【登場人物】
提督(仮)
自称ハンサムのハンサムな提督
秋雲(仮)
自称少年漫画家のキレた駆逐艦、天然ではなく科学的な甘さが好き
「たまにはクッソ甘いイチャラブものを描きたいと思うんすケド!」
「…ハァ?」
「思うんすケドー!!」
頼んでもないのにバカしか来ない執務室…
軍なんてヤクザな仕事から早く足を洗い、金やちやほやして欲しいからではなく読んで貰う為に漫画を描く!史上、最もアツかりし少年漫画家(自称)秋雲のバカがやって来た…
「ま、いいんじゃねーの?オマエだってたまには筋肉とか硬派とか以外描きたい気分だってあるよ」
秋雲の漫画は好きに描かせると基本“殺人上等!オレら無敵の未成年だぜーっ!”が基本のアレな作風ではあるが、原作を付けると一応それなりにマトモになる
しかし!その弊害なのか、たまには好きに描かないと頭の古傷から変な汁が出るらしく、原作付きでもおかまいなしにワケのわからん超展開に突入し、オチが常に“でたな!ゲ●タードラゴン!”になり原作者と揉めるらしい
「そーゆーワケで、なんか無いっすか?」
「ねぇよ、誰に対してイチャラブ求めてんだテメーは」
「そーっすよね」
「そーっすよね、じゃないよテメーは、俺にイチャラブの才能がないっーのかテメーは、各方面に対して失礼だよね」
「どっちなんすか!?」
このクソヤローが、とんだ失礼だよコイツは…
まぁいい、全て許そう秋雲、何故なら俺は心の広いハンサムな提督だからだ
「で?なんだって?イチャラブ的なもの描きたいと?」
「そーなんすよ、読者の心が思わずキュンキュンしちゃう激シコなヤツを描きたいすね!」
「ナニが激シコだよ、オマエはラブコメをなめてんのか」
「なめてねーっすよ、この秋雲!アツい少年漫画を描きたい一心と同時に、少年達の股間をカチンコチンにするアツい少年漫画のギリギリを攻めたい気持ちがMORI-MORIなんすよ!」
「その意気や良し!熱意や良し!まっこと!天晴れなり!」
俺はそんな秋雲に心意気を感じ、まこと痛快なり!褒美をとらすと菓子皿に入っていたチ●コパイを2袋、秋雲に投げつけた
「ありがたきしあわせーッ!」
秋雲は上手にキャッチしたチ●コパイの袋をWILDに開けて口に放り込んだが、さすがにイッキにイキすぎたか、喉に詰まらせたらしくその場で苦しみだした
「みふっ!!めふん…っ!みぶ…!!」
「え?なんだって?」
.
秋雲は俺の机に置かれていたティーカップを無造作に掴み、中身の液体をWILDに己の口に流し込んだ、が……
「ブーッ!!マッズ!なんすかコレ!!我慢したら飲めないコトはないけど喉を通る度に不快感と吐き気を感じずにはいられないッ!!」
ティーカップを机に叩きつけた秋雲はなんか口直しするモンねーっすか?と図々しく秘書艦サミー子に聞いた…
「ないです、あと秋雲さんにはわからせが必要みたいですね、本当に美味しいコーヒーってヤツを…」
「え?なんでキレてるんすか?」
◆◆◆
本当に美味しいこだわりの本格コーヒーについてわからせられた秋雲を連れ、口直しにマミー屋にでも行ってエネルギー充填っすか!と執務棟と教育棟を繋ぐ中庭の廊下を歩いていると、あまり見覚えのない外国人みたいなのがウロウロしているのが目についた…
「提督、外人すよ!外人!しかもPRIDE高そう」
「然り」
誰だっけか?あの娘、見覚えがないとか言ったけど、一応見たコトあるんだよな、たしか〜……なんだっけ?あぁ、そうだ、女王陛下の料理人とかなんとかの…
「あら?Admiral………と、誰?」
「秋雲さんすよ、なんなんすかこの人、超失礼すね」
「ごめんなさい、まだニホンの駆逐艦は見分けがつかなくてね、アナタは……ユウグモ型?」
「陽炎型っすよ」
「カゲロウ…?」
秋雲を見てカゲロウ?ウソでしょ?みたいな顔をして右手を顎に当てて首をひねっているこの娘は英国出身、女王陛下の料理人のシェ……シェ、シェーフィーくん?だっけか?たしか
「シェーフィーくんはこんなところでナニやってるのかね?」
「Sheffield、キミに愛称で呼ばれる間柄じゃないと思うけど?馴れ馴れし過ぎない?」
「そりゃ失礼したね、えー……Sheffieldクン」
「クッ、ムダに良い発音…ッ!」
バカめ、提督はフランス語はからっきしだが英語はちょっとイケるクチなのだよ
「で?そのシェフィールドくんはこんなところでナニをやっているのかね?」
「別に……大したコトじゃないケド」
今、反射的にシェフィールドくんが隠そうとしたのは手にしていた紙袋、なるほど……何かの取引か、もしくは紙袋の中の“彼女”とピクニックでもしていたのか?
ま、どちらにせよ提督には興味もないしどうでもいいコトだ、君子は危うきには近寄らない、すでに提督の護身は完成しているッッ!!
そんな完全護身体質の完成を感じていると、ベンチの辺りにある草むらから小汚いネコが姿を現し、シェフィールドくんの足に擦り寄った
「あ、え〜……えっと、野良ネコかな?ハハ…困るね、こんなところに野良ネコなんて」
シェフィールドくんはあきらかに動揺した素振りで不自然に笑い、手にした紙袋をベンチに置いた
「秋雲」
「なんすか?」
「卿の意見が聞きたい」
「ハッ…!おそらくは、ツンデレ、ではないでしょうか?」
秋雲曰く、この英国人、おそらくはこの中庭に住み着いている野良ネコの存在を予め知っており、野良ネコと知りつつも餌付けするべくお手製のsandwichなどを用意しここへ来たのではないか……との考察を述べた
そしておそらくそれは
「古来よりの伝統芸、不良はネコに優しいと言うギャップ、それ即ち、普段は対人関係にてツンツンしてるカノジョがかわいい小動物にだけみせる本心の笑顔、そんなカノジョの本当の顔を偶然知った主人公は…っ!」
「素晴らしい洞察力だ、褒めてつかわす」
「ありがたきしあわせーっ!」
俺はポケットから取り出したチューインガムを秋雲に渡すと秋雲はそれを恭しく受け取った
しかし秋雲よ、100点満点に近い解答ではあるが、あえて補足をするなら、主人公(ただしイケメンに限る)が必要だろう
仮に、主人公(根暗+陰キャ)だとうさんくさい催眠アプリとか使う系になるからな!
「や、ホント、なんでもないから…うん、ホントなんでもないから」
野良ネコがシェフィールドくんお手製サンドイッチを狙ってピョンピョン飛び跳ねているが、シェフィールドくんはあくまでシラを切る構え…
だが、ここでグイグイいくコトは紳士じゃあない、提督はクールに去るぜ
「…秋雲、行くぞ、早くしないとマミー屋の期間限定特製ジャンボパフェが売り切れてしまう」
「ヘヘッ!そうっすね!売り切れちゃうっすね!」
俺の考えを理解したか、秋雲はヘヘッとまるでイタズラっ子のように鼻の下を掻いて歩き出した
そう、マミー屋に期間限定特製ジャンボパフェなんてメニューはない!クールに、そして自然にこの場を去る為のクールな嘘!
俺たちは不自然な笑いを浮かべるシェフィールドくんにアデュー!と別れを告げ、あくまでクールにマミー屋へと歩き出したッ!!
甘いモン専門高級スイーツ店、マミーヤ…
「ジャンボパフェですか?ありますよ」
「あるのかよ!」
「1つ29800円ですけど?」
「しかも高けェ!!」
とりあえず1つだけ注文し、秋雲と分けて食ったが途中で胸焼けしそうになり、吐き気すら催した