次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚   作:冷やかし中華

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 隠れて、こっそり【原作沿い】『次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚』も書き始めていたり………
 扱いをどうするか微妙だったので、一覧にも表示させず、検索結果にも反映させず、ランキングからも除外するという徹底っぷりだったのに発見された時には戦慄した(マジ)

 非ログイン状態では見つけることができなかったので活動報告へリンクしておきました。興味がある方は覗いてみて下さいませ。
(なお、そちらでは思いっきりTS要素が出てきますので、ご注意ください)


019:奇跡の代償

 俺がドンとパワーに施した荒療治から3ヵ月の月日が経った。

 1人と1体にストックしておいた『臓器の実』を全て使い切ってしまい、今後、2, 300年は、こんな無茶は出来ないだろう。三原水やニトロ米、その他、治療に使った様々なアイテムのストックも、その殆どを枯らしてしまっている状態だった。さすがにしんどい。ちょっと疲れた。それが事を終えてから今に至るまでに抱いた俺の正直な感想だった。

 

 だが、腕を振るった甲斐もあり、狒々の姿をした魔獣のパワーに関して言えば、幸いなことに五体満足、部分的に直近や過ぎた日々の記憶に混濁した症状が見られるものの無事に快復することができたようだった。

 

 しかし、もう一人のゾバエ罹患者であったドン=フリークスに関して言えば、未だ眠りから醒めない状態が続いていた。

 

「なぁ、早く起きろよ~ 冒険して、そこで見たもの、触れたものを本に書くんだろ~? いい加減起きろ~!」

 

「あい! あい!!」

 

 種族は違えども、パワーの方が無事に回復することが出来たのだ。ドンに関しても問題なく回復できるものと思っていたのだが、その間の期間、俺は少しだけ普段よりも砕けた口調で眠りから醒めないドンに声を掛け続けていた。

 既に3ヵ月、パワーが目覚めてからは2ヵ月強もの間、適当に他の者と交代でドンの身の回りの世話などをしながら過ごしているのだが、どうにも快復の兆しが無い、それに焦燥感の様なものを持ちつつあった。

 

「ドンの奴。本当に目を醒まさねえのな………」

 

「あぃ………」

 

 既に一緒に旅の友となってから半年近くなるガス生命体ことアイに話しかけると、こいつも何か思うことがあるのか、どうにも語尾が弱々しいものとなって俺の声に応えている。

 

 とはいえ、こうしているばかりではいられないと俺は魔獣たちの集落でメタリオンの栽培から収穫、そして加工方法に至るまで様々なことを改めて魔獣たちの一族から聞きいっていた。

 

 そんなある日の出来事。

 

『あ、もしかしてこれって………?』

 

『どうした? ()?』

 

『ご主人、ちょっと身体借りても良いですか?』

 

『別に構わないけど』

 

 そういって俺たちはなり替わる。もう一人の俺こと()が目についたものは、この場にいる他の誰でもない()()()()()()()()()()奇跡だった。

 

 

 * * *

 

 

「やっぱり………」

 

 大きく育ったメタリオンを前に()は誰にでもなく呟く。その声を拾ったのは、"不死の病" と呼ばれ恐れられるゾバエに罹りながらも、八尋(ご主人)の荒療治を経て奇跡の快復をした魔獣(パワー)の姿だった。

 

「どうかしたのか?」

 

「あ、こんにちわ。

 いえ、そういえば初めてあったときに見せていただいたゾバエ避けの()()()()のことを思い出しまして。こちらに腰を押し付けてからも、様々な話を聞かせていただいたときから気になっていたんですよ」

 

「なるほど。そういうことか。だが、あの "香" の生成方法は残念ながら一族秘中の秘である故、幾ら八尋たちが恩人であるとはいえ教えるわけにはいかない。他の事であれば場合によっては答えられるのだが……… それがどうかしたのか?」

 

 ()の言わんとしたことを微妙にズレた解釈をしながら申し訳なさそうな表情を浮かべる魔獣に少しだけ申し訳なくなってしまったので、()は直ぐに答え合わせすることにした。

 

「あ、いえ。あの "香" の作り方であれば、もう分かったので大丈夫です。私が言いたかっ「なに? それは本当か!? 一族の誰かが漏らしたのでは」………いえ、これは他の方々の誇りに誓って断言させていただきます。部外者である私たちに一族の秘を漏らした方は誰一人としていませんよ」

 

 話の途中で言葉を遮られたことには少しだけムッとしたものの、それでも魔獣(パワー)の割り込んできた驚きの理由は分からないでもないので流すことにする。()の言葉を受けて少し安心した様子を見せていたが、しかし、秘中の秘であるゾバエ避けの "香" の作成方法を見切られてしまったことには何か思うこともある様子だった。なので、その懸念も払拭しておくことにする。

 

「安心してください。あの "香" の作成方法が分かったのなんて本当に偶然ですから。それに言いふらして回るつもりもありませんし、そもそも原材料が()()()()()()()なら尚更です」

 

 それは()も供にした八尋(ご主人)が嘗て巡った世界にあった『エリア7』と呼ばれる猿王が支配する大陸(場所)に自生する最恐植物。その植物の花から撒かれる花粉は、どの様な生物相手でも致死率100%を叩きだす凄まじいモノであったが、実は、その最恐植物の果肉こそが、植物から撒かれた花粉による花粉症(アレルギー反応)を抑える唯一の特効薬なのだが、植物が持つ凶悪性により、一歩間違えば自身の死は免れないという、その特性(脅威)が遺伝子レベルで記憶(痛み)として刻まれた生物たちによって見落とされるという盲点。そういう発見が過去にあったという経験と魔獣たちが使っていた "香" の正体を知ってから導き出された閃きがゾバエに対する1つの回答を()に齎してくれたのだった。

 

「これがあればゾバエに罹患してしまったものに対して、ある程度の即効性を持った対応が可能になります」

 

「本当か!?」

 

「えぇ。とはいえ、罹患したものを楽にする、というだけで病に侵された者を治療できるかどうかは別問題です。なにより、そのイチかバチかの賭けをするには分が悪すぎますしね」

 

 治療薬としての効果があるか確かめたいので、この場にいる誰かにゾバエに罹ってきてくださいというわけにもいかないので、と続けると「それはそうだな」と笑いが広がった。それほどまでに()の発見した "香" の作成とは違ったアプローチから生み出した "薬" は、魔獣たちにとって樹海の中を素通りする上で素晴らしいアイテムとなったようだった。

 

 それもそのはず、これまではゾバエに罹患した さまようもの たちが香の匂いを嫌う特性を利用して樹海の中を移動していたが、それでも個体によっては、香の効果が薄いもの、そもそも香が効かないものなどがおり、そういうもの達と遭遇しないために更に慎重になって樹海の中を進む方法しかなかったことを考えると、これからは万が一にも、そういったものたちと遭遇した場合でも対処方法が増えるという意味では大いに助かると魔獣(パワー)たちは口にした。

 

 この()が作成した薬の効用を確認することも兼ねてゾバエに罹患した樹海を さまようもの たちに対して使用した限りにおいては、僅か数滴という分量を浴びせるだけで1日以上動きを止めることもできからだ。薬の生産量と比較すると恐ろしく効率の悪いものとなるが、カップに並々と注いだ液体()を用いれば、しばらくすれば完全に手の施しようのなくなった個体でも崩れ落ち復活できなくすることが確認できた。

 

『ゾバエとメタリオンの関係を考えていて、あの美味なる食材(最恐植物)のことを思い出したことが、こんな発見につながるとは思いませんでした』

 

 そう()は内心でドヤ顔を決めてみたのだけど、何故か盛大に引かれた。え、どうして!! 本当の事でしょ!?

 

『え、あー、うん。グルメ界(あっち)で生活していた時の趣味がサ■ド■■(思い出せない)の品種改良だった子に言われてもな……… キミは気づいてなかったかもしれないけど、あれ周りから滅茶苦茶ドン引かれてたからね?』

 

『うむ。あの植物の果肉は、なかなか旨かったな。惜しむらくは、我らの身体が抗原に反応するアレルギーを起こさないことだったか。敢えて花粉を吸いこみアレルギー反応を起こした状態で、それを中和する果肉を食べればより一層深い味わいを堪能できたそうだからな。実に惜しいことをした。

 ときに、あの植物は、こちらでも育てられないものだろうか』

 

 ダメだ。この2人……… 会話が噛み合っている様で、まったく噛み合ってない。これは話を振った()が悪かったのでしょうか………。

 というかですね、()が育ててた植物の苗も、きっと八尋(ご主人)どこでも便利な収納鞄(トラベル・バッグ)の中を漁れば絶対出てきそうな気がするけどね。まぁ、出てきたとしても()は育てませんからね?

 

 表裏一体の雫、食寳ペア(星のフルコース(スープ))

 

 または、それに並ぶフルコースの食材などでなければ、例え品種改良されたものであっても栄養不足で殺人花粉を撒き散らしかねないですから。まぁ、暗黒大陸(この場所)なら、それも大規模なものになることはないだろうけれども。あ、なんか、そのうちに八尋(ご主人)の手で()()()として扱われそう……… なので()は、そうならないことを願うのみですね。

 

 その様なことを考えながら、()は表に出てきた用事も全て済んだので身体を八尋(ご主人)へ返すことにしたのだった。

 

 

 * * *

 

 

 それから、また暫くしたある日のこと。俺たちがメタリオン畑を見て回っていると集落の若い魔獣が息を弾ませながら声を掛けてきた。

 

「八尋殿、アイ殿。ドン殿の目が醒めましたぞ!」

 

「マジで!? 良かった~」

 

「あい!!」

 

 それは待ちに待った希望の一言。もうダメなのかもしれないと思い始めていた矢先だっただけに、俺はホッと安堵の息を漏らしたのだった。

 

「ですが………」

 

「何か、あったんだね?」

 

 魔獣の声は少しばかり影を落としている。たぶん此処に来たばかりというわけには行かなかったのだろう。それは治療の最中でも半ば覚悟していたことだった。

 

「ご察しのとおりです。ドン殿の身体には不調は一切ない、むしろ頗る快調だとは本人も認めているところなのですが肝心の記憶の方が、私らのリーダーであるパワーの時と同じく………」

 

「わかった。でも、それは覚悟をしていところだ。()()()()()()俺は、それを受け入れるよ。だから案内してくれ」

 

 そういって俺は報せを届けてくれた若い魔獣の後に続くのだった。

 

「誰だ、お前………」

 

「え? それは何の冗談??」

 

 ドンからの第一声に俺は自らが立っている足場が崩れ落ちそうになる感覚を覚えながら聞き返した。俺は自分の声が、指先が僅かに震えているのを感じていた。込み上げてくる何とも言えないモノを押さえつけるのに必死だった。

 

 それは、この時、この瞬間まで多少なりとも治療を施した際にした無茶の代償として()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、それでも受け入れる覚悟していた。けれど、いざこうして目の当たりにした現実は俺の身体から、感情から、熱を抜いていくには十分すぎるものであり、俺の想像してことのなかでは、ある意味において最もあってはならないという不安が現実を侵食した瞬間だったから。

 

 ―――この世界に来てから俺の中に見つけた太陽が沈んだような気がした。

 

 これが何かの悪い冗談であってくれと願ってしまった。こんなことは今までも何度も通り過ぎてきたはずなのに、それなのに………

 

「うそ、だろう?」

 

 魔獣たちは、みな俯き、目を逸らす。その様子を目の当たりにして、俺は、そう漏らすことしかできなかった。




此処までは構想が出来ていたんですが、

 万病に効く香草が取れる古代の迷宮都市(ブリオン)
 無尽石が採掘できる険しい山脈(パプ)
 それ以外に原作には出ていなかったオリジナル(既に、話そのものがオリジナルだろというところは置いといて)要素のギャグっぽさを全開にした場所

 そんなところも書こうかと思っていたんですが、どうやら、無理そうだ。。

 いや、頑張れなくもないけど。。

 需要ありますかね?

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