とある学生の難儀(?)な日常   作:九牙タイト

16 / 23
約二ヶ月ぶりですね。いつの間にかあなたの家の隣に鎮守府が。どうも、隣の提督です。
サブタイから分かる通りヒロイン追加となります。
原作の空気出しながらも純らしくしてみたので楽しんでいただけると嬉しいです。
それでは13時間目どうぞー!


13時間目 ねこ、しろ、ましろ

閉じたカーテンから光が漏れている。朝が来たらしい。時計を確認すると6時半。それなりの時間だ。

「・・・起きるか」

昨日はゲームする気も起きずさっさと寝た。久しぶりに夜に寝た気がする。

起きたところで変わらない朝。よく漫画とかラノベである『恋した次の日の朝はキラキラしてる』という演出は間違いのようだ。

もしかしてみやびの周りがキラキラするのだろうか。

・・・何それシュール。

背伸びをしながらベッドから降り携帯を確認。

英騎から1通LINEが来てる。

『昨日はどうしたんだ?』

『疲れたから寝てた』

事実だ。間違いは一切ない。

部屋を出ると千石先生の部屋には誰もおらず。・・・珍しい。

そういや今日は授業参観日か。

しかしこの家にいる人達には一切関係ないだろう。一人暮らし扱いだし。みやびの親なんてなおさら。

まあ、こういう日は授業中起きてた方がいいだろう。昨日寝ていてよかったよかった。

とりあえず洗面所で顔を洗う。

普通の日が始まる。

 

「うっす」

教室に入るなり挨拶をする。

「やぁ、純君」

「よぉ、輝」

「西村君に聞いたよ。珍しいじゃないか。君が昨日ゲームもせずに寝るなんて」

「疲れてたんだよ昨日は。あんな距離走らされた挙句にみやび背負わなきゃいけなかっからな」

「その言い方だと重荷にしか聞こえないよ?」

「・・・別にそういう意味で言ったんじゃない」

「言い方には気を付けなよ。好きな人に嫌われたくないだろう?」

「・・・そうだな」

「あれ?否定しないのかい?」

「本人の前でなければいい」

「自覚しちゃったか〜」

「おかげでな」

「気分はどうだい?」

「別に変わらない」

「そうか。ならいいんだけどさ」

「何の話だ?」

「あ、姉ちゃん。純君の恋バナその2してた」

「ほう。好きな人ができたのか。予想はできるが」

「そんなにわかりやすかったか?」

「結構な」

「・・・これからは気を付ける」

「そうしろ。本人は気付いてないようだが」

「別に。好きでも嫌いでもない奴に好まれるのは迷惑だろ」

「告白はしないんだ?」

「今言ったろ。しない」

「意訳に近いだろ今のは」

「その意訳通り。この感情は殺したままでいい」

昨日も思ったが絶対迷惑になるだろうから。

「・・・姫矢がそれでいいなら構わない。けど、後悔するようなことはするなよ?」

「善処する」

この話は終わりだとばかりにチャイムが鳴る。それと同時に隣のクラスで話していたみやびとカレンも戻ってくる。

「おはようデース」

「さっき挨拶したろうが」

「コンニチワ」

「今朝です」

「コンバン(∩・∇・∩)ワー」

「人の話聞け!」

「ご機嫌いかがでしょうか」

「みやびも悪ノリ始めんな!」

「おはようさぎ」

「橘姉!?」

「さよなライオン・・・」

姉に殴られ倒れゆく輝。

「ひ、輝ぅーっ!?」

やっぱり恋をしたところで日常は変わらないらしい。

何故かいつもより本気の姿の千石先生が入ってくる。

はいはい。婚活ガンバレ。

俺はため息をつきながら号令を始めた。

 

2時間目の最中に見覚えがある夫妻が見えた。輝と橘姉の両親だ。

とりあえず目だけで挨拶をする。

橘母は手を振ってくる。親父さんは相変わらず厳しそうだ。

輝は俺の態度で察したのだろう。決して振り返らんとばかりに黒板を見つめ始めた。

(最初からやれ)

心の中で呟き俺も黒板を見るのだった。

 

次の休み時間。俺は橘夫妻に挨拶をした。

「久しぶりです」

「姫矢君、久しぶりね。いつ以来かしら?」

「春休みに遊びに行って以来ですね。それより驚きましたよ。輝が双子なんて初耳ですよ。何故言ってくれなかったんです?」

「別に秘密にしてた訳ではないのよ?結果的にそうなったけど」

「・・・運悪く君が巴と会わなかったのもある」

親父さんが口を開く。

「確かにそうですね・・・。でも中学の時輝が会いに行ったのは知ってるんですが・・・」

「・・・中学の時から何故か授業参観だろうと体育祭だろうと会いにこなくなってな。体育祭の昼飯も友達と食べていたそうだ・・・」

・・・親父さん。涙目になってる気がするんですが。気のせいですよね?大丈夫ですよね?

「えっと・・・。呼びますか?」

「・・・頼む。ついでに輝も」

「りょ、了解です」

一瞬目が光った気が・・・。まさか娘バカ?

そんなことを思いながら教室の中にいる橘姉弟を呼ぶ。

「輝、橘姉。呼んでるぞ?」

2人が凍りついた。気がした。お前ら・・・。

「早くしないとマズイと思う訳だが」

「わ、わかっている!」

「了解!」

声震えてたぞ。何びびってんだよ。

「お、お父様、お呼びでしょうか」

「・・・久しぶりの会話だな」

「同じ家にいるのに喋らないってどういうことだよ!?」

「3年ぶり・・・ぐらいでしょうか」

「え、何君ら別居でもしてんの?」

「・・・高校生活は、どうだ」

「楽しくやっています。お父様は最近どうですか?」

「なんで知らねぇんだよ!お前ん家そんな大きくねぇだろ!道場あるとはいえ!」

「・・・妻と仲良くやってます」

「アンタは説明せんでいい!」

「この前父さんお母さんとプロレスごっこしてたもんね・・・」

「輝お前はなんつーこと暴露してやがる!?少し黙ろう!?」

「あの時は10カウントでしたね」

「お袋さん!?少しは自重しましょう!?」

「・・・まさかあそこで逆エビ固めとは・・・。私も鍛錬が足りない・・・」

「ガチのプロレスなの!?武闘一家過ぎません!?」

「それでイってしまう貴方は・・・」

「聞きたくないー!そんなこと聞きとうない!」

「・・・地球落としてイキかけたお前はどうなのだ」

「もう止めましょう!?ここ公共の場ですよ!」

「お父様、お母様。仲がいいのはよろしいのですが、あの・・・。恥ずかしいです・・・」

「娘さんもこう言ってるし止めてあげましょうよ!珍しく橘姉が顔真っ赤だよ!やばい!やばいやばい!橘姉がやばい!」

これは・・・。そりゃあ喋りたくもないわ・・・。ごめん、橘姉・・・。

「・・・輝。お前は大丈夫だろうな?」

「はい大丈夫です!成績もそこそこ女の子もそこそこです!」

「おい待て何今口走った」

「・・・何人だ?」

「・・・今五股しています」

「・・・そうか。頑張れ」

「どこを応援してるんだ!?」

親父さんそんなキャラでしたっけ!?俺の記憶とすっげぇ食い違ってるんですが!?

「・・・姫矢君」

「ここで俺に振ります!?」

「・・・君は恋人とかいるのかね」

「アンタ心は男子高校生のままとかじゃねぇだろうな!」

「純君に彼女いないよ」

「テメェは何勝手に報告してやがる!」

回し蹴りを喰らわせ輝を黙らせる。止めて・・・。

「・・・年齢=童貞か」

「いくら親父さんとはいえ殴りますよ!?」

「・・・娘をよろしく頼んだぞ、姫矢君」

「「・・・は?」」

橘姉と声が重なる。今なんと?

「君なら娘を任せられる。強いらしいしな。それに妻曰く最近君のことしか・・・」

「セイハーッ!」

橘姉が拳で親父さんを黙らせた。

「な、何を言ってるのですかお父様!私と姫矢はそんな関係では・・・」

「・・・だが縁(ゆかり。妻の名前です)が姫矢君の話しかしてないと・・・」

「黙れ黙れ黙れーッ!」

殴られゆく親父さん。その顔には笑みが・・・。

・・・笑み?

まさか、アンタ・・・。

俺は友人の父親の趣味から目を逸らすように教室の中に入った。

俺は、何も知らん。

「純君?どうしたの?まるで友達の父親の有り得ない趣味を知ったみたいな顔してるよ?」

「気のせいだッ!」

 

飯を頬張りながら輝は口を開いた。

「そういや皆声優だと誰が好き?」

「唐突だな」

「昨日声優ラジオを聞いてて思ってね」

「男性声優と女性声優別ける?」

「別々でいくか」

「山本は誰がいいんだ?」

「僕は男性声優なら島崎信長さんかなー。女性は水樹奈々様」

「様付かよ・・・。いやまあ俺も付けるけど」

「ノッブさんかー。最近人気あるもんね」

「神城はどうだ?」

「俺か。男は銀河万丈。女性は岡本麻弥」

「渋いな」

「いや渋すぎでしょ」

「銀河万丈ボイスで笑われるとなんかイラつかないよね」

「確かに。イラってこないわ」

「次は橘だな」

「僕?僕は杉田智和さんと中村悠一さん」

「両方男じゃねぇか」

「この2人のラジオは本当に面白い」

「いやそれはわかるけど。女性声優はどうした」

「女性は悠木碧さんで」

「小町ポイント-されんぞ」

「別に構わない!僕の小町ポイントは常にMAXだ!」

「ダメだこいつ」

「姫矢君は?」

「俺?男性声優は松岡禎丞」

「姫矢どんだけSAOが好きなんだよ」

「いいだろ別に。SAOは面白いんだから」

「女性声優は?」

「花澤香菜さんと佐倉綾音さん。そして今村彩夏さん」

「まさかのそこ!?」

「まず香菜さん可愛い。姉にしたい。香菜姉とか姉ちゃんとか呼びたい」

「香菜信者!?」

「綾音さんは義理の姉。理由は簡単だ。香菜姉の嫁なんだからそりゃ義弟にもなるだろ。綾音姉お幸せに・・・」

「ダメだ姫矢君が佐倉trickに引っかかってる!」

「正気に戻れ姫矢!」

「正気だ馬鹿野郎!貴様らに香菜姉と綾音姉のよさを叩き込んでやろうか!」

「ふざけるな!たかが佐倉trick1つ悠木さん1人で押し返してやる!」

「んだとゴラァ!」

「落ち着けお前ら」

「黙れ熟女好き!」

「渋すぎておっさんかっていうんだよ!」

「・・・貴様ら覚悟はいいな」

「神城くーん!?」

「そういやさ」

「ああ?」

「純君の周りって声が声優に似てる人多いよね」

「・・・確かに」

「いや待てお前ら。なんかこの話ダメな気がする」

「大丈夫やで」

「本当に大丈夫なのか・・・!?」

「穂高さんは今村さんの声に似てるよね」

「ああー。だから純君が惚れたのか」

「ちげぇよ!?声関係ねぇからな!」

たぶん!

「小路さんは種田さんの声っぽいな」

「やめろ!?それ以上はやめよう!?」

「そういう橘君は宮野さん似・・・」

「やめろぉぉぉぉ!」

 

放課後。俺は千石先生に呼ばれて職員室にいた。

「・・・今日の成果はどうでした?」

「ダメだったわ。いい男はそれなりにいたのだけれど大体が既婚者。独身はいなかったわ」

「それは残念です」

「何が残念なのよ?」

「早く結婚して俺の家から出て行ってほしかったのですが」

「そう・・・。てい」

「ぐふっ」

綺麗なボディブロー。

「暴力反対です・・・」

「暴力じゃないわ。制裁よ」

「訴えてやろうか・・・」

「何か言った?」

「いえ、何も」

くそっ・・・。人はやはり暴力に敗北するのか・・・。

「で、何の用で呼んだんですか?」

「まずこれを見なさい」

1枚の写真を見せてくる。

そこには綺麗な少女が1人写っている。

「誰ですこの綺麗な子は。先生の隠し子?」

「私の従姉妹。名前は椎名 ましろ」

「へぇー。ですよねー。結婚したこともない先生に子供がいること自体おかしいですもんね。しかし、遺伝子ってやっぱり不思議だなぁ。・・・やめてください無言で拳構えるの」

「ちっ」

「舌打ちしたよこの人・・・。アンタ本当に聖職者か」

「そんなの父親の睾丸の中に忘れてきたわよ」

「オンナ教師からんな言葉聞くことになるなんて思わなかったよ!いい加減聖職者の自覚を持て!」

「だから・・・」

「言わんでいい!・・・んで、俺はどうすればいいんです?」

「これから迎えに行ってくれるかしら?」

「あーはいはいそんなんだと思いましたよ」

めんどくせぇ。

「それと」

「・・・まだ何かあるんですか」

「あるわよ。早く進路希望出しなさいよ」

「・・・ああ。そういえばそんなのありましたね」

「ありましたね、じゃないでしょ。提出期間から1週間過ぎてるんだけど?うちのクラスで出してないの貴方だけよ?」

「ぐぅ・・・」

ぐぅの音も出ない。いや出てるけど。つーか俺はみやびが出してることに驚きだ。あんなに迷ってる風だったのに。

「まぁ、そういう穂高も今日出したんだけど」

「え?」

な、なんだと?俺を差し置いてみやびが先に出してる・・・だと?昨日のあれが原因か?

「・・・何て書いてあったんです?」

「とりあえず進学らしいわ。ということよ。アンタも早く出せ」

「んなこと言いましても・・・。1年から進路希望とか早すぎですよ」

「高校生活なんてあっという間よ?大学受験なんて高3丸々使って行うものだし」

「でもなぁ・・・」

昨日みやびに偉いこと言っておいて自分が決まってないんだよなぁ。それに今から将来考えろって出てこねぇよ。

「そんなの穂高と同じように『とりあえず進学』って書けばいいのよ」

「んな適当でいいのか・・・?」

「サッカー選手とか宇宙飛行士でもいいわよ?」

「小学生か!」

 

結局、俺が千石先生に反抗出来るはずもなく駅前へと向かう。

綾たちには用事があるからと言って一人だ。チノにもメールをさっき入れておいた。これで無断欠席じゃない。減給されないのだ。

学校から駅までの近道に商店街を選択。スーパーより安かったりするからときどき使う。

「おや、純くんじゃないか」

「あ、おばさん。こんにちは」

「こんにちは。コロッケいるかい?オマケするよ?」

「うーん。そうだなぁ・・・。じゃあ1個ください」

「オマケで2個ね」

「いいですよ、1個で」

「いいのいいの。小さい頃からの常連さんだからね」

「すみません。美味しく頂かせてもらいます」

「まいど!」

コロッケを受け取り目的地に向き直る。が・・・。

「純坊!今日の魚も活きがいいぞ!」

「おや純くん。見てごらんこの大根を。いい育ち方してるじゃろ?」

「純くん新刊出てるよ?」

「智恵か。今急いでるから無理。また今度な!」

「宗くんの新刊なのに・・・」

「ください」

「毎度あり♪」

とちょくちょく足が止まってしまい予定より遅くなってしまった。

「結局色々買っちまった・・・。でも今日鍋になるからいいか」

この材料を使った鍋・・・。うーん・・・。キムチ鍋にしてみようか・・・。

「純じゃないか?」

「ん?仁さん。こんなところで何やってるんです?」

「二人目のところ」

「俺いい加減あなたを殴っていいと思うんですよね」

「モテない奴のひがみってやつか?」

「違いますよ。モテないのは否定しませんが」

おかげさまでカラオケじゃあ《モテたいぜトゥナイト》なる曲を絶対に1回歌う。別に悲しくなんかないぞ。本当だぞ?

「そういう純は何しに来たんだ?」

「いや実はですね・・・」

「何だこの写真?・・・純」

「?なんですか?」

写真を見た仁さんが黙る。え?何?何事よ。

「今すぐ自首しろ。罪が軽くなるよう俺も言うから」

「待った仁さん何でそうなるんです!?」

「ああ、待て近づくなロリコン。そんな写真を盗撮するほどお前がロリコンだとは思わなかったよ」

「ちょっと待て仁さん!誰がロリコンだァ!?」

なんか凄いことを言われたので今日の放課後、職員室でのことを説明した。

「・・・という訳です」

「つまんね」

「つまんねって言ったかアンタ!?」

「言ってない。つまらないっていた」

「語尾変わっただけじゃねぇか!」

「どつどう。しかし可愛い子だな」

「彼女持ちがんなこと言っていいんですか?」

「彼女って言ってもほら、肉体関係みたいなもんだし」

「生々しいですね!俺が言ったのはそっちじゃなくて美咲先輩のことですよ」

「あれは幼馴染みだって・・・」

「違うでしょ。俺も恋を知ったからなのかはわかりませんが仁さんが美咲先輩を見る目、恋してる気持ち悪い男子の目でしたよ」

昨日、俺がみやびへの恋心を実感してから美咲先輩、及び、仁さんが互いに想い合っている感じがした。いや、感じがしたじゃない。実際に想い合っているのだ。

「・・・違うって言ってるだろ」

少し雰囲気が変わる。

「だったらそういうお前もお前だ。早く穂高と付き合えばいい」

「無茶言わないでくださいよ。今日告白したところで振られるのがオチです。それどころか友達から降格だ」

「・・・お前は自分を過小評価し過ぎだ」

「逆に仁さん達が俺を過大評価し過ぎです」

俺は誰かに惚れられるような男じゃない。一番最悪なロクでなしという特徴も持ってるし。

結論。俺はモテん。モテるとかあれは都市伝説だ。目の前の男も都市伝説。輝も都市伝説。モテる男全て都市伝説。存在しないはずの人間だ。

「人を勝手に存在から消すな」

チョップを喰らった。俺の周りの人ってなんで考えてる事わかるんだろうね。

視界の端に黒いタクシーが止まった。ドアが開きしばらくすると茶色のトランクと一緒に陣代高校の制服を着た少女が降りてきた。リボン、スカートの色から同じ学年だとわかる。綺麗な子だな、とは思った。別にやましい理由ではなく。

そしてなんとなく分かった。

コイツが椎名ましろ、か・・・━━━と。

「純。もしかしてあの子が・・・」

「でしょうね」

写真を見直す。その写真は今の彼女より幼い。

こんな古い写真でわかるかっての。

と、いつの間にか俺の前に立っていた椎名ましろが俺の顔を覗き込んでいた。

「うわ!?」

思わず後ずさってしまう。逆に引かないやつに会ってみたい。隣にいる気がするけどその人はスルー。

「・・・あなた」

「え・・・?」

澄んだ声が俺の耳に入ってくる。

「あなたの目、綺麗」

「そ、そうか」

突然そんなことを言われて顔が赤くなってしまう。同時にコイツの感覚、おかしい、とも。

この一睨みするだけで殺れると錯覚されるこの目が綺麗?どんな狂い方したらそんなことになるんだよ。

初対面の人に失礼だなとは思いながらも口を開こうとする。が、先に椎名に口を開かれた。

「あなたは自分が何色だと思う?」

「・・・知らん。お前からは何色に見えるんだ?」

「青。純粋な、青」

即答された。

青?俺が純粋?何か純粋と純水を掛けられた気分。そして俺の名前、純とも。

やはりコイツは見る目がない。ロクでなしと純粋が両立する訳ないのだ。それに俺が純粋だというなら世界中純粋だ。

「そういうお前は何色なんだよ」

「白。何にもないから」

やっぱ名前と掛けてるんじゃないのか。俺の名前を千石先生に聞いたに違いない。

「・・・もういいよ、椎名」

その言葉を聞いた瞬間、今まで無表情だった椎名の目が驚きで少し目が開いていた。

「あれ?千石・・・千尋先生から聞いてないのか?」

「千尋からは何も聞いてないわ」

おい聖職者。俺のことぐらい伝えとけ。

「俺は姫矢純。お前が今日から暮らすシェアハウスの大家・・・ということになってる」

「俺は三鷹仁。よろしくな、ましろちゃん」

なんかイラッときた。入ってくるなよ、という意味を込めて肘を溝に打ち込んでおいた。

「よろしく、純」

仁さんスルー。俺はよくやったと思うと同時にみやびと同じくマトモな住人を3人から守ることを決意していた。

ぜってぇおたくらに触らせねぇからな。

 

「ようこそ姫矢家へー!」

帰ってくると同時に美咲先輩からの強烈なる歓迎。放たれたクラッカーは見事俺と椎名に直撃していた。

さすがにイラッときたのでチョップをかましておく。

「いったー!何するんだよこーはい君!」

「それはこっちのセリフだ!そんなものに金を使うなもったいないだろ!」

「私はアニメ作ってるからお金には困ってませんー!逆にバイトのこーはい君の方がギリギリだろー!」

「言っておきますけど美咲先輩がおかしいんですからね!普通の高校生はアニメ作らねぇよ!」

「ここにいます〜!アニメを作って稼いでる人ここにいます〜!」

「だからそれが普通じゃないって言ってんの!大学出てからなんですよ普通は!」

「常識に囚われてると、いつか死ぬよ」

とりあえず2発目を放っておく。が、白刃取りされた。

「私に同じ攻撃は通用しないのさ!」

でしょうね。だから左手の2発目。これは直撃した。

「さっきから痛いんだよ!二枚刃はずるい!」

「知ったことか!俺をイラつかせるアンタがいけないんだろ!」

と、ここで俺は椎名の存在を思い出す。

「えっと・・・。椎名さん引いてないよな?」

「何が?」

マジかよ。これ見て美咲先輩引かないのか。俺だったら引く。15mぐらい引く。

見る限り椎名は俺と美咲先輩のやり取りに興味がないようだ。無表情だからたぶん、だが。

「とりあえず部屋に案内するよ」

俺は後ろにいる仁さんに目配せして、美咲先輩をどかし椎名の茶色トランクをもって階段を上る。チラッと後ろを見るとゆっくりではあるがついてきていた。マイペースだなコイツ。駅の所で薄々感じてたとはいえ。

一番奥の部屋、つまり美咲先輩の隣の部屋に案内する・・・のだがいつの間にかましろんとアニメキャラが書かれたプレートがかけられていた。

「ふっふーん。私が昨日徹夜して作ったのさ」

謎の中ニ病をかます美咲先輩をスルーし俺はつっこんでおく。

「いやアンタ昨日ずっとゲームしてたろうが」

「ましろんはさー」

スルー返しされた。俺はため息をついて降りる。

「大変そうだな、純」

「全部あなたに押し付けたいぐらいにね!」

姫矢さんやってらんないよ!

 

「・・・あー。朝か」

俺は体を起こす。結局昨日は椎名の歓迎会(やはり鍋パーティだった)をした後美咲先輩とゲームをやり続けること数時間。俺も美咲先輩も睡魔に襲われ、どうやって部屋に戻ったのか記憶にない。逆によく起きれたな俺。

「今日も頑張っちゃうぞー!」

1階に降りると美咲先輩が玄関から出ようとしているところだった。俺とほぼ同じ時間に寝てこんな元気なのは何故だ。

美咲先輩の体質を呪いながら少し見えてる青いパンツを拝んでいると横からどつかれた。壁に衝突し二重の痛みに悶えてしまう。

「ぐぅおおおお・・・」

「朝から盛るな」

文句を言う暇もなく仁さんも出ていく。

立ち上がってリビングの時計を見ると7時45分。少しやばいな。

「おはよう純君」

「おう、おはようみやび」

「今日は遅いね」

「だな・・・。椎名は?」

「まだ起きてないみたいだよ」

「起こしてくる。忍たちによろしく」

「うん、わかった」

みやびも出ていく。俺は2階に上がってドアをノックした。

「椎名ー。起きろー。遅刻しちまうぞー」

返事はない。仕方ないか・・・。

「入るぞー」

やっぱ返事がない。ただの屍のようだ。

まぁ、そんなことをやってる場合じゃないので部屋に入る。

「なっ・・・」

すっげぇ散らかってた。そして椎名の姿はない。

え、何これ。強盗でも入ったの?下着だの服だの足場の踏み場もないほど散らかってるんだけど。

と、机の下で何か動いた。

「ひっ・・・」

恐る恐る見てみるとパジャマや服と共に丸まった椎名が。

落ち着け。落ち着いてリアリティを探すんだ。

━━━きっと外国の生活が抜けてないんだ。

んな訳あるか。そんな生活聞いたことねぇよ。

━━━寝相が少し悪いのでは?

少しじゃねぇよ。どんな寝相でこうなんだよ。

━━━きっと宇宙人なんだよ。

もはやリアリティすらねぇじゃねぇか。

━━━逆に考えるんだ。君がまだ起きてないんだ。

あ、それだ。これはきっと夢なんだ。

1回椎名の部屋から出て深呼吸。そして己の頬を殴る。よし起きた。では突撃。

散らかってた。もう一度言う。何も変わってなく、散らかってた。

「・・・神様。俺が何かしましたか・・・?」

もう膝から崩れ落ちそうだった。なんとかそれに耐えると机の下の椎名をとりあえず起こすことに決めた。

「起きろー。椎名ー。朝がきてんぞー」

「・・・朝は来てないわ」

「来てるよ!こええこと言うなよ!」

「・・・わかった」

机の下から出てくる。

そんな彼女は全裸だった。もう丸見え。丘の上には桜色の・・・

「・・・(俺)」

「・・・(椎名)」

「「・・・」」

・・・・・・。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?」

「純うるさい・・・」

「何でお前裸なの!?裸族かなんかなの!?」

「パジャマ探してる途中で寝た」

「着てから寝ろ!そしてこれを早く穿け!」

目を背けながら緑色のパンツを渡す。

「それ可愛くない」

「今日誰かに見せる予定でもあんのか!」

「ないわ」

「なら黙って穿け!」

椎名を早急に着替えさせる。

「ほら、寝ぐせ直す!」

「洗面所がどこかわからない」

「昨日説明したろうが!」

椎名を洗面所に連れていき、寝癖を直してる間に俺も自室で着替える。

「純。終わった」

「そうか」

振り向くとびしょ濡れの椎名。そして胸がまたもや丸見えだった。

「お前ブラはどうした!」

「純が用意してくれなかった」

「これ俺が悪いの?」

おかしい。俺は当たり前のことを言ってるだけのはずなのだが。

「ああもう!タオル取ってくる!」

洗面所にタオルを取りに行くと今までにないほど濡れていた。もうクラ〇アンでも呼ぼうかと思ってしまうほどに。

「行水する習慣でもあんのか!」

雑巾で床を拭いていると椎名が一言。

「純。早くして。遅刻するわ」

「椎名に言われたくないわ!」

椎名にブラを装着させ靴下を履かせ靴も何故か俺がやってやり家を出た時間は8時半だった。

後ろを見ると学校とは逆方向に行こうとする椎名。

「違うこっち!」

俺は椎名の手を引いて走り出す。

これ1時間目に間に合うんだろうな!?

 

つまりだ。俺の数少ない癒しだと思われていたコイツ、椎名ましろも俺の家の住人や幼馴染み、友人といっしょで。朝からこんなにツッコミを入れた日なんて1日たりともなかった。もう体力もちません。

結果。結局俺の癒しはみやびしかないのだった。




というわけで椎名ましろをメインにした回でした。原作躊躇しながら高校1年にあわせなきゃいけなかったんで大変でしたよ。小説も何周もしました。
で、今回声優の話が出てました。輝は会話の中身通り宮野真守イメージなんですが・・・(チャラ男刹那的な)。皆さんはどんな声優にしてるんでしょうね?自分はこんな感じ。
純→内山昂輝
輝→宮野真守
神城→安元洋貴
山本は・・・イメージできてません。なんかいい人いませんかね!
そして今回のサブタイトル。さくら荘のペットな彼女第1話まんまです。内容もまんまだしね!

次回は・・・どっちか(どっちだよ)。がっこうエグゼイドかもしんないしこっちかもしんない。僕わかんない!
とりあえず五月中に出せればなぁ・・・。
えーと。とりあえず頑張るので次回もよろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。