とある学生の難儀(?)な日常   作:九牙タイト

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どうもお久し振りです。
いつもあなたの近所に、隣の提督です。
今まで携帯壊れたりパソコン同時大破などいろいろあって遅れてしまいました。
とりあえず最後まで読んでくださるとありがたいです。
それでは12時間目どうぞ!


12時間目 最弱無敗の女子高校生

一睡もできなかった。理由としては昨日の『あれ』が原因だと思うが…。

と、起きたほた…。みやびと出くわした。俺の方はと言うとみやびの顔を見ることができない。

「お、おはよう…」

「う、うん。おはよう、純君」

こうやって名前呼ばれただけで心臓がバックバクだ。俺もう死ぬんじゃねぇの?

「2人とも何やってるんだ?」

「うわぁ!?」

「きゃ!?」

「そこまで驚かなくていいだろ」

「じ、仁さん…」

「お、おはようございます…!」

「ああ、おはよう。しかし朝から元気だな。まるでお見合いのようだったぞ」

「なっ! 何言ってるんですか仁さん!」

「そうですよ三鷹先輩!」

お見合いのようって…。どんな勘違いだよ。

しかしこれで俺は立ち直れる。

「みやびもおはよう。少し遅れちゃったけど」

「う、うん。おはよう、純君」

「ほう…」

「仁さん何ですかその目は」

「なんでもないよ」

と降りていく。

何だ今の意味ありしげな目は。ニヤニヤしてたようにも見えるし。

ふと背後に気配を感じて振り向く。

「…今日は早いですね上井草先輩」

「おはよう2人とも」

「そのニヤニヤはなんですか。すっげぇ殴りたいです」

「若いっていいねぇ」

そう言って上井草先輩も降りていった。

…意味がわからない。

「純君、遅刻しちゃうから少しいそご」

「えっ、ああ。そうだな」

俺たちも下に降りる。

ともあれ今日も人間生活が始まった。

 

「んじゃいってくる」

家で仲良くお留守番をするネコたちに別れを告げ(まあそんな大層なものでもないが)駅に向かう。

「そういやみやび。今日身体検査および体力測定あるけど大丈夫か?」

「うっ…」

ダメらしい。確かになんか体力ないイメージもある。

「そういう純君は?」

「別に女子ほど体重に興味ないし体力も武術やってたからそれなりにあるし」

「でも箒ちゃんが剣術下手くそって言ってたよ?」

「…否定しないわ」

事実だし。剣術より体術です。武器使うより速いしな。

「しかし箒ちゃん、ねぇ。結構仲良くなったな」

「そうかな?」

「だって最初なんか箒のナイフのような視線に怖がってたじゃん。そこから考えるとずいぶん仲良くなったなぁ、と」

「そうかも。でもまだ仲良くしてない人達いるんだよ」

「そうなのか?輝とかは別にいいとして他に誰がいるんだ?」

「純君のバイト先のお友だち」

「あー、なるほど」

確かにみやびは会ったことないだろうな。まずラビットハウスに来ないし。正確には俺が来ないでって言ってるだけなんだが。

「まっ、そのうち紹介するだろうよ。片方は俺たちの学校の隣だし」

「えっ、お嬢様学校の人なの?」

「俺も最初聞いたときありえねぇって思った。今は少し納得してる」

「へー。…何で純君の周りは女の子でいっぱいなの…?」

「え?声が小さくて聞こえない訳だが?」

「なっなんでもないよ!?」

いや絶対何か言ってたって。でも本人がなんでもないって言ってるしそこまで追求することじゃないか。

「おーい、じゅーん」

駅から陽子の声が聞こえる。

「行こうか、みやび」

「うん!」

俺たちは笑って5人に向かって走り出した。

 

「ちっ…」

俺は紙を見ながら舌打ちした。

理由をあげるなら身長が去年より1㎝しか伸びてなかったから。

「どうしたのかなー、純君。…おっと、身長あまり変わってないね」

「輝か…。そういうお前は?」

「0.5㎝」

「だよなー」

まぁ、高校生なんて大体そんなもんか。

「神城はどうだ?」

「俺は3㎝だ」

「僕の6倍…」

「ショック受けんでいい」

「やったよー!」

「ん?ああ、山本。どうだったんだ?」

そんなに喜ぶとは期待できるな。いっつも小柄なことを悩んでたもんな。

「3㎜伸びたよ!」

「「「お、おう…」」」

俺たち3人の声が重なる。

いやお前の身長基本的に変わってない…(ちなみに山本の身長は165cm)。

気まずくなった俺らの空気を修正したのは神城だった。

「全員身体検査は終わったな?教室に戻ろう」

「そ、そうだな。輝はキモい目すんなよ?」

「さすが純君だね。そういう純君は穂高さんを見てそうだ」

「どういう意味だ?」

「姫矢君って本当に鈍感だよね…」

失礼な。いくら付き合いが長いからってそれはひどいぞ。

「昼飯のあとが体力測定だったけ?」

「ああ。その間女子は身体検査だ」

「この入れ替えシステムいいな」

「俺もそう思った。なかなか効率がいい」

神城に同感だ。中学のときなんかよく女子終了までよく待たされたものだ。

と、窓から校庭が見えた。女子は今長距離走らしい。

その中に見覚えのある髪型━━━みやびだ。

結構遅れていて、1位のやつとは周回遅れだろう。

「…しゃあねぇ」

「姫矢君、どうしたの?」

「先に教室に戻っててくれ。ジュース買ってくる」

「…わかった。行こう、橘、山本」

「りょーかい」

3人は教室に戻っていく。

俺は校庭の自動販売機に向かった。

 

俺は校庭の片隅でペットボトルを投げては取り、投げては取りを繰り返していた。

つまり暇だ。

みやびは未だにゴールしてない。けど諦めてはないようでスピードはないものの、少しずつゴールに近付いていた。

「覗きか、姫矢?」

「…橘姉か。ちげぇよ。走ってるのみやびだけじゃねぇか」

「だからだよ」

「…意味がわからねぇ」

「そうなのか。2人とも端から見ればわかりやすいのに」

「何のことだよ」

「わからないのならいい」

何がいいのか。さっぱりわからない。

「まぁ、いいや。しかしみやびはすごいよな」

「何がだ?」

「あんなに苦しそうなのに絶対にゴールしようとしてる。俺はあんなに強くないからさ」

「そうか? 姫矢は強いと思うが。あの篠ノ之道場の娘と同じ強さと聞いたぞ?」

「そういや橘の家も武術一家だったけか」

「まあな」

「俺が強いって言ったな?それは間違いだ」

「理由を聞こうか」

「まず俺が箒と同じ強さって言ったけどそれは体術だけ。それ以外ならアイツに負ける」

橘姉は黙ったまま。俺は話を進める。

「それに俺はそこまで精神面も大人じゃねぇんだよ。俺のモットー働きたくないもそれを表してる」

「……」

「だから。みやびのあの強さには憧れる」

目の前で苦しみながらもゴールしたあの少女は強い。俺だったら諦めてるかもしれない。

「…姫矢」

「…んだよ」

「お前は、弱くない」

「……」

「みやびと同じさ。お前も、勝利には貪欲だろう?」

「…どうだか」

「ふっ…。早く持っていってやれ。それはみやびのだろう?」

「気付いてたのかよ」

「買ってきたというのに一切飲まないからな」

ちっ…。

俺は校庭の方をチラッと見る。

みやびは息絶え絶えで砂まみれになりながら校庭に横になっていた。

橘姉を無視して横になってるみやびの頬に冷たいペットボトルを押し付けた。

「ひゃう!?」

「お疲れさん。よく走りきったな」

「じゅ、純君…」

「ほれよ。アクエリ。飲まないと水分不足で倒れるぜ?」

「あ、ありがとう…」

起き上がって俺の手からアクエリを受け取った。

汗まみれになりながら飲むその姿はなんつーか、エロい…。

どこに視線置けばいいんだよ…。

と、橘姉が視界に入った。その口が何か言っている。

『ひ、め、や、の、ふ、ら、ち、も、の』

姫矢の不埒者…。

…否定できないのがすっげぇ悲しい。

 

みやびは橘に任せ教室に戻ると輝がニヤニヤしていた。

「…何だその顔は」

「いや~。別に~」

イラッときて輝を立たせる。

「へっ…?」

神城が投げたUSBを受け取り頭にコツンと当てると俺は拳を握りしめ構えた。

「そ、その構えは…!?」

ジャンプしその拳を輝に叩き込む。

「ウォラ!」

よろける輝。俺はその間に左腕を斜めに上げ再び構えた。

飛び蹴りが輝の胸に当たり、倒れる。

俺は振り向き左手でJを作り出し決めた。

「神城、サンキュー」

「ああ」

俺が投げたUSBを受け取る神城。

「しかし姫矢。遅かったな」

「いろいろあったんだよ」

「そうか」

これで話は終わりだとばかりに黙る。今は少しありがたい。

と、シャワーを浴び終えてみやびと橘姉が戻ってきた。

「お疲れ」

「うん」

「ああ。次は男子か。頑張れよ」

「まっ、それなりに体力には自信あるんでね」

「みやびの話によると最近走り込んでいるのだろう?」

「この前久々に体動かしたらブランクのせいか体力落ちててな。男が体力負けとか意味わからないからとりあえず走ってる」

「いい努力だ」

「そりゃどうも」

「しかし珍しいね」

「何がだ?」

「いや、姉ちゃんが男の人を褒めるなんてそうそうないからさ。・・・もしかして惚れた?」

「な!なななな何を馬鹿なことを!?」

橘姉が顔を真っ赤にして否定する。そこまで否定しなくてもいいだろ・・・。

「おい、輝。そこらへんにしとけ。橘姉が困ってんだろ」

「そうだね」

「それに軽々しくそんな冗談言うな」

「何故だい?」

「俺がモテるわけねぇだろ」

自分で言ってて悲しいけど俺が人生でモテた試しがない。逆に何故こいつがモテるのか。人間とは不思議なものだ。

「・・・(´Д`)ハァ・・・」

「あ?なんだその溜息」

「やっぱり純君は朴念仁なんだね」

「おい待てどういう意味だ」

「そのまんまだよ。ああ、篠ノ之さんがかわいそうだ」

「なんでここで箒が出てくんだよ!」

「純君に惚れてる皆がかわいそうだよ」

「何その俺がモテてるみたいな言い方。ありえないこと言うなよ」

言った途端全員がやれやれと肩をすくめていた。

「どうしてこんな空気に!?」

俺の肩に手を置く輝。

「君自分の気持ちにも疎いよね」

「そんなことは━━」

「中学の時の君の話をしよう」

「おい待て人の話を━━」

「これは純君の中学の話。純君は昔部活に入ってたんだよ」

「あれは部活じゃねぇ」

「(スルー)その中の1人と両想いだったんだよねぇ」

「・・・あいつのことか」

「そっ。あの子のこと」

言われて思い出す。確かにあれは恋だった・・・のかもしれない。

赤座あかり。小五から俺を振り回し、結局計5年ずっと一緒にいた女の子。けどその振り回される日々が嫌いではなく。あいつがよく見せる笑顔にドキドキしてたのも間違いじゃない。

よくよく思い出せば確かに傍から見れば恋人のように見えたかもしれない。でも

「あいつが俺のことを好きだった?確証はあるのか?」

「だから純君はニブチンなのさ。彼女が君を見る目が途中から恋してた乙女の目だったぜ?」

そうだろうか。けど完全否定できるかといわれるとそうでもなくて。

「・・・ダメだ。俺にはわからん」

「だろうね。まっ、過去の話さ。忘れてもいいんじゃないかな」

「・・・そうだな」

すでに過去の話。忘れていいだろう。

しかし、俺の周りは違った。

「純君ってその子のこと好きだったの?」

「・・・今思えばそうだったんだろうな。初恋かな、あれは」

「ふーん・・・」

・・・なんでみやびさんが不機嫌になるんですかね。

つーかこの空気に耐えられん!話を変えよう!

「そういや来週マラソン大会だけどみやび大丈夫か?」

「えっ」

「なんで知らないんだよ」

この前俺教卓で言ったと思うんだけど。

「それは少しぼーっとしてて・・・」

「みやびが珍しい。けど運動音痴のみやびが走れんのか?」

「だ、大丈夫だよ!たぶん・・・」

「うん不安しかねぇよ」

本当に大丈夫かよ。

「しかしこの学校は面白いな。春にマラソン大会とは」

「それは思う。普通秋にやるからな」

「私のところは秋から雪降ったりしてたよ」

「・・・みやびどこ出身なんだよそれ」

姫矢さんびっくりだよ。

と、5分前のチャイムがなった。

「っし。んじゃいっちょ本気で行きますか!」

「・・・逃げたな」

「逃げてねぇし。早めに行って準備運動すんだよ」

「純君って意外と行動派だからねぇ」

「そういうお前は意外と動かないタイプだよな」

「いいからいくぞ。クラス委員が遅刻したとなればめんどくさい」

「おう!」

ジャージの上着を羽織り教室を出る。去年と同じ結果が出せればいい。

じゃあ、ひとっ走り付き合えよ!

 

と、こんな前哨戦から1週間。

俺達は校庭で待機していた。といっても体育委員はすでにピストルを上に構えている。

陣代高校のマラソン大会は街を巻き込む大イベントの1つで、毎年お昼に商店街を高校生が通るという少し珍しいものが見れることで有名だ。ついでに上位には少し成績をくれるらしい(千石先生に聞いた)。

『それでは1年の諸君。位置につけ』

マイクでそう伝えるのは御聖院だ。本人曰く生徒会は走らなくていいらしい。なら生徒会になろうかなとも考えるのだが、まず俺みたいなロクでなしができるはずがないので半分以上諦めている。

そんな思考に明け暮れてるうちに体育委員の手に力が入り

ピストルが鳴った。

それと同時にスタートダッシュをかける。

友達と一緒に走るとか意味がわからない。こういうのは全員に勝つことに意味がある!

「かかってこいや運動部ーッ!」

そう言いながら俺は全速力で駆けるのだった。

 

「やっぱ純君は熱血だ」

「意外とそういうとこあるよね」

「姫矢だからな。しかし山本。さすがだな」

「確かに。僕達についてくるなんてね」

「忘れてない?短距離とはいえ元陸上部だからね」

「といっても真ん中だが」

「いや純君がおかしいんだって」

「そう?僕はどっちかっていうとお姉さんの方に驚いてるよ」

「そりゃあ姉ちゃん真面目で努力家だし」

「だから女子にしては前の方なのか」

「そゆこと〜」

「弟として恥ずかしくないの?」

「んにゃ全然」

((クソうとめ・・・))

「そういえば穂高さんは?」

「え?そういえばいないね・・・」

「姫矢と一緒にいる・・・なんてことはないだろうしな」

「だよねぇ〜。純君曰く前回の体力測定でも最下位だったらしいし」

「・・・なんで姫矢がそんなこと知ってるんだ?」

「教えてもらったんじゃない?最近純君穂高さんと一緒にいるし」

「・・・もはやあれは恋人だよね」

「本人達一切気付いてないけどな」

「こればかりは時間の問題だね」

 

「( >д<)、;'.・ ィクシッ ・・・誰か噂しやがったな」

先頭で走りながら鼻をすする。風邪か?いやでもバカとロクでなしは風邪ひかないって言うし・・・。言わねぇか。

後ろを振り向くと結構な人数がいた。

「見ろ!人がゴミのようだ!!・・・何言ってるんだ俺」

テンション狂ってるとしか言いようがない。

でも壮観なのは間違いない。そりゃあテンション上がるわ。

と、誰かが俺の隣に並んだ。えーと確か

「同じクラスの小野Dだっけ?」

「小野Dって呼ぶな!しかし、ハァ、ハァ・・・。絶対に・・・。負けねぇぞ・・・」

・・・いや無理。この時点でその状況とか勝てるわけねぇだろ。でも、その心意気は認めてやらぁ。

「いいぜ。勝負といこうか。付いてこれるなら、な!」

一気に加速して小野Dを置いていく。

「ああ!?結構な距離走ってるはずだろ!?なんでそんなはええんだよ!?」

小野Dの声が小さくなっていく。

俺が速くなった理由?決まってんだろ。

限界は超えてナンボだろ!

それにやっぱ橘姉が言ってたのは間違いじゃなかったな。

何が何でも勝ちてぇ。

よくよく思い出せば昔からそうじゃねぇか?

・・・やっぱり鈍感なのか俺・・・。

 

少し調子に乗り過ぎたらしい。ゴールした時にはゼェゼェハァハァと少し死にかけてる。

順位は1位でした。2位と10分以上差をつけて。

素直に嬉しいんだが本当に調子に乗り過ぎた。もう死んでもいいよね。なんの問題もないよね。

「大丈夫か、姫矢」

声をかけられたんで振り向くと橘姉がいた。

「はええな、ゼェゼェ。橘姉」

「そういうお前はどんだけ本気なんだよ」

「限界は超えてナンボだろ」

「マラソン中も同じ事考えてたろ」

「いえなんのことかサッパーリ」

やれやれと肩をすくめる橘姉。これ俺が悪いの?

「しかし、しばらく終わりそうにねぇなこれ」

「そうだな。高校2年とかになったらさらに終わるのが遅くなるだろう」

「まぁ、スタートが1年の20分後だからな」

これは生徒会に是が非でも入りたいと願う。そして逆にこんなロクでなしがいる生徒会ってどうなんだろうとも思う。

「そういえば姫矢。この前言っていた初恋の子とはどんな子なんだ?」

「はぁ?橘姉にしては唐突だな。それ聞いてどうすんだよ。俺のこはずかしい初恋なんていいんだよ」

「いいから聞かせろ暇なのだ」

「俺も暇だけど暇だからって初恋の話する!?そこ考えようや!」

「いいではないか。あっ。ついでに私はまだ恋したことない」

「俺しか話すことねぇじゃねぇかよ!自分が話せないなら話を振るな!」

「それで・・・」

「まだ聞く!?それともお前は某RPGの王様なの!?」

「輝からそれなりには聞いているがな」

「聞いてんのかよ!だったら聞かなくていいだろ!?」

「それでも断片的な情報でしかなくてな・・・。輝に聞くと『本人に聞け』と・・・」

「アイツ後でムッコロス!」

絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!!

「いいから早く聞かせろ」

「ああもうわかりましたわかりましたよ!話せばいいんだろ話せば!」

ったく。なんで俺が自分の初恋なんて語らなきゃいけないのか。もういや。お婿に行けない。

「で、どんな子だった、だっけ?・・・一言で言えば影薄い。いや、正確には薄くなっていったか」

あの部活━━━正確には部活ではないが━━━ごらく部つーゆるい百合空間において俺と並ぶほど普通の女だった、はずだ。がそれが原因なのかパンチのきいたヤツらがごらく部の周りに集まっていくと影が薄くなっていき・・・。しまいには部員4名とか言われる始末(ごらく部メンバーは俺含め5人)。

・・・アイツ一応主人公らしいんだけど。

でも俺にはアイツが影薄いとかそんな印象はない。5年ずっと同じクラスで部活っていうのもあったり、恥ずかしいんだがアイツの笑顔はずっと見てたいと思った。

どんなことがあっても笑い続けて、その満面の笑みは俺の胸を苦しくさせた。

・・・最近同じようなことがなかったか?なんか、ホントに最近だった気がするんだが・・・。

「姫矢?」

「え?あ、悪い。考え事してた」

気のせいか。そう心に言いつける。けど俺の心は全否定してるかのように、心臓をバクバクさせた。

 

次々とゴールする中、輝達の姿が見えた学年で真ん中ってところか。

「3人ともお疲れ」

「2週間連続で走らせるとかおかしいんじゃないの・・・」

「橘、お前は少し鍛えろ」

「そうだよ。橘君は絶対にスペックはあるはずだもん」

「山本に同意だ。やることやればお前はすげぇんだよ」

「君が褒めるなんて珍しいね・・・」

「褒めるときは褒めるつーの」

「ツンデレなんだよ、姫矢は」

「勘違いしないでよね!ってか?」

ぜってぇ俺のキャラじゃねぇよそれ。

「そういやみやびは?」

「穂高さん?後ろの方にいるんじゃない?」

「そろそろゴールするだろう」

「だといいけどなぁ・・・」

 

「・・・全然来ねぇじゃねぇか!」

「落ち着け姫矢」

「落ち着けるか!もう3年生ももう大半がゴールしてるんだぞ!?それに1年はみやび以外すでにゴールしてる!」

俺がゴールしてすでに結構な時間が経っている。

「いいから落ち着け。まず生徒会、もしくは体育委員のところに行くぞ」

「・・・わかった。生徒会に知り合いがいるからそっちに行く。橘姉は体育委員の方を」

「わかった」

互いに走り出す。

俺がついたのは生徒会室。走ったままの勢いでドアを蹴り開けた。

「ラァ!」

「うお!?何事だ!?・・・ってキリトか。なんだ唐突に」

「俺はキリトじゃない!つーか御聖院!1年で1人の女子が未だに戻ってない!それに関する情報はないか!?」

「落ち着け。今確認する」

そう言って携帯を耳に近付ける。いくつかの言葉を交わした後耳を離した。

「残念ながら確認されていない。本当に戻ってないのか?」

「ああ、本当だ」

「そうか・・・。力になれなくてすまない」

「いや、俺も唐突に来て悪かった」

ここに情報はなかった。体育委員の方にあればいいんだが・・・。

ジャージのポケットが震えた。スマホの画面を見ると輝から電話が。

「なんだよ!」

『姫矢か』

「橘姉か!体育委員からの情報は!?」

『いや、ない。そっちは?』

「こっちもない」

瞬間、俺のやるべき事は決まった。

「悪い橘姉!先生に俺とみやびは無視して解散していいって言っといてくれ!」

『おい、待てひめ━━━』

言葉を遮り通話を切る。

無事でいてくれよ、みやび━━!

 

とりあえずコースを辿ればみやびに会える。そう思って俺は全力疾走していた。さっきの疲れもあってやはりというか本調子とはいかない。それでもなんとか足を動かす。

走ってどれくらい経っただろうか。人通りの少ない道に入った。こんな所をルートの1つとして使用するのもどうかと思うがこれが短いルートの1つなので仕方ない、らしい。

ふいに人の気配。目の前で誰かが座っている。その顔には見覚えがあって━━━。

「じゅ、純君!?」

「みやび!」

無事を確認出来てつい抱きしめてしまう。

「ひゃう!?」

「よかったぁー・・・」

マジで心配したんだぞ・・・。

「つーかなんでこんなとこで座ってんだよ」

「途中で転んじゃって足痛めちゃったらしいから休みながらゴール目指してて」

「・・・体育委員とかに言わなかったのか?もしくは気付かれなかったのか?」

「自力でゴールしたかったし、体育委員がいる時は走ってたから・・・。それに迷惑になっちゃうし・・・」

ブチッ。何かがきれた。

みやびから体を離す。そして力いっぱい・・・

「ふえ?」

「てい」

割と本気でチョップした。

「痛い!?」

そのすくんだ隙を使ってみやびを背負う。

「純君・・・?怒ってる・・・?」

「少し」

「・・・ごめん」

俺達の間に沈黙が流れる。

と、同時に俺が考えてたのはみやびを背負ったことによる後悔だった。

(みやびの胸デカすぎんだろ・・・!いろいろとマズイ・・・!)

けどお姫様抱っこができるかというとできなくて。

耐えられず先に口を開いたのは俺だった。

「・・・そういや聞いたことなかったな。なんでみやびが上京してきたのか」

「・・・私の家は旅館でね。お姉ちゃんがいて私が継ぐ必要はないんだ。でも私の小さい頃の夢は女将さんになることだったから夢が無くて・・・。だから夢を探しに来た、ってところかな」

「だからって無茶する理由にはならないだろ」

「たぶん、焦ってるんだと思う。まだ見つからないから」

「・・・んなの俺だって見つけてねぇよ。確かに夢とか目標とか見つけてるやつはいるだろうよ。でもそっちの方が少ないだろ。俺だってやりたいことがなんなのかわかってねぇしな。だから焦る必要はないんじゃねぇの?」

「マイペースなんだね」

「そのぐらい基本的に一緒にいるんだからわかるだろ。家でも学校でも俺は俺なんだから。・・・見つからないな見つかるまでいればいい」

「え?」

「うちはどうせ今はシェアハウスだ。それに親父とお袋のことだ。シェアハウスをやめてもお前を住ませてくれるだろうさ。仁さん達はわからん」

「でも、それじゃ迷惑・・・」

「迷惑じゃねぇよ」

少し声を荒らげてしまった。でも止まらない。

「お前さっきから聞いてれば迷惑だのなんだの・・・。1人で抱えすぎで、1人でやり過ぎなんだよ。たぶん家族構成のこともあってその性格なんだろうが、少しは甘えろ。人を頼りにしろ。人間1人でできることなんて限られてる。絶対誰かに助けてもらわなきゃできない事があるんだよ。つまり、あれだ。その・・・。俺を頼れ。どれだけ力になれるかわからないし、できないかもしれない。でも俺には友達がいる。それはお前にもだ。だからできれば俺に頼ってほしいつーか、友達と一緒にやっていくべきだっていうか」

「ふふふ・・・」

「笑うなよ・・・」

「そうだよね。焦ることはないし頼っていいんだよね」

「そうだよ。迷惑?上等だ。何もねぇ人生より100倍マシだから」

「少し、嬉しい」

「え?」

顔を見ると笑っていた。少し泣いてたけど、カメラに収めたくなるぐらい綺麗で。俺は自覚してしまった。

先週の話。そして、今日の話。俺が赤座あかりに向けてた感情に似ている理由。

自覚したからなのか顔が熱くなっていく。

「純君の背中って広いね」

「そ、そうか?」

「あれ?純君顔赤くない?」

「赤くない!絶対夕日のせいだ!」

とりあえず、この気持はスルーすることにした。それこそ大迷惑だろうから。

 

バイトを休むことを電話で伝えみやびを病院に連れていった。その帰り。

「・・・こんなバイクあったけ?」

「無かった・・・と思う」

いつの間にかうちの車庫に銀色のバイクが止まっていた。

俺はバイク乗らないし(それ以前に免許持ってない)親父も両方の免許を持ってるとはいえ車派だったはずだ。

「とりあえず置きっぱでいいか」

「・・・純君がいいならそれでいいよ」

ゴールデンウィークか夏休み使って免許取ろう。

そう心に誓った。




というわけでやっと主人公らしくなってきたと思います。恋せよ乙女、足掻けよ男子、死せよリア充。よく言いますね。僕ですか。彼女欲しいです。
そしてサブタイトルですが今回は最弱無敗の神装機竜(バハムート)から。少しわかりやすいかな?
次回なのですがえー、新作と同時進行にするので四月になっちゃうかもしれません。
新作はあのアニメとあのドラマのコラボにするつもりですので首をろくろ首ぐらい長くして待ってくださるとありがたいです。
それでは次は新作で!|・x・)ノシ!

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