とある学生の難儀(?)な日常   作:九牙タイト

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今回はキャラ増えないんでゆっくりしていってね~。


5時間目 サムライガール

「あー、もうやってられるか!」

俺は手に持っていた資料を机に投げた。クラス委員の仕事として先生に言われたのだがやってられない。早く帰りたい。何で放課後に残ってやらなきゃいけないんですかね。ついでに穂高さんたちは先に帰りました。

…別に傷付いてなんかないぞ。

その俺の態度に狩生(かりゅう)がため息をついた。

「姫矢も働きなさいよ」

「嫌だ。俺の得になることならするけど、これは俺の得にならない。だからやらない」

「イラつくわね…」

「イラついてもらっても構わない。俺のモットーに照らせばやらなくていいことだし」

「…一応聞くけどあなたのモットーって?」

「やらなくてもいいこと、もしくは得にならないことはやらない。やらなければいけないことは手短に。やりたいことは必ず。これが俺のモットーだ」

「社会性一切なしね…」

「社会? 知るかんなもん」

将来の夢は何ですかと聞かれたら、『専業主夫です♥』って言えるレベルだ。この夢を妹に話したら笑ってました。何でだろうね。

「何のために生きてるの?」

「決まってるだろ。自分のためだ」

だが自分の夢を叶えるとして嫁さんをどうするか…。最悪、大学生活の中で彼女兼嫁になってくれる人を探さなきゃいけん。うーん…。

「専業主夫の夢でガチで悩むな…」

そんなこと言われましてもね。本気なんだからしょうがないだろ。というより何で俺の夢知ってるんですか。

「…帰っていいか? やる理由がないし」

「ねぇ、クラス委員のいいところ知ってる?」

「あぁ? 知らん」

「睨むな」

睨んでません。デフォルメです。これが俺の目です。鋭くて悪かったですね!

「いい? クラス委員になるとシルバーバッチが渡されるの」

「で?」

「そのシルバーバッチを食堂で見せると無料になるのよ」

「なん…だと?」

食堂全メニュー無料だと…!? となると食費が浮かんで遊べる金が増えるではないか!

でも、そのとき何故か穂高さんの顔が浮かんだ。料理ができるかもしれないが、もしできなかったとしたら俺だけそうやって逃げるのか?

…ダメだろ。そんな穂高さんの迷惑にしかならないことは。

「…シルバーバッチとかいらん」

「何で? 全メニュー無料とか目に入らないの?」

「入らん」

そんな目先の欲望で自分を見失ってたまるか。

「そういや、はいこれ」

「ん…?」

俺は狩生にプリントを渡した。

「え、何? どうゆうこと?」

「俺の分終わったから。寄りたいとこにもあるし。じゃあな」

「ちょっ、待ち━━━」

教室のドアを閉める。

早くその場所に寄らなきゃバイトに遅れる。

俺は早足でその場所に向かった。

 

俺の行きたかった場所。木の看板にこう書いてある。

『篠ノ之道場』

…ここも久々だな。

「たのもー!」

「…ん?」

「よっ。箒。久しぶりだな」

今まで鍛練していたのか、汗をタオルで拭いている幼馴染み、篠ノ之 箒(しののの ほうき)に声をかけた。

この篠ノ之道場の次女で俺のファースト幼馴染みだ。セカンドは忍と陽子な。サードは親友の綾。

箒は幼稚園のころからの付き合いなのだが、ちゃんと関わり始めたのは小学生の頃からで、その時から『The 武士』みたいなやつだった。だけど中学の頃から妙に女の子らしくなってきて三年のプールのでは『スイカに近いのでは』と言われるほどになっていた。でも今ではそれよりも大きいのを知ってるからなぁ。

その大きいのとは穂高さんのである。だけど今日の昼休みの穂高さんたちの話を盗み聞きしてたのだが家族で一番小さいらしい。いや、その大きさで小さいとかどんな家族だよ。おかしいだろ。

まぁ、とりあえず2人の胸はあきらかに平均以上なのだ。さらにまだ成長中。

…いやもう胸の話はいいだろ。俺は変態か。

というか何で箒さんは固まっているんですかね。

「おーい? 箒ー?」

「な…」

「な?」

「何で純がいるのだ!?」

「いちゃ悪いのかよ…。あーもうわかったよ。帰る。帰ります」

「別にいちゃいけないとは言ってないだろう!」

「お前本当にどっちなんだよ」

訳がわからん。

「つーか何で顔赤いの? 運動のしすぎなんじゃないのか?」

「…お前がいきなり来るからだろう…」

「さっぱり聞こえない訳だが」

「聞こえなくていいこのバカ!」

「バカって言った方がバカなんだぞ」

「ならお前もバカだな。今言った」

「小学生かお前は」

いきなり竹刀を取り出す箒。え、また練習? どんだけ強くなりたいんだよ。

バシン!

「いってぇ!? いきなり何をしやがる!」

「バカがいたので叩いた」

「何その雨が降ってたから傘をさしたレベルの軽さ! お前のレベルの場合最悪死ぬんだぞ! 俺じゃなきゃ即死だ!」

「そんな弱い男に興味はない」

こんのアマぁ…。

「何だその目は。私とやるのか?」

「当たり前だろ。俺がここに来た理由はそうだしな」

構えをとる。

篠ノ之道場は剣道なのだが少しぐらいなら体術も教えてくれる。俺と箒はその体術を極めることに成功し、先に2連勝した方が勝ちというのをかれこれ10年ぐらい続けてる。つまり。勝ち越しは許さない。

まぁ剣道では負けまくってるけど。

「「……」」

息を落ち着ける。

……。

箒が先に動いた。襟と袖をいつのまにか捕まれている。

━━━早っ。

気付いたときには背中に床が迫っていた。でもな。これで俺たちの戦いは終わらない。

足首、膝、股関節。足関節系統を全て使って着地した。

「さすがだな。あの体制から着地するとは」

「お前も、投げる速度が前より上がってやがる」

俺たちの口には思わず笑みがこぼれる。

これが俺たちの関係。体術面だけでいえば俺と箒は好敵手(ライバル)なのだ。

そして俺は。この関係も死ぬほど気に入っている。

「じゃ、次は俺からいくぜ箒!」

「上等!」

なんとか立ち上がりそのまま箒に突撃する。

ホント、最高だね。

 

「「はぁ…。はぁ…。はぁ…」」

結局、決着はつかなかった。

床に寝転がる俺たち。

「やっぱいいな…。こういうの」

「しばらくぶりなのに…。まだ強いとは…。さすがライバル…」

「当たり前だ…。剣術では絶対に負けるけど…。体術では負け、られないからな…」

2人して笑う。ホントに変わらない。

「だが、体力がないのではないか…? 練習したあとの私と引き分けるなど…」

「かもしんない…」

こりゃ走らないとダメだな。俺もまだまだ。

「そういや箒の学校って隣だっけ?」

「そうだが」

汗をタオルで拭きながら答える。

「箒がお嬢様学校にねぇ…」

「文句でもあるのか?」

「いや、うん、一言言わせてもらえば似合わない」

お前みたいな武士がお嬢様学校にいてたまるか。それはもはやお嬢様学校ではない。

竹刀を握る箒。

「はいストーップ。竹刀で殴るのはやめようか。知ってるか箒。一回叩くごとに脳細胞って5000個死ぬんだぞ。これ以上喰らったら脳細胞が全滅するし痛いんでやめてもらえませんか本当に」

その言葉を聞いてか竹刀を腰に戻す。やっぱ人間言葉で伝えなきゃな。

バシンッ!

「いだぁ!?」

まさかの抜刀術。火力はさっきよりも高い。

「俺の話聞いてたか!?」

聞いてないとしか思えない行動だぞ!?

「お前の脳細胞なんて知るか」

「なんでこうも俺の幼馴染みってダメなとこあんの!?」

忍は何考えてるかわかんないし、陽子はポジティブすぎて将来心配だし、綾はときどき何言ってるかわかんねぇし、箒は暴力の嵐だし。

…何なの君たち。

いつか俺を殺したいの?

幼馴染みって暗殺者のコードネームか何かか。

「神聖な道場でため息をつくな」

「あーはいすみません」

「……」

「無言で竹刀構えるのやめろマジで! ガチで俺を殺したいのか!?」

つーか殺したとして死体どうするんだよ。知ってるか、箒。人間で一番腐りやすいのは骨だ。魚が腐るのも骨からくる。そこで出番があるのが冷蔵庫だ。まず人をバラバラにし━━━

「聞いてるのか!?」

「え!? すまん、聞いてないぞ!?」

「聞いてないことを素直に言うやつがいるか…」

「で何だよ?」

「学校が隣だろ…。だから、その、一緒に帰らないか…?」

「え? でも俺クラス委員で遅くなったりするし…」

「か、構わん!」

「そ、そうか」

ここまで言うとか俺とどんだけ帰りたいんだよ。少し引くぞ。

「引いたな?」

「ソンナコトニャイ」

「…何故話し方が変なのだ」

「中国ではフツウ」

竹刀を取り出す箒。おう嫌な予感…。

バシンッ!!

俺の脳細胞は何個死ねばいいのだろうか。葬式屋絶対儲かってるだろ。

「お前マジふざけんな! 本当にその癖やめねぇとガチで逮捕されるぞ!」

「警察にやられるほど柔な鍛え方はしていない」

…今こいつ警察を敵に回す発言したぞ。やめてくれよ。そんな悲しいニュースで幼馴染みをテレビで見たくない。

「そういえば純」

「なんだよ」

「時間いいのか?」

「は? 時間?」

なんで時間…。あっ。

「やっべ完全に遅刻じゃねぇか!」

「バカなのかお前は…」

「今お前の相手をしてる暇はない! じゃあ明日放課後に校門前でな!」

急いで篠ノ之道場をあとにする。

だから、箒の最後の言葉は、耳に入らなかった。

 

「…慌ただしいんだよ」

箒は道場で溜息をつく。しかしその顔は笑っていた。いつまでも変わらない幼馴染みに対して。

そして、想い続けている幼馴染みに呟いた。

「また明日な、純」

 

「間に合え、間に合え、間に合えええええええええええええ!!」

間に合うはずもないのにそんなことを口走ってしまうぐらいに焦ってる俺は勢いよくドアを開けた。

「すいません遅れましたーッ!!」

「バイト2日目で遅刻とは感心しないな」

渋い声で、それでありながら懐かしい声でそんなことを言われた。確かこの人は・・・

「えっと…。チノのお父さんですか?」

「久しぶりだね、純君。宗義(むねよし)は元気かな?」

「え、親父ですか?たぶん元気でやってると思いますけど…」

「そうか。それならよかった。早く着替えておいで。今度は更衣室を間違えないように」

「もう間違えませんよ!」

チノ…。昨日の失敗を言ったのか…。やめてくれ恥ずかしいから…。

更衣室で着替え始める。

どうせ天々座にいじられるんだ。だったら真っ向から行ってやる。それにやらなきゃいけないことも増えたし。

蝶ネクタイを首に絞め、ドアを開ける。

今日も頑張りますか!




嘘でしたね。一人増えました。俺もこんな女の子に囲まれる生活を送りたかった。
え、まだ高校生ですが何か。
んじゃ次回もよろしくエロス!

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