【登場人物】
陸海 空(むつみ そら)
海軍少尉、海軍兵学校を上から3位の成績で卒業し、今までも3位と銅賞が多い善戦マン
身長もあまり高くなく年齢のわりに童顔らしく、兵学校の姫とディスらたコトもあり、本人はかなり気にしている
故郷には家が隣同士で友達以上恋人未満のツンデレ幼馴染みがいる
「ついに提督としての初めての仕事かぁ〜……よーし!ガンバルぞ!おー!」
ボクの名前は陸海、この春海軍兵学校を卒業し、いよいよ艦隊を率いる海軍の提督としてデビューすることになった…
でも、ボクが配属されるのは所謂“ブラック鎮守府”!!噂では15歳以上の男子の生存率1%以下とまで言われる海軍屈指の危険地帯に配属されるコトになったボクはこれからちゃんとやっていけるのだろうか…
いや、難しく考えても仕方ない!卑劣な提督に苦しめられたブラック鎮守府立て直しの件とかよくある話じゃないか!大丈夫、ボクならやれる!
こうしてボクは、“不健全鎮守府”と呼ばれた悪の巣窟の門を叩いたのだ…
□□□
「この基地に配属になりました陸海です、階級は少尉です、よろしくお願いします!」
「五月雨と言います、よろしくお願いします」
まず最初に会ったのは秘書艦(仮)と書かれたネームプレートを付けた艦娘、えっと………たしか五月雨、うん、そうだ、五月雨だ
基本的には新人提督が艦隊司令として配属される際には初期艦と呼ばれる暫定秘書艦を選ぶことになるらしいが今回、ボクは特例での配属と言うコトで専属の初期艦は無し、現地にいる経験値の高い秘書艦を付けてくれると言うコトだったが…
「陸海少尉とお呼びすれば?それとも提督(仮)と?あ、(仮)提督の方が…」
「陸海でお願いします」
(仮)ってなんだよ!(仮)って!いや、たしかに(仮)だけど…ってか前とか後ろとか関係あるのかよ!(株)じゃあるまいし…
「冗談です、小粋なサミダレジョーク」
「ハハハ……あぁ、そう…」
五月雨はボクの反応をみてクスクスと笑い、改めてよろしくお願いしますと軽く頭を下げた
もしかして今のは彼女なりにボクの緊張をほぐそうとしてくれたのだろうか?
「それで?陸海少尉、とりあえず今日は基地の中を見て回ってみますか?」
「そうだね」
そう………ここは噂に名高いブラック鎮守府だ、まずは現場の状況と言うものを確認し、問題点は適切に改善をしなくちゃいけない
兵学校時代の友人、
正門からここまで歩いてきた感じ、特に大した違和感を覚えなかったが、ここにはきっと何かがある!
「よし、じゃあまずは基地の中を見て回るから案内をしてくれないか」
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①スイーツショップ マミー屋
「食堂です」
まず最初にやって来たのは基地内での食料事情を一手に担う台所、間宮!
この“間宮食堂”と“明石酒保”はどこの基地にもあるものだと兵学校で聞いていたけど……今の時間は食事時間からズレているのか、人もまばらだ…
「間宮さんいますかー?」
「いらっしゃいませー……って、秘書の人じゃないですか、間宮さんなら居ませんよ」
五月雨が食堂のカウンターに声をかけて出て来たのは割烹着的なものを着た可愛い感じの女中さん…
「昨日から有給とってます、なんかNEOが動き出したとか言ってグ●メ界に行くとかなんとか言ってましたけど…」
「あー…NEOですか、NEOなら仕方ないですね」
NEOってなんだよッッ!!ってかグ●メ界ってなんだよッッ!!
「そちらの方は?」
「新しい提督(仮)の陸海少尉です」
「え?あのメガネまた死んだんですか?」
「いえ、左遷されました」
また…?え?前の提督って死んだことあるのか…?
「陸海少尉、こちらマミー屋で働く…………間宮さんの子分です」
「伊良湖!伊良湖です」
「ハハハ………そう、伊良湖ね、ボクは陸海です、よろしくお願いします」
「あ、ハイ、よろしくお願いします」
ちなみに店主の間宮は本日は不在らしく、後日改めてとなったが五月雨曰く、お尻が安産型ですよといらない情報をくれた
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②みんなの店 アカシメイト
「明石酒保(廃業)です」
次にやって来たのはシャッターの下りた薄暗い場所…
シャッターの前には段ボールだの鉄パイプだのが雑に置かれており、どう考えても営業しているようには見えない…
「いや、明石酒保(廃業)って………え?この基地に明石はいないの?」
「はい、つい先日までいましたけど、前の提督が左遷される時に基地運営状況にもメスが入りまして、扱ってはいけない商材を扱ったり納入業者との黒い癒着があったり結構な額をピンハネして私腹を肥やしていたのがバレて提督共々左遷されました」
「えぇぇ…」
五月雨曰く、最後まで私は悪くない!そうだ!金だ!私を救えば金を出す!クソっ!ヤメロー!と必死に抵抗したらしいものの憲兵に捕まり、本来なら逮捕されてブタバコごはん生活にされるところだったが、どうせ生きちょっても仕方ないゴミクズと断じられ、前の提督1人で逝くのは寂しいじゃろうとついでに左遷されたと…
「まぁ、前の提督と明石さんは基地クズ大人のツートップでしたから」
「なんかこう……色々ひどいな」
「とりあえず今は明石酒保(廃業中)ですけど、今、新しいテナント募集してるらしいのでまぁ気長に待っててください、コンビニとか入るかもですし」
「いいのか、そんなので…」
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③倶楽部 HO-SHOW
「ママの店です」
「…ママ?」
次にやって来たのは軽空母の鳳翔が経営しているらしい居酒屋………
「って!!居酒屋じゃないだろォ!!」
「まぁ、正確には特定遊興飲食店(1号許可)ですね」
薄暗い店内に薄暗い照明と天井にミラーボール…
バーカウンターのようなカウンター席と間仕切りで分けられた複数のテーブル席…
これは所謂アレだろうか?スナックとか、キャバレーとかそんな感じの店……知識としては知っているけどボク自身は行ったことがない、兵学校の友人、
「フーッ~………うるさいねぇ、まだ営業時間じゃないよ」
なんか奥からやたらと長い煙管を手にした和風の人が出てきた…
「ママ!」
「なんだい、サミーじゃないかい……珍しいね」
ママ…?この人が、え?じゃあこの人が軽空母の鳳翔……さん?
「フーッ~………で?アンタがアレかい?BOYの代わりに来たって子かい」
ケムリを吐きつつまだ子供じゃないかと言った鳳翔さんは煙管をトントンと叩いた
「陸海です、軽空母の鳳翔…さん?でいいんですよね?あと、ボクは子供じゃない」
「フーッ~…そりゃ悪かったね、お詫びになんか飲み物でも出してやろうさね、ミルクでいいかい?」
「結構です!」
バ、バカにして…ッ!!たしかにボクは平均からみればやや身長は低いかもしれないし童顔系とからかわれていたけどボクだって男だ!ここはひとつガツンと…
「フーッ〜………」
「ゲホッ!!ゲホッ……!痛い!ケムリ!ケムリで目がァァァァ!」
「ん?あぁ、悪いさね」
ーーー
④基地グラウンド
「グラウンドです」
「見ればわかるよ!」
外にやって来たボクと五月雨、ここは基地施設内に作られた大きなグラウンドと言うやつで主に走り込みやその他の運動が行える………いや、まぁ見たまんまだよ
今は数人の艦娘達が野球?をしているらしく、なにやら歓声が上がっていた…
『ヘイヘーイ!SARAダイジョーブかー?』
『ボールとバットが5フィートは離れてたぜー!』
『HAHAHA〜!』
…なんか汚い野次が上がってる気がするけど、まぁ、スポーツなんだし多少はあるかな
「あれはこの辺の艦娘の間で流行ってるワンナウツってゲームです」
「ワンナウツ?」
「バッターとピッチャーのサシの勝負でピッチャーがバッターからアウト1つ取れるかってゲームで三振をとるか、打たれてもインフィールドに打球がバウンドしたらピッチャーの勝ち、それ以外はピッチャーの負けです」
「へぇ〜」
なるほど、要は外野に打ち上げれば勝ちってコトか…
『HAHAHAー!イエー!やったぜ!』
『大金突っ込んだ甲斐あったぜ!』
ってよく見たら!ゲームが成立する毎に観客の間でなんか現金をやり取りしてるーッ!!博打じゃないか!!コレ!
「陸海少尉もやってみますか?」
「やるワケないだろォー!!ダメだダメだ!こんなコトはやっちゃあいけない!」
「まぁまぁ、何事も息抜きは必要ですよ」
「息抜きの範疇を超えてるだろォ!!」
クッ!!そうだ、ここは悪名高きブラック鎮守府なんだ!とにかくこんなコトは認められない!
ボクはヘイヘーイとか言って盛り上がる艦娘達のところへ行き、こんな賭博行為は認められないと声を大にした
「なんだこのガキ」
「あ、コイツもしかしてメガネの代理ってヤツじゃね?」
「え?マジ?NEW・テートクってやつ?」
…な、なんか見た目に反してガラ悪いなコイツら…
「そうだ、こんな違法行為は金輪際ヤメて貰う、海軍のブランドに傷がつくからな!」
「ハァ?どうせウチはFラン基地なんだからいいじゃねーか!」
「こんなワルどもの溜まり場に権威なんてありませぇえええん!!」
なんだとォ……って!そんなコト言ってる場合じゃないと憤りを感じていると、秘書艦(仮)の五月雨がまぁまぁとボクの肩を叩いた
「陸海少尉、どうせならひとつゲームでもして皆さんと親睦を深めてはどうですか?」
「親睦…?」
…なるほど、まぁ、たしかにそれもありかもしれない
彼女らにとってボクは今日やって来たばかりの名も顔も知らない新人、そんなボクが偉そうに上からアレコレ指示するのは面白くないか…
「いいだろう、ボクもやらせて貰う!」
そう言って落ちていたバットを拾ったボクは高々とホームラン予告をカマしてやった
「ヒュー!あのコゾー!カッコいいコトしてくれるぜーッ!」
「コイツはマジでヤるかもな!」
こう見えてもボクは小中と野球をやっていた経験があるし、中学時代は県ベスト8にもなった、ちなみに、ベスト4を目指して戦った準々決勝の相手は強豪の聖ユリアンナ学院付属中、当時中学世代最強スラッガーと呼ばれた
「こい!」
「SARA、どーするよ?」
「いや、ここはIowaでしょ?」
…え?外人?外人が投げるの…?ってかスゴい格好してるなあの人、金髪で巨乳ってだけでも目のやり場に困るのに…
「陸海少尉、アイオワさん、ウチに来る前はMAJORで投げてたので球メッチャ速いですよー、今でも100マイル投げますからー」
ウソだろォ!?五月雨!その情報!今言われても困るんだけど!?
「ヘイヘーイ、Young boy!ハンデをあげるワ、meのタマをyouのそのぶっといバットに当てたらyouの勝ちでいいワー!」
「は?」
「マ、カスリもしないでショーケド」
周りの艦娘達からHAHAHA!と小粋なアメリカンジョークに大爆笑………
ナメやがって…ッ!!
「ふざけるな!!本気でこい!その球、スタンドにブチ込んでやる!」
「ワォ!ブチ込んでヤルなんてカワイイ顔してなかなか過激ネ!いいワ〜……」
こうしてボクとアイオワの真剣勝負が始ま……
『ストライク!バッターアウトッッッ!!』
…………終わった
「ヘイヘーイIowa!Rookieイジメすぎだぜー!」
「オイオーイ!カッコいいの口だけかよボクぅ〜?」
「あー…終わった終わった、マミーヤいこーぜ、マミーヤ、チョコレートパフェ奢れよ」
「え?やだよ、自分で払えダボ」
HAHAHA〜………と陽気な笑い声とともに去って行く艦娘達…
バットを持ったまま打ちひしがれたボクの肩を軽く叩き秘書艦(仮)はこう言った…
「まぁ、こーゆーコトもありますよ」
笑顔で
【登場しない人物】
肝川汚太助(キモカワ オタスケ)
海軍少尉、海軍兵学校を上から4位の成績で卒業したなかなか優秀な人物、陸海少尉とは子供の頃から知り合いらしく、中学で私学に進学して別れたものの海軍兵学校で再会、中学まではスポーツ万能の爽やかイケメンだったが再会した彼は妹属性を至高とするとアイドルアニメオタに転落していた
初期艦には電を指名したが本人から拒否され、じゃ、コレでいいですと吹雪さんを選んだ哀しき過去を持つ