おだてられて勢いで描いた続き。
なので文字数を少なくサクサクを目標にちまちまとやっていく予定です。
『雄英』の一般入試実技試験から一週間後。
昼飯に冷やし中華を貪っていた俺に『雄英』から試験の合否を伝える手紙が届いた。
「ヒカリー、貴方に『雄英』から手紙が届いてたわよー」
「母さん。ありがとう」
「どうもー。じゃあ、母さんは買い物行ってくるからよろしくねー」
「…」
「なに?どうしたの?そんな奇妙なモノを見るような眼で母さんを見ちゃって。………遅めの反抗期かしら?」
「違げぇよ!」
「なら、なによ」
「いや、なんて言うか。気にならないの?親として、俺が『雄英』に受かったかどうかとか」
「別に気にならないわよ。だって、どうせ受かってるでしょ?」
「いや、なんで断言できるんだよ…」
「そりゃ、だってヒカリは私と父さんの子。私達の子だもの!」
そう言って自信満々に笑顔を浮かべて親指を立てる母親。
それは息子を信じる母の鑑と言っていい姿だったが、いや、その理由は違げぇだろと思う。
親がヒーローをやっている子供なら、確かに『雄英』に入れるかもしれない。
しかし、
「私達の子って、あんたはただの専業主婦だし、父さんもヒーローでもなんでもない会社員だろ」
「親に向かってあんたとか言わないの!」
殴られた。グーで(まる)
結果から言えば、俺は『雄英』に合格した。
「言った通りでしょ」と言う母親のドヤ顔がうざかった(まる)
入学初日というものは大切なものである。初対面のクラスメイト達と交わす会話一つで今後の学園生活が決まると言っても過言ではないだろう。それほどまでに思い出として残る日だ。
思えば小学校入学初日も俺は。
「………いや、流石に小学校は覚えてねぇわ。何歳だよ。…七歳か」
やり直し。
思えば中学校入学初日も俺は。
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」
どこかの
雄英の一般入試の定員は少ない。推薦入学者を含めても40名に満たないらしい。
一学年は二クラスのみ。こうして爆豪と同じクラスになるのを予想はしていたが、面倒だ。
「…ちっ。最悪だ」
「ああ!てめー聞こえたぞ黒山!こそこそ後ろから入ってきてんじゃねぇよ!」
「うるせぇ爆豪。
「喜んでねぇよ!ぶっ殺されてぇのか!」
「ブッコロス!?君ひどいな本当にヒーロー志望か!」
「ああ、爆豪のことは気にするな。ブッコロスが口癖な奴なんだ。本気じゃない。それより俺の名前は
「ぼ…俺は私立聡明中学出身。
「聡明中か、名門だな。これからよろしく」
「てめぇら!モブの癖に俺を無視して話を進めてんじゃねぇよ!」
「だから、爆豪。うるせぇんだよ声のボリュームを落とせ。………あ、緑谷!お前も受かったのか!」
飯田と握手を交わして爆豪をあしらっていると教室に
正直、”無個性”の緑谷が合格するとは思っていなかったが、嬉しい限りだ。
「あ!く、黒山君!お、おはよう!よかった。黒山君も合か---
「ああ‼?デクうぅぅだぁあああ!」
ひぃ!?かっちゃんも同じクラスなの‼?」
「だから、爆豪。
「喜んでねぇってんだろ!マジでブッコロスぞ!」
「はは、
「よぉおぅしぃ。ゴング鳴らしたのはてめぇだぞ。黒山‼」
予想通り突っかかってくる爆豪の相手をする作業は担任の先生がやってくるまで続いた。
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここは…ヒーロー科だぞ」
寝袋に入ったまま来ると言う突拍子の無い登場をした担任に流石の爆豪も口を閉じる。
担任教師の名前は
聞いたことのない名前だったが、『雄英』の教師ということは
「自分の「最大限」を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
そんな相澤先生の言葉により入学式もガイダンスも行わず行われたのは『個性把握テスト』。
内容は、
ソフトボール投げ。
立ち幅跳び。
50m走。
持久走。
握力。
反復横跳び。
上体起こし。
長座体前屈。
中学時代に”個性”禁止で行っていたそれを”個性”を使用し行う。
自分の最大限を知り生かす為のテスト。
…その必要性はわかる。しかし、正直、俺の気は進まない。
俺は”個性”を人目の付く場所で使いたくなかった。
--手を抜くか。
そんな俺の思いを見抜いたかの様に相澤先生から告げられたのは、トータル成績が最下位の者は見込み無しと判断し除籍処分にするという厳しすぎる決定だった。
「”
第一種目!50m走!
「ヨーイ………ドン!」
その生物の瞬発力は直接的に人間大のスケールに直すと---1歩目から時速320kmで走り出すことに---
「黒山光!記録6:15!」
「…ちっ」
「………」
第二種目!握力測定!
その生物は最大筋力においても恐ろしい力を秘めている---自重の50倍を牽引する筋力が---
「黒山光!記録61キロ!」
「…はっ」
「………」
第三種目!立ち幅跳び!
その生物は羽を持ち空を飛ぶ---その飛行能力は---
「黒山光!記録2m15cm!」
「…くそ」
「………ケロ」
第四種目!反復横跳び!
「よし。やるか」
「黒山ちゃん。まってちょうだい」
反復横跳びに挑戦しようとする俺に声が掛けられた。
「うん?ああ、なんだ
声を掛けてきたのは入試の実技試験の時に知り合った
「声をかけるのが遅くなって悪い。蛙吹も無事に合格できたんだな。よかった」
「お互いにね。それと私のことは梅雨ちゃんと呼んでちょうだい」
「…流石に女子を名前にちゃん付けで呼ぶのはちょっと…」
「あら、出会って数分で結婚を申し込んできた黒山ちゃんらしくないわね」
「あれはな、あの時の勢いとかもあったからな」
「ふうん。まあ、いいわ。それより黒山ちゃん。私、あなたに聞きたいことがあるの」
「………なんだよ」
「どうして”個性”を使わないの?」
「………」
そう。蛙吹は実技試験の時に俺の”個性”を見ている。
その蛙吹からすれば”個性”を使わないでテストを受ける俺の行動は意味不明だろう。
「蛙吹。俺は言ったよな。俺は”個性”を使うのが好きじゃない。俺の”個性”は、こんな人目のある所で使うようなもんじゃないんだよ」
「それは聞いたわ。でも、このままじゃ黒山ちゃんが最下位になってしまうかもしれないわ」
「…それは、そうだ」
現在、第三種目まで終えての最下位は緑谷。”無個性”の緑谷が最下位なのは当然で、下から二番目が俺だ。しかし、それは辛うじて素の身体能力で緑谷に勝っているからの順位。
何時、最下位に落ちるか、わからない。
その上で緑谷は実力を隠している節がある。じゃなきゃ合格出来なかったはずだ。
それでも俺は”個性”を使いたくは無かった。使うつもりもなかった。
もし万が一、俺の”個性”がバレた場合、俺に向けられる視線は嫌悪、敵意、奇異、悪意に違いがない。
「…蛙吹。お前が、お前みたいな女子が特殊なんだ。お前は”個性”を使った状態の俺に触られても普通に接してくれた。けど、それは普通じゃない!普通は、嫌がる筈なんだ!」
”悪者”を見るような視線。それが俺は心底、嫌だった。
「…確かにそうかも知れないわ。でも、黒山ちゃん。前にも言ったけれど、私は黒山ちゃんの”個性”をそこまで酷いとは思わないわ」
「………」
「本当よ。私、思ったことを何でも言っちゃうの。私を助けてくれた時の黒山ちゃんは、かっこよかったわ」
「…っ」
「私、
蛙吹の大きい眼が俺を見る。
蛙吹を見て思い出したのは、蛙吹と同じように俺の入学を喜んでくれた母親と緑谷の顔だった。
---私達の子だもの!当然よ!ねえあなた!
---あ!く、黒山君!お、おはよう!よかった。黒山君も合格したんだね!
「…………………………………ったよ」
「なに?黒山ちゃん」
「わかったって言ったんだ。出せばいいんだろ”個性”!」
再開!第四種目!反復横跳び!
「
俺の”個性”は変形系。部分だけの変身も一応は可能、なはず。
何度か挑戦して成功はしている。
もしこれで異形型の”
「足だけ。足だけ。失敗した時のことは、…失敗したら考える!じょうじ!」
「
「
「始め!」
---シュタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ。
「ひゅうううう‼‼ハハハ‼‼跳ね返って超高速での反復横跳びが可能なのさ‼‼」
「おお‼‼すげぇ‼」
「だろう‼オイラすごいだろう‼」
「いや!お前の後ろの奴がすげぇ‼‼」
「へ?---」
「時速320キロの瞬発力
---カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ
「すげぇ速えぇ!………けど、あの動き、まるでゴキブ「切島ちゃん。測定中に話しかけちゃ駄目よ」おお、そうだな。測定の邪魔しちゃ悪いもんな」
「黒山光!記録555回!」
”個性”で足のみを変身させての測定は上手くいき反復横跳びで何とか高記録を出した俺は安堵した。
緑谷のことは残念だけれど、最下位を脱したと罪悪感を抱きつつ安堵したのも束の間、次の第五種目のハンドボール投げで緑谷がどういう訳か指を犠牲に高記録を出し俺と緑谷の最下位レースは振り出しに戻った。
”無個性”である筈の緑谷が”個性”を発揮したことに疑問を抱く暇もなく、俺には再び除籍の危機が訪れる。
しかし、一部を変身させての測定は反復横跳びで限界だった。
俺の直感が次に一部変化を試したとしても”個性”を抑えきれないことを伝えてくる。
仕方なくその後の種目は素のままで挑むことになる。
結局、最後まで除籍に怯えながら測定を終えたのだった。
結果から言えば俺も緑谷も除籍にはならなかった。
最下位は除籍というのは俺達に恐怖を与えて最大限を出す為の相澤先生の「合理的虚偽」だったらしい。
マジでふざけんなミノムシ野郎がと思ったが、除籍にならなかったので良しとする。
こうして俺の『雄英』での初日は終わった。
帰り道。緑谷を一緒に帰ろうと誘う。
すると飯田と俺の知らない間に緑谷と仲良くなったらしい
中学とは違い緑谷にも親しい友達が出来そうで良かった。
そして、駅で飯田と麗日と別れた後、緑谷に”個性”のことを聞いてみた。
緑谷は詳しいことは話せないと謝ってきた。
俺は本心から気にしないと返した。
誰にでも話せないことや話したくないことはある。それが”個性”に関してのことであるなら、俺は痛いほどに理解できる。
だから俺は一言、緑谷に言った。
「緑谷。絶対に、困ってる人を助けるヒーローになろうな」
「うん!頑張ろう!黒山君!一緒に!」
主人公の大雑把な設定
黒山(くろやま)光(ひかり)
個性『ゴキブリ』
ゴキブリっぽいことが大体できる。
常時カエルっぽい梅雨ちゃんとは違い普段は普通の人間。
任意でゴキブリ人間に変身できる。身体の一部変化が短時間なら可能だが、能力的には完全変身時よりはるかに劣る。
完全変身時はテラフォーマーズのテラフォーマーみたいになる。
分からない人は「火星のゴキブリ」で検索しよう!後悔するぞ!
その状態の主人公に背負われても動じなかった梅雨ちゃんマジケロイン。