始まりがあるのなら、終わりもある
【登場人物】
五月雨(Fラン秘書艦)
髪がやたらと長い寒色系秘書艦、好きな飲み物はゲー●レード
叢雲(エリート秘書艦)
ヨコスカ所属のイケメン提督付きの秘書艦、サミーとは2回対戦して2回負けたことがあるらしく、その辺を良い意味で根に持っている
その日は、突然やってきた…
「ハアアアァァァァ!?クビ、いや…え?クビ、いや!ちょ、待てよ!」
中央からの呼び出しを受け、イヤイヤながらも中央司令部の門を叩いた提督を待っていたのは軍事法廷と言う名の処刑イベント…
「黙れゴミ屑、そいつを連れて行け」
「待てェ!!ちょ、待てよ!いや、待って!待ってくださいィィィィィ!!」
突如として宣告された提督の………“解任”
「コイツ!暴れるんじゃあない!」
「抵抗するな!オラッ!こっちに来るンだよォ!オォン!」
「やめろォ!!はなせ!離さんか下郎どもがァ!!俺にこんなコトをしていいワケがないだろォ!」
両脇を屈強な憲兵達にガッチリホールドされてなお提督は必死の抵抗を続け、呪いの言葉を叫びながら議場から引きずられる…
「クッ!!キサマらァ!俺にこんなコトを……-後悔するぞコラァ!いや!必ず後悔させてやるッッッ!!ククク…ハッハッハ……ハァーッハッハッハッハ!」
…………こうして、長きに渡り不健全鎮守府と呼ばれたFラン基地を率いていた提督はその任を解任され、遥か遠く、ポリネシア諸島基地(仮)へと左遷された
◇◇◇
「まぁ、予想内と言えば予想内でした」
「まぁ、サミちゃんでもそう思うか…」
中央に行くんだから秘書艦が同行してないとアイツ1人で来てるよ恥ずかしいヤツとディスられるかもしれないとみみっちい心を持つ提督と共に中央へと来ていた私は中央に来てから一連の流れるような解任・左遷ムーヴに対し意見する隙もなく、提督が屈強な男達に連行され、これからどうしたものかと途方に暮れていると大将殿からメシでもどうだと誘われお高い焼肉屋で焼肉を奢ってもらってるワケですが…
「どうにかならなかったんですか?」
「まぁ、ワシにもデキるコトとデキんコトがあるわな」
正直、大将殿に愚痴を言っても仕方ないですけど……
この件に関しては大将殿としても面白くはないらしく、どうやらしてやられた!と言うモノらしい
「決定打になったのは前回の作戦海域だな」
「前回…?あぁ、なんかやたら短かったやつ」
「フーッ〜……前回は特に多くの将兵が甲勲章を獲得したじゃろ?」
「そうらしいですね」
ウチの提督に関してはとりあえず甲勲章目指して頑張るぞー、おー!とか言ってたものの、いきなり誤出撃をカマしやる気を消失、もぉ…終わってもいいと安心の丙提督で作戦を無事に完了した…
もぉ…終わってもいいとか言いつつさすがに丁にまではいかないのが残された最後のPRIDEと言うヤツなんですかね
「そいつがマズかったのもあるが、あとほら、アレだ、なんか配属予定だった新人が1人トんでおろう?」
「あー…なんかそんなコト言ってましたね」
接待プレイとも言える低難易度作戦での丙勲章、さらには配属予定だった子も未獲得…
ウチがFラン基地でありながらなんとかやっていけてたのはこれまでFラン勲章でも一応作戦海域を完了していたコトと無駄に高い新人獲得率があったからと言うのもあるのだろう…
元々中央からの評判が悪く、毎日がワルのオリンピック状態と言われた基地の提督が左遷させられるのも納得と言うものです
「まー…そーゆーワケでな」
「それで?私達………と言うか、基地はどうなるんですか?」
「とりあえずだ、基地には新人の少尉が配属されるコトになっておる」
「新人の…?」
「兵学校を3位で出たなかなか優秀な若者だぞ、ほれ、写真もある」
「…かわいい子ですね」
写真を見るに、年齢のわりにやや幼い顔つきっぽいのでカッコいいよりはかわいいと言った感じですが、もう2〜3年もすればなかなかのイケメンになるとみた
「と言うかいいんですか?ウチ、結構大所帯ですし、新人の新人さんだとなかなかアレなのでは?」
「まぁ、名目としては研修に近い感じの配属になる、お試し提督ってヤツだ、カッカッカ!」
「お試しって…」
お試しで任せていい規模ではない気がしますけど…
私が新人だった頃は提督と由良さんと3人で研修とか無しにしょーもない町工場みたいなボロい基地に行かされましたが………今は時代が違うんですかね
「なるほど……とりあえず話はわかりました、お試し提督のお試し秘書艦って感じですか」
「なんならサミちゃんはワシんトコに残っても構わんぞ」
「私、エアコン苦手なんですよ」
◇◇◇
大将殿との食事も終わり、今後についてどうしたものかと考えつつ自販機コーナーでジュースでも買うかと歩いていると…
「五月雨!アンタ、五月雨でしょ!」
「はい?」
声がした方向に顔を向けると見知った顔………白髪なのか銀髪なのかよくわからない髪と、よくわからない浮力で浮いてる頭の上の変な耳…
「あぁ、叢雲ちゃんじゃないですか、お久しぶりです」
「久しぶり……って、アンタそーゆー感じだったっけ?」
「う〜ん、どうですかね?」
声をかけてきたのは私の同期の叢雲ちゃん、同期の中では1番優秀でイケメンな提督の秘書艦として配属され心底羨ましいと思ったのも今は昔と言うやつですか…
「そう言えば叢雲ちゃんはなんで中央に?」
「なんでって……私、ヨコスカ所属だし」
「あ〜…なるほど」
中央司令部に隣接する四大鎮守府の一角、ヨコスカ
サセボ、クレ、マイヅルと並ぶ海軍最大戦力であり、四大鎮守府に所属する提督とは地方の提督と違いエリートの証でもある
「って!聞いたわよ、アンタ、え〜……その、アンタの提督、なんか逮捕されたとか…」
「いや、逮捕はされてないですけど…」
「え?そうなの?」
「左遷されましたけど」
「な〜んだ、左遷かぁ〜………って!?左遷されたの!?ウソでしょ!?」
「いや、ホントです」
どうやらウチの提督は悪い意味で評判あり話題性があるらしく、今回の件、もう既に尾ひれどころか背びれも胸びれも付いた状態で情報が出回ってるらしい…
「そ、そっかぁ〜……へぇ〜、あ、いや、私の提督がその話聞いて珍しく難しい顔して考えこんでたから、ほら、私の提督とアンタのって同期でしょ?」
「そうですね」
叢雲ちゃんの提督はヨコスカ所属のエリートでウチのメガネはFラン提督でしたけど…
「それで……アンタどうすんの?」
「どうするって………普通に基地に戻りますけど?」
「あ、そうなの……いや、アンタも左遷のとばっちりで変な島に島流しにされるのかもって…」
「心配してくれたんですか?叢雲ちゃんは昔からホントに口は悪いけど根は良い子ですね、ツンデレってやつですか?今どき流行りませんよ」
「やかましい!」
「心配してくれて嬉しいのは本当です、でもまぁ、なるようになりますよ」
「なるようにって…」
「ウチの提督は執念深いんですよ」
その執念深い提督が、今、何を考えているかはわかりませんけど………
◆◆◆◆◆
青い空、白い雲、そして赤道に近いのかやたらと熱い太陽…
「…………オイ、なんだここ?」
「ポリネシア諸島基地(仮)ってここですかね」
栄光の海軍中佐から少佐に降格させられ、あげくに左遷の憂き目にあった俺、そして、基地での違法な営業行為を問題視され、必死の抵抗を試みたがふざけんなピンクが!海軍ナメとるんかキサマァ!と怒られ、俺と共にこのポリネシア諸島に左遷された明石は俺達が作る新しい城へと来ていた…
「ワラじゃん!!コレ、ワラの家じゃん!!」
「いや、コレたぶんワラじゃないでヤシの葉っぱとかじゃないですか?たぶん」
「似たようなモンだろーが!!」
拝啓
親愛なる我が右腕にして共に銀河を手に入れようと誓った秘書艦サミダリューン
僕は今、地獄に来ています
次回
再生!健全鎮守府!