鎧なんて飾りです。   作:C-WEED

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どうも。2ヶ月ぶり位ですかね。相変わらずの駄文で申し訳ないです。

まぁいずれにせよ楽しんで頂ければ幸いです。

4/15 メイトリクス様、誤字報告ありがとうございます。
4/16 不死蓬莱様、誤字報告ありがとうございます。


第十九話

「本田正勝、これで幕引きだ」

 

 朽木白哉は逆手に握り変えた自らの斬魄刀、千本桜を手放した。重力に従い落下する刃は、地面に刺さることなく、波紋を浮かべながら静かに姿を消す。

 

「卍解」

 

 静かな、しかしはっきりとした言葉。それに続いて地面から無数の波紋が生じ、巨大な刃が立ち並ぶ。

 

「千本桜景厳」

 

 そして、並んだ刃は始解の時と同じく、桜の花弁を思わせる姿に変わる。しかし、その量は始解時の比ではない。

 

 生で見るとこんなに綺麗なのか。

 

 今まさに朽木白哉の卍解を目の当たりにし、その刃が迫る正勝の胸中はこんなものであった。

 危機感が足りないと言えば確かにその通りであるが、普段の及び腰も鳴りを潜める程、千本桜景厳の美しさに見とれていた。

 

 そしてそのまま千本桜景厳の花弁に呑まれていった。

 

 しかし朽木白哉は警戒を解くことはない。未だ正勝の霊圧は消えていないのだ。

 

 千本桜景厳の通り過ぎた後には、瓦礫と、その中に立つ鎧武者の姿があった。正勝の斬魄刀、忠勝の始解状態である。

 これまでの戦いの中で破られたことのなかった鉄壁の鎧であったが、千本桜景厳の刃の奔流に呑まれた結果、ヒビが入り、今にも崩れそうになっている。

 

「間一髪、と言ったところか……。だが、再び防ぐことはできまい」

 

「いくら頑丈とは言っても、まぁ、限界はありますからね」

 

 正勝の発言と共に、音もなく鎧が崩れ落ちる。しかし頼みの綱である筈の鎧が崩れたにも関わらず、正勝の表情に焦りは見えない。

 

「もう打つ手はあるまい」

 

 朽木白哉は正勝のその表情を諦めと取ったようだ。

 

「……勘違いしないで下さいよ、朽木隊長」

 

「何?」

 

「鎧が崩れたのは、千本桜景厳の力に耐えられなかったからじゃありません」

 

 負け惜しみにも聞こえるその言い分に朽木白哉は眉をひそめる。

 

「貴様自ら鎧を破ったと?」

 

「ええ、たとえ卍解と言えど、一回で破られる程忠勝はやわじゃない」

 

「ならば、鎧もなしに私に勝てる、と言いたい訳か。その傲り、打ち砕いてくれよう」

 

「そこまでは言いませんがね……鎧を脱いだのも、それが必要だったってだけの話ですし」

 

「生身の貴様が卍解相手に何ができる……」

 

 脳裏に走った一つの可能性。勝ち目を見出だすとするならば、それしかない。しかし、目の前に立つこの男がそれをできるのかどうか。

 

 斬魄刀による戦闘、その極致、卍解。

 

 本田正勝が卍解を会得しているならば……今のこの様子にも頷ける。

 

「貴様、よもや……」

 

「やるぞ忠勝……これが、俺の、いや、俺達の全力……!!」

 

 大きく息を吸い込み、渾身のドヤ顔で高らかに宣言する。

 

 

「卍!!解!!」

 

 

 

 

 

 という夢をみたのさ。

 

 

 

 

 

 まさかまさか、俺が、この俺が、朽木隊長と真正面から戦う筈ないじゃないの。そんな状況に陥らないように逃げたりしてるのに。大体朽木隊長と派手にぶつかるのは恋次や黒崎君の仕事である。俺は細々とその邪魔にならない程度に頑張りたいものだ。

 

 そろそろあれだ。処刑が早められるくらいの時期だよな。いよいよこの騒動も終盤か。

 

 寝て起きたってことは、もう昨日になるか。昨日黒崎君は夜一さんに拉致られたから……そろそろ? 結局は原作通りのタイミングで凸するのがベストになるんだろうか。いや、もういっそ裏方に回るべき? 凸しないで裏方って言うと……おっと、もしかして雛森枠ですか? 市丸隊長に注意? 注意しててもどうもならん気がするな。

 

 でも、ことが始まる前に助けるだのなんだの言っといて裏方ってのも良くないかもな。矢面にたたないとな。

 

 ……まぁ、矢面に立つにせよ裏方に回るにせよ、取り敢えず少しの猶予が有るわけだ。確か今頃は黒崎君は卍解の修行で……恋次は……もう戦ってんのかな?あとは……雛森か。あれ、雛森今何やってんだろ。捕まったのかな?捕まった所でどうせ抜け出すんだろうけど。抜け出すにしても原作みたいにならないと良いなぁ。

 

 

 ところで、俺、今捕まってるんだ。

 

 忠勝取り上げられたし、何か霊力封じられてるし、特にできることもないから回想でもしようと思う。

 

 うーん、どこから振り返ったものか。

 

 

 ルキアの牢の近くに行ってみると、丁度岩鷺がルキアを連れ出すタイミングだったみたいで。離れたところから様子を伺ってると、まぁ、朽木隊長が来たわけですよ。うん、原作通り。

 

 しかしまぁ、そのまま岩鷺が重傷を負うのを見てるってのも忍びねぇなって思った俺は飛び出していこうとしたんだよ。

 

 でも俺より先に飛び出して行った人がいたんだなこれが。

 

 

「俺の弟に何する気ですか? 朽木隊長」

 

「兄ちゃん!」

 

「海燕殿!?」

 

「……志波海燕か」

 

 

 我らが海燕さんです。さすが兄貴だぜ。出遅れた俺はやるせなかったぜ。

 

 

「旅禍に対して攻撃するだけだ。そこを退け」

 

「あんたなら斬魄刀を使うまでも無いでしょう。旅禍だとしても俺の弟だ。流石に見過ごせませんね」

 

「兄ちゃん……!」

 

「退かぬなら、貴様ごとやるしかあるまい……散れ、千「ちょーっと待った!!」」

 

 

 ここで更なる乱入者が登場。ご存知浮竹隊長だ。……俺? 隠れて見てるよ。

 

 

「やれやれ、物騒だな。流石にここで斬魄刀を使うのはまずいんじゃないか?」

 

「戦時「戦時特例っすよ、隊長。さっき話したじゃないすか」……」

 

「そうだったか? いやぁ、すまんすまん……旅禍の侵入がそんなに大事になっていたとはな」

 

 

 そんな感じ。まぁ、この段階で岩鷺の危機は去った訳だが、既に此方に向かっていたであろう黒崎君はそれを知らない訳で。

 

 

「!? 何だ、この霊圧は」

 

 

 この時点でも更木隊長倒してるんだからヤバイよね。主人公ってすごい。そう思いました。

 

 

 何か空飛ぶ杖みたいなのを使って黒崎君が飛んできました、と。一方、本格的に出るタイミングを失ってどうしたもんか考えてる俺でした。とっとと帰れば良かったのにね。まだ、まだこの後出番あるかも……、みたいに思って残っちゃったんだよね。

 でもこの後って、黒崎君が朽木隊長と一触即発みたいになって攻撃を受け止めてドヤ顔するけど夜一さんに「はい駄目ー」ってされるだけじゃん? どこに俺の出番があったんだろうね。

 

 で、まぁ夜一さん登場からの黒崎君戦闘不能。この間約10秒。瞬神の二つ名は伊達じゃない。

 

 この後俺が飛び出してくる訳ですよ。うん、何やってんだろうね。俺にもわかんないよ。

 

 

「逃がすと思うか?」

 

 夜一さんに対して朽木隊長が言ったんだ。その次の瞬間、ね。

 

 

 この時は、「今だ!」って信じて疑って無かったんだよ。

 

 

「いいえ、逃がしてもらいますよ」

 

 屋根の上で腕を組んで。ドヤ顔も添えて。満を持してとでも言わんばかりに登場しました。

 

「正勝!?」

 

「本田!?」

 

「……何故貴様が此奴の味方をする?」

 

「彼がルキアの味方だからですよ!」

 

 

 まぁ、そんな感じ。夜一さんが黒崎君連れて逃げてから、ふと我に返った。黒崎君を逃がすのはいい。だがその後俺はどうするつもりかと。

 

 現にこうなっちゃってるんだから、お察しですな。

 その場に海燕さんや浮竹隊長が居たからワンチャン逃がして貰えるかなとも思ったんだけど。

 

 

 去ろうとする俺の肩に手をおきながら海燕さんが話しかけてきた。

 

「何で普通に去ろうとしてるんだ? 本田」

 

「何でって海燕さん、このタイミングじゃルキアを連れ出すこともできないから出直そうってだけですよ。藍染隊長殺しの真犯人を探してる途中ですし。だからこの手を退けてもらえませんかね」

 

「まぁ待てよ本田」

 

 ここで浮竹隊長も反対側の肩に手を置いた。

 

「別に、俺も海燕もお前が藍染をやったとは思っちゃいないさ」

 

「なら「でもな」……」

 

「流石に脱獄は駄目だろう」

 

「そうそう。今はどの隊も旅禍の侵入でてんやわんやしてるんだ。そんな時に藍染隊長が殺されて、しかも容疑者逃亡。正直そこまで人手を割く余裕なんてないってわかるよな?」

 

「勿論ですよ。これでも副隊長ですからね」

 

「なら大人しく捕まるのが皆のためってのもわかるよな?」

 

「え、いや、それとこれとは」

 

「安心してくれ。事が終われば必ずお前のことも何とかする」

 

「ですから……」

 

「本田、そんなに俺達が信用できないか……?」

 

 その言い方はズルいでしょうよ。

 

「いや、そういうわけではなくてですね」

 

「もうよい。連れていけ」

 

「えっ、ちょっ」

 

 

 回想終わり。いつの間にか色々手配していた朽木隊長の一声で俺は連行されましたとさ。

 

 

「すみません」

 

「何でしょうか?」

 

「胃薬を頂きたいのですが」

 

「ああ、気が回らなくて済みません」

 

「いやいや、捕まってる奴にそこまで気を使うのもおかしいでしょう」

 

「はは、それもそうですな。取り敢えず四番隊に連絡しておきますので暫しお待ち下さい」

 

「ありがとうございます」

 

 今俺が捕まってるのは六番隊舎。ルキアがここに入れられてた時に通ってたから割と打ち解けてるんだよね。隊長以外とは。

 

「その声、正勝か?」

 

「そういう君は、阿散井恋次」

 

「何だその言い回しは」

 

「何でもない」

 

 隣は恋次が入れられてたりする。俺が入れられた時点では寝てた。起きたってことはそろそろ脱獄するのだろうか。

 

「何でお前牢に入れられてんだよ」

 

「そりゃあお前……あれだよ」

 

 色々あったんだよ。

 

「本田副隊長は藍染隊長殺害の容疑を掛けられ、一時は十番隊舎の牢に入っておられましたが脱獄。その後捜索されていましたが本日、朽木隊長、浮竹隊長両名の手により捕縛され現在に至ります」

 

「何やってんだよ……ってハァ!? 藍染さんが殺害!? しかもその容疑が正勝にだと!? 何だそりゃ!? 説明しろよ正勝!!」

 

「色々あったんだよ」

 

「そんなんでわかるか!!」

 

「落ち着けよ。傷口開くぞ」

 

「何でお前はそんなに落ち着いてんだよ!?」

 

「もう散々一人で騒いだし」

 

 心の中でな。

 

「恋次はこれからどうするんだ?」

 

「決まってんだろ」

 

 ルキアを助けに行く、いや、まずは卍解の修得からですねわかります。

 

「そうだよな」

 

 恋次は蛇尾丸を手に取り、鉄格子を破壊する。

 

「!? 阿散井副隊ちょっ!!」

 

 驚いた見張りの隊士が声を上げるも秒でノックアウト。

 自分の牢から出た恋次が此方を見て言う。

 

「じゃ、先行くぜ」

 

「えっ!?」

 

 俺の声を無視して出ていく恋次。あれか、お前ならこのくらい余裕で出られるだろって感じか? 信頼は嬉しい。だがその考えは間違っている。

 今俺の手元に忠勝はない。頼みの綱の鬼道も霊力封じられてるからどうしようもない。助けてくれよぉ!!

 

 

 やんなっちゃうぜ全く。

 不貞寝してやろうと思って横になったその時である。

 

「本田君!!」

 

 雛森の声がした。

 

「助けに来たよ!」

 

 どうやら幻聴ではなかったらしい。なんて素晴らしいタイミングだろう。何者かの介入を疑ってしまう程だ。

 

「ありがとう雛森。でも今忠勝取り上げられてるし霊力封じられてるんだよ」

 

「鍵も斬魄刀も持ってきたよ!!」

 

「本当か!? ありがとう!! これで安心して出られる!」

 

 ああ、本当に素晴らしい。こんな部下兼同期が居て俺は幸せ者だ。これは流れが来てる!この勢いで尸魂界編を乗りきってやるぜ!

 

 牢を出て大きく伸びをする。自由って素晴らしい。

 

「よし、行くぞ雛森!」

 

「うん!」

 

 俺達の戦いはこれからだ!

 

 

「元気そうやねぇ、本田クン」

 

 早速壁にぶつかる模様。

 

━━━━━

 

「ええっ!? 副隊長捕まったんですか!?」

 

「ああ、朽木に浮竹、あと志波が捕まえたそうだ」

 

「そ、そうですか」

 

 た、隊長格三人がかりでようやく捕まえられるなんて……やっぱり副隊長はすごいや。

 

 

 五番隊第四席であるこの男は、自隊の副隊長、本田正勝に憧れを持っている。

 

 

 でも、仕事放り出してまで脱獄したんだからどうせなら捕まらないでいてくれた方がカッコいいのになぁ……。

 

 

 とは言え、仕事を自分に丸投げされたことについて思うことが無いわけではない。

 幸い十番隊隊長の日番谷が気に掛けてくれているが、貯まった書類に片付け、隊士に指示を出し、と昼夜走り回っていた。

 

 

「ほら、持ってけ」

 

「えっ!?」

 

 日番谷から大量の書類を手渡され、目を丸くする四席の男。

 

「あいつのことだ。牢の中じゃ何もできねぇとか考えて今頃寝てるんじゃないか?」

 

 確かに、正勝は病弱なイメージがあり、事実、よく胃を痛めているが、妙な所で図太さも持っている。日番谷の言っていることは容易に想像できた。

 

「部下にこんな大変な思いさせてんだ。寝かせてやることねぇだろ」

 

 牢の中でも書類仕事はできるだろうというわけである。

 ところで、副隊長と雛森三席は同期ということもあって仲がいい。また、日番谷隊長は雛森三席と幼なじみということを聞いたことがある。今のこの状況は私怨が混じっているのではないかと勘繰ることができそうだ。

 

 少し生暖かい目になりながらも、書類を受けとる四席。

 

「わかりました。きっちり仕事してもらってきます」

 

 とは言え、あの副隊長である。いくら妙な図太さがあろうと胃は正直だ。もしかしたらまたストレスで胃を痛めているかもしれない。四番隊に寄って胃薬でも差し入れてやろう。

 

 

 さて、胃薬を貰って、副隊長が入れられているという六番隊舎へ向かう。

 

 するとどういうことだろうか。隊士達が倒れているではないか。どうやら気絶しているだけのようだが、これは非常事態だ。何かあったのかもしれない。

 

 何かあってもうちの副隊長はぴんぴんしてるんだろうけど。そんなことを考えながら牢へ辿り着く。

 

「!?」

 

 そこはもぬけの殻であった。

 より正確に言えば、見張りと思われる隊士が倒れているだけで、牢の中には誰もいない。

 

「大丈夫ですか!? 起きてください! 何があったんですか!?」

 

「あ、阿散井副隊長が……」

 

「本田副隊長は!?」

 

「そ、そこの牢に……居ない!?」

 

 

 この後、この牢に居た筈の二名の副隊長の他、三番隊副隊長吉良イヅルも居なくなったことが発覚するがそれは別の話。

 

 四席の男は持ってきた書類に視線を落とすと深いため息をついた。

 

 やがて腹部を押さえ顔をしかめると、四番隊で貰った瓶を開け、中身を飲み干した。

 

「まっず……あ、でもこれすごい効き目だ……」




読んで頂きありがとうございました。楽しんで頂けたなら幸いです。
次こそはもっと早く更新するつもりです(できるとは言ってない)

四席君の名前を考えた方がいいのかどうか……。まぁ気が向いたらですかね。

今回のネタ
・俺達の戦いはこれからだ! →ありがちなやつ。この作品はまだ終わりません。

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