【登場人物】
提督(メガネ)
動物にはあまり好かれないタイプ、原因はタバコ臭
山風(トゲトゲ)
最近ジュラシックパークを観た
寒いような寒くないような日が続いたり続かなかったりする2月の執務室、明石の店で買ったバナナを食べつつメランコリックな気分でモネの画集のページをめくっていると、執務室の重厚な扉が勢いよく開いた…
「…遊びにきたよ」
「山風クン、執務室は遊びに来るところじゃあないのだよ」
明石の店で譲り受けた愛猫の毛のないネコを雑に持った山風クンは毛のないネコを雑に俺の執務机に置き、自分は俺の椅子をグイグイ後ろに引き、空いた隙間から俺の膝の空いたスペースに座った…
「山風クン、ジャマなのだが…」
「…遊びにきたよ」
相変わらずアレだなこの子は、白露姉妹特有の良く言えばマイペース、悪く言えばメンドくさいと言うヤツなのだよ…
こうなればこの子はなかなか動かないタイプだ、どこかで折を見てサミー子にお菓子でも出させてイイ感じに動かすしかない
「しかしこのネコ、相変わらずキモいな」
「…キモくない、普通にかわいい」
「いや、普通にキモいのだよ」
執務机でグィーッと伸びをするお高価なネコ、正直、お高価なネコじゃなかったら窓から外に放り出すところなのだよ
「そういや山風クンのキモいCatsはいいとしてだ」
「…キモくない、ほら、かわいい」
山風クンは毛のないネコを持つと俺の顔にグイグイ押し付けてきた、グイグイ……いやっ!スッゴい生暖かい!なんか生暖かい!!
俺は努めて紳士的に生暖かい肉塊をひっぺがし、いけないなァ…テイトクの顔にネコを押し付けてはと山風クンに注意した
「サミー子、ペットの申請許可はどうなっている?」
「申請許可ですか?」
よくよく考えたら、ウチにはこの山風クンのキモいネコ以外にもシレっとペットを飼っているバカどもがいる…
だいたいアレだ、どいつもこいつも犬だの猫だの勝手に飼いやがって……誰の許可得てんだっーの
「申請書なら青いファイルに入ってますよ、あと、提督が書類に印鑑押してるからみんな提督の許可を得てますね」
「こやつめ!ワシの心を読みおったわい!こやつめ!」
グゥゥゥム、そういや何回かそんな書類に印鑑押した気がしないでもないな、金の話以外のワリとどーでもいい書類はあまり気にしてなかった
「とりあえず申請書が出てないけど見たことあるのはグラーフ・ツェッペリン犬ですね」
「グラーフ・ツェッペリン犬か…」
インターナショナル寮で飼われているダルメチアンの老犬…
いつの頃からか、基地の周りをウロついていたらしく、ある日、何を思ったのかグラーフの後をついてきてしまったらしく、寮に帰ると同じドイツ人のレーベきゅんとマックスきゅんにそれはグラーフの犬か?と尋ねられ、グラーフは少し考えた後“…そうか、私の犬に見えるのか?”と答え、それ以来、インターナショナル寮で飼っているらしい…
「っーか申請書出してねーのかよアイツ」
「日本語はよくわからないんじゃないですか?たぶん」
グゥゥゥム、ウチもわりかし国際化してきたと思ったがやはり言語の壁と言うやつは高いのか…
「まぁいい、山風クン、ヒマならそこの棚に入ってる青いファイルをとってくれんかね?」
「…わかった」
ごくごく自然な流れで提督の席から山風クンを排除成功、やはり私は天才だ、やはり私は天才だッッッ!!と己の天才的頭脳に感心していると、山風クンは件の青いファイルを持って来て机に置き、提督の座る椅子を後ろに引くと、その空いたスペースにごくごく自然な流れで侵入し再び提督の膝を占拠した…
どうやらこの子のマークを外すのは容易にとはいかないらしいわね…
「なるほど、よく見るとわりと申請書って出てたんだな」
「…コレ、ネコだって」
山風クンが書類に載っている写真を指しているそれは…
「ネコ?あぁ、ビスマルクさんの飼ってるやつか…」
これまたインターナショナル寮、戦慄のドイツ軍団の首領を務める強さと美しさを兼ね備えたビスマルクさんが飼っている猫、その……猫と呼ぶにはあまりにイカつく、黒く、そしてあまりにもデカすぎた、それはまさに黒豹だった、そしてその名もロ●ム
「たしか普段はプリンツのバカが世話してるんだったな…」
このロ●ム、高貴である飼い主のビスマルクさんには逆らわないが普段世話をしているプリンツはなめ腐っているらしく、よく頭を噛まれている姿を見かける、好い気味だ
アイツが苦しむ姿を見ると心がスーッと晴れよるわい
「そういや他にもネコと言えばジャーヴィーくんの飼い猫がいたな」
「…ふ〜ん」
以前、近所のペット・ショップで購入したシコティッシュホールドだっけか?なんかそんな名前のやつ、聞いた話ではジャーヴィーくんにはまるで懐いてないらしく、女騎士からキチンと世話をしなさいと怒られているとか天パの子から聞いたな…
しかしそのシコティッシュ、不遜にも陛下の膝に乗ることを許されている存在らしい
「…他になんかいないの?ネコ以外」
「他ァ…?あぁ、あるぞ、ハムスターの申請書が5枚」
ハムスターか、まぁハムスターぐらいなら害はないな…
え〜……対馬、朧、妙高、高雄………って、対馬と朧はわからんでもないが、妙高と高雄ってなんだよ!妙高と高雄って!アイツらがハムスター飼ってます!ってツラかぁ?アレ、ヤンキーは小動物には優しい的な…
「しかもアイツらナマイキにもちょっと高価そうな種類のやつ飼ってやがる」
あとは………アイオワか、アイツもハムスターなんか飼ってんのかよ、名前は〜……ジョージ、ハムスターにジョージなんて名前つけんなよ
「次は犬だな、フレッチャーくんが届けを出してる」
「…イヌ」
フレッチャーくんの飼っている犬は犬か犬ではないのかよくわからない哀しき存在なんだが、まぁ、聖女であるフレッチャーくんが犬扱いしてるから犬なんだろう…
「あと長門が届けを出してるな、時津風の」
「…それは犬なの?」
「犬みたいなモンだろ」
ペット・ブームが生んだ被害者であり自分達を裏切った人間達を憎悪することで生きてきた哀しき存在…
かつては誰にも心を開かなかった時津風だが、長門と言う絶対強者の前ではお腹を見せる
「…何かスゴいのいないの?ティラノサウルスとか」
「いるワケないだろ、ナニ言ってるのかねこの子は」
「…あ、ハリネズミ」
「ハリネズミ…?あぁ、たしか自称パリっ娘が飼ってるとか言ってたな」
山風クンの指した写真にはトゲボールを両手で持ち、笑顔だが痛みに口角を上げたリシュリューの写真…
たしかハリネズミは人に懐き難いとか聞いたが、リシュリューのやつはなんやかんや世話をしているらしく、最近の悩みは回し車でウ●コとションベンすることらしい
「しかしこのトゲトゲっぷりは山風クンに似ているな」
「…似てない」
山風クンは頭部を俺の顎にブチ当てて抗議の意を示したが、山風クンの頭突きは打突による痛みだけではなく、そのトゲトゲしい髪が刺さる
「…他になんかないの?T-レックスとか?」
「だからそんなやついないのだよ、ナニ?山風クン、恐竜とか好きなの?」
「…別に」
「恐竜とか好きなら天霧クンに見せてもらったらいいぞ」
「…恐竜飼ってるの!?」
「いや、飼ってない」
「…なんだ」シュン…
露骨にテンション上がったと思ったらこの下りっぷり…
「飼ってはない、飼ってはないが………天霧クンなら恐竜を見せられるのだよ」
「…どうやって?」
「イメージするのだよ」
この後、ワケわからんとか言ってスネる山風クンを連れ、天霧クンのいる寮の部屋へと行き、天霧クンに、その……この子が恐竜とか見たいって言うんですケド、と懇切丁寧に頼むと天霧クンは快く引き受けてくれた…
「じゃ……こんなカンジかな」
この重量感ッッッ!!この力強さッッッ!!この闘争心を秘めた眼光ッッッ!!人類には絶対に止めらないと確信できる圧倒的な突進力ッ!!
ト…………ッッ トリケラトプス………拳ンン!!
「〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!」
「やはり君は天才だ!やはり君は天才だッッッ!!」
後日、山風クンはやっぱりなんか違うとか言ってたが実物なんか見たコトないのでそもそも違いなど誰もわからないと懇切丁寧に説明した