魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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第三十四訓 司波&四葉

桂小太郎&七草真由美 蓮蓬VS連合軍が行われてる戦場のど真ん中

 

坂波銀雪 蓮蓬軍の最深部

 

高杉晋作&中条あずさ 行方知れず

 

 

そして坂本辰馬と千葉エリカはというと

 

「……アンタって本当に厄病神かなんかでしょ?」

「何を言うわしは幸運の女神に祝福されし商人ぜよ! せっかく互いに元の身体に戻れたっちゅうのになんたる言い草じゃ!」

「うっさいこの詐欺師、だったら周りにいる連中を見なさいよ」

 

他の者と同じく彼等もまた無事に身体取り戻す事が出来た。

 

エリカの方は独断で逃げ出そうとしたのだが、合流した坂本が彼女を無理矢理この舞台に引きずり込む。

 

その舞台とは

 

「こげな状況を前にしてよくもまあ言えたモンじゃなぁおまんはぁぁぁぁぁ!!」

「アハハハハハ! わしの土佐弁がまだ移ったままじゃぞ娘っ子」

 

エリカは刀を、坂本は銃を持って背中合わせの状態で

 

武装した蓮蓬達に囲まれてる絶体絶命のピンチであった。

 

彼等がいるのは地球人側、つまり味方陣営の筈なのにこの敵の数は一体

 

理由は至極簡単、入れ替わり装置が破壊された事によって皆の身体が元に戻れたのはいいものの……

 

それはつまり、今まで蓮蓬の身体で味方として戦ってくれてた地球人達も皆元の身体のある世界へと戻ってしまい、そして自分達の世界にいた蓮蓬もまた元の身体へと戻った事によって

 

『おのれ地球で好き勝手やっていたらまさかこの様な……』

『我らの計画を妨げるとは許さん』

『せっかくだ、元に戻れたのであれば反乱分子をまとめてここで』

『処刑してくれるわ!』

 

気が付いたら四方八方敵だらけになってしまったのだ。

 

「なーにが味方陣営なら安全よ! おもっくそ敵だらけじゃないのぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「いやーわしとした事がうっかりしちょった、よくよく考えればわし等も元に戻ったという事は、蓮蓬も元に戻った事になるんじゃったな、うん」

「うんじゃねぇ! アタシはもうこんな戦いなんかどうでもいいのよ! アタシが今も止めてるのは平穏なの! 植物の様に静かに暮らしたいのよ!」

「どこの殺人鬼じゃ」

「なのにアンタは最後までアタシの邪魔をしおってからに!」

「おいおい娘っ子、おまんも魔法使いとして今まで頑張って来たんじゃろ? その頑張りの成果は一体何処で使うきなんじゃ?」

 

後ろでガミガミ騒いでいるエリカに対して坂本は至って余裕そうに笑みを浮かべながら

 

「いつやるか!? 今でしょ! アハハのハ~!!」

「うおぉぉぉぉぉ斬りてぇぇぇぇぇぇぇ!!! 例えこんな所でこんなオバQに殺されようとも! せめてコイツだけは道連れにして死んでやる!!」

 

どっかで聞きかじった様な事をほざいて自分で笑い出すこの勝手な男に、エリカは周りにいる蓮蓬よりもこの男に対して強く殺意が芽生え始めていると

 

「あ! 大変じゃ娘っ子! どうやらわし等だけじゃなく他のモンも襲われとるらしいぞ!」

「は? アタシ自分以外の人間がどうなろうが構わないんだけど? こっちが精一杯なのに他の奴等の事なんか気にしてる場合じゃ……」

 

急に向こうを向いて何かを見つけたのか、慌てて叫ぶ坂本に釣られてエリカは睨むようにそちらへ振り向くと

 

「ウホ! ウホ!」

「ウホホ! ウッホ!」

『大人しくしろゴリラ』

『バナナやるから』

「ってなんでゴリラがこんな所にいんのよぉぉぉぉぉぉ!! しかも2頭も!」

 

見るとそこには2頭のゴリラが自分達と同じく蓮蓬達に囲まれているではないか。

 

怯えつつも強気にうなり声を上げるゴリラに警戒しつつもジリジリと歩み寄って行く蓮蓬達、殺すつもりはなく捕まえるだけのつもりらしい。

 

あまりにも訳の分からないその光景にエリカが叫んでいると、坂本はハッとした表情を浮かべ

 

「ダブルか! っちゅう事はつまり……ダブルゴリラか!」

「言い方なんてどうでもいいでしょうが!」

「いかんぜんよ娘っ子! ダブルゴリラがピンチじゃ! はよ助けんと連中に捕まってしまうぞ!」

「こっちが殺されかけてるのにいちいちゴリラの保護なんてやれるかボケェ!」

 

相も変わらずアホな事を抜かす坂本にそろそろエリカが本気でブチギレかけていると……

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、こげな時も相変わらずみたいじゃなダブルアホ」

「!」

 

突如頭上をフッと何者かがこちらに悪態を突きながら飛び越えて通り過ぎていった。

 

エリカが一瞬その者が現れたことに目を大きく見開き

 

「アンタは毒舌冷徹最悪副艦長!」

「陸奥ぅ! 生きとったんかぁワレぇ!」

「待っとれ、今すぐ助けちょる」

 

それは宇宙船待機所にて巨大ゴリラと戦っていた筈の快援隊副艦長・陸奥であった。

 

思わぬ助っ人にエリカが驚き、坂本が喜んでいるのも束の間、すぐに陸奥はヒラリと衣を靡かせながら、大切なモンを護る為に戦場へと舞い降りる。 

 

「ダブルゴリラは貴様等に渡さんぜよ!」

『ぐへぇ!』

『あ、新手か!』

「って助けるのってゴリラの方かいぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

すぐ様2頭のゴリラを捕まえようとしている蓮蓬達を豪快に蹴りで薙ぎ倒してく陸奥。

 

まさかの艦長と自分よりもゴリラを優先するこの冷酷なる副艦長に、さすがにエリカも度肝を抜かれた。

 

「てんめぇ助ける相手間違えてんでしょうがぁ!」

「どうやらゴリラは無事の様じゃの、良かった良かった」

「ウホホーイ!」

「ウホウホ!」

「シカト!? なんなのアンタ!? 副艦長止めて動物愛護団体にでもなったの!?」

「陸奥ぅ! はよ手ぇ貸してくれぇ!!」

 

無事にゴリラを助けて安堵している様子の陸奥にエリカと坂本が必死に叫んでいると

 

「ようお二人さん、元に戻れたっていうのに災難だな」

 

突然周りを囲んでいた蓮蓬の一人が豪快にぶっ飛ばされる、死角無き陣形に一つの穴が開くと、そこから拳を力強く握ってこちらに向けている少年が一人

 

「良かったらこの西城・レオンハルトが助太刀するぜ?」

 

陸奥に続いて現れたのは彼女と共に戦ってい西城・レオンハルト、通称レオであった。

 

晴れ晴れとした笑顔で自分を親指で指す彼に対し、エリカと坂本はジーッとしばらく真顔で眺めた後

 

「「……いやお構いなく」」

「えぇぇぇぇぇぇ!? なんでさ!?」

「……言いたくないんだけどさ」

 

助けに来てくれたというのにそれをやんわりと断った二人の反応にレオが口を大きく開けて叫ぶと

 

エリカは髪を掻きむしりながら申し訳なさそうに

 

「正直、物凄く目立たないアンタが出ても仕事してくれるとは思えないのよね、アンタに出番割くなら他の主要メンバーにスポットライト浴びせた方が作品として面白くなると思うし」

「なにその漫画家の担当みたいな言い方!? 助けに来たんだぞこっちは!」

「まあ助けに来てくれた事はわしも感謝しとるよほんに、けども読者が求めるているのはあくまで何かと濃い個性を持った面子の活躍なのであって」

「という事で、もう少し設定練って色々と補正加えてから出直して来なさい」

「ぬぐおぉぉぉぉぉぉ!!! 俺の存在って一体なんなんだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

先程までに慌てふためいていたクセに、レオの事になった途端冷静にアドバイスを送る坂本とエリカ。

殴られてないのに心臓にグサリと刺された様な鋭い痛みが走り、レオが両手で頭を押さえながら悲痛な声で嘆いていると

 

 

 

 

 

 

「いえいえ、彼はよくやってくれていました。そこにいる彼女と一緒に蓮蓬と巨大ゴリラを引き付けてくれていたおかげで、我々は無事にこちらに入りこめられたのですから」

「「!!」」

 

突如こちらまで繋ぐ通路から聞き覚えの無い声が耳にする坂本とエリカ。

 

そしてその声が聞こえたと同時にキーンと何かやけに耳でしっかりと聞き取れた小さな音。

 

すると周りにいた蓮蓬達がドタバタと無言で倒れていくではないか。

 

「なんじゃ一体! 蓮蓬達がみな何もせずとも倒れおったぞ!」

「いきなりどういう事よコレ!」

「ご安心ください、殺しはしません。彼等に非はあってもそれを責める事は”共犯者”である我々には出来ぬ事ですから」

「共犯者?」

 

倒れていく蓮蓬達の安否を確かめる様に坂本がしゃがみ込んでいると、通路の奥からツカツカとしっかりとした足取りで声の主が静かに現れた。

 

その者はかなり年を食ったような白髪の老人の男性であった。しかし垂直に立って真っ黒な背広を身に纏ったその姿は老人と呼ぶには無礼であるとさえ感じるぐらい紳士的な姿をしている。

 

「お初にお目にかかります、わたくし、四葉家の執事長を務めさせてもらっている葉山忠教と申します」

「四葉家? はて? どこぞで聞いた事があった様な……」

「アンタさぁ、アタシの世界に長い間いたんでしょ? 四葉家って言えば十師族に入ってるとんでもなくヤバい一族じゃないの。それぐらい誰だって知ってるわよ普通」

 

葉山と名乗るその紳士的なご老人に対し坂本が首を傾げているとエリカがすぐに脇で彼の横腹を小突く。

 

「あまり公には出ずに裏でコソコソと怪しげな事やってるって有名なんだから」

「おっしゃる通りです、我々四葉家の者達は秘密主義を第一にとても表には出せない様な事を繰り返して来ました」

 

エリカの失礼な物言いに対しても葉山は表情崩さずに深々とお辞儀し、彼女の言葉を否定せずに受け取るとゆっくりと顔をこちらに上げた。

 

「しかしそれも今までの話、わたくし達がここへ来たのはその四葉家の者がずっと秘蔵していた秘密を自ら暴く為にやって来たのです」

「……どういう事じゃ?」

 

自らが隠し通していた秘密を自らで暴く? その言い方に坂本がグラサン越しに葉山の顔を覗き込んでいると、彼の隣に陸奥が2頭のゴリラを引き連れてやって来た。

 

「この入れ替わり騒動をおっ始めたのは蓮蓬でもSAGIでもない、コイツ等の当主じゃ」

「なに!? っちゅう事は地球人でありながら地球を蓮蓬に売ったっちゅう事か!?」

「おまんも似たような事はやっちょるじゃろうが、ただコイツ等の当主はおまんなんかよりもずっとイカレちょるみたいじゃぞ」

 

どうやら陸奥はもう葉山という男から事情を深く説明させてもらっていたらしい。

そんな彼女を坂本の背後からジト目を向けていたエリカが面白くなさそうに

 

「なんでアンタがそんな事知ってるのよ、もしかしてコイツ等と通じてたスパイなんじゃないでしょうね?」

「俺と陸奥さんはもうこの人達から話は聞いてんだよ、変に勘繰ろうとするなよアホのクセに」

「アンタはここぞという時に出てこようとしないでくんない? 二度とでしゃばらないようその口針で縫い合わすわよ?」

「コイツ元の世界に戻ったら絶対ぼっちにさせてやる……」

 

元の身体になってから更に性格が悪くなったエリカにレオがワナワナと拳を震わせてる中

 

坂本の方へ葉山は静かに歩み寄る。

 

「正確に言うと私も元はあなた方と入れ替わり組です、元の世界で彼女に対して幾度も止めるべきだと進言していた結果、謀反人扱いされ蓮蓬を手を組んだ彼女によって異世界へと飛ばされていました」

「なんとそうじゃったんか!」

「その時は”平賀源外”という男と入れ替わっていましたね、一人暮らしの自由気ままな生活ライフ……正直楽しかったです」

「いやそんな事アタシ等に言われても……」

「いやホントマジでパネェっすわ、誰にも指図されずに生きていける隠居生活とかマジジャスティス」

「なんか急に間違った若者言葉使い始めたわよこのジジィ! なんなのこのアグレッシプなジジィは!」

 

表情は変わってないのに口調が後半から思いっきり変わり始めた葉山

 

何処かで聞きかじったのか、最近の若者の言葉っぽくなった彼にエリカがツッコミを入れていると、葉山は再び深々とこちらに頭を下げる。

 

「私達はあなた方の世界に住む将軍、徳川茂茂公の要請を受けてここまで参ったのです。それは四葉家を護る為と同時に、現当主の彼女にこれまでの過ちを償ってもらう為に」

「ほほう、ならば説明してもらうとするかの、その四葉家の現当主がどうしてこないな事しでかしたのか」

「無論、全て包み隠さず教えます、その為に私と入れ替わっていた平賀源外殿ははるばるあなた方の下へやって来たのでしょう」

 

坂本は銃を下ろして腕を組み、エリカはまだ疑ってるような目つきで話を聞く態勢に入る。

 

そして葉山は教えてくれた

 

四葉真夜が企み実行したその大いなる陰謀を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坂本達が葉山から話を聞いている頃、反対方向にいる坂波銀雪は合流した仲間達の一人、沖田総悟の口から放たれた四葉真夜という名前に一際大きく反応していた。

 

「よ、四葉真夜だぁ!? まさかこの事にあの野郎が絡んでやがったのか!?」

「絡んでるも何も、この事件が起きた原因は全てあの女の仕業なんですよ旦那」

「あんの腐れババァァァァァァァァ!!」

 

全ての元凶が彼女だと知った銀雪は怒り狂ったように足元から地面を凍らせ始める。

 

怒りによる感情で体内の魔力が暴走仕掛けているのだろう、新八は慌てて足元を氷漬けにされないよう避けながら

 

一体何のことだと彼女に問いかける。

 

「ぎ、銀雪さん知ってるんですか!? その人の事!?」

「ったりめぇだろうが! 俺の中の司波深雪と! そしてお兄様の実の叔母上だよ!」

「お、叔母ぁ!? てことは達也さんと深雪さんの身内がこんな大騒動やらかしたんですか!? 僕等の世界も巻き込んで!」

「そうだよ! あのババァは昔から一族巻き込んで下らねぇ事ばっかやってんだよ!!」

 

銀雪の口調は銀時そのモノだが、紛れも無く司波深雪の精神も記憶も混合している。

 

だからこそ彼女もまた四葉真夜という存在がいかに厄介なのかをハッキリとわかっているのだ。

 

「腹黒だし! お兄様を利用するし! 年増だし! 企み事ばっかしてるし! 若者に対しての嫉妬心剥き出しだし! 狡猾だし! オセロ滅茶苦茶弱いしでホント俺達に兄妹にとっては目の上のたんこぶなんだよそいつは!」

「いや所々どうでもいい事が含まれてるんだけど? なに!? オセロ弱かったのその人!?」

「弱いのなんの毎回4隅取られるぐらいの雑魚だ、なのに会う度に毎回リベンジしようとしてくるからウンザリしてたわいつも」

 

ラスボスの思わぬ弱点に新八が驚いていると、銀雪の隣に立っていた達茂も軽く頷いてみせる。

 

「俺達にとって伯母上は必ず倒さねばならない相手だった、魔法師としての実力は正にトップクラス、狡猾であり残忍な行いにもなんの躊躇もなく実行するその残虐さは正に裏世界を牛耳る魔女と称される程だ、だが確かにオセロは弱かった」

「やっぱオセロ弱いんだ! 前半の恐ろしさが全てオセロ弱いで消し去ったんだけど!」

「負ける度に「私はオセロよりチェス派だから」と下らん言い訳を毎回して来るんだが、執事長の葉山さんに聞いたら「ぶっちゃけチェスのルールさえ知らない筈ですよ」と正直に答えてくれた」

「そこは答えてやるなよ執事長! テメーの当主の面目丸潰れじゃねぇか!」

 

なんというか随分とスケールが小さくなった気がする……新八は疲れたようにため息を突いて、とりあえずその四葉真夜とは彼等にとっては倒すべき宿敵みたいな人物らしい、オセロは弱いみたいだが

 

「とにかく平気で悪事を働く生粋の悪人って事でいいんですよね」

「それで概ね間違ってないな、ちなみにテーブルゲームは全般的に弱いがテレビゲームだとえげつない程強い、スマブラとか」

「そういやあのババァ、ずっとピーチ姫使って来るんだよなぁ……毎回ここぞという時にキノピオガードでカウンター決めるからマジ腹立つわホント」

「アンタ等本当は仲良いだろ!? 仲悪そうに言ってるけど! 叔母さんと甥っ子と姪っ子がテレビゲームに熱中してる時点で、テレビゲームのCMに使えそうな微笑ましい光景しか想像できねぇよ!」

 

なんで上手くまとめようとしたのにまたこの兄妹は叔母さんの事でまた熱く語り合おうとするのだろうか……。

 

本当は叔母さんの事好きなんじゃないかと?と新八は疑念を抱きながらも

 

二人をスルーして今度は沖田と神楽の方へ振り返った。

 

「とにかく……沖田さんと神楽ちゃんはこの兄妹の両親と入れ替わってからは、ずっとその四葉真夜の事を調べてたって事で良いんだよね」

「当たり前アル、私はコイツと違ってちゃんと真面目に世界を護る為にあちこちオッサンの身体で走り回ってんだヨ」

「テメェだって遊んでただろうが」

 

睨み付けて来る神楽に沖田はすぐに目を細める。

 

「テメーの会社売っぱらって酢こんぶ工場建ててたのはどこのどいつでぃ」

「それは夢だったから仕方ないネ、私は大好きな酢こんぶを製造する為に身を粉にして働くしがない工場長になるのが夢だったんだヨ」

「ちょっとぉ神楽ちゃん!? 人の身体使ってなにとんでもねぇ夢実現させてんのぉ!?」

「元の身体ではお金なかったアルからな、龍郎のおかげで私の悲願が達成できたからその事にだけは感謝してやるヨロシ」

「感謝されても嫁さん寝取られた上に帰る会社も無くなっちまったんだけど龍郎!」

「私の代わりに工場長になればいいアル、私の夢は龍郎に託すネ」

「夢という名の絶望だろそれ!」

 

司波兄妹の実の父親事、司波龍郎。彼の事を本気で不憫に思う新八。

 

ちなみに現在彼は気絶した状態で銀雪に踏まれたままである。

 

「銀雪さん! 薄情な兄貴と違ってせめてアンタだけでも親父さんの心配を!」

「ギャハハハハ! 聞いたかよお兄様! ウチのバカ親父工場長にジョブチェンジだってよ! これでもうお兄様に自分の会社に就職しろとか言わなくなるな!!」

「そうだな、親父には酢こんぶ工場長として一生俺達と関わらない人生を送ってもらおう」

「……あ、やっぱ嫌ってんだ妹の方も」

 

ざまぁみろと言わんばかりに下品な笑い声をあげて達茂の肩をバンバンと強く叩き始める銀雪。

その喜ぶ反応を見て新八はすぐに気付く、彼女もまた父親に対して嫌悪感を持っていた事を

 

「なんか仲良いんだか悪いんだかよくわからない一族ですねアンタ等……」

「名家と称される魔法師の一族なんてそんなもんさ、一族内で争ったり斬り捨てたりするなどどこでもある事だからな」

「なんだかシビアな世界ですね、まるでウチの世界の将軍家みたいじゃないですか」

「そうだな、似たような境遇に置かれてるから司波達也と徳川茂茂も上手く適合出来たのかもしれん」

 

四葉家の一族同様に徳川家もまた血に塗れた一族だ。

 

互いに利用し合い、騙す、捨てる、殺す、陰謀渦巻くその場所は、一般人である新八にとっては別世界にも見えた。

 

しかし達也と茂茂にとってその世界で生きる事が日常であり、彼等にとってはおかしいとは思いつつもその日常でしか生きられなかったのだ。

 

そういう二人だったからこそ、彼等は互いを信じる事ができ、こうして徳川達茂として新たな融合体になれたのかもしれない。

 

「だからこそ四葉真夜を倒すのは同じ一族である俺の役目だと思ってる、元々いずれは倒すつもりだったんだ、この機会を逃す手はない」

 

覚悟を決めた様子でそう宣言する達茂に隣に立っていた銀雪がはぁ~と呆れたようにため息を突く。

 

「まーた俺の役目だのなんだののたまってやがるよこのお兄様は、同じ一族なら俺も一緒だろうがよ、あのババァぶっ倒すなら手ぇ貸すぜ? こっちもずっと鬱憤溜まってたんだ、オセロの時みてぇに伯母様をボコボコにしてやるよ」

「好きにしろ、もうお前は俺の後ろに隠れる必要はないんだからな」

「随分と妹の事をご理解できるようになったモンだな、これも将軍様と合体した影響か?」

「フ、残念ながら将軍との融合の影響じゃない、正真正銘司波達也としての意志だ」

 

銀雪の加勢を達茂が微笑みながら素直に受け入れていると、そこで突然、沖田が人差し指を立てながら口を開いた。

 

「盛り上がってる所悪いんですけど、アンタ等、四葉真夜の奴がどこにいんのかわかってんですかぃ? この星に潜伏してるとは思われてるんですが、一体どこに隠れてんのかさっぱりで」

「あの世界でも”抜け殻”しか残ってなかったアル、全くどこほっつき歩いてるんだか……」

「抜け殻……?」

 

しかめっ面を浮かべ珍しく頭を悩ませている様子の神楽が口走った言葉に銀雪がピクリと反応して片眉を傾けると、彼女に対して達茂がボソリと呟く。

 

「いずれ本人に会えばわかる事だ、それよりまずは伯母上を探さねば」

「……そうだな」

 

達茂は司波達也として短い間向こうの世界で生きていた茂茂の記憶を持っている

 

茂茂はあちらの世界では色々と巡りに巡って様々な情報を入手していたらしい

 

つまりこちらの事情や真夜の企み事もとっくに知っていたのだ。

 

抜け殻とは一体……達茂は知っているのであろうが未だ状況を掴み切れていない銀雪は、数々の疑問が頭に浮かびながらも

 

とにかく四葉真夜の捜索に専念する事が最優先だと決めた。

 

しかし

 

そんな彼女達に静かに忍び寄るは強大なる敵

 

『探す必要はない』

「「「!!!」」」

 

それは唐突に向こうからやって来た。

他の蓮蓬と違い、全身黒づくめの蓮蓬がシュコーと呼吸のような音を放ちながらプラカード片手に現れたのだ。

 

新八と神楽はその姿を見てすぐに彼の正体に気付く。

 

「お前は米堕卿!」

「諦めの悪い奴アル、また私達の前に現れるなんて」

 

 

米堕卿

 

それはこの星に住む蓮蓬の中でトップに君臨する者であると同時にこの星の核であるSAGIそのモノだ。

 

彼の登場にいち早く新八と神楽は戦闘態勢に入ろうとするが、米堕卿は一枚のプラカードをこちらに掲げて見せた。

 

『今は貴様等と戦う暇はない』

「なに!?」

『今の目的はそこにいる愚かな兄妹をあの方の下へ連れて行く為だ』

 

そう書かれているプラカードを裏返すと、米堕卿は達茂と銀雪の方へと振り返る。

 

『余計な手間を省かせて貴様等の望みをかなえてやる』

「おいおいお兄様、どうやら奴さん自ら出迎えてくれるらしいぜ、俺達を」

「そのようだな、探すのに時間を費やす必要が無いのであれば無下に断る必要も無い」

 

銀雪と達茂は軽く目を合わせた後、米堕卿の誘いに乗っかる事を決めた。

 

願っても無いチャンスだ、彼が連れて行こうとしているその場所にこそ、恐らく彼女が……

 

そして二人の思惑に対し、米堕卿は二人が承諾したとわかったのか、踵を返してこちに背を向けたまま、新たなプラカードを取り出すのであった。

 

『では行くとしよう、我等の歴史を塗り替えて蓮蓬の新たな王として君臨成されたあの方』

 

 

 

 

 

 

 

『銀河帝国皇帝・Mの下へ』

 

 

 




この作品のタメになるかなとスターウォーズシリーズをよく見てるんですが

個人的に一番カッコいいのはクワイ=ガン・ジンかなと思う今日この頃です

でも残念ながらウチにはクワイ=ガンみたいな役割できそうな奴はいません。

ジャー・ジャー・ビンクスは一杯いるんですけどね

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