モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み)   作:ニルドアーニ四世

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闇の深淵 1

 

 

 

 

「ゼハハハおめぇは関係ねぇだろモリア。もうくたばった時代遅れのじじぃに何の義理があるんだ?」

 

己の目の前に立ち塞がったモリアの様子から七武海としてではなく、一人の恩人を殺されたただの男だという事を理解した黒ひげは疑問をぶつけた。

 

「義理はないが...大恩がある。」

 

モリアがゴミでも見る様に見下すとゆっくりと口を開いた。

 

「どうしたお前ら(白ひげ海賊団)...

まだ戦争は終わってねぇ...

エースの意志をッ!!!!そしてエドワード・ニューゲートの意志を絶やすんじゃねぇ!!!!」

 

モリアの言葉で悲しみに明け暮れる海賊達は下げていた顔をハッとしてあげ、涙を拭き始め立ち上がり始めた。

 

「モンキー・D・ルフィを逃せ!!!!そいつは海賊の頂点(白ひげ)が認めた未来の王に成り得る器を持つ男だ!!!

 

死を恐るるな!!!

恐れとは自ら意志を挫くこと!!!

 

さぁ立ち上がれッ!!!!白ひげ海賊団ッ‼︎‼︎!!」

 

敵とはいえモリアの鼓舞により海賊の頂点(白ひげ)の想いを絶やすわけにはいかないと感じ、ルフィを殺さんとする赤犬へ向けて攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜マルコside〜

 

 

 

 

 

「あの野郎!!!親父を何度も殺そうとしといて何を今さ...ッ!!!」

 

一部の納得出来ぬ海賊達がモリアへ向けて銃を向けようとするとマルコが腕で制止をさせた。そして部下達へ口を開いた。

 

ティーチ(アイツ)はモリアに任せろ。あの言葉は本心だよい...。本当はこの戦争に参加したくなかったはずだよい。」

 

事実モリアはこの戦争で二つの天秤に惑わされていた。恩人か正義の要塞...護るべきモノはどちらも重く大切だった。そこで彼は己の立場を尊重し、白ひげ海賊団に牙を剥いた。そして白ひげ(恩人)の頼みを今成し得ようと動いたのだ。己の立場を揺るがしかねない彼の想いをマルコと11年前の出来事を聞いていた隊長達は“黒ひげ”をモリアへ任せた。

 

「マルコ隊長...一体どういう?」

 

「白ひげ海賊団の肩を持つなどモリアといえど所詮は海賊(クズ)...。」

 

マルコの側にいた海賊の一人が疑問をぶつけようとするが、ルフィを始末したい赤犬はそれを遮りモリアを睨みつけながら己を妨げる敵(白ひげ海賊団)へと距離を詰めた。

 

「後で皆に話すよい...。ひとまず赤犬を止めるぞ。」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜モリア・黒ひげside〜

 

 

 

 

 

「ふん...モリア俺の仲間になれよ。おめぇ程の男が俺と手を組めばこの世界を支配できる。おめぇの言う均衡ってモンがなくなるはずだ。」

 

黒ひげはモリアの鼓舞を気に入らなそうにしたが、彼ほどの男をみすみす見逃すわけはなく己の仲間にしようとした。だがモリアは冷たい目で睨み続けるだけだった。

 

「戯言をぬかすな...。俺は貴様の様な義理を通さぬ男は好かん。」

 

「ゼハハハ...“白ひげ”のいねぇ“白ひげ海賊団”みてぇな小物の衆にはもう用はねぇよ。」

 

黒ひげがモリアを挑発すると、彼は静かに口を開いた。

 

「一つ問おう...戦場において最も足手纏いになる者が何かわかるか?」

 

「あん?」

 

「臆病者でも敗者でもない...死んだ者だ。人は友人や仲間や恋人、肉親の屍を前に上手く剣は振るえない。故にもはや海兵、海賊だろうと何人たりとも貴様らに殺させはせぬ...

 

我が命が貴様の前で生ける限り。」

 

モリアがこれ以上黒ひげ海賊団による犠牲者を一人も出さぬと言い放つと黒ひげはニヤニヤしながら口を開いた。

 

「おいおい...俺たちゃ殺していいってか?連れねぇ野郎だ。」

 

「言うたろう...貴様は好かぬ。」

 

モリアは冷たく黒ひげの冗談を流すと、黒ひげはニタァっと笑い、右手にグラグラの実の白い光を...そして左手にはヤミヤミの実の闇を溢れ出させた。

 

「おめぇも理解したはずだ...ヤミヤミの能力とグラグラの能力を手にした俺は最強だ!!!!」

 

「最強だと?よほど脳への損傷が大きいと見える...。」

 

「ゼハハハ...流石にわかってるだろうが圧倒的に不利なのは傷を負ってる俺じゃなくて無傷のおめぇだ。」

 

黒ひげの言葉にモリアは何も言い返せなかった。確かにそうであるのだ。まずモリアがかつて白ひげとまともに戦えたのは“影鎧(ブラックローブ)”による鉄壁の防御、そして“影法師(ドッペルマン)”によるトリッキーな攻撃、そして白ひげより若い肉体と研ぎ澄まされた覇気である。

 

黒ひげの闇の手に捕まれば影の能力は発動できなくなり、無防備な状態となる。そこにグラグラの地震を叩き込まれればどうなるかは予想などする必要はない。更に白ひげの様に年老いてなく、覇気が弱体化していない黒ひげと覇気をかなり使い込んだモリアでは差は歴然だった。

 

更に能力の相性である。ヤミヤミの能力とカゲカゲの実は互いに性質は異なるとはいえ、影と闇では完全に上下関係があると容易に予想できる。つまり影であるモリアは闇からは逃れられない可能性が高いということだ。

 

つまりモリアは黒ひげの左手に一切触れることなく、最低限の覇気で同年代の肉体を持つ黒ひげの攻め続け勝利せねばならないのだ。

 

「ゼハハハ!!!だんまりかよ!!!!“黒渦(くろうず)”!!!!」

 

モリアは突如身体が黒ひげに引き寄せられ、初めて闇に引力の力があることを理解した。

 

モリアは闇の引力から逃れる事はできず、黒ひげの闇に捕らえられた。肩を掴まれ能力を封じられると黒ひげは右手に白い光を覆い、満足そうな声をあげた。

 

 

「ゼハハハ...あのモリアでさえも俺の前じゃ無力だ!!!!」

 

そして白い拳をモリアへぶつけると、大気が時空を歪んだと錯覚する程ヒビ割れた。二人の戦闘を見守る海兵達は黒ひげの振動攻撃が白ひげの放った振動を遥かに上回る事を見せつけられ容易に理解させられた。

 

モリアは武装色の覇気でガードをしたが、“影鎧(ブラックローブ)”のない無防備な肉体は黒ひげの覇気と振動に耐え切ることができずに、大量の血反吐をドバッと吐き、頭をガクンと前へ傾けた。確実に内臓を破壊したと感じた黒ひげは愉快そうな声をあげた。

 

 

「ゼハハハハハハ!!!!全てを引きずり込む闇の引力!!!!そして全てを破壊する地震の力!!!!俺こそが最強だ!!!!世界中のつまらねぇ野郎共!!!!これからは俺の時代だァァァッッ!!!!!!」

 

インペルダウンの囚人の落としたでんでん虫により黒ひげという新たな脅威に世界中の人々は怯え始め、そしてあのモリアさえ圧倒する力を手にした事を未だに信じられなかった。

 

 

 

 

 

「...ッ!!??」

 

黒ひげは突如右の手首に激痛が走った。見るとモリアの左手が己の手首の骨を握力でミシミシと言わせ、頭を傾けたまま口を開いた

 

「...................ない。」

「あ?」

 

微かな声を黒ひげは聞き取れず、聞き直すとモリアは勢いよく血に塗れた頭をあげて周囲に血の水滴を飛ばすと大声をあげた。

 

「“白ひげ”エドワード・ニューゲートの力は断じてこの程度ではない!!!!」

 

モリアは右手に出来うる限りの力を込めて黒ひげの右手首を真横から殴りつけた。『ゴキュリ!!!!』という身の毛のよだつ骨の軋み折れる音を響かせると黒ひげの右手は完全に有り得ぬ方向にへし折れていた。

 

「グァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!」

 

黒ひげは右手の想像を絶する程の激痛に悶え苦しんでのたうち回った。モリアは頭と口元から血をタラタラと垂らしながら、影を渦巻かせ一歩ずつ黒ひげとの間合いを詰めていく。

 

黒ひげは先ほどの白ひげの恐怖に劣らぬ程の絶望を感じた。そして先ほどと同じ様にモリアを蜂の巣にしようと部下達へ指示を出した

 

 

「野郎共やっちまぇぇぇッッ!!!!」

 

「「「「「「「「ッ⁉︎」」」」」」」」」

 

船長の一言で再び動こうとするが、何故か一歩も動けずその場に立ち尽くした。

 

黒ひげが部下達の足元に覇気の込められた影の針が突き刺さっていることに気がついた。そして前方からの常軌を逸する気迫を感じて前へ振り返した。

 

「ハァ...ハァ...テメェの闇は能力の使用不可であって“解除”じゃねぇんだろ?」

 

モリアが息を整えながら黒ひげへ言い放つと図星の様な顔をした。モリアは黒ひげの闇の引力に引き寄せられる僅かな時間に影の針を黒ひげの部下達の足元へ放ったのだ。

 

部下に頼らずに自分の力でどうにかするしかないと理解した黒ひげは右手を庇いながらゆっくりと立ち上がった。

 

「だったらこのまま沈んじまえ!!!このバケモンがァァァァッッッ!!!!」

 

無事な左手で“闇穴道”をして、モリアを闇に呑み込ませて閉じ込めようとした。モリアは足元からゆっくりと沈み始めたが全く動じなかった。そして目を瞑り、心の中である男を呼び出した。

 

「影とはこの世に存在す限り逃れられぬ宿命...

我が本気(高み)を見せてやる...

“黒ひげ”...

時に影は闇をも喰らう...。」

 

 

 

 

モリアがそう言い放つと万物の時が止まった。目の前には怯えながらも技を放つ黒ひげに二人の戦闘を固唾に見守る海兵達。彼らは微動だにしなかったが、ただ唯一モリアの精神のみは動き続けた。なぜなら彼は自分のもう一つの人格を呼び醒ましただけに過ぎず、これは極限まで凝縮された精神世界であるからだ。

 

 

 

モリアの精神の空間に7メートルはあろうかという恐ろしい男が現れた。彼の名はゲッコー・モリア...。奇しくも二人は同一人物である。かつて精神の攻防で肉体を奪い合ったなかであるが憑依をしたモリアは完全に己の支配下に置き肉体は奪いにくる事は無くなった。

 

 

本来のモリアは憑依モリアに対してもはや敵意を持ち合わせていなかった。彼の強力な精神力に太刀打ちできなくなったため、争うより仲良くした方が偽物とはいえ憑依モリアとある程度の会話や期間限定で肉体を譲る交渉もできるからである。

 

 

 

(キシシシ...よぉ半端野郎...確実にあの黒豚野郎は“白ひげ”の後釜を奪いにかかる。一つ確実に言えるのは確実に均衡は崩される。偽善者のおめぇはどうしたい?)

 

 

本来のモリアは恐ろしく高い声だが威圧や敵意を微塵も感じさせぬ口調で話しかけた。彼は偽物という以前に憑依モリアをいたく気に入り、彼の野望がどこまで世界に通用するかを見てみたくなったのだ。

 

「俺という存在はある時に光へ、ある時に闇へと形を変える。ゆえに闇でありながら純粋な闇でない俺では貴様の様に非情にはなれぬ。だが時にそうにならればならぬ時もある。さっさと俺に力を寄越せ。」

 

 

(キシシシ...おめぇに手を貸しゃ面白ぇモンが見られそうだからな。もしおめぇが腑抜けちまったらその時は容赦しねぇぞ...)

 

 

本来のモリアは珍しく憑依モリアへ真剣な表情を見せると、憑依モリアは軽く笑みを浮かべながら鼻を鳴らすと口を開いた。

 

「あり得ぬな...俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

その言葉を本来のモリアが耳にするとギザギザの歯を見せる様に笑うと、身体から影の塊を放出して憑依モリアの身体へとスゥと同化し、影という影が全身から溢れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと目を開くと時は再び動き始め、モリアの身体は以前より遥かに強力で大量に影が纏われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モリアが己の狂気性を秘めた第二の人格を拒まず完全に受け入れし時...

 

彼の能力は新たなステージへと登りつめる

 

 






流石にダークサイドをこう使うと予想していた人はどれほどいますかね(笑)。作者としては初めからこう使うつもりだったので苦手な方はすみません。もう少しで戦争編が集結し、新世界編と映画編(予定)へと物語を進めていきます。楽しみにしててください。

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