モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み) 作:ニルドアーニ四世
「おい!大丈夫か?」
海軍の正義と書かれたコートを羽織っていない桃色の髪をした海兵が足元で動かなくなった海兵の身体を揺すっていた。その海兵の手には血に塗れたペンダントが握られており、それを開くと家族の写真だった。桃色髪の海兵“コビー”は歯を激しく食いしばりポタポタと涙を流し始めると一目散に走り出した。
***
数分後
「そこまでだァァァァァァァッッッ!!!!」
ルフィを逃す時間を稼ぐ白ひげ海賊団と悪の芽であるルフィを殺したがる赤犬の間で大声をあげて立ちふさがった。
「もうやめましょうよ!!!!もうこれ以上戦うのやめましょうよ!!!!」
コビーは涙を激しく流しながら赤犬へ声をあげた。海兵や海賊を問わずコビーという存在に気づき彼に注目した。だがコビーはただ言いたい事を言ったに過ぎなかった。彼の頭の中で消えゆく声が響き渡ったのだ。
だっ...誰か...
助け...
...『バタン』
「命がもったいない!!!!兵士一人一人に帰りを待つ家族がいるのに...目的はもう果たしてるのに...戦意のない海賊を追いかけ!!!やめられる戦いに欲をかいて!!!いま手当てをすれば助かる兵士を見捨てて!!!その上にまだ犠牲者を増やすなんて...
今から倒れていく兵士達はまるで...馬鹿じゃないですか!!!!」
コビーの叫びの様な演説はマリンフォードへ響き渡った。あのセンゴクでさえも少し心を動かされかけていた。
「あの海兵...実に見事。」
覇気と体力をある程度回復させたモリアは感嘆の声をあげる。今はただの名も無き海兵に期待の目を向けた。
「あん?誰じゃ貴様...。数秒無駄にした。正しくもない兵士は海軍には要らん!!!!」
だが赤犬はセンゴクやモリアとは異なり特に効果はなかった。右手にマグマを纏うとコビーへ向けて振り下ろそうとした。
「くそッ!まだ間に...来たか...。」
モリアが影で移動し、コビーへ向けられた攻撃を防ごうとするととある気配を感じ、その気配が先に赤犬の攻撃を食い止めた。
マグマの右手は大剣によって受け止められ、次第にその男が誰か皆が理解をし始めた。
「ん⁉︎」
己の攻撃が誰かに食い止められ、若き海兵は緊張からかゆっくりと気絶し倒れた。
「良くやった...若い海兵。お前が命をかけて生み出した勇気ある数秒は良くか悪くかたった今、世界の運命の大きく変えた。」
男は海兵を褒めるとマリンフォードの海岸に巨大な船が着港した。
そして地面に落ちた麦わら帽子を抱えると声をあげた。
「この戦争を終わらせに来た。」
四皇の一人“赤髪”のシャンクスが荒れ果てたマリンフォードに現れた。
突如現れた四皇にどよめく海兵と海賊達を他所に赤犬とシャンクスは向いあった。
「赤髪...。」
少し離れた場所でモリアがニヤッと笑いつぶやくとシャンクスは歩き出し、海軍元帥のセンゴクの近くにやってきた。
「両軍...これ以上欲しても両軍被害が無益に拡大する一方だ。まだ暴れたりないのなら...
来い!!!俺達が相手をしてやる!!!!」
シャンクスの後ろに赤髪海賊団の幹部が並びどよめく海兵、海賊達が静かになるとシャンクスは刀を収め語りかけた。
「全員...この場は俺の顔を立てて貰おう。白ひげ エースの弔いは俺達に任せてもらう。戦いの映像は世界に発信されていたんだ。これ以上そいつらの死を晒す様な真似はさせない...。」
シャンクスの予想外の発言に海兵が抗議の声をあげた。センゴクが歯を噛み締め口を開いた。
「構わん!!!!」
「すまん。」
センゴクが海兵らを黙らせる様に大声をあげると、自分の顔を立ててくれたセンゴクに軽く謝った。
「戦争は終わりだァァァァァァァッッッ!!!!」
センゴクのマリンフォードへ響き渡る一声により戦争は無事に終結、両軍被害は果てしなかったが“白ひげ”、エースという最大の悪の芽を摘んだ海軍の勝利として新たな歴史として語り継がれる事となる。
***
数時間後
〜マリンフォード湾岸〜
「テメェ...モリアッッッッッ!!!!」
ドフラミンゴはモリアの背後に並ぶパシフィスタ軍団の猛攻により声をあげた。パシフィスタの半数は糸で斬り裂かれ機能停止しているが、流石に数という
「どうだ?人間兵器では満足に暴れられぬだろう...。俺が相手をしよう。」
爆風に吹き飛ばされ倒れているドフラミンゴにモリアが声をかけた。
「テメェ...。“
ドフラミンゴが地面に手を触れると地面が巨大な糸の塊に変化し、ドフラミンゴの意のままに動き始めた。
「ほぅ...。」
「覚醒してるのがお前だけだと思ってんじゃねぇよ!!!!」
先端が武装色で硬化された無数の糸の塊がモリアへ襲いかかった。だがモリアは鼻で笑った。
「だが...脆い。」
影の一閃が素早くサッと真横にまたたくと、糸の塊が一斉に斬り裂いた。そしてその延長線にいたドフラミンゴをも真っ二つに斬り裂いた。
上半身と下半身を切り離したが、切り口から見えたのは血ではなく糸の断面だった。
「糸の分身か...。見えているぞドフラミンゴ。」
背後に現れたドフラミンゴが五本の指から糸を出して斬り裂こうとしたが、見聞色の覇気で何をしようか見通していたモリアが硬化した右腕で軽々と糸をガードした。
「このバケモンが...。」
「分身は得意分野でな。」
モリアは右手でドフラミンゴの顔を掴んでそのまま地面に力任せに叩きつけた。土煙が舞い、やがて収まると両手両足が4本の影の杭の様なモノが突き刺さり地面に繋がれている。そこからたらたらと血を流しドフラミンゴは悔しそうな顔をしたが、モリアはそれを見下す様に見ると口を開いた。
「お前が七武海になったのはマリージョアに眠る国宝の存在を知っていたから...。そして消されなかったのは単純にお前が強くて消せなかったから...。もうわかるな?」
ドフラミンゴはマリージョアを揺るがしかねない程の国宝の存在を知り、逃亡した。そして口封じの為に追手を差し向けたが、ドフラミンゴは全てを退けたり逃げ出した。やがて成長したドフラミンゴは天竜人の貢金を乗せた船を襲撃した。すると世界政府はドフラミンゴを始末するより利用した方がいいと考え七武海へ迎えた。
だがそれはドフラミンゴが強く天竜人の放つ刺客では討ち取れなかったからの話である。つまり討ち取れる程の人材さえいれば生かしておくもはや理由はない。
「フフフ...フッフッフッフッフッ!!!!天竜人の差し金か...胸糞悪りぃ野郎共だ。ところで俺を始末するとどうなるかわからねぇわけでもねぇよなぁ?モリア...。」
「...。」
ドフラミンゴの言葉に顔色一つ変えず何も言い返さないモリアに追い打ちをかける様に語り始めた。
「この世で白ひげという楔が消えた今、この海は大いに混乱する。そして確実に新世界の大物達は準備を整えるだろう。王座につかぬ番人の消えた海賊王という椅子をな...
俺が手綱を引いているんだ...
新世界の大物達の手綱をな...。」
ドフラミンゴは裏の世界でジョーカーとして新世界の強者達と取引をしている。その物資が消えてしまえば今度どの様な行動に出るかぎわからない。かといって生かしておけば新世界へ危険な物資の流通が止まらなくなる。どちらにせよリスクは大きい。
「そうか...だったら俺がその手綱を切り離してやる。そしてその手綱でお前の言う新世界の大物の首を全て絞めてやる。」
「なんだと⁉︎」
モリアが選んだのはドフラミンゴを消してこれ以上、新世界へ危険な物資を食い止めることだった。
「貴様を潰せば、少なくともカイドウとの“スマイル”の取引は消える...。お前だけじゃなく七武海という傘がなくなるんだからな...。そうすれば混乱によりカイドウの進出を遅らせる事とこれ以上の戦力の増加を抑えるのが可能になる。」
ドフラミンゴの最も大きな取引相手は四皇の一人“百獣”のカイドウ。そのカイドウに流す物資は“人造悪魔の実”...その名を『スマイル』。人造ゆえにリスクは大きいが悪魔の実という誰しもが欲しい力だ。欲しがる者は大勢いる。
「フフフ...だったらその隙を見てビッグマムが先に暴れだすだけの話だ。さらにそれを止めようとする赤髪に、“白ひげ”にとって変わろうとする新たな勢力に、それらを阻止しようと動く白ひげ海賊団の残党達...。
どう転ぼうとも新世界の大物達が暴れだし、大海賊時代最高の覇権争いが始まる!!!!
それこそおめぇの望む世界じゃねぇよな?
多くの市民が傷つくことになるぞ...。
フフフ...フッフッフッフッフッフッ!!!!」
仮にカイドウの戦力を食い止めるとしてもガラ空きの白ひげの縄張りを四皇の一人“ビックマム”が侵攻しかねない。どちらにせよ新世界は激しい戦乱に市民や海軍、海賊達が巻き込まれる。その事を容易に見抜いたドフラミンゴが高笑いをした。
「安心しろ...。この戦争で白ひげが死んだ時に一つ妙案が浮かんだ。今までは七武海として海軍という組織のしがらみのある者じゃなく、自由な
今まではこれが最善だと思ってた...。」
「“思ってた”?まさか...」
モリアは静かにドフラミンゴに語りかける。するとドフラミンゴはモリアの言葉の中に聞き流せないワードがあった。
「あぁ...白ひげが守っていた海賊王の座を俺が登り詰め、俺が世界を支配すればいい。“
モリアは己が海賊王へなるべく新世界へ乗り込む決意を固めたとドフラミンゴに言い放つと、彼は荒れ果てたマリンフォードへ響き渡る様に大声で笑い始めた。
「フフフ...フッフッフッフッフッフッ!!!!おっかねぇ野郎だ。お前なら本当にやりかねねぇからタチが悪い!!!!」
ドフラミンゴがモリアという男であればこんな世迷いごととも取れる言葉を嘘ではなく、本気だと理解した。そして急に静かになると穏やかな口調で語りかけた。
「ふぅ...腐れ縁だがウマの合わねぇおめぇに一つだけ、頼みがある...。
俺の部下をお前の傘下に入れてやってくれ。七武海という傘の無くなれば俺のファミリーは崩壊しちまう。」
ドフラミンゴという男は天竜人に激しい怨みを持ち、この世界を破壊する事が夢であった。だが彼はその夢よりも大切なモノがある。それは己の家族ともいえる幹部のファミリーである。家族によって人生を大いに狂わされた彼にとって命をも投げ出せる幹部は何よりも大切だった。
「あぁ...ドレスローザに使いを出そう。」
「...こんな事をおめぇに頼むなんぞ予想できなかったがな。」
「それは俺もだ。」
モリアがドフラミンゴの頼みを受け入れ、元々最悪の仲だったのに二人は軽口を叩き合いニヤッと笑った。そしてモリアは右手に影を纏わせながら口を開いた。
「さらば“堕ちた天竜人”ドンキホーテ・ドフラミンゴ...
貴様は先に地獄で俺を待っていろ...
俺が良い土産話を持ってきてやる。」
「...楽しみに待っているよ。フフフ...フッフッフッフッフッ!!!!」
“