次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚   作:冷やかし中華

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タイトルに拘りがあるわけではありませんが、考えるのが辛くなってきた(ぉぃ)

そして7話を書く前に6話の余談を挟むといったな?
あれは、ウソだ・・・

すみません、実は7話で一旦ニトロ米に関する区切りを付けてからの方がスッキリすると思ったが故です(釈明)


007:収穫×執筆×ニトロ米

 集落の若い魔獣に先導され、今回の収穫において譲り受けた田園を観察し、収穫に当たっての注意事項や手順などを確認していく。それが終わったら数百年、もしかしたら千年の大台に乗るのではないかというくらい久しぶりに訪れたということもあって集落全体を見て回ることにした。

 

 ・・・数時間後

 

 ただ、ゆっくりと過ぎる時間を満喫し、遠い昔に着た記憶と照合しながら集落を歩いて回る。途中で、他の若手の魔獣と手合わせしてみたり、球蹴りに近い遊びをしたり、他の雑事を手伝ったり、そうしてある程度落ち着いたところで俺とドンが寝泊りする為に用意された場所まで戻ってくると、物凄く体調を悪そうにぐったりとしているドンが床に突っ伏していた。

 

「どうしたの? めちゃくちゃ体調悪そうじゃん?」

 

 たぶん、先の無理矢理現地語を理解できるようになった弊害だろうとは直ぐに当たりが付いたが、そこは敢えてからかい半分に声を掛けてみると、凄い剣幕で睨まれたものの、どうやら立つことも侭ならないらしく、また直ぐに突っ伏した。どうやらドンにとっては、この突然の体調不良について全く見当が付いていないっぽいので簡単な答え合わせ(俺の想像)と、その反動に対する回復の目処を話すことにした。

 

「原因は先刻の統一言語の影響だね。これまで全く分からなかったものを強制的に理解できるようにしたから、きっと今は分からなかった時との間に生じた『矛盾』の修正が掛かっている。おそらく『動けない』とか、『話せない』とか、『見えない』とか、或いは『(念が)使えない』といった、普段から意識的、或いは無意識に出来ていることであれば、おそらく今ほどの反動は出ないはず。まぁ、この調子なら明日には回復するんじゃないかな? 絶対に出来ないことを出来るように暗示を掛けていた訳じゃないから、きっと命に別状は無いよ、と思うよ。たぶん」

 

 そういうと、またノロノロと顔を上げ指先から、そういうリスクがあるなら最初に言えよという感じの罵詈雑言らしきものと、それでも現地語が理解できたことで集落の魔獣たちと会話が出来、仲良くなれたことへの感謝、最期に『たぶん』なんて不安になることを言うんじゃねえというブレのない文字をオーラを用いて空中に記していた。この1年と少しの間、鍛え続けていた成果は、こんな時にも役立っているようだった。それにしてもドンは本当に器用な奴だなと思う。

 

 ちなみに先に見せたどこでも便利な収納鞄(トラベル・バック)は、"念" による産物ではないものの(ドンは、未だに具現化系だろとか、なんとか言っていたが)、俺は俺がドンを鍛えるように、ドンからも "念" についての基礎と応用の知識について師事を受けていた。ドン曰く、最初から無意識的に使えているものであれば、中途半端なままにせず、せめて基礎である四大行と、その応用技(たしか "凝"、"陰"、"堅"、"円"、"硬" だったかな?)くらいは、しっかりマスターしておいた方が今後の為になるとか何とか。

 まぁ、確かに今みたいにオーラを用いて筆談みたいなことが出来るのは、いざというときに便利、なのかなぁ? と思わなくも無い。魔術を用いた念話は、お互いにパスが通ってないと出来ないしね。

 

 そういえば、このドンにされた説明を思い出すまで、俺は "念" について、その技術の必要性を殆ど感じていなかったので、この集落の魔獣たちも似たようなチカラを使えていたことを忘れていた。そうそう、先の手合わせや球蹴り遊びの時も、魔獣たちは "念" の様な何か不思議なチカラが使えていたのだ。

 

 ということを体調不良で寝込んでいるドンを放置して集落の長老のところへ確認しに行ったところ、むしろ俺のほうがオーラ操作もマトモに出来なかったのに、集落の若い衆や手誰をバッタバッタと薙ぎ倒してしまった過去の話をされて、その存在そのものに対する規格外っぷりに呆れられていたという話をされた。そして、それは今も変わっていないことに安心したとも。がーん・・・(´Д`;)

 

 仕方が無いので此処にいる全員を見返してやるべく、後でドンに習った事は全て裏のチャンネルを開いて復習しておくことによう。1,000年くらい(≒2分)鍛錬すれば十分使い物になるだろう。1秒で特定の対象に対する時間経過速度(±)を、およそ1,000年単位で操れる鹿の王には遠く及ばないが、俺も、既にそれくらいは出来るのだ(ドヤッ)

 でも、本当にそこまで意地になって習得しておくべきものなのかなぁ、分からん。

 

 ・・・翌日

 

 昼過ぎには全快状態ではないとは言え、動く分には何ら支障をきたさない程度に回復したドンは、昨日の経験から俺の手助け(統一言語)が無くとも集落の魔獣たちと会話による意思疎通が出来るようにあれこれと試行錯誤し始めた。完全回復には思っていたよりも時間は掛かりそうだが、無事な様で何より。

 あれこれと四苦八苦している様子を見て、また「使う?」と聞いては見たが、やんわりと「いや、もう大丈夫だ」と断られてしまった。そんなに後遺症が辛かったのだろうか? むぅ。

 

 またドンは、この場所が外側の世界(暗黒大陸)の最初の冒険の舞台ということもあって本を執筆するのに必要なメモを次々と作っていく。なんなら此処で執筆の準清書をして俺に預けておいてくれれば、何処でも便利な収納鞄(トラベル・バッグ)に入れて保管しておくよ? と言うと簡単な礼とともに、そうしてくれると助かると言ってきたので、胸を張って、子供の面倒を見るのは親の役目だもんな、任せなさい! と言い切ったら何故か殴られた。解せぬ。

 

 『(仮)新大陸紀行』のメモ書きが一段楽したところで、そのメモを無くさないように束にしたものを預かり便利な収納スペースへ納める。どれくらいのペースで究極の長寿食(ニトロ米)に関する章の内容は書けそうかと問うと、ドンからは可能であれば1,2年は此処で世話になりたいと返された。もともと先の交渉で好きなだけ居てくれて構わないとも伝えられているから、それくらいなら全然問題ないだろう。まぁ、必要に応じて集落の長老と高尚だなと返すと力強く頷いていた。

 

「ほらな、巨大湖(メビウス)の沿岸部を見て回るだけならともかく、本に書く材料集めなんかも考えたら全然10年じゃ足りない感じだろ?」

 

「そうだな、これは全く想定していなかった」

 

 そもそも実力云々の話はさておいても、探検だけで目指せ10年は、まだ良い。しかし、その間に自分の探検した内容を本にする為の現地での情報収集なんかも考えれば、それでは全然足りないという事を実感してくれたようで何よりだった。

 預かったメモ書きは、もう収納スペースに放り込んでしまったので、ドン自身から本にする内容を簡単に聞くと、現状だけでも---

 

 ・メビウス湖沿岸部から集落までの道筋について

 ・途中で遭遇するヘルベルを初めとした魔物たちの脅威について

 ・ニトロ米の収穫手順について(交渉に必要な手順も含む)

 ・ニトロ米の効能と調理の仕方について

 ・最期に、ここに住む現地の魔獣たちについて

 

 ---などなど。完成した本を読んで、この場所(暗黒大陸)を訪れる同胞(人間)たちが、ドン自身が犯してしまった罪と同じ轍を踏まないように、その指標となる内容を大雑把にでも記していくだけでも、かなりの時間が掛かりそうだと言っていた。

 

 というか、俺でもメビウス沿岸部(東側)だけでも全部見て回って、そこにあるドン曰く奇跡のアイテム?を手に入れて回るなんて10年じゃ無理だから。裏のチャンネル(ワープ・ロード)とかを全力で移動手段に使いまくって最適化を図れば別だが、それだと探検ではなく、作業になってしまって全然楽しくないしね。時には非合理的、非効率的に動くことも大切なんだ、と「寿命()」の俺が言っても全く説得力が無いけど・・・

 

 余談だが、この集落に来るまでに通り抜けてきた沼地にも此処のとは少し違ったニトロ米っぽい稲が自生していたのだが、そちらは長老によると非常にアクが強くて食用には適さないとのこと。故に、途中にあった野生種のニトロ米であれば、集落に済む魔獣たちの管轄外となっている為、好きにしてくれていいと言っていた。

 それに一応、非常にアクが強く、食用には適さないとはいえ、そこは同じニトロ米、むしろ此方で食用に品種改良? されてしまったものに比べれば、遥かに長寿食としての効能は優れているとは長老の談であった。良薬、口に苦し?

 

 ちなみに俺といえば、此処に始めてきた当初から集落の魔獣たちと交渉してニトロ米を得ていたこともあり、もしかしたら前にも同じ事を聞いていたのかもしれないが、そんなことは全然覚えていなかったということだけは書き記しておく。やはり、ご飯は美味いものを食うにかぎる。

 

 そして、俺はドンが此処での活動に目処が付いた後に巡ることになるであろう次の目的地に自生する錬金植物について思考を巡らせるのだった。

 




■能力説明

『どこでも便利な収納鞄(トラベル・バッグ)』

主人公が使える裏のチャンネルをヒントに高速神言で開いた空間にモノを自由に詰め込める。
「収納鞄」と言って入るが、"念能力" とは違い実際に鞄を具現化するようなことは無い。
(イメージとしては、ノヴさんの使う『四次元マンション』に近いもの)

基本的に詰められたモノは、外界の影響から切り離されて管理されることになるが、このチカラそのもののベースが裏のチャンネルであるため、中に詰められたモノは時間と共に一応経年劣化を起こすらしい。

とはいえ、それも「現実の1秒」≒「トラベル・バッグ内10年」である為、例えば凄く旨い出来立てのラーメンを締まったとすれば、10年後に取り出して食べたとしても、そのラーメンは出来上がってから1秒しか経過していない状態で取り出されることになる。


・・・


原作のトリコでは、エリア6のジャイアント・シェルから小松たちが出てきたときに60年分の時間が経過してから、現実の3週間後に戻ったという風に掛かれてましたが、理屈は分かるけど、元に戻るっておかしくね? と思ったのは内緒です。

なので、こちらでは外界からの影響から完全に切り離されているため、トラベル・バッグ内で10年の時が過ぎても、外界に出した後は、その10年分の影響は受けないという設定にしました。

もしくは、小松たちは生きている人間だから影響を受けたということなのか?
よく分かりませんが、そういう細かいところには突っ込むだけ野暮ってもんですね・・・

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