普通とはなんぞや…?
【登場人物】
S.H.B(スーパー・ハンサム・ボーイズ)
提督、天龍、木曾からなる未だ中二病から抜け出せずにいる恥ずかしい大人、例年のバレンタインの獲得数は提督1、天龍1、木曾4
第四駆逐隊(剣埼ガールズ)
陽炎姉妹の舞風、野分、萩風、嵐で構成されたチーム
深海棲艦が相手の場合、踊るより躍らせるのがチームのモットー
ギャルゲにおける天王山と呼ばれるイベント、夏休み、文化祭、クリスマス、そしてバレンタイン…
好意を持つ女子が男子にチョコレートと共に想いを託すこのイベントを抜くのはあってはならないコトだ
「と、言うワケでだ、今年もバレンタインが近づいてきたワケだが、我々S.H.Bは例年このイベントを苦手としている、しかしだ、我々は今季こそ獲得数を大幅に伸ばすべく活発なディスカッションをしたいと思う」
「ヘッ!オイオイテイトクよ!今更オレ達にどーしろってんだ?」
世界で一番自分がカッコいいと心の底から信じているおっぱいのついたイケメン、天龍
「獲得数か、ま、この中では毎年俺が一番だな…」
ダメージ仕様の黒マントを愛用するカッコいいポーズでしかカッコ良く話せない残念なイケメン、木曾
「んだとォ…木曾ォ……テメーは毎年お姉ちゃん達だろーが、そんなの数に入るかボケ!そんな身内チョコはまとめて1だぜ!そんで同じ身内チョコならオレの方が“上”だ、なんたって!毎年1人じゃ食い切れねーぐれーデカいヤツだからな!」
「ハァ…?天龍テメェ…姉ちゃん達をバカにしてるのか?言っとくがオレが毎年貰ってるのはその辺のスーパーだのコンビニで売ってるよーな安物じゃないぜ、大井姉ちゃんがネットとかで調べて厳選したヤツらしいしな!」
「んだとォ!木曾、オモテ出ろよ!タイマン張ろーぜ」
「オレとやる気か…?死ぬぜ、オマエ」
「やめんか愚か者ども!」
俺は机をダァン!してイキリ勃つ血気盛んなバカどもを諌めた
「天龍、木曾、今日はより良い話し合いをするべく集まったハズだが?」ギロッ!
「へ、へへへへ…ジョーダン、冗談だぜ、なぁ木曾!」
「あ、あぁ…オレらまだヤンチャな年頃なんだよ、悪かった、悪かったよ」
「ワカればいいのだ」
まったく、どうやらコイツらにわからせは必要ないらしい…
「しかしよォ〜…獲得数を伸ばすってもどうやって伸ばすんだよ?」
「あぁ、ハッキリ言って難しいな」
ここ近年、我々S.H.Bは例年、身内(秘書艦・妹・お姉ちゃん達)からしかチョコレートを貰ってない憂き目にあっているのもまた事実…
「そこでこの提督は考えた、何故俺たちが身内からしかチョコを貰えないのか…?天龍」
「…………オレがカッコ良すぎるから?」
天龍はアホだった、知ってたけど…
「木曾、君の意見を聞こう」
「なんっーか………カッコ良すぎるから?」
木曾もアホだった、知ってたけど…
「ヴァカめ、だからオマエらはダメなのだよ」
「んだとコラァ!誰が敗北者だとォ!」
「よせ天龍!のるな!」
何故俺たちは身内からしかチョコを貰えないのか?それは俺たちがハンサムであるのも理由の1つだが、それだけでは100%の解答とは言えない、そしてその答えを知っている者こそ俺たちの現状を打破できるのだ
「我が基地におけるバレンタインチョコレート獲得ランキング不動の1位、そやつこそ答えを知っている」
「な、なるほど…」
「さすがテイトクだ」
「よし!では皆で会いに行くとするか!のわっちクンに!」
◆◆◆◆
俺たちS.H.Bはのわっちクンに会うべく駆逐艦どもの巣窟である駆逐艦寮へ向かったがあいにくのわっちクンは不在だった、しかし、のわっちクンの姉妹である陽炎型の長女と次女からのわっちクンは同じく姉妹でありチームメイトである第四駆の姉妹達と体育館あたりでゲロ吐くまでダンスしてんじゃね?と有力な情報をもらい、体育館へと来ていた…
「ショウ・イズ・ザ・グレーテスト!」
『『YEA!』』
「ショウ・イズ・ザ・ビューティフル!」
『『YEA!』』
「ショウ・イズ・ザ・キング!」
『『YEA!』』
『『『S H O W!Let's GO!SHOW!』』
第四駆逐隊、またの名を剣埼ガールズの異名を持つ実力派ダンス集団である
スーパースター・剣埼こと軽空母祥鳳の熱狂的なファンらしく、祥鳳がファイトする際はどこからともなく聞きつけ場を盛り上げ、ダンスの際におパンツをみせつけ観客席のお客様も盛り上げてくれる
「おーい、オマエらちょっといいかー?」
「はい?あ、テイトクだ」
「ホントだ、珍し、と言うか……天龍さんと木曾さんも?」
剣埼ガールズのリーダー的存在である舞風は、よし!ちょっと休憩にするかと姉妹達に声をかけると、今まで何時間ブッ通しで踊っていたのかわからない嵐と萩風は口を押さえて体育館の外へフラフラと走って行った…
「なんか用?もしかしてショー様の試合?相手は?アメリカ人?巨乳?」
舞風はヤるの!まさかJesusとヤるの!と興奮気味にグイグイきた
「ヤらない、と言うか俺たちはのわっちくんに用があるのだよ」
「のわっちに?」
外に吐きに行った2人よりまだ慣れているらしいのわっちくんはスポドリを飲みつつタオルで汗を拭いていた…
「のわっち、なんかこの人、のわっちに話あるって」
「…私に?なんですか?」
第四駆の構成員にして基地バレンタインチョコ獲得ランキング毎年1位を誇るイケメンの子、のわっちクン
「のわっちクンはなんでそんなにモテるんだい?」
「……………ハァ?」
「バカ、テイトク!イケメンだからモテるにキマってるじゃねーか!」
「そうだぜ、だからアレだ……野分、なんでオマエそんなイケメンなんだ?」
「……………あの、ちょっと質問の意味がよくわからないんですけど」
俺たちの質問が高度過ぎたのか、のわっちクンはナニ言ってんだコイツらみたいな顔をしていたところ、リーダー・舞風がのわっちクンの肩を叩いた
「それはアレですよ、ウチののわっちは“レズの王子様”の異名を持つイケメンですからね!」
「いや、私レズじゃないし……普通にイケメンとか好きなんだけど…」
「え?なんだって?ノンケで悪いかって?いいのよ!!のわっちはそれでいいの!ただ普通にイケメンムーヴしてるだけでのわっちはいいの!」
「あ、そう……いや、私、別にイケメンムーヴとかしてないけど…」
「ちなみに私はのわっちのコト好きだけどレズじゃないけどね!!姉妹として!チームメイトとして好き!citrusな意味じゃないからね!」
「あ、うん……そうなんだ、とりあえず今日から私がお風呂入ってる時に入ってこないでね」
「え〜……たまにはいいじゃ〜ん」
「…私の中で舞風への警戒心が上がったよ」
のわっちクンは肩にベタベタ置かれた舞風の手をハタキ落とした
「それで……え〜、テイトク?と天龍さんと木曾さんは何の用なんですか?モテとかなんとか…」
「そうだな…」
俺はS.H.Bのこれまでの現状、そしてこの現状を打破するにはやはりバレンタインチョコ獲得ランキングNo.1ののわっちクンの意見を聞いてみるべきとの考えに至ったことを懇切丁寧に説明した
「…ハァ?」
「それで?のわっちクンは普段から何か特別なコトをしているのかな?」
「なんかあんだろォ?イイ匂いがするシャンプー使ってるとかよォー?」
「オ●ニーは週に7回とかあんだろ?」
「………いや、普通にないですけど」
ないのか…!?本当に…?いや、のわっちクンが嘘をついている可能性もある!
「のわっちの使ってるシャンプーは萩風が買ってきた天然由来の健康にイイなんかやたらと高いやつでオ●ニーは月イチぐらいだよ、机の奥に通販で買ったロー…」
「舞風ェ!!!」
のわっちクンの鋭いお腹パンチが舞風のボディに突き刺さり、舞風はオゴォ!と白目を剥いて床に転がり4〜5回ほど痙攣して動かなくなった
「……………すいません、舞風がお腹痛いらしいんで医務室に連れて行きます、失礼します」
「あ、あぁ、お大事に」
のわっちは舞風を俵のように持ち上げ、懇切丁寧にペコォと頭を下げて去って行った…
結局、何故俺たちはモテないのか、そして何故のわっちクンはモテるのか………その謎は、今年も解けない気がする、そう感じた俺たちは、とりあえずマミー屋行ってエクレアでも食うかー!と歩き出した