔力ではなく拳による肉弾戦をおっ始める。

 

一流の格闘家、もしくは辺境の星に住む戦闘民族でしか捉えきれぬほどのスピードでの殴り合い。

 

一歩も譲らぬ両者の戦いによって、周りには衝撃波が生まれ、床や壁には徐々にヒビが割れ始める。

 

「食らいなさい!」

「もらった!」

「!」

 

一手早く動けた長谷川からの拳が当たる直前で、真夜の姿が一瞬にして消えた。

 

そして次に彼女が現れたと思ったらいつの間にか長谷川の背後に、そして両手を合わせながら真夜は間髪入れずにそのまま突き出し

 

「波ァァァァァァァァ!!!!」

「ぐぅぅ!」

 

真夜の両手から強力なエネルギー波が放たれ、隙を突かれた長谷川がそれを真正面から食らってしまい

 

しかしそのまま無様に食らってしまったわけではない、彼女が放ったその一撃を長谷川は歯を食いしばりながら両手で受け止めている。

 

そして立ちどころにそのエネルギー波は彼の両手の中で消滅。

 

「なるほどそれが俺の力か。確かにそいつを操れれば天下も取れるだろうな、今までそいつの存在に気づけなかった事が悔やまれるぜ」

「安心しなさい元長谷川さん、この吸収の力は私がこれからも上手く使わせていただきますので」

 

長谷川泰三の持つ『万物を吸収する力』、その存在の前にいかに真夜の強大な魔力でも対処するのは非常に難儀だ。

 

しかしだからといってここで退くつもりなど毛頭ない。

 

「悪いがその力もその体も全て俺のモンだ、お前さんが引き出してくれたその力、今後本物の長谷川泰三が使わせてもらうぜ」

「フッフッフ、残念ながらあなたはもう二度とこの体を手にする事は無いわ、何故ならこの戦いで勝利するのはこの……!」

 

先程吸収した筈の真夜のエネルギー波を自らの片手に生み出す長谷川、そしてそれをグッと彼が握り締めた瞬間、何十個もの分裂粒子となって長谷川の周りに飛び散る、そして

 

「私なのだから!!」

「チッ!」

 

自分のエネルギー波を再利用して自らの技に組み上げた長谷川、分裂して数十個となった塊を、両手を交互に突き出して連発に真夜目掛けて弾き出す。

 

「消え去りなさい! その醜き体ごと!!」

「フン、テメーの体を醜い呼ばわりか。とことん自分が嫌いみてぇだな、だが」

 

襲い掛かる分裂粒子を真夜は回避動作も必要ないと真っ向から突っ込むと、両手だけを使って次々と弾き飛ばしていく。

 

「この醜い身体に負ける者! それはお前だぁ!」

 

全ての攻撃を弾き飛ばすと真夜は再び右手の拳を固めて思いきり長谷川に振り抜く

 

それを読んでいた彼も負けじと拳を突き出して、真夜の拳に直接ぶつける。

 

両者の拳は激しくぶつかり合い、辺り一面に更なる強力な衝撃波が発生した。

 

「……どうやら私と同じく、あなたも相当鍛え上げたみたいね」

「実力は五分って事か、今の所はな」

「ええ、いずれ決着は着くでしょう、私の勝利で」

「それはねぇな、勝つのはこの俺だ」

 

互いに拳を突き出して押し合いを始めているのだろうが、二人の足下は一向に動く様子がない。

 

両者の力は拮抗し、完全に互角の実力なのであろう。

 

緊迫した状況の中で笑みを浮かべ己の勝利を信じて疑わない二人

 

そしてそんな彼等の下へ

 

 

 

 

「いい加減に!!」

 

長い銀髪を靡かせながら一人の少女が、両手に持った木刀を掲げたままの状態で長谷川掛けて飛び掛かる。

 

「しやがれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

かつての姪っ子である坂波銀雪の奇襲がこちらに飛んで来たと察した長谷川は、すぐに拳を引いて一歩後ろに下がってそれをヒョイッと避ける。

 

銀雪が降り下ろした木刀はそのまま床に直撃、割れていた床が更に抉られ、辺り一面に氷の結晶が飛び散る。

 

「忘れてんじゃねぇぞ俺達を!」

「あらごめんなさい深雪さん、けどちゃんと忘れてないわ。この男を始末したらすぐに……」

 

こちらに向かってキレた様子で唾を飛ばしてくる銀雪を諭しながら長谷川はスッとその力を吸収してもう一度大人しくさせる為に手をかざそうとする。

 

だがそれを狙っていたのか

 

「悪いがもうその力を使わせる訳にはいかない」

 

長谷川の側面目掛けて徳川達茂が両手に持った拳銃を突きつけながら現れる。

 

しかし狙いは長谷川ではなく、彼が付き出している手の先にある……

 

「忘れたのか伯母上、俺の力は『分解』、例え人体であろうが魔法に用いる術式であろうが……」

 

空中を漂いつつ達茂は冷静に銃の引き金を引いた。

 

「あらゆるモノを消滅させる」

「あら、油断しちゃった」

 

長谷川の手の先に合った何かがガラスの様に割れて破片を撒き散らす。

 

すると銀雪は力を奪われずに済んだのか、以前余裕の様子で長谷川目掛けて駆け出した。

 

「長谷川さんばっかりにいいカッコさせられっかよ!」

 

両手に持った木刀が冷気を帯び始め、あっという間に氷の氷柱となって鋭利な刀へと早変わりする。

 

「テメェを倒すのは主人公の俺だぁ!!」

「それはちょっと難しいわねぇ」

 

二振りの氷の刀をクルリと身を翻して避ける長谷川、だが今度は同じ様に距離を詰めて来た真夜が

 

「いやテメーの体を取り返すのは俺の役目だぁ!!」

「く……」

 

至近距離から白い光線を討ち放ってくる真夜の攻撃を魔力を吸収する事によってなんとか打ち消す。

 

しかしその次は

 

「いやいや、原作に乗っ取って伯母上を倒すべき存在は俺の筈だ」

「!」

 

再び彼が銃口を突き付けたのは長谷川本体、銀雪と真夜の二人相手に苦戦していた所を突かれ、長谷川はグラサン越しに目を見開くと

 

「全く次から次へと!」

 

グッと全身に力を込めると体内の魔力を収束し、それを衝撃波として一気に開放したのだ。

 

ほとばしる波動に三人はあえなく吹き飛ばされてしまい、一気に距離が開いてしまった。

 

「はぁ全く……連係プレイで来られると中々厄介ね、まだこの体は本調子でないというのに」

「悪いが俺の身体はそう簡単に操れるモンじゃねぇんだよ」

 

一瞬ヒヤリとしてしまった事を隠しながら長谷川は安堵のため息。

 

彼に吹き飛ばされた真夜はというと、正面で向き合いながらタバコを咥えたまま呟いた。

 

「まあ俺もこの体には結構難儀してるんだけどな、何せ年が年だから筋力強化系の魔法を積んでもこの程度の動きしか……あうち!」

 

タバコに火を点け優雅に一服を嗜もうとしたその時、突如彼女の後頭部にゴツンとかなり痛い衝撃が

 

涙目で振り返るとそこに立っていたのは仏頂面の銀雪

 

「っていきなり何すんだよ銀さん! 後ろから闇討ちとか卑怯だぞ! これでも俺がラスボス打倒の要なんだからもうちっと丁寧に扱ってくれよ!!」

「そこだよそこ、さっきから俺がずっと引っかかてるの」

「へ?」

 

後頭部をさすりながらすぐ様抗議する真夜に対し、銀雪はジト目で彼女を睨み付ける。

 

「どうしてアンタみたいなぽっと出のオッサンが俺やお兄様よりラスボスと凄まじいバトル繰り広げてんだよ。何さっきの? 勝手に二人でドラゴンボールみてぇな戦いしてんじゃねぇよ、こちとら戦いを見守るだけのウーロンになった気分だよ、蚊帳の外感半端ないんだよ」

 

最初に二人だけで戦い始めた時、銀雪と達茂は同じ場所にいながら全く加われない状況だったのだ。

 

二人がぶつかり合って拮抗した時に、一か八かに賭けてやっと参加できたのである。

 

そんな自分の戦いの外で色々と困っていたと知った真夜は、小馬鹿にしたかのようにニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ああごめんごめん、銀さん達のレベルじゃまだ俺達に追いついてなかったか~、悪かったなウーロンとプーアル~、俺達って言わば神様と悪役時代のピッコロレベルだからさ、まあただのマスコットにしちゃ頑張ってるんじゃないの?」

「ああ!? ウーロンをナメんなよ! 本気になれば黒光りの鎧着た大男に変化できんだぞ!!」

 

ラスボス前にすっかりいつも江戸でやっていた様な喧嘩を始めようとする二人に対し達茂がすぐに二人の間に入る。

 

「下らん喧嘩をするな、神様とウーロン。いい加減にしないとプーアルがヤムチャになるぞ」

「いやお兄様、ヤムチャになっても正直微妙かと思うんすけど? そいつ人間の体借りた神様に負けてますし」

 

天然ボケをかます達茂に銀雪はボソッとツッコミを入れた後、フンと鼻を鳴らして彼の言う通りに真夜に食って掛かるのを止める。

 

「だがお兄様、コイツはもしかしていけんじゃねぇか? どうもアイツ、タイマンでやった時とは強いけど3人がかりでやりゃあもしかしたら……」

「ああ、叔母上の力は大体検討付いた、どうやら一度に吸収する力は一種類のみらしい」

「だから俺から『体力』を吸収しようとした時にお兄様の『魔力』を打ち消す事が出来なかったのか」

 

戦いの中で達茂は長谷川の持つ力の欠点を見抜いていた。

 

吸収できる力は一度に一つまで、つまりこちらが肉弾戦と魔法戦を同時に仕掛ければ、片方に気を取られてる隙にもう片方で責めればいいという事だ。

 

しかもこちらは三人、皆の思考を読んで吸収する力を選ぶとなると中々手こずる筈。

 

「吸収への攻略法は見つかったと思いたいが、果たしてそれが正解なのかどうかわからんがな」

「ったく、長谷川さんのおかげで大迷惑だぜこっちは、お兄様、将軍の権限でコイツ切腹にしてください」

「いや俺のせいじゃないから! 悪いのは俺の体に不法侵入したアイツのせいだから!」

 

さり気なく自分のせいにして将軍でもある達茂に切腹を命じようとする銀雪に真夜が叫ぶと、こちらに不敵な笑みを浮かべる長谷川を警戒する視線を向ける。

 

「確かに勝ち筋が見えたからといってそう簡単にいく相手じゃねぇな、ありゃまだ何か企んでる気配だ、間違いねぇ」

「だからといって引き下がる訳にはいかねぇだろ、ねぇお兄様」

「ああ、ここまで来たら常に警戒を怠らずに奴と戦うという方法でやるしかない」

 

入れ替わった者同士だと相手の考えが読めてしまう事がある、真夜は長谷川がまだ秘策を持っているのではと怪しむが、銀雪と達茂はもう戦う気満々の状態で再び走り出す。

 

「たたみかけるぞ! 速攻で決めて俺達の元の身体を取り戻す!」

「……簡単に言ってくれるわね」

 

銀髪をなびかせ果敢に突っ込んで来る銀雪にボソリと呟く長谷川に達茂がすかさず横に入って手に持った銃の引き金を引く。

 

「でもそう易々と上手くいくとは思わない事ね」

 

当たれば体を消滅しかねない魔弾に向けて長谷川が手を向けると一瞬にして打ち消される。

 

そしてそこに近づいた銀雪が木刀をすかさず叩き込む。

 

「あなた達の戦いは見事だというのは素直に認めてあげるけど」

 

彼女の木刀を左腕でガードして防ぐ長谷川、そしてその隙をついて真夜が飛び掛かり

 

「テメー自身の十八番を食らいな! 流星群!」

 

窓から見えるたくさんの星の光を下に展開した魔法を長谷川目掛けてお見舞いする。

 

それは対象に無数の穴を空けて相手を跡形もなく塵へと変えてしまう程の殺傷力が非常に高い技。

 

殺す気でかからないと勝つ事は出来ないといわんばかりに、真夜も本気で長谷川を仕留めにかかっているのだ。

 

「それだけで勝てると思ったら大間違いよ」

「!」

 

全身に穴が空くどころか立ちどころにその魔法式事吸収し、そっくりそのまま真夜へと反射しようとする。

 

だがそれを達茂は呼んでいたのか、標準が真夜に向けられた時点で既に長谷川目掛けて一気に走り出し

 

あっという間に手の届く範囲にまで近づくと、腰に差した刀を抜いて横一閃。

 

「その台詞はもう聞き飽きた」

「つ……!」

 

なんとか避けようとする長谷川だが振り抜かれた刀の先が、彼の右腕に僅かに届く。

 

初めて血を流した事で長谷川の顔色が変わり出すと、銀雪もまた魔力を解放して、ガードしている左腕をあっという間に氷漬けに

 

「年寄りは同じ事を何度も言いやがる」

「くッ!」

 

兄妹により両腕を封じられ、長谷川が冷や汗を垂らし明らかに冷静さを失っていると

 

その隙をついて真夜もまた拳を振り上げ彼に駆け寄り

 

「終わりだ、これからは年相応に大人しくしてるんだな」

「ぐっはぁ!!」

 

魔力の込められた拳をそのまま長谷川の腹部に思いっきり叩き込んだのだ。

 

初めてまともなダメージを食らい苦悶の表情を浮かべる長谷川。口から血を噴き出し明らかに効いている。

 

「勝負ありだな、マダオの力を思い知ったか」

「へ、ラスボスつってもこの程度かよ」

「年貢の納め時だ、潔く負けを認めろ」

 

これが三人、否、五人の連携によって成り立った必殺の一撃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「引っかかったわね……」

「!」

 

しかしその瞬間、彼に拳を叩き込んでいた真夜は背中からゾクリと悪寒を覚える。

 

腹部に食い込む程深々と刺さった拳が、何故か引き抜くことが出来ない。

 

むしろ逆にあっちに引っ張られてる様な……

 

「最初からずっと私の狙いはコレだったのよ」

「おい長谷川さん! アンタの腕! そいつの体に飲み込まれてるぞ!」

「えぇぇぇぇぇ!? 何これ聞いてないんですけど!?」

 

銀雪が叫んでるで真夜は己の腕の先を見ると、みるみるその腕は長谷川の体内に飲み込まれている事に気付いた。

 

「ちょ! まさかお前! 俺を! テメーの本当の体を吸収するつもり!?」

「元よりずっと前からそのつもりでしたよ元長谷川さん……実を言いますと今のままの私ではこの力の真価を発揮できないの、必要なのは……」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「あなた自身の『魂』です……!」

 

腕だけでなく体の半分も飲み込まれていく真夜を見て、銀雪と達茂は同時にヤバい!と察知して長谷川に攻撃を仕掛ける。

 

しかし

 

「かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「うお!」

「くッ!」

 

使えなくなったと思われていた両腕から衝撃波を放ち二人を反対方向に吹き飛ばす長谷川。

 

苦戦していたのはやはり彼の演技だったのだ。

 

銀雪が氷漬けにされた筈の左腕はすっかり元通りになっている。

 

「可哀想な事しちゃったわね、私ったらつい久しぶりに可愛い甥っ子と姪っ子と遊べるからって手加減しちゃってたわ、ごめんなさいね、達也さんに深雪さん」

「コイツ、ハナっから長谷川さんを狙ってたのか!」

「入れ替わった者同士による魂と魂の融合……しかしそれは互いに理解し合った者同士でしか出来ない筈だ……」

「不可能を可能とするのが王の特権よ、この力にかかれば”出来損ない”の定義など簡単に覆すことが出来るの」

 

出来損ないというのは恐らく”あの二人”の事であろう、影に潜み銀時や達也達を助けるために慣れない世界にいながら手回しを行い続け、更には入れ替わり現象の謎も解明した功績を持つコンビ。

 

それを出来損ないなどと決めつける長谷川に対し、起き上がった銀雪の目の色が変わる。

 

「出来損ないはテメェだ、四葉真夜。借りパクした力と体でどれだけ取り繕っても、結局テメェの本性は醜いのに変わらねぇ、貰ったもんで威張りくさってるテメェよりも、身体を奪われてもなお俺達の為に戦ってくれたアイツ等の方がずっと立派なんだよ」

「フフ、言う様になったわね深雪さん。でもどれだけ吠えようがもう遅い、あなた達の滑稽な物語はここで完結よ」

 

本気でキレている表情で食って掛かる銀雪に長谷川はせせら笑みを浮かべると、そのまま一気に真夜を体内に取り込んでいく。

 

「まだだ! まだ終わっちゃいねぇ!」

 

徐々に体の自由が利かなくなってきた真夜は、薄れゆく意識の中で必死に叫ぶのは命乞いでも悲鳴でもなく。

 

未だここにいる味方へに送る最後のメッセージだった。

 

「銀さん! アンタが持っているその特製の木刀にはコイツの力を鎮める力を持っている! 俺と同じく異世界に来た源外のおっさんと! 達也君が信頼している研究チームが共同で発明した最後の切り札だ!」

「長谷川さん……!」

「そいつには俺達の世界と向こうの世界の願いが重ねられているんだ! やってくれ銀さん! 二つの世界の命運はアンタに託した!」

 

銀雪は通常の木刀より少し軽めの特殊デバイスが装着されている木刀を強く握りしめる。

 

彼女の言う通りであれば、勝機を得るにはもはやコレに頼るしかない。

 

「随分とキツイ役回り押し付けやがって……」

「フ、わかってんだろ、マダオを止めるのはマダオだけだ……」

 

後は任せたと、吸収されていき静かに消えていくなか真夜の口元がニヤリと笑う。

 

 

 

 

 

 

「頼んだぜ、俺と同じくまるでダメなオッサンよ……」

 

最期にそれだけ言い残すと彼女は完全に長谷川の体内へと飲み込まれていった。

 

 

そして彼女を取り込み満足げに笑いながら、長谷川泰三の身体はみるみる黒いオーラを纏いながら光り出す。

 

「感じる……感じるわ……! 見なさい二人共! そしてひれ伏しなさい! 新たな融合生命体の誕生に!」

 

すると邪悪な雰囲気を醸し出しながら長谷川の身体はみるみる変化していく。

 

銀時と深雪、達也と茂茂が用いた方法とは違う一方的に相手を取り組む事によって出来た融合は、とても禍々しいモノであった。

 

全身の肌は真っ黒に染まり、纏っていた服がビリビリと破けて全長三メートルぐらいの大きさへと成り果てる。

 

しかし大きくなって服の方は破けたというのにグラサンだけはちゃんと付けている。

 

股間にもこれまた不気味な黒い球体が現れ、男性のシンボルを死守。360度あらゆる方向から見ようとしても決してその向こう側を覗く事は出来ないという、子供と一緒に見ている保護者も安心出来る仕様。

 

遂に長谷川泰三こと四葉真夜は、この宇宙で最も最強の融合体へと進化することが出来たのだ。

 

「魔堕王≪マダオ≫……これこそ今の私に最もふさわしい名、マジでダークな王であられる私の前に全宇宙にいる生命体は全て怯え、苦しみ、絶望に震えるといいわ……」

「何が魔堕王だ、結局体とチンコがデカくなっただけじゃねぇか、見た目長谷川さんのままだし全然怖くねぇんだけど」

「コレが叔母上がずっと目指していた究極の魔法師の正体とは……無いなこれは、うん絶対に無い」

「あれぇぇぇぇぇぇぇ!? 思ったよりテンション低ッ!? なんなのあなた達!? ラスボス最終形態を前にして驚くどころかだだ下がりって!」

 

予想とは随分と違うリアクションを取る銀雪と達茂に、邪悪なる融合体、魔堕王は長谷川泰三の時と同じ口調で困惑していると、銀雪がそんな巨大な彼に向かって一歩歩きながら二本の木刀を構える。

 

「安心しろ、もう帰るかなんて言わねぇよ。こちとらもう何人もの奴等に色々託されてんだ、だったらもう退く訳にはいかねぇ」

 

真のラスボスを前にして、銀雪は散り際に言っていた魔堕王対策用特製の木刀を突き付ける。

 

 

 

 

 

 

「ただ一撃、ここにいる俺達全員分の魂が込められた一撃を叩き込んで、感動のフィナーレといこうや」

 

 

全身全霊の一撃を込める事に集中し、銀雪は真っ向から魔堕王に勝負を挑む

 

戦いはいよいよクライマックスに

 

果たして勝者は……

 

 

 

 

 

 


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