モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み)   作:ニルドアーニ四世

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友への激昂

 

 

 

 

「おい...ゾンビ兵には昔“新世界”で暴れてた連中が混じってるぞ!!!!」

 

モリアがゾンビ兵に自由に動くよう指示を出すと目の前にいる海賊達へと次々襲いかかった。よく見るとかつて名をあげた強者達がモリアのゾンビと化していたことに気づき始めた。

 

 

 

***

 

 

「あ〜ダル...はいはい...“譲渡(ギフト)”。」

 

全く攻撃する素振りを見せなかった顔の整った長い緑色の髪をしたゾンビは刀で胸や頭を斬り裂かれたり銃弾を次々放たれたが“譲渡”とつぶやくと全てのダメージと傷が周囲の人間に返された。

 

「面倒くせぇから早く攻撃してよ...。致命傷ぐらいでさ...」

 

「あいつは“奇術師”リンダ!!! 確かあいつは譲渡人間だ!!!」

 

リンダを知っている男が能力を仲間に教えた。能力をバラされたリンダはため息をつくと武装色を身体に纏い襲いかかった。

 

 

 

***

 

 

 

「邪魔...。」

 

全身が黒の毛で覆われなぜか頭だけ短い金髪をした男が小さく呟いて腕を振るった。

 

『ボゴンッ!!!!』

 

“ヒトヒトの実<モデル>ゴリラ”を食べ、獣人化している男が力任せに暴れている。彼が腕を振るうと雑兵は纏めて吹き飛ばされた

 

「あいつは“獣碗”ビルド・シュタイン!!! 」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「アッヒャッヒャッ!!!!死んどけや!!!!」

 

肉体が腐りかけているゾンビが両手に太めのピストルを持って連射していた。次々と脳天に銃弾を命中させるとバタバタと倒れていく

 

「“聖弾”のカリー!!! 半世紀前のガンマンだ!」

 

 

 

***

 

 

 

 

「さっさ退きや...はよせんと殺してまう」

 

笑顔でナイフを持つ童顔の青年のゾンビが『タン...タン』とステップを刻みながら同じく小柄で剣を持った栗色の髪の少年と斬り合っていた。

 

「早いな...。君の名前は?」

 

“白ひげ海賊団”十二番隊隊長ハルタはナイフを持つ青年に名前を尋ねた。

 

肉体(身体)は“骸拾”マルフォース...。精神(中身)は“闇討ち”アルトや。どっちもしがない暗殺職やった...。海賊は専門外やけどしゃぁないなぁ...。」

 

 

 

***

 

 

 

「おいおい...あいつもしかして“キャプテン・ジョン”じゃねぇのか⁉︎」

 

酒瓶をラッパ飲みしながらサーベルを片手に完全に肉体が腐っている長い髪のゾンビは海賊達をスパスパと斬り捨てていく。男はかつて世界で名を轟かせた伝説の海賊の一人であった。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜処刑台〜

 

 

 

「錚々たる面々だ...残虐非道で知られた伝説の海賊達、超人的な逸話を持つ剣豪やガンマン、海兵専門の暗殺者、そして“新世界”で名をあげた海賊共...。」

 

センゴクが処刑台の上でモリアのゾンビ達を見ていた。全員が聞く者が聞けば震えあがる者ばかりであった。

 

「何だよありゃ...一体一体が強過ぎる。」

 

エースがゾンビの戦闘力を目の当たりにし嘆いた。70を超えるゾンビ軍勢を前に仲間達が次々と蹴散らされていくのだ。例外に取り押さえられて氷の大地に仰向けに倒されて身体のあちこちに刀を突き刺して固定されたゾンビもいるが大半はゾンビ兵が戦況を揺るがしていた。

 

 

ゾンビにおける影は精神面及び特徴を担う...。主に性格、技術などの肉体以外の役目であり、極端な例を出すと伝説級剣士の肉体に伝説級狙撃手の影を入れてもゾンビとしての強さは格段に落ちる。なぜなら剣士には剣士に向く肉体があり、狙撃手には狙撃手に向く身体があるのだ。事実モリアがホグバックに一番こだわらせるのは改造をする事により肉体の特徴を消さぬことである。

 

他にも隠せぬ部位をゾンビ風に改造させない事もこだわりに含まれる。モリアはスパイとして世界に己のゾンビ兵を放っている。入手した時点で死体が腐っていればホグバックに筋肉を移植させてカバーさせ、死後間も無い死体を入手した場合は冷凍保存をしている。それは肉体を腐らせぬ様にするためである。むろんスパイとして放つゾンビも肉体が腐らぬわけではなく。もちろん防腐剤を使用し寿命を伸ばしてはいるがそれでも長くは持たない。更に出血や痛覚などがないため海軍や海賊などの密偵には向かない。そこでいつ行方をくらませても気づかれにくい酒場の従業員や清掃員として潜り込ませている。

 

 

「政府としちゃ決して失いたくない男というわけかよ...。」

 

「...。」

 

 

 

 

***

 

 

 

「だいぶ減らしたな...。俺の兵達は“隊長達”でも易々と太刀打ちできぬ...。」

 

死人故に感じぬ痛み、天才外科医に改造された肉体、各々の達人の極めた技、新世界の強者の覇気や戦闘力スキル。それらの全てを併せ持つゾンビ兵などにもはや敵などいなかった。モリアが数名のゾンビを護衛としておき“白ひげ”の元へ向かっていると見覚えのある顔が現れた。

 

「久方ぶりだな麦わらッ!!!!」

 

「ゲェ!!!!モリア!!!!」

 

ルフィはエースを救出しようと全速力へ走っていて気づかなかったが、目の前にモリアがいた事に驚いた。そして勝てる相手でも無い為モリアとの戦闘を回避しようと考え、”ギア2”で身体の身体能力をあげるとモリアの攻撃を躱しつつ先へ進もうとした。

 

「貴様の命をもら...ッ!“影血閃(ブラックブレット)”」

 

突然氷の大地が割れて目の前に海水がモリアへ向けて放たれた。モリアは己を横切って回避しようとしていたルフィから目を離し、影の盾を創って己が海水に触れぬ様にした。そして海水の勢いが止まると側につけていたゾンビ兵の身体から影が抜けて持ち主の足元へ帰っていった。モリアが鋭い目で海水を起こした者を睨むと友人であるジンベエだった。

 

「俺に海水を当て気絶させれば影を失いゾンビは動かぬ肉片と化す...。動かぬ死体が消えたり傷つけられるのは面倒だ。

 

 

 

貴様は俺の数少ない天敵だからな...」

 

モリアがそう言い放つと全てのゾンビ兵の足元に小さな影の円が現れとゆっくりと沈んでいった。ジンベエは魚人であり、海水を己の武器として使用できる。能力者であるモリアにとって海水は脅威であり、失神でもしてしまえば今まで掻き集めた影が全て持ち主へ戻ってしまう。強者の影は地下で管理している為再び取り返せばいい。だが影を失った後の死体が問題なのだ。大砲などの流れ弾で死体が燃え尽きたり、傷つけられたりするのが実に痛い。格上だと理解はしているが己が敗れる可能性がある以上ジンベエがこの戦場にいる以上ゾンビ兵を使うわけにはいかなかった。

 

「仁義を通せぬわしを許してくれ!!!!わしゃエースさんを助けたい!!!!」

 

ジンベエは許しを請う様に嘆いた。だがモリアは恩人一人と故郷での恩の価値は比べるまでもないと考えていたので何とも思わなかった。だがモリアは声をあげた。敵として相見えたのに命を奪う気概で来ぬジンベエに腹が立ったのだ。

 

「仁義云々の前に敵が目の前にいるだろうジンベエ!!!! 救いてぇなら救ってみろ!!! 」

 

仁義を貫けぬジンベエの心情を察しているからこそモリアは敵である彼に対してそう言い放った。敵である以前に友人であり、世界の均衡の一つを担う同胞でもあるのだ。だが戦場に互いのエゴを持ち込みそれが相反した以上戦わぬわけにもいかない。ジンベエもまたモリアの意図を理解し全力でモリア()を倒さんと己の最強の技で挑んだ。

 

「おぉう!!!! ...“魚人空手奥義”ッ!!!!」

 

ジンベエは目を閉じ精神を可能な限り抑え込み、モリアが間合いに入る瞬間を待ち構えた。その様子を見たモリアは機嫌良さげにニヤッと笑った。

 

「昂ぶらせてくれんじゃねぇか!!!! 」

 

“影鎧”を一瞬で纏い右手を武装色で硬化すると地面を思いっきり蹴って間合いを詰めた。ジンベエはモリアが己の剛拳の間合いに入るのをただ待った。そして閉じた目を一瞬で開くと拳に水を纏いモリアへ繰り出した。

 

「“武頼貫(ぶらいかん)”ッ!!!!」

 

2人の拳同士は激しくぶつかり合い辺りの人々を吹き飛ばす程の衝撃波を放った。ジンベエが苦しみ紛れの声をあげると押し負け吹き飛んだ。ジンベエが仰向けに倒れ、身体をふらつかせながら立ち上がろうとすると腹に衝撃を感じた。目を上げるとモリアが脚でジンベエの腹を力任せに踏み込んでいた。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ...。」

 

ジンベエは両手でモリアの脚を掴んで退かそうとするが離れず、次第にモリアの脚力で少しずつ氷の大地にヒビが入り始めると氷が割れジンベエは気絶すると同時に完全に氷が砕け散りまるで人形の様に海底へと沈んでいった。

 

「海底で休んでいろ...七武海でなくなったとはいえ、世界に貴様という男を失うわけにはいかぬのだ...。」

 

 


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