モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み) 作:ニルドアーニ四世
「んあっ弾切れだ...。」
満身創痍で暴れ尽くし、全身から垂れ流す様に血を流し続ける白ひげへ向けて黒ひげ海賊団達の攻撃が止むととうに死したと思われた男が口を開いた。
「お前じゃねぇんだ...。」
「まだ生きてんのかよ!!!!」
白ひげの気力を絞り尽くして発する様な声を聞いた黒ひげはおののくように大声をあげた
「ロジャーが待っている男は少なくともお前じゃねぇよ...。ロジャーの意志を継ぐ者達がいる様に...いずれエースの意志を継ぐ者が現れる。そうやって遠い昔から脈々と受け継がれてきた。そして未来...いつの日かその数百年分の“歴史”を全て背負ってこの世界に戦いを挑む者が現れる...。センゴク...お前達“世界政府”はいつか来るその世界中を巻き込む程の巨大な戦いを恐れている!!!
興味はねぇが“あの宝”を誰かが見つけた時...
世界はひっくり返るのさ...
誰かが見つけ出す...
その日は必ず来る...
“
まるで遺言の様な白ひげの言葉はまるでかつてローグタウンで処刑されたゴールド・ロジャーを彷彿させる様な語り口であり、そして白ひげの最後の一言は再び海賊達を熱狂させ新世界へ選ばれた強者共が暴れに来ることとなる。
やがて彼のいう“ロジャーの求める男”が“
「貴様ッ!!!!」
センゴクの怒号は白ひげの耳へと届く事なく無情に“でんでん虫”から世界中へと広まった。
許せ息子達とんでもねぇバカを残しちまった...
俺はここまでだ
お前達には全てを貰った...
感謝しているさらばだ...息子達...
宝や海賊のロマンに全く惹かれなかった男が欲しかったのは“家族”であった。誰もが当たり前に持つ存在であっても彼にはそうでなかったのかもしれない。どうあれ“白ひげ”はこの望みを叶えることができ、“新たな意志”へこの大海賊時代の頂点の座を託した。
「死んでやがる...立ったままァッ!!!!」
黒ひげが微塵も動かぬ白ひげを見据え驚きの声をあげた。親父の死を泣き叫ぶ海賊達の声がマリンフォードに響き渡る中、少し離れた場所で周囲に海兵しか居ない七武海最強の男は静かに静かに頬から雫を垂らしていた。
***
〜黒ひげside〜
「ハァ...ハァ...始めるぞ!!!!」
巨大な黒い布を白ひげへ被せ、
モリアはただ死した“
***
〜11年前〜
“モビーディック号・船長室”
「それで...出直すか空席の二番隊隊長につくか決めろよい...。」
椅子に座る白ひげ海賊団船長“白ひげ”、そして彼の側に立つ一番隊隊長“不死鳥”マルコ。
そして二人に向き合う様に立つ“王下七武海”ゲッコー・モリアが三人で船長室にいた。
モリアはこの数日前“白ひげ”と決闘をし敗れるものの治療を受け、更に白ひげの
「...俺は貴方の息子にはならぬ。命を見逃してくれた大恩があるとはいえ俺にはやらねばならぬ事がある。」
モリアは敵である自分を治療してくれた恩義と己の大望である“大海賊時代の終焉”を天秤にかけて長考による長考を重ねた。だが彼自身の大望を成し得る程の実力はなかった。かといって彼の夢を諦めるなど到底できなかった。
「グララララララ...だったらしょうがねぇ。」
白ひげは彼の苦渋の決断を吹き飛ばす様に豪快に笑いながら、巨大な瓢箪に入った酒を呑んだ。勿論その程度でモリアが納得するわけもなく口を開いた。
「だが恩義に背くのは筋が通らぬ...。俺は何を貴方にすればいい?」
『おめぇみてぇなハナッタレに何かをされる程この俺は落ちぶれちゃいねぇ!!!!』と言い返そうとした白ひげだったが、モリアの真剣で揺るがぬ覚悟を秘めた両の瞳を前にその様な事は言えなかった。そして瓢箪を地面に置くと静かに海賊の最強とされる己の心の遥か奥底の想いをモリアに語り出した。
「俺ァ...怪物だ、バケモノだと呼ばれてるが所詮俺も人の子...。最強とも呼ばれようが寿命には勝てねぇ。もし俺という傘を失った家族はどうなる?そしてこの海はどうなる?」
モリアとマルコは“
「覇権争いだな...。海賊、市民、海兵、多くの命が失われる。」
一瞬で正解を導いたモリアに白ひげは真剣な表情でモリアの瞳を見つめると彼の他には誰も託せぬかもしれない頼みをした。
「どの道俺はそう長くはねぇ老いた老兵だ。もし俺が死んだら...
***
〜黒ひげside〜
「黒ひげが出てきたぞ!!! “白ひげ”にも黒ひげにも何の異変はない!!!!」
巨大な黒い布から出てきた黒ひげとその隙間から見える白ひげの亡骸を見た海兵は特に以前と変わらぬ様子の二人を見て声をあげた。
「海軍ん〜...晴れて再び敵となるわけだ...。俺の力ってモンを見せておこう...。」
黒ひげが勿体ぶるように海兵達の前へ出ると彼の部下達はニヤニヤと笑っている。
「ゼハハハ...“
「う!何だ⁉︎」
地面を闇が覆い尽くす様に広がると海兵達の足元からゆっくりと沈み始め、やがて全身が呑み込まれた。
「これが俺のヤミヤミの実の
黒ひげがニヤッと笑って白ひげが振動を起こす様な構えをし、掌に白い光を覆うと大気へ叩きつけヒビを入れる寸前に荒れ果てたマリンフォードの戦場に途轍もない爆音が響いた。
『ボゴン!!!!』
圧倒的な武装色の覇気を覆った影の拳が白い光を抑え込んだ。そして光が全て影の勢力に侵されて消滅すると誰もが得体の知れぬ黒ひげへと立ちふさがる彼の存在を認識した。
黒ひげが目を見開き驚くと、死神の如く殺気を放つ男は異常なほど激しくしていた歯軋りを止め、儚げで渇いた瞳で黒ひげを睨みつけていた。
***
「もし俺が死んだら...
おめぇが家族を守ってやってくれ...。」