俺の個性が「じょうじ」な件

「じょうじ」は君に挑戦する

本当なら一種目一話で終わらせたかったけれど、思ったより長くなりそうだったので分割。


暇つぶしになれば幸いです

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第一種目”障害物競走”が終わり予選を通過したのは上位４２名。

そして、一息つく暇も無く本選が始まる。

ミッドナイトから伝えられた第二種目は”騎馬戦”。

参加者は２～４名のチームを自由に組んで騎馬を作る。基本は普通の騎馬戦と同じルールだが、一つだけ違う点は第１種目”障害物競走”の順位にしたがい各自にポイントが振りあてられるということ。つまり騎馬を組むメンバーの組み合わせによって騎馬のポイントが変わってくる。

上を行く者に更なる受難を与える騎馬戦。

予選通過１位の緑谷の持ちポイントは１０００万だった。

驚愕の事実に周囲の視線が緑谷に向く中でミッドナイトの説明は続く。

「制限時間は１５分。振り当てられたＰ(ポイント)の合計が騎馬のＰ(ポイント)となり騎手はそのＰ(ポイント)数が表示された”ハチマキ”を装着！終了までハチマキを奪い合い保持Ｐ(ポイント)を競い合うのよ。そして、重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ！」

つまり常時４２名からなる１０～１２組がずっとフィールドにいることになる。

混戦は避けられないだろう。

「”個性”発動ありの残虐ファイト！でも…あくまで騎馬戦‼悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード！一発退場とします！それじゃこれより１５分！チーム決めの交渉タイムスタートよ！」

ミッドナイトの号令と共に騎馬を組むメンバーを探す為に参加者は動き始めて………俺は隣に居た爆豪と共にクラスメイト達に囲まれた。

「爆豪、黒山、俺と組め‼」

「えー、私と組も！？」

「僕でしょ。ねぇ？」

緑谷(１位)の１０００万Ｐ(ポイント)は論外として轟(２位)や爆豪(３位)や俺(４位)の高Ｐ(ポイント)は魅力的だ。最悪、そのポイントを死守さえすれば勝ちの芽もある。

その上で俺や爆豪の”個性”がフィジカルに富んでいるのは予選で見せている。

だから、あるいは俺も爆豪と組めば勝ちは固いんだけど…

俺が横目で爆豪を見れば爆豪は凄まじい表情で俺を睨みつける。

「俺は！テメェとだけは組まねぇぞクソ虫野郎‼」

「わかってるよ。バカ豪。大体、こういうのは”個性”を把握してる気心の知れた奴と組むのがセオリーだろうが」

確かに俺は同じ中学出身の爆豪の”個性”を把握してるが、それだけだ。

俺が組むとすれば常闇に蛙吸が順当だろう。二人とも強力な個性を持っている。

前騎馬を常闇が受け持ち”個性(ダークシャドウ)”で前面のカバー＆攻撃に専念させて、後騎馬の俺が”個性(ゴキブリ)”の筋力で機動力を確保する。

小柄な蛙吸が騎手を務めて”個性(カエル)”の舌で常闇の攻撃をサポートすれば相当強力な騎馬になる。小柄な蛙吸なら俺と常闇だけで支えられるし、小回りも効くだろう。

そんな考えでクラスメイト達の誘いを断って闇と蛙吸の二人を探そうとした俺に声をかけてきた女性徒が居た。

「なあ、あんたさ…黒山光、だよな」

その女生徒の名前を俺は知らなかった。

「ああ、そうだけど。…悪い。誰だ？違うクラスだよな」

「………私の名前は拳藤(けんどう)一佳(いつか)だ」

「そうか。初(・)め(・)ま(・)し(・)て(・)だ(・)な(・)、拳藤。それで俺に何の用だ？悪いが時間もないから、世間話ならまた今度に－－

「一佳でいい。お前は、光は、昔、私をそう呼んでいただろう」

俺の言葉を遮りながらの拳藤の言葉に俺は一瞬、固まった。

（…いや、女子をいきなり名前呼びはちょっと…というか、なんだ？蛙吸といい、最近の女子高生の間ではそれが流行ってるのか？それはいい流行だけど………ん？）

そこまで考えて俺の頭に疑問符が浮かんだ。

「というか、昔って俺と拳藤は前に会ったことがあるのか？」

「ああ、ある。お前と私は…幼馴染だったんだ」

「いやいや小学校が同じだったとかならともかく幼馴染ってお前なぁ。そうそう存在しないだろ。昨今、幼馴染なんて生物は、半分空想上の存在だぞ。だいたい俺に幼馴染なんて呼べる奴がいるとしたら大昔に嫌われたアイツぐらいだぞ」

そう。確かに俺には幼馴染と呼べる友達が居た。

”個性”が発現するよりも前、幼稚園の頃から家が近所でよく遊んでいたその友達を俺は大好きだった。しかし、その子の目の前で俺の”個性”が目覚めたことで俺はその子に嫌われた。

以来、家は近所だが学区が違っていたこともあり会ってはいない。

今は笑い話として話せるその出来事に拳藤は何故だか悲しそうに顔を歪めた。

「…ソイツの名前を覚えないのか？」

「覚えてるさ。俺は人の名前を覚えるのが得意なんだ。確か名前はケンドウ…拳藤…え？」

「やっと気が付いたのか」

拳藤一佳がじっと俺を見つめてくる。

その顔に見覚えがないと言えば、嘘になる。

確かに俺の記憶の中のあの子と拳藤の顔立ちは似ていた。

けれど、俺が覚えている限りあの子は男の子で…

「どうせ。私を男だと思ってたんだろ」

「うぐっ」

「いいよ、別に。私は小さい頃、女の子らしい恰好してなかったし…光と一緒に山を駆けまわったりしてたし」

「…いや、悪いな」

本当にばつが悪い。ずっと性別を勘違いしていたこともそうだが、俺は幼い頃に彼女に嫌われた事で散々泣いたのだ。もう二度と会えないものだと思っていた。

今更、まさか目の前に現れ、その上、彼女から話しかけてくるとは思わなかった。

「…謝るのは私の方だろ。私は昔、光に酷いことをしたじゃないか」

「いやいや、女の子だっていうなら、余計に仕方ない事だろ。俺の”個性”はあれだ。その、人から嫌われても仕方ない」

俺は喋りながら、（ああ、糞）と思った。

自分の”個性”を悪く言うのには馴れている。だってそれは真実だから。

他の虫には無いナニカをもつ虫。人間に嫌われる為だけに存在するような昆虫。

皆、ゴキブリは大嫌いだ。

俺の”個性”を受け入れてくれる人達もいる。けれど、大衆は決してそうじゃない。

俺を騎馬戦のメンバーに誘ってくれていたクラスメイト達も俺の”個性(ゴキブリ)”を知れば嫌悪感を向けてくるだろう。

そんな考えを抱いて俺は（ああ、糞）と思う。

「だから、拳藤が気にすることなんて何もない。それにもう吹っ切ってるんだ」

笑い話の様に話す俺は、しっかりと上手く笑えているだろうか。

「だから－－－」

上手く笑えてはいなかったことを、俺は拳藤が俺に抱き着いてきたことで知る。

「－－－拳藤」

「ごめん。本当にごめんな。私、わたし、入試の時に光を見たんだ。光は、その”個性”で人を助けてた。光の”個性”は人に嫌われるようなものじゃ無いのに…昔、私は…私は…」

俺の胸で泣く拳藤を見て、俺の中の一つの重石が消えるのを感じた。

「…拳藤。本当にもう気にするな。あの時はお互い子供過ぎたんだ。だから、気にするな」

そう言って思わず拳藤の頭を撫でようとした所で俺は俺達二人を見る視線に気が付く。

顔を上げれば拳藤の傍にいた別のクラスの二人の女子がニヤニヤしながら俺と拳藤を見ていた。

それだけじゃない。たまたま目に入ったのだろう緑谷が俺をガン見していた。そして、目が合うとすぐさま目を反らされた。

「な！？まずい。拳藤！とりあえず離れろ！？」

「あ、うん。悪い。ちょっと動揺したんだ」

目を擦りながら見上げる様に俺を見る拳藤はとても可愛らしかった。

俺は赤くなる顔を隠くそうと顔を反らす。

「とりあえず積もる話はあとにしよう。もう時間もないし、俺は早く騎馬を組むメンバーを決めないと…」

「なあ、光」

立ち去ろうとすると拳藤に袖を捕まれる。

「なんだ？流石にそろそろ急がないと不味いんだけど」

「騎馬戦。私達と組まないか？」

「は？」

「まだメンバーが決まってないなら、私達と組まないか？別に別のクラス同士で組んじゃいけない決まりもないんだ」

「それはそうだけど…俺はお前の”個性”しか知らない。それも大昔に一度見たきりだ。連携するには情報が足りなすぎる。それは拳藤もその子たちも同じだろ」

「だ(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)、逆にチャンスなの」

「どういう意味だ？」

「高Ｐ(ポイント)のハチマキを持つ奴のほとんどがＡ組の生徒だ。そして、ソイツらは私達の”個性”を知らない。けど、光は知ってるだろ。それはアドバンテージになる」

「！？なるほど、確かに。なんで気が付かなかったんだろうな。別の組の奴と騎馬を組む利点。しかも、それは逆も然りか。Ｂ組の奴らは俺の”個性”を知らないけど、拳藤達は知っている」

「どうかな。私達と組む気になったか」

「ああ、そういう事なら大歓迎だ」

そうして俺は懐かしさを感じながら拳藤と握手を交わした。

「そういえば拳藤。障害物競走の上位陣がほぼＡ組なのは狙ってやったのか？さっきＢ組の物間(ものま)って奴がそんなことを言ってるのを聞いたんだ。そうすると拳藤が俺と組んだのも結構、前から建てられてた計画なのか？」

「それは…ああ、そうだ。………そう言う口実があった方が誘いやすいから」

「ん？何か言ったか？」

「何も言っていないぞ」

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拳藤一佳

B組。好きなもの：バイク。ブラックコーヒー。


個人的に梅雨ちゃんと私服のミッドナイトとこの子で好みの女の子キャラが三強。