次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚   作:冷やかし中華

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 何時になったらメタリオンに辿りつくんだ。。。
 そして、執筆が遅くなっている理由に余りにもHUNTERxHUNTERを書いている気がしなくなってきたのがあります。

 なので、なんか原作とか書きたくなってきました。
 もっと、もーっと原作キャラと絡ませたいんじゃあ!!

 王子とか、子蜘蛛とか、良いよね!?



013:漆黒の樹海の食材と静かな決意

 暗黒大陸(この場所)では、殆どの場所において生活する生物(動物)は、とにかく規格外のサイズを誇る生物が多いが、巨大湖(メビウス)を中心に見て南側一帯に広がる "漆黒の樹海" と呼ばれるこの場所には、そんな巨大生物たちも、その本能から滅多なことでは寄り付かない為、樹木の大きさの方が規格外の大きさに成長している。

 

 その "漆黒の樹海" に生物が近寄らない理由には、1つにゾバエの存在があると言われているが詳しいことは分かっていない。だが、おそらくという前置きが付くが、この森を避けて生きる生物たちには一種の共感覚の様なものが働いており、それが結果としてゾバエの蔓延るこの森へ近寄らない結果となって現われているのではないだろうか、という程度の推論は立てられる。合っているかどうかは知らないが。

 

 もう1つは、この樹林自体が日中であっても暗闇に覆われるほどに陽の光を遮ってしまうのと、森自体が周囲の熱を取り込む吸熱反応を定期的に起こすため、森の中が外から見える以上に冷え込んでいることが挙げられる。夜には氷点下になることも相当な頻度であるほどだ。

 

「へっくし」

 

 何が言いたいかというと・・・ ゾバエ云々以前に、ドンに対して防寒具を用意するのを忘れていた、ということだった。

 

「大丈夫か?」

 

「見ての通りだ、なんでこんな寒いんだよって・・・ さっき聞いたか」

 

「そうだね。陽の光が遮られるのは良いとして、森そのものが周囲から熱を吸うのは説明不足だった。ゾバエ云々よりも環境の苛酷さでいえば、この森の中も相当だったことを失念していたよ。まぁ、迷わずに装備を整えて歩き続ければ何時かは抜けられることには変わらないけど」

 

 俺は何処でも便利な収納鞄(トラベル・バッグ)の中から、此処ではない別の場所を旅していたときに加工して作っていた防寒具一式を取り出しドンに手渡した。旅した先で見繕ってもらったものだったが残しておいて良かったと内心で独りごちる。

 

「ま、森を抜けるまでは、それでも着て耐えといて。素材が、氷の大陸(アイスヘル)と呼ばれる場所に生息するブリザード・ウルフの毛皮を加工して作ったものだから、これだけでも相当温まるはず」

 

「そんな場所もあるんだな。いつかは行って見たいもんだぜ」

 

 俺の手渡した防寒具を身に付けながら、まだ見ぬ大陸の情景に思いを馳せるドンだったが、俺としては「まだ早い」と思ってしまったのは無理からぬことだった。ただ、氷の大陸で数百年に一度取れるスープは、まさに至高と呼ぶに相応しい美味なるモノだから、また機会を見て取りに行っても良いのかもしれないとも考えた。まぁ、これは『契約』が完全に履行した後に覚えていたら、そのときに考えよう。まずは、この森を無事に抜けてメタリオンを観に行くことが先決だ。そう独り思い耽っていると防寒着を着込んだドンから、またもや驚きの言葉が飛び出していた。

 

「すっげぇなこれ。人間界には、こんな薄手の材質で此処まで温まる着衣なんか無かったぜ」

 

「まぁ、それだけアイスヘルの環境が苛酷ってことだよ。そこに生きる狼の毛皮から作ったんだから、相応に温まるのは道理かもね。あとは、その "白い息" を何とかできるようになったら連れて行くことも一考してあげるさ」

 

 そういうと「白い息?」と頭にちょこんと乗っているアイごと首を傾げていたドンだったが、やがて何かに気づいた様に「あーっ」と叫んだかと思うと俺を指差して "いつもの" が始まった。

 

「 "白い息" って、そういえば何で八尋は、こんな場所でも普通にしてられんだよ!」

 

「別に何のことは無い。俺とアイは『この環境に適応できている』それ以上でも、それ以下でもないよ」

 

 そういうと頭からアイを抱えるようにして目の前に持ってきて「息を吐いてみろ」と迫るドンの姿が妙に可笑しくて噴出してしまった。アイもアイで微妙にズレた対応をしつつも基本的には()()()()()()()()()を見せていたため、その様子を見ていたドンは1つ唸り声を上げると俺にビシッと指差して強かに宣言するのだった。

 

「この森を抜けるまでに絶対その呼吸法をマスターしてやる」

 

「おーぅ、がんばれー」

 

 それに棒読みで答えつつ「これでこそドンだなぁ」と思いながら俺は手に取っていた濡羽色の輝く長物を上機嫌で愛でるのだった。

 

 

 

 ・ ・ ・

 

 樹海の中は陽の光が僅かにしか届かず、この森特有の環境が生み出す骨が軋み肌を突き刺すような寒さに満ち溢れている。にも関わらず纏わりつく空気は常にジメジメとしており、どこまでも続く変わらない景色に常人であればとっくに気が狂っても可笑しくない異常な空間を形成していた。

 

 また、一歩進むたびに踏み敷く落ち葉や枯れ枝がシンッと静まり返っていた空間の中に木霊し、それに加えて時折響く甲高く不気味な獣どもの鳴き声が樹海全体に反響する。それが一層、この樹海の不気味さを演出しているようでもあった。

 

 最初のうちはドンやアイと適当な会話を重ねたりはしてはいたものの、次第にどちらともなく口を噤むようになり、気づけば "漆黒の樹海" に入り2日が経過していた。

 

「この樹海は、巨木自身の生態によるものでもあるが、こんな環境なのにどうして此処まで成長できているんだと思う?」

 

 別に、この異質に富んだ空間にあって相手(ドン)を気遣った訳ではない。ただ「そういえば、この話は説明してなかったかもな」という樹海における豆知識とでも言おうか、この樹海を構成する巨木について暗黒大陸の冒険譚を書くことを目標に掲げる男に話しておこうと思ったに過ぎない。

 

「外敵が少ないとか、か?」

 

「それもある。それは、この樹海に入る前にも触れたとおりだけど、それだけだと少し正確性に欠けるな。他には何か思いつくことは無い?」

 

「あとは・・・ そうだな、この木の持つ生命力が暗黒大陸の中においても、かなり強いってのがありそうだ」

 

「正解」

 

 そういうとドンから嬉しそうな気配がしたのが分かり、俺も表情が少し緩んだ。ここには居ない嘗てドンと共に未知の大陸を目指した探検家たちは、それぞれが想像していただろう過酷な未知の環境に対する必要な特殊技能を備えていたはずなのだ(まぁ、現実は非情に過ぎたわけだが)

 

 そして、俺の少し後ろを歩く青年、ドン=フリークスという人間は、その探険家一行の中でも自らが専門とする分野以外にも様々な知識に広く見識があり、その中でも動植物に関する知識がズバ抜けて高く、それは俺以上に豊富であった。そこから正しく、この樹海を構成する巨木たちの性質を見極める引き出しの多さは、この場所に限らず、此処に来るまでに様々な場所で遺憾なく発揮されており、ある意味で戦闘における才能よりも輝くものを感じていた。

 

「この樹は、"ハードラワン" という種類で、とにかく生命力が強い。この葉を見ても分かるように厚みも半端じゃないし、1枚の葉でも大きいものでは500kgを超えるものもあるくらいだからね」

 

 そういって足元に落ちていた落ち葉になった葉を持ち上げて説明し、それが終わると同時に軽く放り投げると落下地点でズゥンという凄まじい音が鳴る。

 

「例えば、この樹を使って家を建てれば、ここでは無理だろうが先の魔獣の集落みたいな場所で暮らす分にはリフォーム無しでも軽く2,300年は保つだろうし、また葉や果実なんかは、それぞれが()()調()()()()でもある。ちなみに旨いぞ?」

 

 その情報に驚きの声を上げるドン。曰く、人間界では、そんな樹木の存在は聞いたことも無いとのこと。ならばと思い「試しに葉も食ってみるか?」と話を振れば現金なもので腹の虫もなる。その音に、どちらともなくクスッと笑い「今日はコレにしよう」と合図した巨木を頂点付近まで駆け上がりドンには本日の野営地の準備を指示だしたところで、ふと地平に向かって陽が落ち始め、空には夜の帳が掛かり始めていた。

 

(2日間かけて約350kmか・・・ 警戒しながらの行軍とはいえ少しペースが遅いか? それにしても・・・)

 

 本来なら、その気になれば1日と掛からずに移動できる距離に対して2日以上かけて進んでいるペースに随分なことだという思いを抱きつつ、この樹海に足を踏み入れる前から感じていた妙な違和感に対する疑念が払拭しきれていないことに身体が警鐘を鳴らしていた。このまま何も無ければいいが・・・

 

 そう思いながら周辺の様子見を兼ねつつドンに準備してもらっている野営地の周りを飛びまわりながら食材となる葉や果実をどこでも便利な収納鞄(トラベル・バッグ)の中に回収していった。

 

 その後、周囲に異常が無いことを確認し、改めて本日の食材用に取り出した1枚を調理し始める。この場所では手の込んだ仕込みはできないが、それは別な機会に振舞うとして、まずは獲った葉の外皮を除く。次に葉を一口サイズに合わせて角切りにし、口の中に残らないように繊維をミリ単位で寸断していく・・・ そうして幾つかの過程を経て簡単ではあるが調理できた葉をドンとアイと分かち合う。

 

「う、うめぇ・・・」

 

「だろ?」

 

「あい」

 

 調理された葉は、一噛みごとに様々な振動()が顎を伝わり、同時にスカッとした爽快さの裏に隠れるクセになりそうな程よい葉の苦味を伴って口の中を満たされる。そのまま一直線に胃まで旨みが駆け落ちた。

 

 そのまま2人と1体?で、一通り調理した葉を堪能し腹が満たされたところで準備した寝床で休む前に明日に備えて休むことにする。この樹海に入る以前もそうだが基本的には俺だけの自由空間(マイ・ルーム)は使わない。それは不意なトラブルなどで俺とドンが暫く一緒に行動できなくなった場合を想定してのことでもあるが、ドン自身が、それを望んでいないとハッキリと伝えられたからでもあった。

 

『楽できる分にはそれに越したことはねえけど、何時までも八尋の能力(チカラ)におんぶに抱っこじゃ()()冒険譚とは言えねえからな。だから、これで良いんだ。けど、ホントにヤベーって時だけ助けてくれよな?』

 

 直ぐ傍で静かに寝息を立て始めたドンの様子を眺めながら嘗ての会話を思い出し、俺はまた笑みを零したのだった。

 

(恐らく、この森の番人どもが仕掛けてくるとしたら明日だ・・・ 恐らく長い1日なる。そして、下手したら暫くはドンとは別行動だな)

 

 あまり考えたくは無い光景を思い浮かべながら俺はフッと息を吐き、手に持った『剣』を掲げる。その切っ先には輝く蒼い月が静かに浮かんでいた。

 

(もしものことがあったら助けてね?)

 

 俺は絶大な信頼を寄せる『   』へ、唯一無二の相棒(パートナー)に向けて静かに祈りを寄せる。

 

(あたりまえじゃ)

 

 そんな音にはならない、俺だけにしか届かない肯定の声が確かに聞こえた気がした。

 




 かんそう と ひょうか おまちしております。
 つづき は らいしゅう がんばります。

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