次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚   作:冷やかし中華

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 第1話、第2話を読み返していて気になった微妙な日本語の言い回しを修正しました。


003:はじめてのトモダチ?

 ドンの自己紹介によると、彼は、目の前に広がる巨大湖(メビウス)を渡った先にある領域-曰く、人間界-に住む探険家の仲間達と数日前に、この場所へ渡ってきたそうだ。だが、ドンを除いた探検家の一団は、この場所-曰く、暗黒大陸-では力及ばず、この場所に戻ってくるまでに次々と力尽き、遂にドン1人となってしまったとのこと。また、見た目の外傷こそ少ないものの、ドン自身も割りと体力は限界に近かったと本人が言うのだから、きっとそうなのだろう。そこに偶々通りかかった俺が介抱して今に至るというわけだった。

 

 その話の中で知った情報の1つとして、このメビウス湖の中心部に『人間界』と呼ばれるヒトの住む領域があるとか何とか。ちょっと驚きである。というのも、これまでは時間だけなら無限にあったと言っても過言ではないことも手伝って、メビウス湖から遠く離れた場所にある『世界樹』と呼ばれる山脈に根付き、最早、この星の一部というよりも、宇宙と言っても過言ではない熱圏(地上から90~500km)と呼ばれる空間にまで到達し、尚、成長するという付近、あるいはメビウス湖の反対側とも呼べる場所に至るまで彷徨っていたことがあるからだ。

 

 彷徨っている最中、例えば此処から世界樹の育つ地域に渡る間だけでも様々な種族-曰く、魔獣-と出会ってきた。それは外見が狼人間(ウェアウルフ)であったり、猪人間(オーク)であったり。まだ人間に近い見た目(肌が毛皮で覆われていないという意味で)と言えば、森に住む妖精(エルフやフェアリー)人魚(マーメイド)小人族(ホビット)巨人族(タイタン)など。最も「人間」と近い印象を与える種族で、手長族、足長族というものであり、そのどれもが「元」という冠詞は付くものの俺と同じ「人間」とは種として違うような感じがしていたのは事実だった。とは言え地域差はあるものの所謂「人語」が通じるというのは大きく、会話ができる為に広く交遊してこれたのは大きかった。やはり「記憶」や「経験」にあっても、実際に「体感」できるとなると一味違うというべきか。ともかく飽きず希望を捨てずに今まで来れたのは本当に貴重な体験だったとしか言いようが無い。とはいえ、これまでは本当にタイミングが悪かったのか、ドンのような「記憶」にある純粋な人間と出会うことは、これまで唯の一度も無かったのである。

 

 別に人恋しという程のものではないが、手や足が倍ほどの長さがあるとか、どんなに大きくても50cm程度の身長だとか、或いは50m近くなる身長を持つ種族たちではなく、同じ見た目の人間が多く住むという領域が、このメビウス湖内の何処かにあると聞いては、そこに足を向けない手はないだろう。いつだって俺が世界に呼ばれてきた理由は「ヒト」との関わりによって為されてきたから「経験」があるからだ。

 

「というわけで、俺は未だ見ぬ人間たちに逢いに行く!」

 

 と力強く宣言してみたが、それに間髪居れずに待ったを掛けたのは、先ほどまで俺が介抱していた探検家であるドン=フリークスその人である。

 

「ダメだ!」

 

「なんで?」

 

「死人が出るからだ!」

 

 ぱーどぅん?

 ちょっと何言ってるか分からない。幾ら生粋の人間との付き合いが数千年単位で疎かになっていたとは言っても、そんな抑止力(アラヤ)に全力で喧嘩を売るほど自惚れてませんから!

 

「大丈夫だよ。いくら人間と長い間接触してきたことが無かったとはいえ、気に入らないとか、そんな小さな理由で無闇矢鱈と暴れまわって迷惑を掛けるような真似はしないから。こう見えても紳士なんだ。たぶん」

 

「違げーよ、俺が、だ!」

 

「ん? 死人が出るって、ドンが? って意味だったの?」

 

「そうだよ! あと『たぶん』って何だ、『たぶん』って。お前を1人で人間界に行かせることに不安しかねえよ!」

 

 あー・・・ 確かに。ドン、すっげぇ、弱いもんな(ヘルベルごときに遅れを取るなんて・・・)なんて呟いたら何故か殴られた。なんでさ?

 

 その後、ドンの勢いに押されるがままに取引した(その口の上手さに丸め込まれたとも言う)結果、当面の間はメビウス湖を半分に割って東西に分けた東側だけでも道案内しつつ、その間にドンを鍛えるという『契約』内容に落ち着いた。そして俺がドンとの『契約』によって得られる対価は、ドンの持っているこの世界における人間界の常識や置かれている状況、それとドン=フリークスという、この世界では初めてとなる人間の ”トモダチ” というものだった。ん、釣り合ってるのか、これ?

 

「ま、俺もメビウス湖の東側の沿岸部にある土地を巡り終えたら、一度は人間界に戻るつもりだったし、その時に一緒に行けば混乱も少ないだろ?」

 

「たしかに?」

 

「だろ?」

 

 こんな調子である。あれ、これってもしかして俺ってばチョロインになってないか?

 い、いや、そんなことは、無い、はず・・・ それに一応、俺は "男" だし。あ、でも、もう生粋の人間とは違う存在(化物)になっちゃっているから、どちらかと言えば "雄" なのか?

 

「まぁ、どちらでも良いか」

 

「何がだ?」

 

 俺の独り言に突っかかってきたドンを軽く流して、とりあえず、この世界初めての "トモダチ" 付き合いで他人との付き合い方という感覚を取り戻していくことにしようと納得することにした。まぁ、これまでの経験を振り返ってみても亜人種しかいなかったのだから、その連中を基準に考えてこの世界の人間と付き合うのは難がありそうだし、ちょうど良かったのだろう。それにっと横を見る。

 

「なんだ?」

 

 うん。何度見ても、"今の" ドンは微笑ましくなるくらいに脆じゃk・・・イテ! 殴るなよ、事実だろ?

 

 そこから少しだけじゃれあうこと数十合。うーん、これは下方修正せざる得ないかと思い始めたところで話を戻し、気になっていた疑問をぶつけた。

 

「ところで東側を案内するのは別に良いんだけどさ、ドンは何年位で回るつもりだったの?」

 

「んとだな、とりあえず10年で東側の沿岸部を全部回れたらと思っていたんだが、それは可能か?」

 

「え、冗談でしょ? 桁が1つ少ないよ」

 

「え?」

 

「え?」

 

 いや、だって今のやりとりでハッキリしたじゃん。ドンってば弱s・・・ イテ!

 ちょっと事実なのに何故に殴られなければならないのかと。

 

 それから暫く、またドンの気の済むままに相手をしてやっていたのだが、あまりの動きのトロさに眠気を感じ、イライラしてきたので何の仕掛けも無い拳骨を一発くれてやったんだが、それで-曰く、人間界では結構強いらしいと自慢げに話していた-ドンが一撃で沈んでしまったことに逆に焦った・・・。この状態を踏まえて、下方修正気味だった、この世界の人間の脆弱さを体験したところで、この感覚で人間界とやらに行ったら確かに危なさそうだなと考えを改めることにした。




 というわけで、ドンさんは暗黒大陸に着いた次点では、まだまだ1人で沿岸部を周りきれるほど強くはないという設定で登場いただきました。

 というか、無限に行き続けることを余儀なくされ、途方も無い経験を持つ主人公に勝てる人間なんか、そういませんから!

 最強オリ主で、ホント、すみません(平謝り)


 職場で10話を書き始めました。ちょっと話が焼きなおし的なクドさを感じており、ここに一捻り入れないと、わざわざ書く意味が無いよなぁと停滞中。さて、どうしたものか・・・。

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