不健全鎮守府   作:犬魚

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ゆらっとゆらめく由良さん

【登場人物】

提督(頭痛が痛い)
秋イベント開催中、ゴングを鳴らせ!戦闘開始だッ!

由良(由良さん)
提督の苦しむ顔が何より好きな生粋のドS軽巡
牛乳はお腹壊すから苦手


提督と由良と憧れてしまえば超えられない

そろそろマジ冬コーデにコーデチェンジしないとと考えつつある今日この頃、普段から私服がダサい、イ●ンモールでたむろしてる中学生の方が二兆倍マシと秘書艦サミー子からディスられているが、今年は思い切ってオシャレな冬コーデ買っちゃおうかな、イ●ンモールで!

 

そんな事を考えつつスキップしながら喫煙所へと歩いていると、談話室付近の廊下にて運悪く由良さんとバッタリエンカウント

 

「ゲェーッ!」

 

「失礼ね、殴っていい?ね?」

 

「いいワケねぇだろ、ところで由良さんはこんなトコでナニやっとんのかね?」

 

「見ての通りだけど?」

 

「バカめ、見てわからんから聞いているのだよ」

 

しかし談話室の前で突っ立っている理由など今から談話室に入るのか談話室から出てきたのかの二択だろう

 

「今ムシャクシャしてるから次に談話室から出てくるヤツを殴ってやろうと思ったのよ」

 

「通り魔か!」

 

ムシャクシャしてるから殴るとかジャ●アン的発想だなオイ、どんだけ野蛮なんだコイツは…

 

「冗談よ、小粋なユラジョーク、ね?」

 

「由良さんが言うとジョークに聞こえんな」

 

「テイトク、由良、今ムシャクシャしてるから殴っていい?」

 

「良いワケねーだろ、膝の皿叩き割るぞ」

 

一触即発…ッッッ!!!

俺と由良さんの間に流れるのはスイーツな空気などではない、常に相手を如何にして倒すか、負かすか、潰すか、二度と立ち上がらないよう徹底的に痛めつける効率的かつ的確な方法を探り合う空気のみ

 

今現在、俺と由良さん、お互いに必殺の射程にはもう一歩と言ったところか…

俺の持ち技でもっとも発生が早いのはスネークバ●トだが万が一外した際の硬直が長い、これは残虐さにまるで躊躇いのない由良さんを相手に致命的…!凶悪なカウンターを返してくるのは必至!!

 

「ま、冗談だけど、テイトク今ヒマでしょ?ちょっと由良と談話室でお茶でもしながら楽しくおしゃべりしない?ね?」

 

「しない、何故なら俺は由良さんの事が嫌いだからだ」

 

「そーゆーのいいから、由良に付き合いなさい」

 

「付き合わない、何故なら俺と由良さんの価値観は違いすぎる」

 

「あ、そ…」

 

由良さんは小粋なジョークが不発に終わったアメリカ人のようにオーバーなため息を吐いたと思った瞬間、殺意の高い目突きを放ってきたが、これを読んでいた俺は即座に回避行動をとり、カウンターの掌底を打つべく足を踏み込んだものの、由良さんもそれを読んでいたらしく持ち前のゆらゆらしたステップで距離を下げた

 

「なんで避けるの?ね?」

 

「バカめ、避けねば死んでいるからだ」

 

「ふ〜ん」

 

相変わらず殺意の塊みたいなヤツだな、しかし同じく殺意の塊の金剛よりもまだ付き合いが長い分読みが利くのが幸いと言ったところか…

 

しかし一触即発の空気は未だ絶賛継続中、継続か撤退か、どうしたものかと考えあぐねていると……

 

「あ、由良さんだ!」

 

俺達の後方から元気な声が聞こえ、声の主っぽいのが駆け寄ってきた

 

「由良さん!コンニチハ!」ペコォ

 

「あ?あぁ、うん、こんにちは…」

 

バカな…!?あの由良さんがアイサツを!?と言うか、誰だ…?この子供、見たところ駆逐……いや、海防艦か?

 

「テイトクもコンニチハ!」ペコォ

 

「やぁ、え〜………キミはたしか、え〜…」

 

「第三十号海防艦です!」

 

「そう!三十号クン!」

 

海軍の闇が作り出したのであろう哀しき存在、被験体No.30………4号クンと同じ丁型とかなんとかの海防艦らしいが、その詳細については軍の資料でもやたらと塗り潰しがありよくわかっていない

 

「テイトクと由良さんは楽しくおしゃべりしていたんですか?」

 

「え?違うけ…」

 

「そうなの!楽しくおしゃべりしてたの!ね?」

 

由良さんは凄まじい速度で俺の肩に手を回し、アツい友情アピールを演出する!!ってか痛い!肩!肩が痛い!クッ!なんだこのパワーは…!

 

「由良さん、なんのつもりだ?」ヒソヒソ…

 

「いいから黙ってニコニコしてなさい、クズ」ヒソヒソ…

 

なんなのだ?いったい…?あの凶暴が服を着ている由良さんが話を合わせろだと?

 

「由良さん由良さん!もしよければ私もご一緒していいですか?」

 

「え?あ〜……うん、いいかな?丁度由良達お茶しようとしてたとこだし、ね?テイトク?」

 

「あ?あぁ…」

 

このパワー、否定すれば即座に肩を砕く気か…

まぁよかろう、正直、何故あの由良さんがここまでこの子供にビビっているのか興味があるのだよ

 

ーーー

 

そんなワケで、俺達は自販機コーナーでティーを買い、談話室へとやって来たワケだが…

 

「あー!クソ、また骨折か!死ね!」

 

基本、24時間誰でも利用できる談話室…

安物の椅子とテーブル、誰かが持って来て捨てて行ったコンビニコミック、雑に用意された菓子箱、畳エリアに設置されたスーパーファ●コン内蔵テレビではだいたい龍驤が寝転びつつダビ●タをプレイしている憩いの空間である…

 

「嬉しいなぁ、嬉しいなぁ、由良さんとご一緒できるなんて嬉しいです!」

 

「あ、うん、お菓子食べる?」

 

「ありがとうございます!嬉しいです!」

 

由良さんはアルフ●ート(ファミリーパック)を三十号クンに渡すと三十号クンは懇切丁寧にお礼を言った

 

「由良さんよ」

 

「ナニ?」

 

「なんなのかね?」

 

「だから、ナニが?」

 

由良さんはゆらゆらしながらニコニコしているが、そのオーラは“余計なこと言うな、殺すぞ”とゆらめいている…

仕方ない、ならば…

 

「三十号クンはアレかね?由良さんと、その…仲が良いのかね?」

 

「仲が良いかどうかはわかりませんが……私は由良さんのことを尊敬しています!」

 

「へぇ…」

 

三十号クン曰く、三十号クンはウチに配属される前から由良さんに憧れていたらしく、憧れの由良さんと同じ職場で働けるのが嬉しくて嬉しくてしょーがないとのコトだ

 

「三十号クン、由良さんに憧れるとロクな大人にならな…」

 

ゴシャアッ!!!

 

「〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!」

 

三十号クンから見えない足下、由良さんは表情一つ変えずに俺の右足を踏み砕き、ね?と笑っていた…

 

「オレンジジュース美味しい?ね?」

 

「はい!美味しいです!」

 

…わ、わからん!あの凶暴・凶悪で鳴らしていた由良さんがここまでするのか、今までも由良さんカッケーとか由良さんマジスゲーとかそれなりにバカどもにリスペクトされてたハズ…

 

「…三十号クンはアレかね?ほら、アレだよ、海防艦だし、対潜とか得意的な…」

 

「そうですね、対潜の訓練はいつも由良さんが付き合ってくれます!」

 

「そうかね、でもほら…対潜と言ったら由良さんと言うよりさ五十鈴さんに教わるのはどうかね?おっぱい大きいし、子供にも優しいし、意外にも教えるの上手いし、おっぱい大きいし…」

 

「由良の方が上手いわ」

 

ウソ吐くじゃないよこの子は、由良さんと五十鈴さん、共に対潜は得意だが五十鈴さんと違い、由良さんはわりと雰囲気で対潜してるケがあり、なんでその体勢から爆雷投げて当たるの?と言いたくなる型のない(フォームレス)シュートを投げたりするだけに人に教えるのが上手いとは言えない

 

「由良さんはすごく懇切丁寧に教えてくれるし、たまにアイスを買ってくれたりします」

 

オイオイオイ、ウソだろ?あの由良さんが…?思わず口に出しそうになったが、さっき踏まれた右足がさらに砕かれる音がしたのでやめた

 

「…そうかね」

 

「テイトクと由良さんは仲良しなんですか?」

 

「は?冗談じゃない、俺と由良さんの間にあるのは殺戮・恐怖政治・血祭りの血の三ヶ条だけ…」

 

ドスッッッ!!!

 

俺の口にカチカチに硬化した練乳パンがねじ込まれ喉奥まで突き刺さり、窒息する勢いで練乳を流し込まれた

 

「テイトク、パンが食べたいって、ね?」

 

「え?そうだったんですか!さすが由良さん!すごいです!」


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