不健全鎮守府   作:犬魚

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新年度ですわ!ちょっと余裕がでてきたところでペースを上げていく所存でございますわ!

そんな新年度一発目はイベント回は無かったけど新人面接回で!

【登場人物】

提督?(テイトク?)
未だ基地に帰って来てない提督の影武者、オネエ口調で喋り、口から蛇を吐いたり袖から蛇を出したりできる

五月雨(専業秘書艦)
…やっぱやめとくべきでした


続続続続続続続続続続続続続続続続・提督?と新人と面接

「相変わらずアナタの淹れるコーヒーはマズいわ……」

 

「イラっとします」

 

春の小川の執務室、ギンギンに暑いワケでもなくキンキンに寒いワケでもない春と言う季節、そんな、たった一度の今日と言う日に、桜舞う基地の門を叩いた新たなる仲間達との大事な大事な面接の日……

 

「そーゆーとこは真似しなくてもいいです」

 

「別に真似してるワケじゃないんだけどねぇ……」

 

自分の机でペラペラと書類を捲りつつ提督?に不満の声をぶつける五月雨、そして、提督の席に座る眼鏡の男は本心だけどねぇ……と小声で漏らしため息を吐いた

 

「それで?今日の面接は何人かしら?」

 

「4人です」

 

「4人ね、ふむ…………駆逐艦が3人に護衛空母?かしら?どの子もなかなか美しい容姿ね、好みのタイプだわ……」

 

提督?は蛇のような目を開き、舌舐めずりしつつ不気味な笑みを浮かべた

 

「好みか好みでないか個人差がありますが、面接はちゃんとやってくださいよ、テイトク(川内さん)」

 

「大丈夫よ、私に任せておきなさい」ニマァ……

 

ーーー

 

さすがに大事な大事な面接に責任者不在は体裁が悪いとの判断から、ニセテイトクを執務机に据えての新人面接

 

次の方どうぞー……からのやや緊張気味が感じとれるノックから1人目の面接者が入室してきた

 

「第四十三駆逐隊、丁型駆逐艦、梅、着任しました!提督、艦隊の皆さん、どうぞよろしくお願い致します!」ペコォ……

 

1人目から珍しく礼儀正しい系……そして、駆逐艦としては一目で規格外とワカるその特徴

 

「アナタ、おっぱいデケぇわねぇ(これからヨロシク)」

 

「いきなりセクハラッ!?」

 

「あらごめんなさい、テイトクらしく振る舞うつもりで言ってみたけどオブラートに包み忘れていたわ」ニマァ……

 

「ヒイッ!?」ビクッ!!

 

まるで大蛇のような目で小粋なテイトクジョークよ……と笑う提督に対し、梅は危機を感じた、危機を感じたのだが……

それと同時にこの場から逃げる事はできない事も直感していた

自分の目の前に座る男は普通じゃあない……!まるで生きたまま蛇に呑まれる蛙の気持ちを本能て理解してしまった……

 

「それでアナタ、え~……松型だったわねぇ」

 

「え?あ、あ……ハイ、松型です」ビクビク……

 

「たしかウチにも姉妹の娘が何人かいたと思うけど……」

 

「あ、ハイ……たしか姉2人と妹が1人ここに配属されていると……」

 

「そう……姉妹がね、フフフ……姉妹は大切にしなくちゃあねぇ……」ニマァ……

 

「ヒイッ!?ま、ま、まさか!松姉ちゃん達にナニか!?ゆ、許しませんよ!!わ、私だって艦娘!たとえ上官と言えど刺し違えるくらいは……」

 

梅は必死に勇気を振り絞った!!そう、自分だって艦娘だ!人カスなんかに負けるワケがな……

 

ゾクッッッ!!!(悪寒)

 

「できればだけど……」

 

「(くっ!刺し違える……!?バカか、私は……!)」

 

今、一歩でも前に出ていたら死んでいた……!その確信がある、梅は泣いた、生まれて初めて心の底から震え上がった……真の恐怖と決定的な挫折に……恐ろしさと絶望にちょっとおしっこを漏らしパンツが濡れた、これも初めてのことだった……

 

「まぁいいわ、ガンバリなさい」

 

この子トイレに行きたいみたいだから面接は早めに終わりでいいわと1人目を無事に撃退したテイトク……

 

そして、1人目が涙とおしっこを流しつつ執務室から出てきた様子は執務室の外で待機中の残る3人を震え上がらせるにはあまりにも効果的だったと言う…

 

ーーー

 

「言いたいコトは色々ありますが、とりあえずそのオネエ口調はなんとかなりませんか?」

 

「オネエもナニも私は長女だからねぇ……」

 

「いや、そうなんですけど、今は見た目提督だから違和感がハンパないと言うか……むしろただのオネエ提督みたいなキャラになってるとか……」

 

「フゥ……注文が多い子ねぇ」

 

五月雨から提督演技指導のガサ入れを受け、迎える2人目……

 

「特2TL型特設輸送空母の山汐丸であります、よろしくお願いします」ペコォ……

 

「私がテイトクよ」

 

2人目の面接者、特設護衛空母?と言うよくわからない艦種のよくわからない娘、山汐丸……

 

「え~……山汐丸だったかしら?そもそもアナタなんなの?空母なの?違うの?」

 

「え?いや……特設輸送空母で、その……なんと言うか、既存の護衛空母とはまったく別物で戦闘は不向きで、どちらかと言えば輸送タンカー的な……」

 

「よくわからないわね」

 

「は、はぁ……スイマセン」

 

手元の資料を眺めつつ、時折蛇のような視線を向ける提督に山汐丸は戦慄した……

さっき最初に面接に行った同期の梅ちゃんが失禁して泣きながらこの執務室から出てきた理由がよくわかった

 

この人、めっちゃ怖い

 

生きたまま蛇に呑まれる蛙の気持ちを山汐丸も理解した

 

「なるほどね…………でも、他にはない“特別”なモノをアナタには感じるわねぇ……」ペロォ……

 

「ヒイッ!!?」

 

「望むならアナタは“下”で鍛えてあげるわ、私が、直々に……」

 

「いいいや!!イヤイヤイヤ!!大丈夫です!普通ので大丈夫です!!ハイ!ホント大丈夫です!」

 

「そう……残念ねぇ」

 

ーーー

 

「もうちょい圧迫感なんとかなりませんか?さっきの人、ちょっと漏らしてましたよ」

 

「圧迫感ねぇ……」

 

五月雨からもうちょっとユーザーフレンドリーな感じでお願いしますと演技指導のガサ入れを受け、続く3人目……

 

「夕雲型駆逐艦、その九番艦、玉波です!よろしくお願いします」

 

「ヨロシク、私がテイトクよ」ニマァ……

 

3人目はスーパーエリート駆逐艦姉妹でお馴染みの夕雲姉妹、その九女、高波の妹、涼波の姉と言うポジション

 

「夕雲姉妹ねぇ……そう言えば最近新しい子は見なかったから新鮮な気がするわ」

 

「そ、そうですか……」

 

1人目の梅ちゃんが失禁涙目KOさせられ、2人目の山汐丸さんも面接が終わって部屋から出てきた途端ありえないぐらいガタガタ震えて涙目でトイレに行った……

 

先の2人から話を聞くことすらできなかったが、その理由はこの部屋に入ってすぐに理解した……

まるで大蛇の腹の中に居るような絶望感、目の前の男の機嫌を損ねる=死と言う恐怖感……

 

「能力で言えばごくごく平均的と言ったところかしら……」

 

提督はあまり興味なさげに書類を眺めつつ、コーヒーを一口啜ると、マズっ!と小声で呟いた

 

「まぁ、ウチにはアナタの姉妹がいっぱい居るから安心していいわ、みんな私好みの良い子たちよ……」ニマァ……

 

「ヒイッ!!」

 

「フフフ……ジョークよ、小粋なテイトクジョーク、面白かったかしら?」

 

「ジョ……ジョークですか、ハハ……ジョークですね、えぇ……ジョーク」

 

「玉波と言ったかしら……?私は昔から夕雲型の子とあまり縁が無くてねぇ、これもナニかの縁だし、もしアナタが“力”を欲したなら私の下に来なさい、力をあげるわ」ニマァ……

 

「あ、あ……」ガクガク……

 

ーーー

 

新人面接4人目、梅ちゃんと山ちゃんの2人が返り討ちに遭い、カタキとってきますよ……と自信満々に執務室に入室した玉ちゃんこと玉波……

きっと玉ちゃんなら大丈夫!なんか大人っぽいし!と期待を込めて送り出した同期組だったが……

 

「たっ……玉ちゃんッッッ!!」

 

「なっ……なんで…………」

 

玉波も無事返り討ちの憂き目に遭い、ちょっとおしっこ行きたいんで……とトイレへと力無く歩いて行ったのはついさっき、玉ちゃんのスカートが既に染みていたコトに、みんなは見ないフリして気を遣うことしかできなかった……

 

そして遂に面接は最後の1人となった……

 

「秋月型防空駆逐艦、その八番艦、冬月だ」

 

「私がテイトクよ、ヨロシク……」

 

新人面接最後の1人、貧乏姉妹のレッテルを貼られがちながら、姉妹の稼ぎは基地でも上位と言っても過言ではないジャパンが誇る対空の要……!その高さはワールドクラスであるアトランタにはさすがに劣るものの、駆逐艦としては破格の高さッッッ!!

 

「秋月姉妹の子ね、なかなか高く跳べるらしいじゃないの……」

 

「無論だ、高さで負けるつもりはない」

 

「フフフ……そう」ニマァ……

 

これが提督……ッッッ!!目の前に座るこの男が提督!同期の梅ちゃんと山ちゃんと玉ちゃんが散っていった理由を、冬月は一目で理解した……ッ!!

 

まるで大蛇と相対した様な絶望感、こんな怪物を前にして、みんなは立派に戦い抜いた、負けなかった、たとえお小水を流したとしても誇りを守り抜いた、ならば自分だって最後に戦おう……冬月は決意を新たにした

 

「まぁ、アナタもとりあえずは下で鍛える必要がありそうだけど……才能を感じるわ」

 

「そうか……」

 

提督は書類を眺めつつまるで蛇のような舌でペロォ……と舌舐めずりした

 

「ところでそれ、長10㎝砲だったかしら……?」

 

「あ、あぁ……私達姉妹の相棒的な存在だ」

 

「いいわねそれ、私も欲しいのよ…………それ」ペロォ……

 

絶望!!恐怖!!戦慄!!ありとあらゆる感情に冬月は泣いた、今まで生きてきて、辛いコトや悲しいコトは色々あったけど、こんなにも死が身近で、こんなにも生きたいと思ったのは初めてだった……

 

「あ……あ……こ、こ、この子は!この子達だけは!この子だけは許して!許してください!!」ガタガタ……

 

「冗談よ、小粋なテイトクジョーク……」

 

「おねがいします!おねがいします!おねがいします!」ポロポロ……

 

冬月は泣いた、刺し違えるとかバカなコト考える以前の問題に……

 

「随分とセンチメンタルな子ねぇ……アナタもそう思うんじゃない?サミー……」

 

「センチメンタルとかセンチメンタルじゃないとか以前にテイトクにはガッカリですよ」

 

「あら?これは手厳しいわね……」ペロォ……

 

 

こうして、新たな仲間を迎える今年初の新人面接は終わった……

 

そして、涙ながらに執務室から出てきた冬月を3人の同期達は温かく迎え、とりあえず、トイレはあっちだから、替えのパンツ用意してあるよ、と皆、冬月に気を遣ってくれた……






次回は健全回、たぶん

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