不健全鎮守府   作:犬魚

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夏の狂気山脈強行軍

【登場人物】

提督(メガネ男子)
非データキャラのメガネ男子、難しいコトはよくわかんねーケドよぉ〜

神州丸(暗殺者)
陸軍から来た美しき暗殺者、同僚のあきつ丸とは殺しに対するスタンスが違うせいか、そこら辺の話題だけは合わない


提督と美しき暗殺者と狂気の魔獣

男には1人、缶コーヒーでも飲みながらタバコでも吸いたい時間がある…

常にタフ&ハードかつハード・コアな日常を一時でも忘れる術を持つのもまた、紳士道であり、紳士である俺は今日もこの欲望の紫煙を口から吐き出しつつグラウンドでヒィヒィ言いつつダッシュさせられてる駆逐艦のバカガキどもを眺めていた…

 

あ、なんかコケた、全力でダッシュで前のめりに倒れていた親潮クン似の子に神通はスタスタと近づいてお腹にキックを入れた

 

『ゲボォ!!』

 

『立て、まだトレーニングは終わってないぞ虫ケラが』

 

『じ、神通教官!早潮はもう限界ですっ!少し休ませてやってください!』

 

『休ませて欲しい?オマエは戦場で敵に疲れているから休ませてくれと頼むのか?甘えるなクズが!さぁ立て!まだ地獄は始まったばかり………いや!貴様らはまだ地獄の入口にすら立っちゃいない』

 

お腹キックで悶絶中の親潮クン似の子を庇い、たぶん本物の親潮クンが神通に意見しているようだがそこはさすがに戦いのプロフェッショナルである川内姉妹の次女神通、親潮クンに甘えるなと容赦ないビンタ!

駆逐艦のバカガキへの指導を始めるにあたり、私は神、神通、これから先、貴様に地獄をみせる艦娘だ!と言うだけはある

 

「フーッ〜………」

 

カッカッカ、まったく、バカガキどもが苦しむ顔を見ながら吸うタバコは格別じゃわい、苦しめ苦しめ、もっと苦しむがいい、オマエらの苦悶に満ちた表情と怨嗟の声が最高のスパイスなのだよ

 

「提督殿は性格が悪いでありますな」

 

「!?」

 

気分良くタバコを吸っていた俺の喉元で真一文字に引かれた白刃をギリギリで回避ッッ!!

今、攻撃の瞬間までまるで気配を感じなかった…ッ!こんなコトができるのは彼女しかいない…

 

「残念、今のは殺ったと思ったのですが」

 

陸軍と言う名の闇ギルドから来た美しき暗殺者、神州丸クンは言葉とは真逆に大して残念そうでもなく手にしたナイフをお腰につけたホルスターにしまいしまいした

 

「大したヤツなのだよ、と言うか神州丸クン、キミ、提督の頭の中を読む能力でもあるのかね?」

 

「いえ、オマエらの苦悶に満ちた表情が〜…のあたりから普通に声に出てました、であります」

 

「そうかね」

 

いかんいかん、考えていることをつい口走ってしまうのがボクの悪い癖

 

「しかし神州丸クンは提督にナニか用かね?提督の命を取りたいってなら出来ればベッドの上で頼みたいんだがね、鍵は開けておくよ」

 

「…その手の技は些か不得意、であります」

 

あ、ちょっとムッとしたよこの娘、この娘、常に死んだ魚みたいな目をしてるせいか感情が読み難いが、下品な話題はあまり好まないらしい

その澄ました美しいお顔を是非とも狂える悦楽で染め上げてみたいものだよ

 

「提督殿にお伝えしておかねばならない事があるのであります」

 

「俺に?」

 

なんだ?闇ギルドから奴隷オークションに参加してねってお誘いか何かか?ハハッ、参ったなぁ、薄汚い獣人や亡国のプリンセスを買う趣味は俺には無いんだがね

 

「実は今朝、日課になっている迅鯨殿の洗脳調教をサボってしまいまして…」

 

「へぇ…」

 

洗脳…?調教……?え?この娘、今なんかサラっとトンデモないコト言わなかったか?ってか日課?

 

「つまり、どーゆーことだってばよ?」

 

提督と出逢ったその日から運命的なナニかを感じて刃物を手に暴れ回ったプッツン潜水母艦の迅鯨クン

その、プッツン迅鯨クンは神州丸クンによる暗示と薬物によるプロの手口で比較的マトモな真人間に生まれ変わったハズだったが、神州丸クン曰く、迅鯨クンの精神力はマジハンパねーらしく、定期的に暗示と薬物を使用しないとすぐに自力で洗脳を解き狂気のプッツン迅鯨クンになるのだとか…

 

「しかもだんだん洗脳への耐性が付いてきたらしく、最初の内は月1ぐらいで良かったのですが、最近は毎日ペースになっていたのであります」

 

「迅鯨クンパネぇな」

 

「あれほどの内なる狂気はそうはいないであります、あ、提督殿、ちょっと右にずれてもらえますか?20㎝くらい、であります」

 

正直、常に額に金の洗脳装置でも付けてないとダメなレベルでありますと神州丸クンが懇切丁寧に付け加えてくれたその時…

 

ズドンッッッ!!!(出刃包丁)

 

「はおっ!!」

 

突如として飛んできた出刃包丁が俺の頬を掠り背後のコンクリ壁に勢いよく突き刺さった

 

「テ〜イ〜トォォォォォォォォクゥゥゥゥゥゥゥゥ〜…」

 

「ひ、ヒイッ!?」

 

狂気の光を灯した真紅の眼光と口許からよくわからない白い煙を吐きつつ新たな刃物を手にして狂喜の笑みを浮かべ、今、扉の隙間からヌルリと姿を現したッ!!

 

「テ〜イトォォォクゥゥゥ〜…ずっと前から好きでしたぁぁぁ〜」ペロォ…

 

手にした刃物をペロォと舐め、豪速球の火の玉ストレートな愛の告白を告げた迅鯨クンは恍惚とした表情を浮かべている…っ!

 

な…なんて嬉しくない告白なんだ、いや、正直、彼女がマトモだったらおっぱいとか大きいし提督的には全然アリなんだが、いかんせん、彼女はマトモじゃあない!と言うか、ハッキリ言って提督は迅鯨クンのコトを何も知らないに等しい!好きな音楽のジャンルだって知らない仲だ!

 

だが!彼女は違う!!彼女は初対面からキレていたッッ!いわゆるHITOME-BOREと言うやつだろうか?出逢った最初からキレっキレだったのだッ!!

 

「迅鯨殿、申し訳ないのですが提督殿の殺害は少々待って頂きたい、であります」

 

「………あ?テ〜イトォォォクゥゥゥ〜……誰ですか?この女」

 

「誰も何も神州丸クンなのだよ」

 

「神州丸……へぇ、それがその間女の名前ですかぁ〜」

 

迅鯨クンは間女狩りの時間だぁ〜と出刃包丁をペロリと舐め…

 

「神州丸さん………でしたっけ?今すぐ私の提督と別れて貰えますかぁ?あと10数える間だけ待ちますね、10、9、8、7……ヒャア がまんできねぇ 0だ!」

 

迅鯨クンのスラッシュ投げ出刃包丁×3が神州丸クンに放たれたが、神州丸クンは自前の暗殺ナイフでその一閃を弾いた

 

「刃物の扱いは小生も些か自信がある、であります」

 

「ほぉぉぉ〜…なるほどなるほどぉぉぉぉ〜…」

 

迅鯨クンはさっき投げたハズなのにいつの間にやら手にした出刃包丁をペロォと舐め、今度はダッシュで神州丸クンとの距離を詰め出刃包丁を振るう!

 

「提督殿、迅鯨殿殺していいでありますか?」

 

迅鯨クンとナイフで打ち合いつつ死んだ魚みたいな目でなんてコト言うのかねこの娘は

 

「いいワケねぇだろ!!なんかイイ感じに無力化しろよ暗殺ギルド!!」

 

「暗殺ギルド?ではない、であります」

 

「ヒャア !!」

 

迅鯨クンのスラッシュダマスカス包丁が神州丸クンの暗殺ナイフを弾き飛ばしたが、神州丸クンはごくごく冷静に迅鯨クンの手にしていたダマスカス包丁を奪い取り、その、凶器と言える太ましいフトトモが光る膝を迅鯨クンのお腹にブチ込み、迅鯨クンは壁際までブッ飛んだ

 

「ゲボォ!!」

 

「プロ相手にケンカを売るのはオススメしない、であります」

 

「このアマァ〜…!クッ…!!」

 

攻めあぐねている…!あの狂気の潜水母艦迅鯨クンが!さすが美しき暗殺者神州丸クンだ、殺しのプロフェッショナルはやはり格が違うか!

 

しかし、攻めあぐねていた迅鯨クンだったが、ちょっと考えて……恍惚な笑みを浮かべると、その両手には8本の出刃包丁を構え、そんなコトは関係のない処刑法を思いついたぁ!と手にした包丁を雨あられのように投げつけてきた!!

 

「どうですかぁ!この出刃包丁は!もはや脱出不能!」

 

勝ち誇った迅鯨クン!!が………!!

 

「言ったハズであります」

 

既に音もなく迅鯨クンのフトコロに入っていた神州丸クンの悶絶お腹パンチが迅鯨クンのお腹に突き刺さり…

 

ドゴォ!!(お腹パンチ)

 

「おごぉ!!!」

 

ドゴォ!!(お腹パンチ)

 

「おごぉ!!!」

 

ドゴォ!!(お腹パンチ)

 

「お、おごぉ!!!」ビチャビチャビチャ…

 

お腹パンチ三連発、さ、三連お腹パンチや…っ!!

防御も回避も不能なお腹パンチ三連発を受けた迅鯨クンは、さすがに白目を剥き、光る吐瀉物を吐きながらその場に崩れた

 

「提督殿、不殺でありますよ」

 

「あ、あぁ、うん」

 

「さて、迅鯨殿には改めて暗示をかけておくでありますか、それでは提督殿、失礼するであります」

 

そう言って神州丸クンは白目を剥いた迅鯨クンをズルズルと引きずりつつクールに去って行った……

 

 

後日、マミー屋でメシ食ってると迅鯨クンの妹の長鯨クンとたまたま会い、長鯨クンから最近姉がますます真人間になってくれたみたいで嬉しいです!これも更生プログラムのおかげですね!と嬉しそうに話してくれた


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