鎧なんて飾りです。   作:C-WEED

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ゴジラを見たいと思いながら結局見てない今日この頃。どうでもいいですね。

楽しんでいただければ幸いです。

そう言えば一回日間一位になってましたね。皆さんのお陰です。ありがとうございました。すごくテンション上がりました。今後ともよろしくお願いします。

8/12 みこた様、輝け神聖様、黒祇式夜様、誤字報告ありがとうございます。


第十話

「この辺りか……成る程、強い魄動を感じる……」

 

 

━━━━━

 

「えーっと、それじゃ、阿散井君の副隊長就任を祝って! かんぱーい!!」

 

「「「乾杯!」」」

 

 高らかに雛森の音頭が響く。

 感慨深いね。色々とさ。恋次が副隊長ってことは、とうとうルキアが空座町に赴任するわけだ。原作が、始まるんだね。

 

「それにしても、阿散井君が副隊長か……」

 

「何だよ吉良、文句あんのか?」

 

「いや、ただ、時間の流れを感じるって言うかね……」

 

「雛森、どうだ? 今の吉良、年寄り臭くないか?」

 

「そ、そんなことないよ! ……たぶん」

 

「雛森君!?」

 

 こういう何てことないやり取りって楽しいな。原作始まったらって言うか、ルキア連れ戻してから暫くはそんな余裕無いだろうしなぁ。

 

「そんな吉良から始まる~、故に侘助ゲーム!」

 

「本田君!? 何言ってるんだ?」

 

「冗談だよ。ほら、酔っぱらってるから」

 

「まだ一口しか飲んでないじゃないか!!」

 

 ちょっとやってみたいと思った。ルールとか何も考えて無いけど。故に侘助。

 

「しかしあれだな、俺ら四人とも副隊長とか上位席官ってかなりすごいよな」

 

「まぁ、僕達は特進クラスだったからね、そんなにおかしくもないと思うよ」

 

 ……確か、恋次以外の人事ってヨン様の粋な計らいだったよな。たぶん俺のも。俺のどこに利用価値を見出だしたんだか。

 

「後は雛森が副隊長になったら、完璧だな」

 

「まぁ、どの隊にも空席はないし、そうなるとしてもかなり先じゃないかな」

 

「……私は今のままでいいもん!」

 

 いやいや、ちゃんと上を見ていかないと。……いや、むしろ雛森は上に行かない方が良いのか?

 

「まあまあ、志は高く行こうぜ」

 

「別に低く無いもん!」

 

 そう言えば、どうしよう。原作始まるからには戦闘増えるじゃん。しかも副隊長とか隊長とか、いや一般隊士も頑張ってるんだろうけど。危険度は段違いだよな。

 

「なら、何目指してんだ?」

 

「……秘密」

 

 やっぱ今のままじゃ駄目だよな。……卍解とか? やっぱ必要だよね。

 なんか雛森がこっち見てる。

 

「雛森どうかしたか?」

 

「な、なんでもないよ」

 

 吉良の視線がなんか鋭い。気の所為だよね。いつも目細いし。

 

「あれ、器空いてんじゃん。どんどん飲めよ吉良」

 

「ちょっ本田君」

 

 とっとと沈めよう。

 

 

 そんなこんなで数時間後。

 

「じゃあ俺は吉良連れてくから、雛森は頼むぜ」

 

「おう、気を付けてな」

 

 酔い潰れた雛森と吉良をそれぞれ俺と恋次で連れて帰ることになった。

 

「……なぁ、正勝」

 

「うん?」

 

「俺は、あの人に、近づいてるんだよな……?」

 

「当然だろ、だからお前が副隊長になったんだ。あの日の"いつか"は近づいてるよ。間違いなく」

 

「……そうだな」

 

 そのまま恋次は吉良を背負って歩いていった。

 

 雛森を、どう運ぼう……。おんぶは背中に当たってなんかあれだし、かといって肩に担ぐのは荷物扱いみたいでなぁ……。横抱きはハードル高いし。しかし下手な運び方して折角寝てるのを起こすのもな……。

 

 

 結局横抱きを選択し、五番隊舎に戻ってきたものの、俺は雛森の部屋を知らない。……俺の部屋でいいか。

 

 布団に雛森を寝かせて、さて、俺はどうするか。布団はひとつしかない。同衾なんてとんでもない。お楽しみなんて致しませんとも。

 

「……ん、本田君……」

 

 

 ……刃禅しよ。

 

 

 

「なぁ、ホンダム」

 

 ホンダムは首を傾げる。角にかかった眼鏡がカタッと音を立てる。

 

「修行って何したらいいんだろう」

 

「?????」

 

「暫くしたら戦うことが増えるわけだよ。それに向けて何か修行しようと思うけど、良いのが思い付かなくてさ。今までの反復横飛び10万回とか詠唱早口言葉じゃ駄目だ。ずいぶん前から限界を感じている」

 

「!!!!!」

 

「うん、そうだよな」

 

 さっぱりわからん。何か伝えようとしてくれてるのは解るんだけどな。

 

「俺は魔法使いタイプだから素早く動いて鬼道ぶっぱが基本なんだけど、武器は刀だしな。卍解とかも、できるようにならないと不味いだろうし……」

 

 頷くホンダム。眼鏡が揺れる。ですよね。

 

「お前屈服させるんでしょ? きっついなぁ」

 

「!!!!!!」

 

「いやまぁそりゃあ必要なことだってのは解ってるんだけどさ」

 

 こう、コミュニケーションもどうにかしたいところだよね。本当にさ。いちいち不便だ。わかんねぇもん。

 

「あと、立ち居振る舞いとか駆け引きにも気を付けないとな」

 

 また首を傾げるホンダム。眼鏡がカチャリ。

 

「だってほら、あんまり強い言葉を使ったら弱く見えるって言うし」

 

 ホンダムはまだ首を傾げている。

 

「すぐ卍解を出したら負けるしね。最初は相手の出方を見て、その後それに対応していく。つまり後出しじゃんけんが上手にならなきゃならない訳だよ」

 

 得心が行ったとばかりに頷くホンダム。眼鏡が落ちた。

 

「ということで一先ずそこをどうにかしたいんだが……どうしたらいいと思う?」

 

 ホンダムが眼鏡を拾うのに苦戦している。そりゃ、掴みずらいだろうよ。お茶の時もそうだったけどサイズが合ってないもの。

 

「ほら、取ってやるから」

 

 眼鏡を拾ってホンダムに渡す。

 眼鏡を受け取り、再び角に引っ掛けるとホンダムは満足げに頷いた。

 

「前にも思ったんだが……使い方おかしくないか?」

 

「!!!!!」

 

「……うん、お前がいいならいいんだけどさ」

 

 やっぱり何言ってるかわからない。多分さっきのは俺の言葉に反論したんだろうけど。

 難しいものだ。

 

「そう言えば、斬魄刀の始解が力の一部で、卍解が全力全開だろ? ……始解で鎧出したら不味かったんじゃ」

 

 しばし固まった後、激しく首を横に振るホンダム。また眼鏡が飛んだ。

 

「あ、いや、べ、別に駄目とは言ってないよ。ほら、すごく助かってるし」

 

 あまりの勢いでちょっと引いてしまった。まぁ本人? がそう言うのであればいい、のか?

 

 

 

 所変わって流魂街の外れ。月が綺麗。ホンダムに色々と語りかけてたのは良いんだが「どうやったら屈服する?」なんて聞いてしまったからさぁ大変。あれよあれよと言う間に背中を押されこんな所にいる。

 

 刃禅して茶室で見るのと、こうして実際に向かい合うのでは、威圧感が違う。俺は始解の時はこんな感じなのか。勝てる気しないよね普通。

 

「で、結局どうすヒッ!」

 

 俺に向け、ホンダムの拳が振り下ろされる。ドリルじゃないのはホンダムなりの優しさか。

 だが拳が優しいものかと言えばそんなことはない。ホンダムの場合、全身が鎧に包まれている。当然拳も例外ではなく、また、その鎧の頑丈さは言うまでもない。つまり、ホンダムの拳とは、拳とは名ばかりの鈍器である。

 

 長々と語ったがつまり、当たれば死ぬ(気がする)。

 何とか回避出来たものの、いきなり攻撃とはこれいかに。

 

「いきなり何だよ!? 殺す気か!?」

 

 ホンダムは首を横に振る。

 

「!!!!!」

 

 仁王立ちして自らを指す。え、どういうこと? 意味がわからず突っ立っていると、俺を指差して、殴る動作、そしてホンダム自身を指す、というジェスチャーをしてきた。

 

「今度は俺が殴れってこと?」

 

 ホンダムは大きく頷いた。……そういうことなら、やってやる。いきなり殴りかかられて怖かったんだからな。そんな思いも込めつつ拳を握る。

 肩を回しながら、腕の調子を確かめる。……うん、悪くない。一撃加えるのを許したことを後悔させてやろう。その鎧をボコボコにしてやるぜ。

 拳を思い切り振りかぶる。

 

 俺は白打は、特別得意ではない。かといって出来ないということでもない。ただ積極的にやらないだけだ。手が痛くなるからね。仕方ないね。

 そこまで考えて、はたと気付く。このままホンダムを殴ったとして……さっきの意気込み通りホンダムに後悔させることが出来たとして……俺の拳は無事でいられるのだろうか? ……考えるまでもなかった。

 

 拳は既にホンダムに向けて突き出されている。今更止めることなどできようか。いや、できる筈がない。

 拳に伝わる衝撃。鼓膜を叩く打撃音。俺の拳がホンダムに届いた。

 

「ッッーーーーーーー!!!!」

 

 声にならない叫びを上げる。あんな硬いものを殴って俺の拳が無事で済む筈がないのだ。

 対するホンダムは無傷。傷付いた。色んな意味で。頬を流れるこの滴は汗か涙か。痛みで頭が回らない。

 

 対するホンダムは無言で拳を握る。優しくしてね☆ と言った具合におどける余裕も無い。

 ああ、お休みホンダム。なんて思ったけど、ホンダムは直前に拳を開いてでこピンを放った。痛い。拳と違って命の危険を感じるわけではないけど。手加減してくれたのだ。ホンダムの気遣いに涙が出る。気絶も出来やしない。

 ……この修行? はまだまだ終わらないことを悟った。

 

━━━━━

 

 目を覚ますとそこは見覚えのない部屋で……見覚えのない? え、嘘、私ったら……こ、ここってどこなんだろう? 一旦深呼吸して……この感じ……ここって、本田君の部屋? ……じゃあ、この布団は本田君の?

 

 改めて布団に包まれてみる。本田君に抱き締められてるような気分になる。はぁ……なんか、また眠く……。

 

 ……あれ? 本田君はどこだろう?

 

 廊下に出ると、部屋のすぐ前にうつ伏せに倒れた本田君の姿があった。

 

 駆け寄って仰向けにさせると、本田君は顔がボコボコに腫れ上がっていた。

 

「ど、どうしたの!? 何でこんなに」

 

「……ァ、アイムニンジャ……イッツ、シュギョ……」

 

「本田君!? 何言ってるの!? 全然わかんないよ!」

 

 本田君はよく分からないことを口走った後、意識を失った。一体誰がこんなことを……って違う違う。取り敢えず本田君を救護詰所に連れていかないと。

 

━━━━━

 

 回道ってすげえよな。

 

「修行って何? 自分で加減もできないの?」

 

 目を覚ますと雛森に怒られてる俺です。眼鏡が光を反射している。眼鏡をかけているキャラは大抵冷静に怒ってくるので、こういう感じはなんか新鮮というか。

 とりあえず眼鏡外してくれたら嬉しいかなって。言わないけど。

 

「えーっと……その、皆自分なりの目標を持って頑張ってるのに俺だけここで満足してる訳にはいかないなって思ったんだ」

 

「……それで?」

 

 前言撤回。意外と冷静だった模様。静かな声ながら、しっかり怒気を孕んでいる。

 

「ここだけの話、卍解の修行を」

 

 声を潜めて雛森だけに聞こえるように言う。別に隠すことでもないのかもしれないが。

 卍解というワードに、少し目を見開いたが、すぐに元の顔に戻った。

 

「……でも、ちゃんと体は大事にしないと」

 

「うん、そこは反省してる。気を付けるよ」

 

 多分またボコボコになる。気を付ける意味なんてない。ああ、嫌だ。嫌だけど俺の為なんだ。ホンダムに悪気はない。……仕方ないね。

 

「私も、隊の皆も心配するんだから」

 

 雛森の言葉に、五番隊の面々の顔を思い出す。ヨン様を筆頭に眼鏡、眼鏡、眼鏡、眼鏡……女性隊士から漂う腐女子臭。いや、これは流石に偏見か。眼鏡じゃない子も居るし。でも五番隊は基本的に顔が良いのが多い。……掛け算し易そうだな。……まさか雛森も?

 

「……うん、ごめんな」

 

 今考えた失礼な想像の分も含めて謝る。皆良い子だから余計に申し訳ない。

 

「さて、行くか」

 

「えっ?」

 

「仕事」

 

「寝てなくていいの?」

 

「例えば俺が隊舎に居なかったとして、副隊長~どこですか~ってやるわけじゃん。色々探すだろ? その候補に救護詰所が入るってどう思う? 本田副隊長のことだ、きっとあそこだな! みたいな感じで救護詰所とか行かれたらもうなんか、副隊長は病弱、的なイメージ持たれちゃってる訳じゃん。それは悲しいって言うかさ。避けたい訳よ」

 

「割と今更なんじゃ……な、なんでもないよ!」

 

 ……もう遅かったか。何だろう、何て言うか……そんな感じなら、もういっそ寝てようか。

 

「副隊長! やっぱりここでしたね!」

 

 四席君がこっちに歩いてくる。書類持ってるってことは何か分からなかったのかな?

 

「……なぁ、雛森」

 

「ん?」

 

「……本当に、今更だったな」

 

「……うん。あ、でも皆本田君のこと頼りにしてるよ!」

 

「……そうか」

 

 雛森のフォローが辛い。

 

「書類だろ? 見せてみな! 隊舎に戻りながら教えてやるよ」

 

 とりあえず仕事しよう。あ、いっそずっと救護詰所にいたら倒れることもないんじゃ……違うか。




読んでいただきありがとうございました。
楽しんでもらえたなら良いんですけどね。

次回
ホットスナックが食べたくて

なんちゃって。次回をお楽しみにしてもらえますように。

今回のネタ
刃禅しよ→結婚しよ:進撃の巨人より ライナー・ブラウンの台詞。

アイムニンジャ、イッツシュギョ:鬼灯の冷徹より 入国審査のときにこれを言うと誤魔化せるらしい(日本人限定)。サムライの場合どうなるかは不明。良い子は真似してはいけない。

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