とある学生の難儀(?)な日常   作:九牙タイト

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10時間目です。前回よりそんな間は空いてないはずです。たぶん。

サブタイトルは機動戦士ガンダムOO 2nd.season第一話「天使再臨」より。


10時間目 部活再臨

オフ会の次の日。

教室に向かいながら廊下で穂高たちと話していると瀬川に会った。

「お、おおおおおおはよう…」

昨日ネトゲ内でいつも通りって言ってたやつ誰だよ…。

だが、話しかけられて何も答えないのは酷すぎる。とりあえず挨拶ぐらいはしなければ。

「おう。おはよう、瀬川」

「何勝手に話しかけてんのよ。マジでキモい」

「お前から話しかけといてそれはねぇだろ」

なんなの? 情緒不安定なの? 思春期なの?

「つーか、いつも通りにお願いって言ってたやつが一番いつも通りじゃないことに俺は突っ込みたい」

「ウザイ」

「そのセリフはいつも通りだけど。態度が違う。75点」

「だから、そういうのが…」

「おはよう、茜ちゃん、姫矢君」

えーとクラスメイトA(名前は覚えてない。まことに申し訳ないのだが)が俺たちに話しかけてきた。

「ああ、おはよう」

「姫矢君、茜ちゃんと仲良いねぇ」

「まっ、俺たちの仲だからな」

と、冗談を言うと

「なんでアンタなんかと!」

怒って席に行ってしまった。

「ごめんね姫矢君…」

「別にいいよ。慣れてる」

というか何でだろうな。

後ろから殺気を感じるんですが。

「えーと、綾さん? 何故あなたが怒ってらっしゃる?」

「純のバカ。1回転生してしまえ」

「それ遠回しに1回死ねって言ってるようなもんだよね」

「だってそう言ってるもの」

…マジで幼馴染みって暗殺者のコードネームじゃないだろうな。

「…もういいや。お前ら隣のクラスなんだから早く行けよ。遅刻扱いになるぞ」

「逃げましたね」

「忍、失礼なこと言うな」

逃げてない。事実を言ったまでだ。

「純の言うとおりだし私は行くぞー」

「頼むからそのまま2度と来るな」

「純の毒舌炸裂デース」

「はいはい」

心底どうでもいい。

そのままゾロゾロと教室に入ってく。

「おい待てカレンお前はこっちだろ」

「さすが純! 私のこと見てマスね!」

「いいから行くぞ」

カレンのフードを掴んで教室に入る。

「苦しいデース…」

「なら黙って入れ」

朝は機嫌が悪くなりやすいんだ、俺は。

「ところでさ。さっきから疑問に思ってるん訳だが」

「どうしたんデスか?」

「…なんで穂高が機嫌悪そうなんだよ」

「…別に悪くないもん」

「いや、どう見ても」

「悪くないもん」

もう意味がわからない。

不意に英騎が目に入った。誰かと話しているらしい。それも女子だ。見覚えがある。

…アコじゃねぇか!?

マジでこの学校かよ! 昨日の俺の祈りを返せよ!

大声、というか会話が俺の耳に入ってくる。

「君、西村とどういう関係で…?」

「ル、ルシアンは、私の…」

キャラ名で呼ばれてるじゃねぇかYO

「私の…旦那様だから…」

旦那様だってー! キャー!とかクラスの女子が騒ぐ。机に隠してメール打ってるやつもいるし。このクラスノリ良すぎだろ。

「うるさいわね!」

と、誰かが英騎に助け船を出した。瀬川だ。

「ルシアンだか、旦那様だか知らないけど騒がしくしないでもらえる!? 迷惑なの!」

おお。さすがだな。

登校時点での自分の不機嫌さを利用しクラスを黙らせたのだ。

英騎に向かったウィンクが俺にも見えた。

今のお前は瀬川じゃない。俺や英騎と共に戦った戦友、シュヴァインだ!

シュヴァインの手際のよさを褒め称えてるとアコは言葉のナイフを取り出していた。

「あ、シューちゃん! おはようございます!」

「「えっ」」

英騎と瀬川の動きが止まる。

「シューちゃんですよね? おはようございます!」

この言葉を受けて瀬川がこっちを向く。その目は恐怖とSOSに染まっていた。

キリト、助けて…と。

うん、無理。

俺は笑顔でそう伝えると瀬川がキレた。

「玉置さん! こっちに来なさい!」

「え、でもHR…」

「いいから来いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

英騎も引っ張られていく。

心の中で敬礼。お前らのことは絶対に忘れない。(^_^ゞ

「西村君の彼女って姫矢君の知り合い?」

「いや、知らない人」

俺はとりあえずそう嘘をついた。

 

昼休み。いつもなら穂高たちと一緒に食べるのだが…。

「…おい」

「どうしたのかね?」

「なんで俺が生徒会室でアレイキャッツの面々と飯を食わなきゃいけないんだよ!」

今俺がいるのは生徒会室。あえて言うが俺は生徒会ではない。念のため。

「キリトは私たちの仲間ではないか」

「仲間でもギルドメンバーじゃないだろうが! いつも無理矢理入れるな!?」

「照れ隠しはいい」

「届かないこの思い!」

俺は青い果実なのか!

「出会った当初から思っていたのだが何故そこまでギルドが嫌なのだ?」

「自然にブレーキがかかる」

俺自身よくわかってないのだが本当に自然なのだ。

いつからこうなのかもわからない。まぁいつかは回復すると思うのだが。

「で、俺らが呼ばれた理由は? さっさとしてくれ」

そうしないと綾たちに怒られながらも来た意味がない。

「君も知ってるとは思うが今回の議題はアコのことだ」

「帰る」

「まぁ、待ちたまえ」

「離せやコラ」

肩を捕まれて止められる。マジで離してほしい。だって完全に関係ねぇじゃん俺。

「関係あるから言ってるのだよ」

「どこが」

「ルシアンやシュヴァインと同じクラスなのだから君にも被害が飛ぶぞ?」

「さっさと解決するぞ」

それだけは嫌だ。なんでクラスメイトの前でキャラ名で呼ばれなきゃいけないのか。俺は英騎と違ってそんなの耐えられない。

「結局議題ってのはアコのこのリアルとゲームを区別できないのをどうにかすることだろ?」

アコ以外が頷く。当の本人は首をかしげている。

「なんだろう…。無理な気がしてきた…」

「おい、なんで英騎が諦めてるんだよ」

一番解決してほしいやつが諦めるなよ。そこで終わっちまうだろうが。

「このまま私と新婚生活を送りましょう!」

「当の本人は被害を拡大させてんじゃねぇよ。つーか瀬川も手伝えよ。ツッコミ不足訳だが」

一人じゃさばけない。頼むから援護してくれ。

「終わる…。私の青春が…」

「終わってないから。だから終わらないように手伝え」

なんで諦めちゃうんだよ。闘いは始まったばかりだろ。

「それでキリト君」

「はい待ったー」

「? なんでしょうか?」

「まずキリト呼びをやめようか。俺は姫矢 純って名前があんの」

「えっ。でも私にとってはキリト君なんですが…」

「俺は 姫 矢 純! わかったか?」

「は、はい姫矢君!」

よし。

「第一難問はクリアだ」

「力ずく過ぎるでしょ」

「突破できればいいんだ。 はい、玉置さん、俺の名は?」

「ひ、姫矢君です」

「な? 突破できればいいんだよ」

そこまでの過程なぞどうでもいい。俺はなんだかんだでカーズを師匠の一人にしているレベル。最終的には究極生命体だしね。

「こうやってまず恐怖によって全員を名字で呼ばせる。いいな、玉置」

「ついに呼び捨て!?」

「何か文句でも?」

「ないです!」

よし。

「そこの金髪ツインテールは?」

「瀬川さんです」

「この課金厨は?」

「御聖院先輩です」

「待て私の紹介の仕方が酷かったのだが」

スルー。

「この腰抜けアーマーナイトは?」

「ルシアンです」

「はい残念。スマッシュ」

「痛い!?」

玉置のおでこにデコピン。

「今までで喰らったどのデコピンより痛いです…」

「デコピンで鬼と中学のときは呼ばれてたからな」

そのデコピンの強さから堕天使ヨハネとか名付けられたときは恥ずかしかった。なんでそんな名前にしちゃったんだよ。おかしいだろ。

「このまま調きょ…。ゴホン。教育していきます」

「今調教って言おうとしたでしょ」

なんのことだか。

「でも純。俺らを名字で呼ばせたからってアコのイメージ、つまり俺の場合《ルシアン》のイメージは変わらないんじゃ…」

「むっ…。確かに…」

こいつのイメージを変えなきゃなんにもならないのか…。ふむ…。

「イメージを変える…。そうか」

「おい待て生徒会長何だその不敵な笑みは」

こええよ。

「別になんでもいいじゃないか」

「いやよくないから言ってる訳だが」

「放課後もう1回生徒会室に集まってくれ。私にいい案がある」

…ぜってぇロクでもねぇ。

 

「…という訳で先に帰ってくれないか?」

「このまま殺しちゃおうかしら」

「怖い。怖いよ綾さん。なんで俺がこんなに怒られなきゃいけないの?」

「いやー純がいけないだろー」

「意味がわからない!」

「そっか…。昼休みに綾が言ってたのはこういうことなんだね…」

「ちょっ!? アリス余計なこと言わないで!」

「え、どんな話?」

「純は知らなくていいのよこのゴミ」

「さすがに失礼じゃないかな。ゴミに」

「逆!?」

「姫矢君…。自虐ネタはダメだよ…」

「さっきから俺が悪いみたいな空気やめようよ。こんなことおかしいよ」

「やっぱり純をいじるとおもしろいデス」

「姫矢君はおもちゃじゃないんだぞぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

で、放課後。俺らはとある教室の前で待たされていた。

「帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい…」

「純怖いぞ…」

紛れもない本音だからな。これからバイトも待ってるし。はぁ…。帰りたい…。

と、ため息をついてると御聖院が来るのが見えた。

「遅くなってすまない。生徒会の仕事があってな」

「なぁ、御聖院。帰っていいか?」

「まぁ、待て帰宅部」

「誰が帰宅部だ」

一応美術部部員だっつうの。

「突如部活の話になったのは何故だ」

「決まっているだろう。新しい部活、現代電子遊戯部だ!」

勢いよくドアを開けるとパソコンが5台たたずんでいた。

「…聞くけどそのパソコン何」

「いい質問だ西村君。このパソコンは皆でネトゲ、いや、この場合オンゲか…」

「いや、どっちでもいいっす」

「そうか…。戻すがネトゲをするためだ」

「「学校でネトゲぇ?」」

俺と瀬川の声が重なる。いや誰でもこうなるって。

「それが玉置の意識改革とどう関わってんだよ」

「簡単だ。顔を見ながらならイメージが変わるだろう?」

えー、何その斜め30度の解決法。間違ってる気がするんだけど。

「さて、諸君! 今すぐログインだ!」

「嫌よ」

瀬川はさっさと否定した。さすが瀬川さんだぜ…。

「なんで学校に来てまでネトゲしないといけないのよ。そこまでする理由がないから帰る」

「そうか…。残念だな…。シュヴァインが帰ってる間に我々のレベルが上がって一緒に遊べなくなるのか…」

「ぐっ…」

んなことを言ってる間にも英騎と玉置はパソコンは起動させていた。

「起動ボタンってどれですかね」

「これじゃないのか? でもネトゲできるのか?」

英騎がステータスを確認し始める。

「えっと、OSは大丈夫だな。要領は…16GB? グラフォ2枚指し!? えっ何このネトゲやることしか考えてない頭の悪そうなパソコン!?」

「マジかよ!?」

バカじゃねぇの!? さすがの俺でもそこまでしてねぇよ!?

「専用に組んでもらったからな」

「だとしても頭悪すぎだろ!?」

「そういえばシュヴァインのパソコンは性能が悪かったな」

「うっ…。そりゃあお下がりだし…」

「シューちゃんにジリジリダメージを与えてます!」

「てやぁ」

「いだぁ!?」

シューちゃんじゃなくて瀬川な。

「瀬川。諦めろ。姫矢君もこれは諦めるしかない」

「~~~~~! わかったわよ!」

瀬川はドアに一番近い席に座った。

俺はどうしようか。英騎の隣にはすでに玉置がいるし。だからって誕生日席に座る気はない。

…瀬川の隣しかねぇじゃねぇかよ。

「失礼する」

「待て! そこは私の━━━」

「お前ギルドリーダーなんだから誕生日席でいいだろ。俺がいつでもそこに座ると思ったら大間違いだ」

いやマジで。何故関係ない俺がそこに座らなきゃいけないんですかね。絶対に間違ってる。

「とっととやるぞ。俺これからバイトなんだよ」

「そうか。ならば始めるとするか。総員火山に集合!」

動かすこと数分。全員が火山に集まる。

「『こんにちは、ルシアン』っと」

アコ『こんにちは、ルシアン』

「いや、目の前にいるんだから必要ないだろ…」

英騎の言うとおりだ。

「…今の見て思ったんだが玉置が下手くそなのってその遅いチャット入力も関係あるんじゃ…」

日常の会話でも《アコ》の入力は遅かったと記憶している。んな暇あったら1秒でも早く回復しようぜ…。

「まぁ、そこもこれからの議論にも入れようか。じゃあ行くぞー」

「待て、純」

「ん? 忘れ物でもしたのか?」

「いや、違う。アコ。装備を見してみろ」

ああ、そういうこと…。確かにそれは俺も気になってたけどさ…。

「…なんでこれから火山に行くのに水耐性の服なんだ?」

「ルシアンがくれたからです♥ それに可愛いですし」

「今すぐ交換だ」

「ルシアン酷いです!?」

「いや普通だから」

俺の装備が異常なだけで普通は耐性のある装備をするに決まってる。

…まぁ、ダメージを受けないなら別だけど。

「それにな、お前のそのロッド確か回復力微妙なやつじゃなかったか?」

「そうなの!?」

英騎よ知らなかったのか…。俺はレア以外の装備は基本的に覚えてるからいいけど。

「…ねぇ、何このロッド。使用時に星が出る?」

「あぁ? そこまでは知らないな」

何その効果。聞いたことない訳だが。

「そのままの意味ですよー。回復するたびに星が出るんです! 可愛いですよね!」

「はい交換ー」

「姫矢君!?」

そんなの使うより慈愛のロッドで普通に回復しろ! ギルドに大迷惑だわ!

「英騎。慈愛のロッド貸してやれ」

「え、私持ってますよ?」

「「なら使えや!」」

俺たちの声が見事に重なった。

 

そんなことあって俺らは目的地に着いた。

「なんかいつもより疲れた…」

「それを言うな…」

まぁ、瀬川の言うこともわかる。ここまで時間がかかりながら目的地に辿り着くことなんてなかったからな。

「でもアコの回復力が上がってるからいいだろ?」

「そうかもしんない。俺は関係ないけど」

「それではルシアン。モンスターを連れてきてくれ」

「あいよ」

ルシアンが移動して敵mobを釣りにいく。

数分後にはここは敵mobで溢れかえるであろう。

…少し盛った。絶対にそこまで多くない。

「…これ俺がいる意味あるのか? 俺がいたらお前らの経験値が減るだけだろ」

「いや姫矢。君にはピンチになったときに動いて欲しい」

「それ以外は黙って見てろと?」

絶対いやなんだけど。

あの男だって言っていた。

『RPGを眺めるほどつらいものはない』

俺はこれを事実だと思ってる、というかガチなのでどうにかしたい。

「だったらお前らのヘルプ来るまでそこらへんのモンスターと戯れてるよ」

「オッケー。ちゃんとこいよ」

「わーってるよ」

あ、あんなとこにリザードマンだー。お前変温動物なのにここにいていいのかー? こっちこいよー。あはは。

単発片手剣ソードスキル《シングルレイヴ》ッ!

もう終わりかー。弱いなお前ら。

「今酷いのを見たわ…」

隣の瀬川が俺の画面を見ながら呟いた。

「酷いとは失礼な。普通のゲームプレイだったろ」

「ああはいそうね…」

何がダメだったんだろうか。普通にモンスターを倒しただけなのだが。

しかし暇だな。さっさとこいつらがピンチになってくれればいいのだが。

「…暇だ」

「しょうがないだろ。今日のアコは回復率がいいんだから」

「今日は頑張っちゃいます!」

あー、それでも英騎のHPは減る運命的なのか。ウンメイノー

「つーか今日はっていうなら毎回頑張れよ」

「それは思った」

「あーあー、聞こえません」

…そろそろデコピンしたろうかコイツ。神の裁き的な。これだから堕天使ヨハネとか呼ばれるんだろうが…。

と、いきなり瀬川が立ち上がった。

「どうした?」

「ちょっとね」

「ああ、お花を摘みに行くのか」

「わかってるなら言うな」

そう言って教室を出ていく。今のうちだな。

「純? 何やってるんだ?」

「いや、ちょっとな。マスター、なんかないか?」

「ならこの装備はどうだ?」

「いいね。で、これをこうして、っと」

さてどんな反応をしてくれるかな…?

「ただいまー。私のシュヴァイン生きてる?」

「生きてる生きてる。代わりに俺がいるから」

「そう、よかった…」

「どうした、瀬川」

「何よこれ! 私のシュヴァインがどうしてこうなってるの!?」

俺がしたことはシュヴァインの装備を変えること。現在のシュヴァインの装備は熊の着ぐるみにネタ装備のネギソード(元は初音コラボだったはず)。つまり可愛らしくなっているのだ!

「早くしろシュヴァイン。そろそろルシアンがモンスターを連れてくるぞ」

「ああもうわかったわよ!」

ネギソードでズバズバ切り裂いていくシュヴァイン。何これすっげぇシュール。

「なんでこんなに攻撃力高いのよ!」

「私がいざというときにフル強化しておいた!」

相変わらずの金の使い方。胃が痛くなるからやめて…。

「胃が痛いから次回からアプリコットの課金装備使用禁止な」

「ひどい! 何故そんな横暴を!」

「あのな! お前が課金装備使うたびにこっちの胃がキリキリすんだよ! マジでやめろ!」

「別にいいだろ!」

「よくねぇから言ってんだろうが!」

「誰よ私のシュヴァインに手を出したやつ!」

「え。純がやりました」

「おいこら英騎俺を売るな」

事実だけど。

「ひーめーやー?」

「落ち着け、ちょ、あぁぁぁぁぁぁッ!」

こっちがバイオレンスであったことは残念でならない。

 

「あ"ー。疲れだー」

「って何で私がアンタと帰ってるのよ!」

「しゃあねぇだろ。同タイミングで教室出て向かう先が一緒だったんだから」

「これからバイトじゃなかったの?」

「バイトだよ。バイト先がこっちなの」

「へー。今度行ってやろうか?」

「来なくていい」

なんかめんどくさいから。

「…どう思う?」

「唐突だな。なんのことだ?」

「玉置さんのことよ。修正できると思う?」

「…無理かもしれん」

「やっぱり?」

「ああ。人の意識改革なんてそうそうにできることじゃない。俺の意識だってそうそう変わるものでもないしな。英騎みたいにトラウマレベルのことが起きれば変わるだろうが…」

そんなこと起きるわけないし。となるとやっぱり難しいだろう。

「私の高校生活終わった…」

「終わってないから。まだ早いから」

まだ1ヶ月だぞ。早すぎるって。

「瀬川は明日も来るのか?」

「…一応。私に被害がでるのはそうそうに避けたい」

無理だろ…。と言いそうになるのを堪える。

「そうだな。…俺も行くよ」

「理由?」

「行かなかったらお前にも御聖院にも文句を言われるんだ。それに…」

「それに?」

「いや。何でもない」

それに…。楽しかったしな。

そんなことを言えるはずもなく。俺は瀬川と共に歩き続けるのだった。




次回は休み時間です。

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