不健全鎮守府   作:犬魚

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春なのにローテンションに遅筆中

【登場人物】

提督(ロー)
エンジンブロー気味の昨今




提督と季節のザクロ

世は心機一転の時代、老いも若きも等しく新しい春を迎える…

そんな爽やかな春の執務室、俺は春のSHINSENな空気でも取り入れようと窓を開け、マグマのようにアツいコーヒーを一口啜った…

 

「…相変わらず卿の淹れるコーヒーは不味いな」

 

「失礼な」

 

何故この専業秘書艦はこれだけ不味いものを人に出しておいて誇らしげな佇まいでいられるのか…

そんなつまらない事を考えつつもう一口啜っていると、秘書艦青髪ロング子は、あ、そうそうと手を叩き…

 

「金剛さんから提督に話があるから取り次ぐようにって…」

 

「………金剛が?」

 

「えぇ、金剛さんが」

 

オイオイオイ、マジかよオイ、金剛が?俺に?話がある?あの、金剛が…?

 

「デートのお誘いじゃないですか?」

 

「………………フン、卿は相変わらずジョークの才能がないな、再就職先にコメディアンは諦めた方がいい」

 

「そうですか」

 

金剛が俺に話がある、か………

遂にヤる気になったか?俺と…?いや、まだそうと判断するには早い

 

基本的には俺はこの基地に配属されたバカどもを“家族”と考えているし、どんなバカでも、それでも愛そう!と深い懐を持っているが、そんな俺でも明確に“敵”と認定しているヤツがいる…

 

1人は金剛、この基地の絶対支配者であるこの俺を差し置いてこの基地を裏から恐怖と力で支配する基地の“帝王”…

その…絶対的な力と圧倒的なカリスマ性はまさしく帝王と呼ぶに相応しく、もう何年もこの基地の裏に君臨しこの俺と反目し合っている

 

ちなみに、2人目はプリンツだが特に細かい理由はない、アイツはいつか●す

 

「それで?金剛さんの呼び出し、どうします?」

 

「…時間と場所を聞いておけ」

 

下手に誘いを断って寝てる時とかメシ食ってる時とかウ●コしてる時とかに襲撃されたらかなわんしなと考えていると秘書艦サミー子は電話機のプッシュボタンを押し、もしもーしと普通に電話していた…

 

「提督ですけどいつでもどこでもOKだそうです、命を賭けてかかってこい!と…」

 

「余計なコトゆーな!!」

 

「はい?あぁ、はいはい、伝えておきます、はい、では失礼します」

 

秘書艦サミー子は受話器を置いてひと息ついた

 

「で?どこに来いって?」

 

「今からここに来るそうです」

 

「は?今から?」

 

「そう言ってましたよ」

 

金剛が?わざわざ?なんなんだアイツ、何を考えている?ヤる気か?ここで…?いや、まさかいくら金剛のヤツでもこの神聖なる執務室で即開戦ッ!!とは考え難い…

やはり今回は何か話があるだけなのか?あの金剛が…?

 

いやいやいや、あの金剛だぞ?テイトクの“心臓(ハート)”はワタシのモノデースと提督抹殺宣言を誰にはばかるコトなく公言してるあの超危険人物だぞ?

 

…この基地には大和、武蔵、アイオワと誰しもがアツい最強議論に花を咲かせるスーパースターが揃ってはいるが、そんな最強議論に、なら…ステゴロなら?と付け加えると誰もが同じ答えに行き着く……

 

まぁ、ステゴロなら長門でしょう、と……

 

「相手は長門さんじゃなくて金剛さんなのでは?」

 

「コイツ!俺の心を読んだ…!?能力者か!!」

 

「いや、別に心を読む能力とかないですけど、くだらないコトを考えている顔がバ●風味だったので…」

 

五月雨曰くだいたい最強死刑囚編くらいの風味だったらしい

 

「しかしだ、秘書艦サミー子よ、見ての通り、ボクは今“ベスト”の状態じゃあない」

 

金剛が求める俺との対戦は“万全(ベスト)”の状態であること、つまり、今日じゃあない…

 

「そうですね、まぁ“臆病者(チキン)”らしくていいんじゃないですか?」

 

「…………あ゛?」

 

こやつめ、俺がチキン野郎だと?フッ、この俺を愚弄&侮辱しているつもりか、しかしこの提督は大人だ、この程度の挑発に乗るほど安くは…………

 

「誰がチキン野郎だとコラァ!!俺が金剛にビビってるだとォ?上等だよ、死ぬまでヤってやんよ!!」

 

提督は愚弄されるのが何よりムカつくのだ

 

金剛だぁ…?ジョートーだよ、俺のスネークバ●トでそのキレーな顔グシャグシャにしてやんよ

 

ゴン!ゴン!(ノックしてもしもし)

 

「あ゛?誰だ!?」

 

執務室の重厚な扉を叩く音、そして、重苦しい扉が開くとそこに……

 

「テイトクは居ますかネー?」

 

「ヒイッ!?こ、金剛ォ!」

 

なんでさっきまで上等とか言ってて世紀末のモヒカンみたいな反応なんですか……と秘書艦サミー子の冷静で的確な意見でいつものCOOLさを取り戻し、改めて金剛に向き合った

 

「貴様がわざわざ出向いて来るとはな、で?何の用だ?」

 

「別に、大した用ではありまセーン」

 

大した用ではありまセーンだぁ?ありえんな、俺とコイツの間にある関係性は提督と艦娘、上司と部下、殺すか殺されるかの関係のみでそれ以上も以下もない

 

「なんだ?金か?金の話か?」

 

「別に金には困ってまセーン」

 

「なら何の話だ?もったいぶらずに早く言え」

 

既に距離は互いの射程圏内、必殺の間合いには1m足りないと言ったところだが瞬き一つ見逃しすだけで命取りになる

 

「たまにはテイトクをティーにでも誘ってみようと思っただけデース」

 

「…………ティー?」

 

なんだ…?何かの隠語か?ティー……Tea、いや、T…?テイトクのT、TellerのT?それともTerminateのTか?

 

「マミー屋にイイ茶葉が入ったらしいデース」

 

「マミー屋に?」

 

…間宮も交えてヤろうってのか?金剛だけでも手一杯だってのに間宮を同時に相手取るのは難しい、可能であればまず間宮と組んで金剛を撃破、もしくは金剛と組んで間宮を撃破、最悪なのは間宮と金剛が組んで俺を殺りに来ることだが流石にそれは無いだろう

金剛は他人の手を借りるタイプではないし、むしろ、自らの手のみで俺を殺したがっている

 

「…………いいだろう、秘書艦を同席させたいが構わんかね?」

 

「別に構いまセーン」

 

そう言って金剛は快く了承し、秘書艦はコイツマジかよ…ウソだろメンドクセーな目を俺に向けたが俺は当たり前のように無視してやった

 

「では行こうか、マミー屋へ」

 

「そーデスね」

 

◆◆◆

 

甘いモンも辛いモンを取り扱う極上のスイーツショップ、マミー屋…

 

「紅茶3つ」

 

「本日のおススメはザクロのタルトです」

 

「じゃそれも3つくれ」

 

「丁ポイントカードはお持ちですか?」

 

「ねぇよ、っーかTポイント対応してんのかよこの店」

 

「Tポイントとやらには対応してませんが?」

 

後で聞いた話だが、この時間宮が言っていたのはごくごく一般的なTカードではなく丁カード(テイトクカード)と言う最近海軍で取り扱い始めたカードらしく、永遠に甲提督になれないミジメな敗北者にいやがらせのように上から送られてくるそうだ

 

「まぁいい、とりあえずそのザクレロのタルトと紅茶くれや」

 

「ザクレロじゃないです、ザクロです」


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