サクサクと進みたい。
暇つぶしになれば幸いです。
『雄英体育祭』
雄英高校で年に一回。学年ごと総当たりで開催されるビックイベント。その規模は学校内に止まらず”個性”が生まれる前に開催されていたスポーツの祭典オリンピックに代わる日本のビックイベントとして日本中が熱狂する。
勿論、その様子は全国放送されて多くの人々の目に触れられる。
そして、当然、全国のトップヒーローもスカウト目的で観る。
卒業後はプロヒーローの事務所に
当然、ヒーローランキングの高いヒーローの事務所。例えばランキング第二位の『エンデヴァー』や第四位の『ベストジーニスト』の事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。
そんな彼らプロヒーローにアピールする場こそが年に一回。計三回しかない『雄英体育祭』というビックイベントなのだ!
と、熱く語ったところで俺が何を言いたかったかというと
少し前までの俺なら、こういう目立つ行事にはあまり積極的には成れなかっただろう。
(しーかーし!闇との特訓を終えた俺の”個性”は成長した!人目を気にしつつも優勝を狙うことが十分に可能なはず!)
雄英体育祭の様子は俺の家族も見ている。
(父さんは仕事だから見てないだろうけど、母さんと妹がTVで見ているはずだ)
そして俺は俺の家族が、俺が”個性”の所為で悩んでいることを知っていることを、知っている。
(なら、頑張らなくちゃだ、俺!)
もう心配ないと。家族以外で俺の”個性”を嫌わないでいてくれる奴を見つけたと笑顔で言う為に。
《雄英体育祭‼ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル‼》
《どうせ てめーらアレだろ こいつらだろ‼?
《ヒーロー科‼‼》《1年A組だろぉぉ‼?》
ヒーロー『プレゼントマイク』の煽り文句と共に会場に入場すれば観客席から向けられる観衆の視線。そして設置されたTVカメラ。
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…!これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」
「飯田。お前にすれば全部教育になるんだな」
飯田の向上心に関心しながら雑談をしていれば18禁ヒーロー『ミッドナイト』が壇上へと現れた。
あの人を見る度に毎回思うんだが、格好が過激すぎて何処を見ればいいのか分からない。
何処を見ればいいのか分からないから、毎回顔を見る様にしているんだが、そうしていると何故か目が合う度にウインクをされる。
俺はあまりあの人が得意ではないらしかった。
それはともあれ開会式は進んで選手宣誓。
そして、
「せんせー ----
---俺が一位になる」
「「「絶対、やると思った」」」
A組の全員の心が一つになった瞬間だった。
けれど、爆轟。一位になるのは俺だと俺は野次を飛ばした。
そうして『雄英体育祭』始まった。
『雄英体育祭』第一種目”障害物競争”‼
一年生全クラス11クラスでの総当たりレース。コースは体育祭スタジアムの外周約4km。
ルールはコースさえ守れば
「よーい。スタート‼」
ミッドナイトの掛け声とともに全生徒がスタートゲートへと殺到する。
全生徒が通るには狭すぎるスタートゲートはそれ自体が既に最初の
「わかっているさ。そんなことは!」
だから、誰よりも早くスタートゲートを抜ける為に
---脚部のみのゴキブリ化。
「じょうじ!」
「相変わらず、すげぇな」
誰よりも早くスタートゲートを抜けたつもりだった。
けれど、駆け抜けた隣に轟が居た。
「…すげぇのはお前だろ。なんでしれっと俺について来れてんだよ」
「スタート位置がよかったからな」
そういう轟の足元が突如、凍り付く!
俺は飛び跳ねる事で危なげにその攻撃を避けた。
「っ!?あぶねぇな!」
「避けられたか。まあ、狙ったのは後ろの連中だからな」
そういう轟の視線を追って振り返れば、なる程後ろの地面が凍り付いていた。
「エゲツネェなぁ…おい」
「いや、クラスの連中は
確かに轟の妨害で動きを止めたのは少数だった。俺達のクラスメイトは全員、轟の妨害を物ともせずに走ってくる。
その内の一人。クラスメイトの峰田が飛び出してきて
「轟のウラのウラをかいてやったぜ。ざまあねぇってんだ!くらえオイラの必殺…ふぎゃ!?」
巨大ロボに吹き飛ばされていった。
見覚えのある巨大ロボは入試の時の仮想
そしてヒーロー『プレゼントマイク』の実況が響いた。
《さあ、いきなり障害物だ!まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ‼》
「一般入試用の仮想
「あんまりいい思い出はないんだよな…」
入試での出来事を思い出し動きを止めた俺の隣で、轟は地面に手を付けて巨大ロボを睨みつけた。
「せっかくならもっとすげぇの用意してもらいてえもんだな。…クソ親父が見てるんだから」
そう言って振るう手と共に巨大ロボ達は凍り付いた。
「っ!?相変わらずの高火力!ビル全体を凍らせたのはマグレじゃねぇよなぁ」
「先行くぞ」
走り去る轟の後ろを俺は追いかける。
轟によってわざと不安定な姿勢の時に凍らされた巨大ロボが上から倒れてくるが、ゴキブリの瞬発力をもってすればぶつかることは無い。
《オイオイ第一関門チョロイってよ‼んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト‼それが嫌なら這いずりな‼‼》
《第二関門‼ザ・フォール‼》
第一関門の先の階段を昇り切った先に在ったのは深い谷と無数の足場。そして足場に掛けられたロープ達。
ゴールは深い谷の向こう側だった。
「大げさな綱渡りね」
「楽勝‼」
蛙吸が
---背中で
「あら、黒山ちゃん。すごいわ。…足以外の一部分だけの変身もできるようになったのね」
「…ああ、闇との特訓の成果だ。身体の一部に限り、出力は全身変身より劣るが、それでも十分だ。悪いけど、先行くぞ。蛙吸」
「ええ、がんばってね。ケロケロ」
俺の成長に優しい笑顔を浮かべる蛙吸をみて思わず顔が赤くなるのを自覚する。
俺は逃げる様に前翅を伸ばして飛び立った。
《ああーと‼A組、黒山光が翼を広げて飛び出したー!このステージに飛行能力はズルいぜ‼ロープを渡る生徒を見下ろしながら。唯一人空を---いや!もう一人空を
「待てや‼黒山ぁあああ‼‼」
「ちっ、爆豪か」
《掌から生み出される爆発を推進力に変えて空を
「へっ、お先ぃ」
「…この野郎」
憎らしい顔で爆豪が俺を追いこして先に行く。
その生物は前後二対の
そして、翅の揃っている種でも飛翔能力は低く、短距離を直線的に飛ぶ程度であるとされている!!
「じょうじ!」
《先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずにつき進め!そして早くも最終関門‼かくしてその実態は---・・・》
《一面地雷原‼‼怒りのアフガンだ‼地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ‼目と脚を酷使しろ‼》
広がる地面一帯に埋められた地雷。踏んで体勢を崩せば連鎖的に爆発して大幅なタイムロス。
先頭を走る者ほど不利になる障害。
「なるほど、エンターテインメントしやがる」
それによって速度の落ちた轟に俺達は追いついた。
「はっはぁ俺は---関係ねーー‼」
「
「…爆轟に黒山か」
《あーと!ここで飛行能力持ちの二人が追いついたー!喜べマスメディア‼おまえら好みの展開だああ!》
「てめぇ黒山‼ついてきてんじゃねぇよ‼」
「邪険にするなよ爆豪。俺達、
「ブッコロス‼」
「…じゃれてるところ悪いが、取りあえず黒山だけでも落とさせてもらうぞ」
爆豪を
轟に目を向けると彼は右手を空へと掲げていた。そして、上空に冷気が放たれる。
《おおっと!轟焦凍が天に手を掲げたぞ!いったい何が起き---って、雪ぃいい!?。上空の空気を冷やして雪を降らせたああ‼………何の意味があるんだ?地面を滑りやすくする作戦か?》
俺は吐いた息が白くなるのを見て
「やっぱエゲツネェな。轟ぃ」
その生物は外気温が20度以上で活動を始め、25度を超えると更に活動が活発になる。それはつまり
現在、外気温は吐いた息が白くなる温度。約13度以下。
---活動範囲外気温である。
以前の戦いで俺は寒さに対する耐性を身につけた。しかし、それはその場限りの対処でしかなく、いくら
《おおっと!ここでトップ争いをしていた一人である黒山が墜ちたァア‼トップの座は轟か爆豪かぁあ‼》
「じょうじぃ‼舐めるなよ。俺には
俺は轟と爆豪を追う為に全力で走りだし、全力で地雷を踏みぬいた。
ド カ ン ! !
《黒山が爆発ぅ‼地面が地雷原であることを忘れていたのかァアア……って、おい!黒山光!何故か無傷だぁああ‼》
その生物は
---皮膚のみゴキブリ化。
「光と音が派手なだけの地雷なんて俺に効く訳がねぇだろうが」
《黒山光ィィイイ‼地雷を踏み抜きながら走り続けるゥ‼なんつー体幹!ていうか凄まじい速度に飛行能力に防御力‼マジかアイツ!?》
「俺が、勝つ‼」
「勝つのは俺だ虫ケラ野郎‼」
「譲らねぇ」
俺と爆豪と轟の三つ巴はお互いの足を引っ張り合いながらの先頭争いとなった。
その時、---後方で凄まじい爆発音が響いた。
《後方で大爆発‼?何だあの威力!?偶然か故意か---A組、緑谷出久が爆風で猛追---…つーか‼‼》
俺達三人の頭上を緑谷が盾のような物を持ちながら飛び越えていく。
おそらくあの盾のようなで爆風を防ぐと同時に爆風に乗ったのだろう。
”個性”を使わずに俺達三人を超えていく。それは俺には無い発想だった。
「なん…だと…」
「…すげぇな」
「ちっ!?」
《抜いたああああああ‼‼》
俺達は緑谷に抜かれた。それに一番速く反応したのはやはり爆豪だった。
「デクぁ‼‼俺の前を行くんじゃねぇ!!!」
次いで俺と轟も動き出す。
「やるじゃねぇかよ。…緑谷‼」
「後続に道を作っちまうが…後ろ気にしてる場合じゃねぇ…!」
爆豪が爆発力を推進力に変えて空を跳ぶ。
轟が地面を凍らせて滑る様に進む。
俺が地雷を踏み抜きながらも走り抜ける。
《元・先頭の3人が足の引っ張り合いを止め緑谷を追う‼共通の敵が現れれば人は争いを止める‼争いはなくならないがな!》
ヒーロー『プレゼントマイク』の妙な実況と同時に前を
そりゃそうだ。大量の地雷を使っての大跳躍。そんなモノはビックリ一発芸に過ぎない。直ぐに失速する。
「けど…そうだよなぁ。緑谷」
全力で走りながら、前で失速していく緑谷の顔を見て確信する。
このままいけば地面に墜落する緑谷。着地のタイムロスを考えればもう緑谷に勝ち目はない。
けれど、緑谷の眼に諦めはなかった。
「”無個性”だった頃から、ヒーロー目指してたお前が、この程度のピンチで諦める訳がないよなぁ」
緑谷は着地の瞬間に持っていた盾を地面に叩きつけた。
再度、巨大な爆発音。地面に埋まっていた地雷が複数爆発する。
《緑谷、間髪入れずに後続妨害‼なんと地雷原即クリア‼さァさァ序盤の展開から誰が予想できた!?今一番にスタジアムに還ってきたその男---…
《
第1種目‘障害物競走”。
一位 緑谷出久
二位 轟焦凍
三位 爆豪勝己
四位 黒山光
黒山光の新技!
その①
初速320km(ゴキブリダッシュ)
- 脚のみをゴキブリ化した只の全力ダッシュ。まだ命名に恥じらいある。
”ゴキブリ”の文字が入っている為、人前では叫べない。
その②
漆黒の翅(ゴキブリウイング)
- 背中に翅を生やして飛ぶ。飛翔能力は低い。
”ゴキブリ”の文字が入っている為、人前では叫べないが常闇が命名に加わったこと
で若干恥じらいが消えている。
その③
漆黒黒皮(ブラックブラック)
- 皮膚のみをゴキブリの甲皮に変える。身体の形は変化しないが全身が黒光りする。
防御力が飛躍的に向上する。
ついに”ゴキブリ”の文字が消えたので人前でも叫べる。変身!ブラック・ブラック‼
恥じらいは完全に消えた。
同時に開発された常闇の新技である
※全ての技は二つ同時に発動することは出来ない。
全ての性能は完全変身時に劣る。