俺の個性が「じょうじ」な件   作:白白明け

4 / 7


祝アニメ二期‼

勢いで書きました!暇つぶしにでもなれば幸いです!





その時僕らは「じょうじ」を知った

 

 

俺こと黒山(くろやま)光(ひかり)には昔、親友と呼べる友達がいた。

”個性”が発現するよりも前、幼稚園の頃から家が近所でよく遊んでいたその友達を俺は大好きだったし、多分、その子も俺が大好きだった。

友情は永遠に続くものだと思っていた。

 

けれど、終わりは唐突に訪れた。

 

その子の前で俺の”個性”は初めて発現した。

 

砂遊びをしていた俺の身体は唐突にゴキブリになった。

幼かった俺に”個性”の制御なんて出来る訳も無く、その時の俺はゴキブリ完全体だった。

 

ゴキブリになった俺の姿を見て、その子は悲鳴を上げながら”個性”で巨大化した掌で俺を叩き潰した。

 

それは、仕方のないことだった。

急にゴキブリが現れれば大人だって悲鳴を上げるんだ。まだ幼稚園児のその子が俺を驚きのあまり叩き潰したとしても誰も責めることはできないだろう。

 

叩き潰された俺の身体は固い甲皮によって守られていたから、大事には至らなかった。

けれど、俺の心は傷ついた。

 

その日、俺はゴキブリには涙腺が無いのだと知った。

 

 

 

 

 

その日の教室は熱気に包まれていた。

きっかけは相澤先生の言葉。

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

自薦他薦を問わないと投げかけられた言葉にほぼ全てのクラスメイトが挙手をする。

普通科の学校なら、学級委員長なんて雑務を押し付けられる役柄を進んでやりたい奴なんていないだろうが、此処は雄英高校ヒーロー科。集団を導くリーダーシップというトップヒーローには無くてはならない下地を鍛えられるが故に大人気だ。

進んで手を上げるクラスメイト達の熱に当てられ、進んで人前に出たくない俺はこの熱意溢れるクラスメイト達なら誰が学級委員長だろうと問題ないと思う。

 

ただし爆豪。てめぇは駄目だ。

 

「静粛にしたまえ!”多”を牽引する責任重大なしごとだぞ…「やりたい者」がやれるモノではないだろう---これは投票で決めるべき議案‼」

 

飯田のぐぅの音も出ない正論で学級委員長は投票で決めることになった。

俺は飯田に投票した。

 

学級委員長になったのは以外にも緑谷だった。

 

 

 

学級委員長が決まった授業の後の昼休み。俺は教室で持参した昼飯を常闇と食べていた。俺は持参した弁当を机の上に広げ、常闇は俺の机に腰かけながら購買で買ったパンを齧っている。

 

「そいえば、黒。なぜお前はさっきの学級委員長を決める投票で自分に投票しなかったんだ?」

 

「ああ~、バレてた?」

 

「集計した結果を飯田が黒板に書いたんだから、当然だろう」

 

ほぼ全員が自分に投票して一票が並ぶ中で飯田に投票した俺の名前は黒板には並んでいなかった。

 

「あんまり目立つのはちょっとな…”個性”関係で色々あるんだ」

 

「そうか」

 

常闇は俺の答えを追求することも無くまた黙々とパンを齧りはじめる。

常闇のこういうパーソナルスペースを守ってくれる対応が俺は好きだ。

 

俺が自分に投票しなかったと聞いて、詰め寄ってきているどっかの爆豪(バカ)にもぜひ見習ってほしい。

 

「黒山ぁあ‼」

 

「んだよ、爆豪」

 

「デクの野郎に票を入れたのはテメェか‼あのクソナードが三票とかおかしいと思ったんだ‼テメェら仲良しこよしか‼」

 

「なんだ?緑谷が委員長なのに得票一票の爆豪は文句があるんですかぁ?ねぇよなぁ?緑谷に二票差付けられたもんなぁ」

 

「テメェ…俺がデクより下だとでも言いてぇのか?」

 

「別にそんなこと言う気はねぇよ。どれだけ優劣つけたがるんだ。てめぇはどっかの星の戦闘民族か」

 

「誰が宇宙人だコラ‼」

 

「比喩だろが‼」

 

俺と爆豪の言い合いをクラスメイト達は呆れた様子で見ていた。

 

「黒山ちゃん。爆豪ちゃん。友達同士で喧嘩しちゃ駄目よ」

 

「友達じゃねぇよ!」

「友達じゃねぇよ!」

 

 

 

俺達がそんなバカ騒ぎをしている間に食堂では何か騒ぎがあったらしい。

それを上手く収めた飯田が緑谷の提案で学級委員長に収まることになった。

飯田に投票した俺としては、嬉しい限りだった。

 

 

 

 

 

学級委員長を決めた授業の数日後。俺達はヒーロー基礎学の授業で人命救助(レスキュー)訓練を行う為にある演習場。

ウソの災害や事故ルーム。略してUSJにやってきた。

此処…関西にある超有名テーマパークと名前が被っているのだが、良いのだろうか?

 

そんな俺の心配を他所にUSJの開発者でもあり人命救助のスペシャリストでもあるスペースヒーロー、「13号」の話が始まる。

 

「今回の人命救助(レスキュー)。えー、始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」

 

次第に増えていく小言の数に空気が淀む。

 

「皆さんご存知だと思いますが、僕の”個性”は”ブラックホール”どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

スペースヒーロー13号の”個性”はとても強力だ。

もしかしたら掃除機(ダイソン)に吸い込まれるゴキブリの様に俺では太刀打ちできないかもしれない。

13号はそんな協力な”個性”を使いどんな災害からも人を救い上げるヒーロー。

そんな人命救助(レスキュー)を見て緑谷の隣で目を輝かせている麗日の様に

ファンになる人々も少なくない。

 

「しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう”個性”がいるでしょう」

 

「…」

 

人の害悪となる”個性”。

---『害虫の王(ゴキブリ)

 

「超人社会は”個性”の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる”いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないで下さい」

 

幼少期の俺が友達を失う事となった”個性(りゆう)”。

人助けの為に使わなければ悪者になってしまうと信じた”個性(ちから)”。

 

「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したと思います。この授業では…心機一転!人命の為に”個性”をどう活用するかを学んでいきましょう」

 

「…」

 

「君たちの力は人を傷つける為にあるのではない」

 

俺は13号のファンになりました。

今度、麗日に色々教えてもらおう。

 

 

個性は人を傷つける為にあるのではない。

人を助ける為にあるのだという事を学ぶための授業が始まる。

 

「そんじゃあ、まず………ん?」

 

そこに、小さな黒い悪意が入り込む。

 

小さな黒い悪意は徐々に広がり始め、相澤先生の怒声が飛んだ。

 

「一塊になって動くな!13号‼生徒を守れ!」

 

広がった黒い靄の中から、大勢の人々が現れる。

 

「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

「動くなあれは(ヴィラン)だ‼‼」

 

---奇しくも人を救える訓練時間に現れた(ヴィラン)

   プロが何と戦っているのか

   何と向き合っているのか

   俺達は知ることとなる

 

   それは途方もない悪意

 

 

 

(ヴィラン)ン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

 

授業の最中に突如として現れた(ヴィラン)達。

クラスメイトの言うようにトチ狂ったとしか思えない行動だが、きっとアホだがバカじゃない。

侵入者用のセンサーも起動せず、校舎と離れた隔離空間。

そこに少人数(クラス)が入る時間帯を狙った襲撃。

 

何かの目的があって用意周到に画策された奇襲。

 

「13号!生徒を連れて避難開始!学校への連絡を試せ!電波系の”個性(やつ)”が妨害している可能性もある。上鳴(かみなり)、お前も”個性”で連絡を試せ」

 

そう指示を出して相澤先生は敵集団に向かって行く。

そして、敵を圧倒する。

 

プロヒーローの実力を俺はこの時に初めてまじかで見た。相澤先生の前では(ヴィラン)達なんて敵ではなかった。

俺は冷静さを取り戻す。

相澤先生や13号の指示に従い動いていれば、最悪な事態だけは避けられる筈だ。

 

そう思った瞬間、相澤先生の一瞬の隙を突き(ヴィラン)が一人俺達の元までやってくる。

 

「避難などさせませんよ。初めまして、我々は(ヴィラン)連合。僭越ながら…この度ヒーローの巣窟。雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

黒い靄の様な(ヴィラン)はそう言いながら周囲を探りオールマイトがいないことに落胆しながらも、欠片も悪意を欠けさせることなく続けた。

 

「本来ならオールマイトが此処に居る筈ですが…まあ、それとは関係なく…私の役目はこれ」

 

そう言いながら黒い靄を広げる敵に13号が指先を向ける。

”個性”を使うんだと、俺がクラスメイト達に距離を取る様に伝える前に…馬鹿が一人。いや、二人飛び出した。

 

「はっ!」

 

「けっ!」

 

爆豪の”個性”『爆破』を纏った拳と切島の”個性”『硬化』を纏った拳が敵に向かう。

 

「その前に俺達にやられることは考えてなかったか‼」

 

敵を前に動じることなく動けるのはすげぇと思う。けど、今は駄目だろ、爆豪!

 

「馬鹿!13号の射線を塞いでる!」

 

俺が叫んだ瞬間、俺達は黒い靄に包まれた。

 

 

 

 

 

 

敵の”個性”。おそらくワープの様な能力によってクラスメイト達はバラバラにUSJの色々な場所に飛ばされた。

俺が飛ばされた場所は土砂と倒壊した建物がある土砂ゾーン。

 

周りを見渡すが俺以外にクラスメイト達の姿はない。

 

代わりにチンピラの様な(ヴィラン)が十数人いた。

 

「なんだお前ひとりか?へへへ、運がねぇな。聞いた話じゃ数人を纏めて飛ばすって話だったんだがな」

 

「…じょうじ。良いことを聞いたな。つまり、俺以外のクラスメイトは一人じゃないってことだ」

 

「へへへ。流石はヒーロー志望。自分より先に他人の心配かよ。けどな、それをやっていいのは今のピンチを乗り切ってからだろうが!俺達十八人を相手にお前は一人で戦わなきゃいけないんだぜ!」

 

「…良いことは一つじゃない。此処には、俺しかいない。なら、別に全力を出してしまっても構わないんだろう?」

 

「ああ?何言ってんだお前?」

 

「俺の全力は、あいつらの眼には毒だからな…」

 

「イカレてんのか?お前ひとりで一体何ができるってんだ!テメェら、やっちまえ‼」

 

「「「おお!!」」」

 

「じょうじ‼‼」

 

 

後に警察に逮捕された彼らは口々にこう言った。

 

 

--―黒い悪魔を見たと。

 

 

「クラスメイト達がピンチなんだ!蛙吸が!常闇が!緑谷が!」

 

「誰だそれ!?」

 

「クラスメイトだボケ‼まだまだ居るんだよ!飯田が!麗日が!轟が!障子が!斬島が!峰田が!八百万が!上鳴が!耳郎が!瀬呂が!芦戸が!青山が!尾白が!葉隠が!砂籐が!口田が!後一応、爆豪が!」

 

 

「助けなきゃなぁ、いけねぇだろ‼」

 

 

その生物は直接的に人間大のスケールに直すと()()()から時速320kmを出す瞬発力と自重の50倍の重さを牽引する最大筋力を持つ。

 

加えて外骨格(がいこっかく)生物(せいぶつ)特有のキチン質を主成分とする固い甲皮を持ち飛行能力も備えている。

 

加えて特記すべきはその環境適応能力と生命力。

 

例え手足が千切れ()()()()()()()()()しぶとく動き続ける悪魔の虫。

 

二億五千年前には存在していたとされる最古の有翅昆虫。

 

「じょうじぃぃぃいいいいいいいいい‼」

 

 

あえて言おう。

---最大出力(ブチギレ)黒山光(ゴキブリ)最強(最凶)であると‼‼

 

 

 

 

 






ゴキブリは最強である!(ドン‼‼)とか書いたけど、まあ、実はそんなことないよね。

轟君相手だと氷点下&超火力で適応する前にやられてしまいます。
芦戸さん相手だといくら固いと言っても甲皮はタンパク質なので溶けてしまいます。

そして梅雨ちゃん相手だとカエル→虫の捕食関係で捕食(意味深)されてしまいます。

とか言ってみたり。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。