モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み)   作:ニルドアーニ四世

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原作モリアのダークサイドは不評でしたが、ちゃんとこの話で取り返せると思います。白ひげの格が落ちたとお考えの人は申し訳ありません。作者の作り込みの甘さです。

一見無駄に見える記憶の消去や覇気設定、カイドウ回避の影響などが漸く現れます。


精神の攻防

 

 

 

 

 

 

ゲッコー・モリアは憑依者である。本来原作のモリアは確かに存在し、原作としての役割を担っていたが神の都合により彼本来の人格と肉体は奪われた。人格は表面上消えはしたものの憑依者の意識の及ばぬ奥底から肉体の主導権を奪い返そうと虎視眈々と狙っていた。

 

だが原作のモリアに誤算が二つ起きた。一つは彼の精神が全くブレなかった事だ。肉体の自由はない以上精神に影響を与える事以外に肉体を取り戻す術はなかったのだ。原作モリアは知らぬが彼には原作知識があり、未来を知るという事は大いなる自信に繋がった。また好きな漫画だったONE PIECEの世界で精神など弱まるはずなかった。

 

そしてもう一つは彼の覇気が自分の覇気を遥かに上回っていた事だ。覇気とは“疑わない力”。上記した精神力で彼は覇気の腕前をぐんぐん上昇させた。覇気とは精神力であるため原作モリアの覇気を含む精神力では敵わなかったのだ。

 

 

 

彼は半ば諦めつつも決して己の肉体を取り戻すことを諦めなかった。未来を知る憑依者は記憶を消し、そして強者の白ひげに挑むと実力の差を見せつけられて敗れた憑依者は自分の力を信じられなくなりつつあった。即ち“覇気が弱まってきた”のだ。

 

 

その隙を原作のモリアは決して逃さなかった。そして精神力で彼を上回ると22年もの長い月日の経てゲッコー・モリアは憑依者から肉体を取り戻す事に成功した。

 

 

「キシシシ...何て覇気だ...何て肉体だ。あり得ねぇほどの力が湧き上がってくる!!!!」

 

原作のモリアは己の力を実感し、酔い痴れた。憑依者の肉体と精神を支配下に置いた以上、鍛え抜かれた肉体と弱まった覇気を手に入れた。そして原作ではカイドウに敗れ失われたはずのモリア本来の覇気と弱まりつつあった憑依者の覇気...この二つを完全に支配下に置いたモリアがもはや敵などいないと過信するのは極々自然な事であった。

 

「キシシシ...手始めに“白ひげ海賊団”の殲滅に移ろう...。」

 

モリアがそう言い放つと“白ひげ”、マルコらの顔色が一瞬で変わった。だが憑依モリアを完全に抑え込む事が出来なかったのか、頭に声が響いてきた。

 

 

(ふざけるな...我が肉体をどうする気なのだ⁉︎)

 

 

「黙れ!お前が俺の肉体を奪ったんだ!!!」

 

 

(俺は奪ってなどいない!!!!早く返せ!!!!)

 

 

「うるせぇ野郎だ....。まぁいい。あとでゆっくりと精神だけでなく人格をも俺の支配下に置いてやる...。」

 

記憶を失った事により己が憑依者である事を忘れた憑依モリアと肉体を奪われた原作モリアの話が噛み合うわけもなく言い合ったが、原作モリアは彼を後回しにする事にした。

 

 

「よくわからねぇが...ほっとくわけにもいかねぇな。」

 

“白ひげ”は右手に光を覆うと原作モリアへ向けて大気を割り覇気を含ませた振動を与えた。モリアは口元を歪めて軽く呟いた。

 

「“影法師(ドッペルマン)”」

 

白ひげの目の前から一瞬で影の塊と化した。背後に気配を感じて振り向くが遅かった。モリアは右手に強力な武装色で硬化をして後ろから白ひげの脇腹殴りつけた。白ひげの脇腹にモリアの拳がめり込むと強靭な身体が浮くほどの威力があった。

 

「キィッシッシッシッシ!!!!肉体も覇気も能力もあり得ねぇ程研ぎ澄まされてやがる!!!俺こそが海賊王に相応しい男だ!!!!」

 

原作モリアは己の最盛期をビシビシと感じた。目の前の最強を完璧に出し抜く事を容易く行えたのだ。

 

ダークサイド(こっち)に変わった瞬間...覇気の精度が跳ね上がりやがった。二重人格か?」

 

白ひげは知らぬが、原作モリアは本来カイドウへ挑んで敗れ覇気を失っていた。だがそれは皮肉な事に憑依モリアの記憶によって回避されたのだ。原作モリアは失う事のなくなった覇気に憑依モリアの才能の輝く覇気、更に憑依モリアに鍛えあげられた能力を手にした原作モリアは世界最強と呼ぶ事に過言はないようだった。

 

「座る気のねぇ王座なら俺に寄越せ...。“影編交刃(シャドウクロス)”。」

 

原作モリアは憑依モリアの原作知識や己の記憶により編み出した数々の技の一つを放った。この技は両斜めからの影の一閃を互いに細々と無数に交差させたもので一本一本に異常な程強力な武装色が編み込ませてある。初めて使用する技でありながらモリアという人格に染み込まれた技を使うなど実に容易い事だった。

 

白ひげは右手を硬化させ白い光で覆い、モリアの放った交差された影の糸々を殴り壊そうとした。だがモリアの放った影は振動を“すり抜けた”。予めこの技は虚無化させておき、対象に触れる瞬間よりごく僅か前に実体化させるのだ。つまりこの技は無傷で破壊不可避な技であった。

 

白ひげは硬化した右手から影が斬り裂いたが一歩も引かず、逆に右手で掴んで影の糸々の勢いを殺した。そして左手を硬化して再び光で覆い攻撃を加えると実体化された影を粉々に破壊した。

 

だが破片の一部が飛び散り白ひげの胸の上を数個が深く抉り、掴んだ右手からはポタポタと血が滴り落ちた。

 

「キシシシ...防がれたのは想定外だが、血を流すのは何時ぶりだ?...ッ⁉︎クソッ!!!!雑魚の癖に抵抗しやがって!!!!」

 

原作モリアが強さの余韻に浸っていると再び頭の中で憑依モリアの声が響いてくると激しい頭痛がした。どうやら精神力を取り戻した憑依モリアが暴れ出したようだ。

 

 

(さっさと俺の肉体を返せ!!!!俺にはやらねばならぬ事がある!!!!)

 

 

「仲間なんざくだらねぇ...。今の俺の力があれば世界を手に入れられる。海賊ごっこならおめぇのお花畑(頭ん中)でやってろ!!!!ようやく取り返した肉体をやすやす明け渡すか!!!!」

 

原作モリアは頭を押さえ込んで頭痛に耐えるが、憑依モリアは大人しくなどならなかった。全てを失う寸前に思い出したのだ。自分のやるべきこと(世界平和)への想いと自分を慕ってくれる部下や国民がいたことを...

 

 

(俺にはやるべき使命と大切な仲間がいる!!!!得体の知れぬ貴様などに肉体を奪われてたまるかッ!!!!俺は決して屈さぬッッッ!!!!)

 

 

モリアは自然と身体を仰け反らせ途端に静かになると周囲の海賊達はモリアの様子を伺おうとジッと注目した。

 

 

「...。」

 

 

(覚えていろ!!!!俺はいつどの時もおめぇ狙い続ける!!!!そしておめぇの大事なモンを全てぶっ壊してやる!!!!)

 

 

「...悪ぃな。邪魔が入っちま...『バタン』

 

原作モリアへ打ち勝った憑依モリアはつぶやき終わる前に気を失いゆっくりと前に倒れた。そして白ひげは彼から圧倒的なオーラを感じると機嫌良さげに口を開いた。

 

「グラララ...弱まりかけてやがった奴本来の覇気が逆に“上がってやがる”。マルコ...奴を医務室まで運んでやんな。」

 

これが後にゲッコー・モリアの伝説の一つとして語り継がれる“レニス島”の決闘である。

 

世界最強と呼ばれる“白ひげ海賊団”に単身で乗り込み“白ひげ”エドワード・ニューゲートに深傷を負わせた二人目の男として世界に名を轟かせることとなった。

 

 




わかりづらいところがありますので質問など遠慮なくしてください。

因みにダークサイドを出した理由は本来“カゲカゲの実”は闇属性で、闇堕ちや裏人格などのセオリーがあったので採用しようと思いました。もちろん『原作モリア来んなよ、今更主人公にする気?』という方も多かったですが、あくまでも過去編で現在モリアは原作モリアの面影すらなかったので主人公にする気なんか全くありません。

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