次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚   作:冷やかし中華

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 主人公が唯無双する回。
 この厨二臭さが「う、うわぁ・・・」ってなって、遅筆になっていたりも?
 (それ、今更言うの・・・?)

 開き直って頑張っていくことにします(ぉ)



014:それは世界を震わすチカラの顕現也

 この "漆黒の樹海" に入る少し前から手に持った長物に掛けられていた封印を解いた。それまでは『剣』ではなく、どちらかといえば『棍棒』に見えていたソレ。しかし、今やそれまでの『剣』には見えなかった面影など微塵も残さず、誰が、何処から見ても『剣』あるいは、その形状に詳しいものであれば『刀』であると判別付くほどのカタチを保っていた。

 

 そして、今では俺が唯一無二の相棒(パートナー)として認めている己の裡に居る存在(俺自身)、否、正確には大本になった俺ではないナニカ。俺がこの祝福(呪い)に捕らわれて以降、孤独に沈み、絶望に苛まれた結果、半ば八つ当たりの様にして犯した数えきれぬほどの『罪』、それを際限なく重ね続けていた過去の俺を諌め、俺を救ったナニカ。俺の深層意識に在った---の行動理念。それそのものを現界させるべく、俺は手に持ったソレの解号を口にした。

 

「滅ぼせ『   』」

 

 瞬間、世界が白く染まった---

 

 

 ・ ・ ・

 

 

 ---約1時間前

 

 

 何かがあるとすれば今日だと薄々感じていたが、此処まで来ると完全に『共感覚』と呼ばれる超能力とでもいうべきチカラを閉じていたのが仇となったことに内心で舌を打つ。

 また、ドンに教えてもらった数少ないものの1つである念法、その高等技術と呼ばれる "円" も使っていなかった・・・ あれは無駄に疲れる(面倒な)のもあるが、何よりも相手に自分が此処にいますよ、と教えているようなものだったからだ。

 

 樹海を進み、違和感が増えたり、減ったりしていたことも事態を悪化させた原因だ。この状態でも俺一人だったならば、どうとでもなるが、隣にはメビウス沿岸の南側一体を周って多少の経験を積んできたとはいえ、それでも此方側での経験が十全であるとは言えないドンいる。故に強硬策に出るのも憚られた。次の考えられるのは『一度引き返すべきか』、それとも『危険を承知で進むべきか』を警戒レベルを引き上げつつ思考を巡らせる。

 

「どうなってる?」

 

 その様子に気づいたのだろう。或いは、ドン自身も何か不穏な気配を感じ取ったのか、黙考する俺に声を掛けてきたでの素直に想定外の事態が俺たちを取り囲みつつあることを伝えた。

 

「今なら『ここで引き返す』という意味では特に問題ないと思うけど、何事も起こらなければ、このまま樹海を抜けられるかもしれないけどね」

 

「大丈夫なのか?」

 

「どうだろう? 本当に万全を期すという意味でなら一旦引き返すべきだけど・・・ このまま続行しても鍛錬を積んできたドンの身体能力なら、もしかしたら何とかなるかもしれないし、最悪の事態に対する備えが全くないというわけではないから進めないことはないと思う。だから、ここからはドンの判断に任せるよ。ドンは、どうしたい?」

 

 俺が、ここで安直にドンを俺だけの自遊空間(マイ・ルーム)へ放り込んでメタリオンの群生地まで案内するという方法も選択肢としてはあった。それが「ドンの目的」を達する最短最善の道であることは誰に言われるまでもなく理解していた。だけど、それはドン=フリークスという個人に対する侮辱でしかなく、仮に俺が逆の立場であれば、そんなものはクソ喰らえだと思ったから、仮に進むのであれば、全力フォローに入ることは伝えたうえで、ドンに対してどうしたいかを尋ねた。

 

「そうだな・・・ 俺も、このまま探索を続行したいのは山々だが、嫌な予感しかしねえ。引き返そう」

 

「案外、無茶ばかりする無鉄砲な性格ってわけじゃないんだね。此処に着いた当初は話を聞いてるのか聞いてないのか不安だっただけに見直した。よし、それに従おう」

 

 無鉄砲を地で行く性格をしているとは常々思っていたが、それでも周りの状況を良く見て考え、必要とあれば、その中から自ら行える行動の中で最善に近い選択が出来る判断力には感嘆とさせると同時に『任せて良かった』と素直に思える嬉しい気持ちになる。そう感情を声に乗せて、その英断に称賛を返しつつ、行動方針の決定がなされた瞬間に状況が一変した。

 

「避けろ!」

 

 その声に反応して伏せたドンのすぐ側を通過したのは、全身が黒く染まった1匹の獣。ドンの横を過ぎたときに比べて、今、目の前で彷徨つくその動きは鈍く、殆ど気配を感じないところかしてゾバエに侵された罹患体であることは明白だった。

 

「気を付けろ。アレがゾバエに罹患したヤツの末路だ。今は、まだ此方から刺激しなければ大丈夫のはずだけど、どちらにしても気を付けて。何の拍子にまた突っ込んでくるか俺にも分からないから」

 

「マジか・・・ どうすればいい?」

 

「こうなると引き返すのも難しい。ここまで進んできたときに使った道が潰されてるの、分かる?」

 

 改めて俺は周囲の気配を探ると、ここに来る途中で通ってきた()()()()()()()()ルート上に、ゾバエに侵されてると思われる生物の気配が濃厚に漂っていることを感じ息を呑んだ。そして、それは隣で目の前でウロつく獣を警戒しつつ俺と同様に気配を探っていたドンも一緒。

 

「だな。コイツ等、さっきまで全然気配を感じなかったのに、一体どこから湧いてきたんだ?」

 

「何者かの手引きじゃなかったら、こんな事にはならないと思うんだけど・・・ 下手人を見つけたら死ぬよりも後悔させてやりたいところだね」

 

 今はそんなことを言ってる場合じゃないけど・・・ と溜息。だが、どちらにしても囲みを狭められる前に強硬策で抜けるしかないと結論をだし指示を飛ばすことにする。

 

「ドンは、予定していたルートから外れけど、極力音を立てずに、気配を消して先に進んで。

 その間も周りからは他の罹患している獣や元人間やらが押し寄せてくるだろうけど、そいつらの相手をしようとは考えないこと。とにかく少しでも囲まれそうになったら適当に "陰" で隠した "オーラ" をバラ撒いて、そちらに引きつける。その間にドン自身は、その場から即離脱することだけに注力を割いて、なるべく真っ直ぐ進めば、あと200kmほど行ったところにメタリオンの群生地があるはずだから、まずは、そこを目指すこと。でも、群生地に着いても気を抜かないように。こうなってくると、俺も、群生地がどうなってるかなんて分からないから」

 

「了解だ。八尋は、どうすんだ?」

 

「俺は少し遊んでから行く。派手にやって罹患してる奴らを引きつけつつ間引きする感じかな。それで、そっちに寄って行く奴らを減らせれば良いけど・・・ それとコイツ(アイ)を頼むぜ」

 

 そう伝えると俺の上に乗っていたアイは、すぐにドンの頭の上に憑いた様子を見て「頼まれなくても、こいつ、俺より強いじゃねえかよ・・・」ドンは零していたが、それはそれ、これはこれというヤツだ。アイは自衛能力は高いけど、俊敏性は殆ど無いのは知ってるだろ?

 

「んじゃ、後で合流しよう」

 

「おう。絶対、戻ってこいよ?」

 

「そういうことは、早く俺に一発ブチ込めるようになってから言うこと。こんな自らの意思を持つことも赦されずに周囲を徘徊することしかできない奴らに後れを取るわけないでしょ?」

 

 そう伝えると少しだけ悔しそうな顔をしたが、すぐに「そうだな、俺に殴らせる機会を失わせてくれるなよ?」と切り替える辺り、本当にドンは良いやつだと思う。

 

「あと言い忘れてたけど、もし万が一、罹患している奴らを相手取るしかなくなった時は、直接触れるのはもちろん、返り血にも気を付けて。呼吸するときも出来れば、布か何かで鼻と口を覆った方が良い。前も言ったけど、ゾバエの感染経路は多岐に渡るからね。警戒しすぎて損は無いから」

 

「おう」

 

 その返答を聞いて未だに目の前、数メートル先を徘徊する黒く染まった獣ごと高速神言による詠唱で先の先まで打ち抜くと同時に此方側に恐れを懐かずに押し寄せる複数の気配が強まる。

 その気配に意識を割きつつも。ドンには樹海を抜けるまでは十全に効力を発揮し続ける程度に身体能力が向上する加護と、呼吸が不要になる加護を与え伝え忘れていた言葉を紡ぐ。

 

「そうだ、1つ忘れていた」

 

 これを伝えずして起こる異常にドンが足を止めては本末転倒だからだ。

 

「たとえ、この後に何が起ころうとも、振り向くことなく突き進め。脚は絶対に止めるなよ?」

 

「? おう!」

 

 若干、訝しみながらも俺の言葉に力強く頷く姿を見て、俺は「さぁ、行け!」と合図出してドンが視界から消えるまで、これから俺が行うことの効果範囲外に出るまで見送り俺は呟いた。

 

「さぁ、始めよう饗宴を」

 

 -絶滅の呼吸(デストロイ・ブリーズ)

 

 その言葉を合図に行うは、この世界へ飛ばされてから片手で数えた方が早い万物を死に追いやる必滅の呼吸。敵も味方も関係なく超広範囲に渡って巻き込む技法ではあるため自重していたそれを戸惑いなく行った。

 

 その一呼吸で重量にして "漆黒の樹海" を形成する巨木こそ不動であったが、樹林を構成する重さ数百kgからなる巨木の葉の悉くが、葉のついていた丸太程の太さを誇る "末端の枝" が次々と落ち、凍てつく大地に光が差す。

 

「しまった・・・」

 

 見通しが良くなったところで意気揚々と自らが持つ得物の解号を口にしようとして、同時に樹林の内側、先程まで俺たちを囲んでいた不穏な気配を伴った生物たちの不穏な気配が一掃されていることに気が付いた。

 

(順序を逆にすべきだったか・・・)

 

 それが冒頭の解放に伴う少し前の出来事。

 

 

 ・ ・ ・

 

 

 荒涼として日の差す場所となっていたところから移動し、不気味な気配のする場所を中心に叩いて回る。

 

『ハァッ!』

 

 俺にとっては単なる雄叫びにも過ぎないそれは、俺の中にある "食没" によって貯め込まれていた "空気" を吐き出すついでに込めた "魔力" の波動と相まって凄まじい攻撃力となり辺り一帯の植物や生物を飲み込み薙ぎ倒す。

 

 その時に発生した爆音、そして込められた魔力が焔の塊となり、周囲に凄まじい熱量を齎した。そして、それに蛾の様に引き寄せられてくる底なしの絶望に叩き落された異形のモノ共。俺とは違い永遠(ユメ)を求めていたわけでもないにも関わらず病に斃れ、今なお、生かされ続ける屍たち。それらの存在に心の裡にて瞑目し、側に落ちていた木の枝を "()()" 代わりとして迫る亡者を文字通りに次々とミンチに変えていく。

 

()()()()()

 

 気配からゾバエに罹患してしまった者たちが多いだろう方向へ向けて刃を振う。その気になれば、その万倍の威力を出すことも可能だが、それはさすがに周囲への害を多すぎるだろうと判断して自重する。まぁ、即席の少し丈夫な "枝" 程度じゃ、どちらにしても強度が足りなくて無理だろうけど。というか、既に手に持っていた枝が柄としていた部分以外は、振った先諸共、見事に消し飛んでいた。

 

 残念ながら、そうでもしなければ、俺にはゾバエに侵されたモノたちに安息を与えることは出来ないと知っているからだ。

 

 そして、こんな時だけは思う。俺には長い永い時間の繰り返しの中で終ぞ持つことは叶わなかった(正確には疑似的に再現したものだけでも反動が辛すぎたことで持とうとも思わなかったが正しいが)かのバロール系統に属する魔眼ならば、ここまで手間を掛けずに済ませられたのだろうか、と。

 

 ふと、もう顔も名前も思い出せなくなってしまった少年?の残滓が脳裏にチラついて消えた。




 ある程度の下書きは済んでいたのです(本当)

 でも前書きに書いた通り、うわぁ、となっていたので遅筆だったので(ぇ)

 吹っ切れれば別に大丈夫だよ!(天啓)

 そんな感じ頑張っていこうかと思います(迫真)

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