あと、なんで三人称ちっくに書いたのか作者も分かってない。
(えっ どういうこと?)
何をもって人間の『死』とするのか、その定義や判定の方法は文化、時代、分野などにより様々であり、技術の進歩・発展よっても異なる場合が多い。凡そ、一般に知られるところでは『命がなくなること』、つまり生命活動を維持するための機能が停止することとされているが、ある解剖学者によれば、それは
生死の境目というのがどこかにきちんとあると思われているかもしれません。そして医者ならばそれがわかるはずだと思われているかも知れません。しかし、この定義は非常に難しいのです。というのも、「生きている」という状態の定義が出来ないと、この境目も定義できません。嘘のように思われるかも知れませんが、その定義は実はきちんと出来ていないのです。
どういうことか?
例えば脳が持つ機能が正常に動作しておらず、目は開かず、言葉も発しない寝たきりの状態を維持している人物がいたとしよう。
その人物は、外部からの助けを借りることにより栄養を補給し、体内の老廃物を排出することになる。また、それに伴い爪や髪が伸び、身体に着いた傷が回復するなどの生命活動を行っている。そうした場合、その寝たきりの人物は果たして「生きている」のか、それとも「死んでいる」のか、ということである。
人によっては、そんな状態に陥ってしまった個人は「死んでいる」と言うかもしれないし、或いは「生きている」というかもしれない。その境界線は酷く曖昧で個人の重んじる価値観や文化・風習によって大きく異なるのだ。
それらとは別に文学の世界に於いては、既に『個』としての生命活動が停止し、その
だが、現実に「生きている」のか、「死んでいる」のか、この場合は果たしてどちらだろうか?
* * *
八尋がドン=フリークスという人間と狒々の姿をした魔獣一族のリーダー格を務めるパワーが罹患したゾバエに対する治療方法として選んだのは、治療とは銘打っているものの、それはどちらかといえば力任せの荒業に近い
八尋が佇む前に横たわる2つの身体、その姿から生気は感じられない。死の定義とは先ほど示した事例のように個々の持つ価値観によって様々に変化するものだが、朽ち果てて崩壊していく細胞、消えて無くなってゆこうとする身体を前にして、仮に事情を知らない第三者がこの場所に居合わせたとすれば、その2つの死を確信して疑わないに違いない。
だが、それでも八尋は "
ゾバエに侵されたモノたちが、その身体を維持するときに外から取り込む栄養について通常食せるものがない場合、自分自身の身体に被りついて体液を摂取することで何十年、或いは、何百年に渡って身体を維持し続けることが可能であることを八尋は事前に知識として持っていた。それ故に2人に対してノッキングを行いゾバエが乗っ取った身体を動かして栄養の摂取が出来ないようにし、更に加速された "
八尋が嘗て師事した者ほどではないにせよ、"
万が一、いや、それよりももっと高い確率でドン=フリークスという人間が
八尋は "
* * *
「終わりだ………」
現実の世界では、まだ1日が終わるには幾分か時間が残っていたが、それでも加速された時間の中で、2つの身体が過ごした時間は優に10,000年は下らない時間が経過していた。
驚嘆するべきは、まさしくゾバエ自身の持っていた生命力の高さだろうか。如何に個体に流れる「
あるいは、それもあって2人の身体の中へ入ったゾバエもイノチを繋いでいた可能性が無い訳ではなかったが、そうしなければ先に2人の方が朽ち果てていたことを考えると他に手の打ちようが無かったという事情もあり、それについては八尋にとってはどうしようもないこととして割りきることにしていた。
それにしても、と八尋は思う。
三原水は『
それが対象の身体に馴染ませるだけでリスクなく幾らでも運用できるというのは、まさにヒトの世に対するものでなくとも究極の
八尋は、未だミイラといえそうな状態のままである2人の様子を見降ろしながら、こんなことを思うのは不謹慎かもなと考えつつも、なんとか工程の半分を無事に折り返せたか、と深い息を吐きつつ呟きを漏らす。
「あとは2人の再生か………
とはいえ、まだ半分を折り返したに過ぎない。このまま2人を正常な時間軸へ解放し、乾眠とノッキングを解除すれば、その瞬間に2人は息絶えるだろう。故に、まだ治療は終わってなどいない。むしろ、これからが本番であった。
八尋は、発動していた "
八尋は内心で、これからのことを考えながら記録にある蔵の中身をチェックしながら誰にでもなく内心で呟きを零す。それに反応するのは2つの声。
『臓器の実は、まだまだストックに余裕があって良かった。
『むしろ、よく此処まで持ってきたと自分で自分を褒めるべきだと
『うむ。まぁ、本当にどうにもならなければ途中で投げ捨てずに此処までやりきった八尋に免じて、この
実際は、八尋の裡に潜む姫さんが表に出てきて八尋の身体を使って与える『純血』などには対象を死徒化させるような効果は無いと考えられるが……… 代わりに
『というか、そんなホイホイ与えていいものなの? 姫さんの
『良いのではないか? 別に減るものじゃないし』
『軽いな』『軽いですね』
『うむ、よく言われる』
『『………』』
これを仮に姫さんのオリジナルと呼ばれる存在、もしくは、その後継者の最有力候補が聞いたら、なんとコメントするか知りたいような、知りたくないような、そんな何とも言えない気持ちに八尋がなったのは言うまでもない。
「さて、ある程度は生気も戻ってきたか………」
加速していた時間から緩やかな時間の進みに "
そこからは異様な光景であった。それは、
そうしてドン=フリークスという人間に対して繰り返すこと二十余度、魔獣であるパワーに至っては
「最後は、脳か……… しんどい上に、これなぁ………」
そう誰にいうでもなく呟く。正直言って、これまでのことが飯事に感じる程のとてつもなさである。いや、十分、やってきたことは、とてつもないのだが。
条件さえ揃えれば代替することのできる可能性がある臓器とは違い、
「無事に回復してくれることを祈ろう」
内臓が基本的にはダメだろうと判断し総入れ替えしたことに対し、脳だけは『臓器の実』では代替が利かない。故に、最後は信じたくもない神頼み、まさに運否天賦のそれであった。
能力解説
○裏の世界(うらのちゃんねる)
魚宝アナザが光速を超えた影響で時空が歪み、通常では認識できない特殊な空間。まるで時間が止まっているかのようで、時間の進みが遅い分、自分がまるでワープしたような感覚に陥るが、人工的に作ったものは時空の歪みが弱く、生身でも平気。カカ曰く所謂死後の世界で、死者の魂が漂い続けており、認識するにはペアを飲む必要がある。時間が止まっていると感じるぐらい遅く流れており、アナザ等普通に調理したら長い年月がかかる食材を調理するのに必要とされる。
また、人工的に裏の世界を作り出すにはニュースといわれるアナザを食べて初めて"味"が認識できる肉を食べなければいけない。
なお、八尋が作り出せる裏の世界は、時間の進みが遅くさせた場合の最大規模は、現実世界での1秒間で20年ほどだという(トリコの原作ではGODを食す前のアカシアが1秒感で1ヵ月だったことを考えると、その規模の違いに白目)
いや、まぁ、GOD食べ終わった後のアカシアなんか100万分の1秒の速度で攻撃されていても関係なく対応できるチャンネルを開いてるから、1秒で20年なんて、どうってことないはずなんだよ!
鹿王が作り出す時間の進みを早める空間についてもマスターしており、同様に現実世界での1秒間で早められる最大の時間は5年ほどだとか(遅くするのに比べて苦手らしい)
鹿の王様は、1秒で1000年とかの時間操作ができるらしい。へぇ、すごい(白目)