今年は小規模なクリスマス回なだらしない書いてる人ですまない
【登場人物】
提督(社会派)
好きな菓子パンはマンハッタン
五月雨(穏健派)
好きな菓子パンはまるごとバナナ
もしもし?オレオレー?今年の“サンタ狩り”どうするよー?そんなナウな言葉が飛び交うクリスマスの季節
今年もやってきたアベックどもに天誅下すこの日がやって来たことを俺たちは神に感謝しなければならいだろう…
「何バカなコト言ってるんですか…」
「コイツ、俺の考えていることを………能力者かッ!!」
「いえ、アベックどもに〜…のくだりの辺りから声に出てましたけど」
今年も基地福利厚生イベントの一環として絶賛開催中の基地クリスマス会、バカなガキどもにはトイ●らスで購入してきた(福利厚生費で)プレゼントを配り、アホな大人たちにはこの日の為にグ●メ界で仕入れてきた(間宮が)グ●メ細胞が歓びに震える料理と、ビールかけとワイン祭を開催しても大丈夫な量のアルコール飲料を用意している…
『ヤベェぞ!高雄クンと妙高クンがメンチ切り合ってんぞ!』
『高雄クンが妙高クンの髪にケチャップかけちまったらしい…』
『こりゃタダの“聖夜”じゃ済まねーぜ…』
既に“パーティ”は開催されているらしく、会場のあっちの方ではピキッ!パキッ!とアレなコトになっているようだが、会場内で起きる事故や事件に関して提督は一切関知しない、これはもはや常識…
俺は五月雨と今日のケーキ何?イチゴの載ったやつ?俺イチゴのショートケーキ食いたいんだよねとワリとどうでもいい世間話をしつつテーブルで食い物を物色していると、足元にヌルッとした感触のなんかキショい生物がまとわりついてきた…
「なんだ?このキショいのは…?」
「山風さんのネコでしょ」
「あー…」
そういやそうか、この毛のないネコは……俺は毛のないネコの首の後ろを掴んで持ち上げてみると、ネコは大して抵抗するわけでもなくダラリと持ち上がりやる気のない声を発した
「なんでコイツだけいるんだ?飼い主はどうした?」
「さぁ?その辺で遊んでるんじゃないですか?」
「いけないなァ、飼いネコを放置しては…」
とりあえず辺りを見回してみると、緑色のトゲトゲしいヘアーの子とキンパツサラサラヘアーの子まるで絡み合う2匹の大蛇の如く床をゴロゴロと転がりながらお互いにマウント・ポジションを奪い合いつつ汚く罵り合っていた
『うおー!このキンパツ!私は!お前が!泣くまで!殴るのをやめない!』
『この爆発力!このトゲトゲチビを侮っていた!こ…このきたならしい阿呆がァー!』
まぁ駆逐艦たるものケンカの1つはするだろう、しかし楽しいクリスマスにあまりエレガントではなかったのか山風クンはカットに入った海風ねーちゃんに羽交い締めにされたままスープレックスで後頭部を強打され、ジャーヴィーくんは女王陛下の王笏で顔面を強打されて壁まで吹っ飛び白目を剥いていた…
「海風ねーちゃんやりすぎじゃねーの?」
「大丈夫ですよ、海風さんは胸にご立派なクッションついてるから大したコトありませんよ」
そのクッションは山風クンの後頭部をクッションしてないのでは…?と疑問に思ったが、サミー子はすぐ下の妹が駆逐艦にあるまじきパイオツの持ち主であることに憎悪があるらしいのであえて口に出さず言葉は呑み込んだ、提督は大人である
「むしろジャーヴィスさんの方がアレなのでは?」
女王陛下の覇気をまともに被弾して無事である理由はない、むしろ原型が残っていることに女王陛下の懐の深さが窺えるものだ
俺は毛のないネコをサミー子のアタマに置いてみたが、ネコがずるりと頭から落ちてしまった…
「なんてことするんですか、髪が傷むじゃないですか」
「いや、ほら、山風クンはアタマに乗せてるからお前でもイケるのではと…」
「私と山風さんじゃ髪質が違いますから」
そういや山風クンは海風ねーちゃんからトリートメントはしているか?と小言を言われてたな…
五月雨曰く、同じ姉妹でも髪質の違いはかなりあるらしく、意外にも白露ねーちゃんが髪質的には似たようなタイプなそうな
「へぇ、まぁどうでもいいハナシってやつだな」
「そうですね」
俺たちはドリンクを片手にとりあえずこの場にとどまることはリスキーであると本能で察し、適当に皿に載せた料理を持って会場内の別のビュー・ポイントへと移動した………
*****
「そう言えばテイトク、こないだ風邪引いてませんでした?」
「ひくよ、そりゃ俺だって風邪ぐらいひくのだよ」
「へぇ…」
自分で聞いておきながら心底興味なさげにねぎまの串を食べる秘書艦サミー子、コイツ………俺が心の広い理解ある提督クンじゃなかったら即座に顔面パンチでわからせられるところなのだよ…
そんなどうでもいいコトを考えていると、俺の中の危機管理センターが一気にレベル5まで警戒レベルを引き上げてきたッッ!!
「テイトクさん、こんなところに居たんだ?ね?」
「…やはりキミか」
由良さんは両手にケーキの皿を持っており、普通に考えたら手による先制攻撃はないだろうと考えるところだが、この由良さんは違う、ケーキだろうが皿だろうが平然と凶器として使用してくる
「テイトクさんとサミーもケーキ食べる?取りすぎちゃって由良1人じゃ多すぎかなって思ってたの、ね?」
「は?」
「…ちょっと言ってる意味がわからないですね、ナニ言ってるんですか?イカレてるんですか?」
「テイトクさんもサミーも由良に対して失礼すぎじゃない?」
由良さんが俺たちにケーキを振る舞う?オイオイオイ、ありえねぇだろ…由良さんの性質的に
この異常とも言える由良さんの言動に、俺だけではなく五月雨も戸惑いを隠せないらしく、俺達はアイ・コンタクトによる情報と行動の共有化を実践した…
“ハッキリ言って由良さんが善意100%でケーキなんか振る舞うなど100億%ない、唆るぜぇ…これは!”
「とりあえず、テイトクさんとサミーが殺してくれと言ってるのはわかるけど」
「言ってないのだよ」
由良さんは俺とサミーが座っていたベンチの上司と部下の社会的な距離をグイグイとねじ込み座った
「たまには同期の3人で仲良くしたいじゃない?ね?」
「…いや、どうしたの由良さん、え?ナニ?由良さんなの?」
「…ちょっと何言ってるかわからないですね」
由良さんに何の考えがあるのかわからないが、とりあえずいきなり貫通お腹パンチとかはなさそうだな…
しかし、必殺の間合である事に変わりは無いので警戒は解けんな
「テイトクさんどれ食べたい?この黒いの?赤いの?」
「せめて名前で言えよ、女子力低いなオイ」
「ケーキに名前なんか必要なくない?ね?」
ケーキに対してなんてこと言うのかね、この娘は…
「私はこの赤黒いやつがいいですね」
そしてサミー子、お前もか…
「へぇ、なかなか見る目あるじゃない、それ、ウチの阿武隈が食べたいって言ってたから前歯を折ってやったの」
鬼かッッッ!!!!クリスマスに阿武隈へのとんでもないプレゼントなのだよ
「阿武隈に謝れよ」
「謝ったよ、カルシウム足りてないんじゃない?って、ね?」
それのどこが謝罪なのか?由良さんにとっては顔面パンチですら謝罪の意味があるのかもしれないが…
「で?テイトクさんはどれにするの?ね?由良も同じのにするから」
「ヤンデレカノジョか!!」
「ま、フツーにウソだけど」
「クッ!ナメやがって…!イチゴだよ、イチゴの載ったショートケーキが食いてぇんだよ!俺は」
「へぇ、じゃ、由良もそれにしよ」
「クソッ!!意味わかんねぇ!!」