俺の個性が「じょうじ」な件   作:白白明け

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暇つぶしになれば幸いです<(_ _)>

そして数多くの誤字脱字報告ありがとうございました |д゚)





「じょうじ」も向こうへ!

「じょうじ」

 

土砂ゾーンの(ヴィラン)を倒した俺はUSJの入り口のゲートを目指して走る。

あそこにはまだ黒い霧の様な(ヴィラン)のワープから逃れた他の生徒たちがいる筈だ。

勿論、入り口の広間には相澤先生がいるのだから、他の生徒達の安全は保障されているだろう。俺ごときの助けが相澤先生。プロヒーロー『イレイザー』に必要だなんて驕りはしない。

けれど---助けを求めている誰かがいるかもしれないのなら、動くべきだろう。ヒーローならば。

 

「幸い、俺の”個性”は隠密性にも富んでいる。コソコソするのは十八番だから、助けが必要ないのなら、出口を目指して助けを呼ぼう」

 

そう思い駆け付けた先で俺が見たものは---黒い巨体の(ヴィラン)の下で倒れる相澤先生の姿だった。

 

「じょうじ‼」

 

気が付けば身体は勝手に動いていた。

 

「駄目だ!黒山君!」

 

傍にいた緑谷の声が聞こえた。分かっている。見るからに近接戦闘を得意とするだろう巨体に正面から挑むのは愚策だ。その上、相手は相澤先生を倒す程の実力者だ。

正面切っての特攻なんて爆豪並みのお馬鹿な行動だ。

 

けれど、()()()()()()()()()()()()()()

 

---白髪に掌のオブジェの様なモノを顔面に張り付けた男が緑谷や蛙吸や峰田の傍にいた。

---あの男の眼は()()()

 

嫌な予感はきっと間違いなんかじゃないだろう。

だから、

 

「じょおぉぉじぃぃいい‼‼」

 

 

---注意をこっちに引き付ける‼‼

 

 

支給されたコスチューム。白甲冑の下で身体をゴキブリ化させる。

踏み出す足の初速は約320キロ。

それで十分。俺は瞬時に黒い巨体の(ヴィラン)の胸元に潜り込んだ。

握る拳の威力は自重の50倍を牽引する筋力。

如何な巨体も吹き飛ばす威力を以て黒い巨体の(ヴィラン)の胸元を殴りつける。

鈍い音が響いた。

顔面に掌を張り付けた異様な男の注意が俺に向けられる。

 

「この隙に、緑谷!蛙吸と峰田を連れて逃げ---がっ!?」

 

 

---が、しかし!巨大の(ヴィラン)、倒れず!

   非常に精強な生物であるゴキブリだが、そのゴキブリを上回る生物もまた存在する‼‼

 

 

逃げろと続く言葉が中断される。俺は黒い巨体の(ヴィラン)に殴りつけられた。

 

「馬鹿な…ノーダメ…だと…」

 

黒い巨体の(ヴィラン)は何も堪えない。

代わりに顔面に掌を張り付けた異様な男が歪な笑みを浮かべた。

 

「馬鹿ガキが…脳無(のうむ)の事を何も知らねぇのに突っ込むからそうなる」

 

返す言葉は何も無い。俺はあまりに浅はかだった。

 

「ああ…へし折るのは、こっちでいいか。ゲームオーバーだ。やれ脳無」

 

脳無と呼ばれた(ヴィラン)の腕が振るわれる。

 

「手っ…放せぇ!!」

 

脳無を止めようと飛び出した緑谷の拳が脳無に炸裂するが、

 

「え………」

 

俺の時と同じく、その攻撃は脳無に対して何のダメージを与えることはできなかった。

 

「黒山ちゃん!緑谷ちゃん!」

 

「に、逃げろよぉ!?」

 

蛙吸と峰田の叫びが聞こえた。

絶望的な状況だ。

けれど、そんな絶望の中だからこそ、眩く輝く言葉(ひかり)があった。

 

 

「よく頑張ったね」

 

「もう大丈夫---私が来た‼」

 

 

「(ああ、やっぱり、オールマイト、貴方が一番、カッケェな)」

 

 

その言葉を聞いて俺は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

某日。都内にある屋内型トレーニングルームの一室に俺は常闇と共に居た。

USJでの(ヴィラン)の襲撃から数日がたち怪我をした相澤先生もある程度回復して教壇に立っている。そんな中で俺が何故、常闇と一緒にトレーニングルームにいるかと言えば、二週間後に開催を控えた『雄英体育祭』に向けて特訓をする為だった。

 

「良いトレーニングルームだな。屋内なら、俺の”個性”『黒影(ダークシャドウ)』も扱いやすい」

 

「だろ?。俺も”個性”の関係上、こういう人目のない場所が好きなんだ」

 

「そうか。ところで(くろ)。体育祭に向けての特訓というのはわかるんだが、誘うのは本当に俺一人でよかったのか?轟や爆轟を誘えとは言わんが、飯田や緑谷なら喜んで参加したんじゃないのか?」

 

「…いや、(やみ)。誘うのはお前だけでよかったんだ。というより、お前しか誘いたくはなかった」

 

「それは(くろ)が”個性”を隠しているのと関係しているのか?」

 

「ああ、そうだ。俺は他人に”個性”を知られたくない。だから、いままで”個性”は一人でやって来た。けど、それじゃダメだってこともわかったんだ。(やみ)も聞いただろ。USJでの俺の無様を…」

 

思い出すだけで羞恥心で顔が赤くなる程に晒してしまった無様。

緑谷達を助ける為に飛び出した癖に緑屋に助けられ、オールマイトの到着と同時に気が緩んで気絶してしまった俺は自分一人での特訓に限界を感じてしまった。

 

「USJでは俺も自分の身を護ることしか出来なかった。初めての実戦。動かない身体は仕方がない」

 

「けど…」

 

PlusUltra(更に向こうへ)か?」

 

俺の言葉を遮りながら、常闇は嘴を空に向け格好良くそう言った。

その姿に俺は思わず吹き出す。

 

「………笑うなよ」

 

「いや、悪い。やっぱり(やみ)はカッコいいな。…そんなお前だから、俺も”個性”を教えていいって思えるんだ」

 

俺の”個性”は人から嫌われる。それは間違いのない事実。

過去に俺は”個性”を知られて嫌われて友達を一人、無くしている。

だから、恐くないといえば嘘になる。

 

けれど、

 

「なあ、(やみ)。俺達は親友だよな」

 

「ふっ。何を今更、”闇黒(あんこく)コンビの出会いは運命(さだめ)だったのだろう」

 

 

 

 

ダブルヒーロー『闇黒(あんこく)』。

後に夜の戦いなら無敵と呼ばれるヒーローの二人組(コンビ)はこうして生まれた。

 

 

 

 


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